特許請求の範囲の書き方(実践編)

はじめに

 

  • 特許請求の範囲をどのような記載振りにするかは、代理人(事務所担当者)により、出願人(知財担当者・発明者)により、あるいは案件(発明内容)などにより、異なることも多いです。権利範囲が広く、発明が明確で、読みやすい、と考える記載振りにしていきます。
  • 事例の出願は、実際の公開特許公報からピックアップしました。但し、若干、アレンジした箇所があります。
  • 事例の出願は、実体審査を受けることなく、出願が取下げ扱いになっています。つまり、特許になった訳ではなく、かといって拒絶になった訳でもありません。
  • 事例の出願の発明者様、出願人様及び代理人様と、弊所とは一切関係ありません。技術内容が分かりやすく、特許請求の範囲の記載も分かりやすく、さらに出願から20年以上経過していることを考慮し、事例として挙げさせていただきました。関係者の皆様には何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます。
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特許請求の範囲の記載要件

(1)特許請求の範囲には、請求項に区分して、各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければなりません。

(2)特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければなりません。
 (a) 特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。
 (b) 特許を受けようとする発明が明確であること。
 (c) 請求項ごとの記載が簡潔であること。
 (d) その他経済産業省令で定めるところにより記載されていること。具体的には、次のとおりです。
 ・請求項ごとに行を改め、一の番号を付して記載しなければならない。
 ・請求項に付す番号は、記載する順序により連続番号としなければならない。
 ・請求項の記載における他の請求項の記載の引用は、その請求項に付した番号によりしなければならない。
 ・他の請求項の記載を引用して請求項を記載するときは、その請求項は、引用する請求項より前に記載してはならない。

 


事例

ここでは、次の発明の請求項を考えていきます。

【出願したい発明】 1本のペンにマーカーペンとスタイラスペン(タッチペン)との機能を持たせる。具体的には、ホワイトボードなどへの筆記用のマーカーペンと、筆記跡を残さずにコンピュータに位置座標入力するためのスタイラスペンとを組み合わせた多機能ペンである。マーカーペンのキャップにスタイラスペン用ペン先を取り付けて構成される。なお、スタイラスペンの位置や動きの検出方法には、感圧式と電磁誘導式とがある。

 


請求項全体の骨格を決める

なるべく「Aと、Bと、Cとを備えることを特徴とする***。」でまとまるように考えてみます。「備える」の代わりに「備えた」でも構いません。

前置きとして、「・・・であって」又は「・・・において」を入れても構いません。つまり、全体として、「・・・であって、Aと、Bと、Cとを備えることを特徴とする***。」又は「・・・において、Aと、Bと、Cとを備えることを特徴とする***。」としても構いません。「・・・」の内容が従来公知でないなら「・・・であって」を用い、「・・・」の内容が従来公知であるなら「・・・において」を用いることが多いです。

国際出願の「請求の範囲」の記述方法についての規定ですが、特許協力条約に基づく規則 6.3(b)には、「適当と認められるとき」は、「ジェプソン型クレーム」として知られる2つの部分からなるクレーム、つまり、先行技術に関する前段部分と、それに続く特徴部に関する後段部分とを含むクレームとする旨、規定されています。

なお、「Aと、Bと、Cとを備えることを特徴とする***。」とした場合、権利解釈において、A、B及びCを備える限り、原則として権利範囲に含まれ、さらにDを備えるか否かは問いません。一方、「Aと、Bと、Cとからなることを特徴とする***。」とした場合、A、B及びCのみからなるのが特徴で、さらにDを備えると権利範囲外という印象が残ります。そこで、通常は「備える」の文言を用いますが、発明によってはA、B及びCでのみ構成されるのが特徴ということもあり、その場合は「からなる」の文言を用います。

「Aと、Bと、Cとを備えることを特徴とする***。」でまとまりそうにない場合は、発明内容を順次記載していっても構いません。この場合、記載方法に特に決まりはありません。たとえば、「AにBが設けられ、そのBにCが設けられ、Cが…された ことを特徴とする・・・。」という感じです。あるいは、「AにBが固定され、そのBはCを備え、そのCは…の形状である」「AにBが形成されると共にCが形成されている」など、出願人(請求項作成者)にとって、権利範囲が広く、発明が明確で、書きやすい記載振りでまとめます。

 


請求項の末尾(発明の名称)を決める

請求項全体の骨格を「Aと、Bと、Cとを備えることを特徴とする***。」とする場合における「***」の決定です。

「特許が欲しいもの」として、「物」又は「方法」とします。

事例の場合、「筆記具」「マーカーペン」又は「多機能ペン」などとすることが考えられます。

 


構成要素を決める

請求項全体の骨格を「Aと、Bと、Cとを備えることを特徴とする***。」とする場合におけるA、B及びCの決定です。ここでは、構成要素を三つ(A、B、C)としていますが、この数は発明に応じて変更されます。たとえば、「Aと、Bと、Cと、Dとを備えることを特徴とする***。」としても構いません。

事例の場合、「本体」「マーカーペン用ペン先」「キャップ」及び「スタイラスペン用ペン先」を構成要素として挙げることができます。但し、「マーカーペン用ペン先」を「本体」に含めたり、「本体」「マーカーペン用ペン先」及び「キャップ」を「マーカーペン」としてまとめたりすることも考えられます。

 


各構成要素の修飾部(修飾語・句・節)を考える

請求項全体の骨格を「Aと、Bと、Cとを備えることを特徴とする***。」とする場合におけるA、B及びCそれぞれについて、必要であれば修飾部を付けます。たとえば、「…に…が設けられた」「…に…が形成された」「…を有する」など種々のものがあります。

メインの構成要素(A、B、C)の各修飾部では、メインの構成要素の内、それ以前に登場した要素を使用できます。具体的には、請求項全体の骨格を「Aと、Bと、Cとを備えることを特徴とする***。」とする場合、Bの説明にはA(及びこのAの修飾部に用いた要素)を使用でき、Cの説明にはA(及びこのAの修飾部に用いた要素)とB(及びこのBの修飾部に用いた要素)を使用することができます。たとえば、「aを有するAと、前記aに着脱可能に設けられるBと、このBに設けられたCとを備える」とすることができます。

一方、「Cが設けられたAと、Bと、Cとを備える」とは通常、書きません。この場合、「Cが設けられたAと、Bとを備える」とするか、「AとBとを備え、AにCが設けられた」とするか、「AとBとCとを備え、前記Cは前記Aに設けられている」などとします。メインの構成要素(A、B、C)の登場順序を入れ替えると、うまくまとまることもあります。

なお、請求項中に、図面で用いた符号を括弧書きで付けても構いません。たとえば、「…本体(11)と、マーカーペン用ペン先(13)と、…キャップ(21)と、…スタイラスペン用ペン先(22)とを備えることを特徴とする多機能ペン。」というように、括弧書きの符号付きで請求項を作成することもできます。

 


注意点

特許請求の範囲には、各請求項ごとに、特許出願人が特許を受けようとする発明の発明特定事項を過不足なく記載します。特許出願人が特許を受けようとする発明を特定する際に、全く不要な事項を記載したり、逆に必要な事項を記載しなかったりすることがないようにしなければなりません

そのため、各【請求項】(特に【請求項1】)には、“あってもなくてもよい事項”は入れてはいけません。逆に、明細書の【発明が解決しようとする課題】を解決するために“必ずなくてはならない事項”は入れなければなりません。また、“あったほうがよい事項”は、請求項2以下で順次、それより上位の請求項に記載された発明をさらに限定していく形で記載できます。

別資料「特許請求の範囲の読み方/書き方」の「特許請求の範囲の書き方」もご参照ください。

必要に応じて、複数の請求項(請求項2以下)を作成します。たとえば、請求項1の構成を具体化したり、明確化したりする従属項を作成します。あるいは、発明のカテゴリー(「物」の発明と「方法」の発明)を変更した請求項を作成します。従属項については、別資料「特許請求の範囲について」(あるいは「独立項と従属項」、「特許請求の範囲の読み方/書き方」の「従属項について」)をご覧ください。

典型的には、請求項2以下の従属項で、従属先の一部構成を下位概念に限定(たとえば請求項1の「弾性体」を請求項2で「バネ」に限定)したり、別途の構成を付加(たとえば請求項1の「ボールペン」に請求項2で「グリップ」を付加)したりして、特に好ましい態様、格別の作用効果を奏する態様、実施品の態様(製品そのもの)、確実に権利範囲であることを明示したい態様、変形例、他社牽制したい態様などを明示します。

 


確認作業

  • 特に請求項1に、要らぬ限定がないか、を確認します。逆に、必要な限定が欠けていないか、を確認します。発明特定事項として必要か否かは、明細書の【発明が解決しようとする課題】(課題が複数の場合はメインの課題)を解決するために必要不可欠であるか、で判断します。
  • 各請求項ごとに作用効果(達成したいメリット)を考え、その作用効果を奏するために必要な発明特定事項が過不足なく記載されているか、を確認します。言い換えれば、所期の作用効果を奏するために必要な要素が記載されているか否かを確認します。所期の作用効果を奏するには、あってもなくてもよいのであれば、記載しないか、下位の請求項で記載します。
  • 一見必須要件でも、本当に必須要件か今一度確認します。たとえば、市販の鉛筆をセットして用いるコンパスの場合、少なくとも独立項(請求項1)では鉛筆を要件とするのを避けます。つまり、二本の脚体が開き角を変更可能に基端部で連結され、一方の脚体の先端部には針が設けられ、他方の脚体の先端側には鉛筆が着脱可能に設けられるコンパスを発明したとします。この場合、「…する第一脚体と、…する第二脚体と、この第二脚体に設けられる鉛筆と、を備えるコンパス」とはしない方がよいです。特許権侵害は原則として全ての構成要件を具備した場合に成立しますから、鉛筆も構成要件とすると、コンパス本体と鉛筆とをセットで販売する場合が原則として権利侵害を構成することになってしまいます。市販の様々な鉛筆を用いることができるなら、また(鉛筆なしの)コンパス本体のみを販売する場合もあり得るなら、「…する第一脚体と、…鉛筆が着脱可能に設けられる(又は「鉛筆が取付可能な」)第二脚体と、を備えるコンパス」などとするのが無難です。
     「物」の発明だけでなく、「方法」の発明でも同様です。具体的には、「…するA工程、…するB工程、…するC工程、…するD工程を順次に実行する○○方法」でも、必ずしも全ての工程を挙げる必要はなく、必要最小限の工程のみ(たとえば「…するB工程、…するC工程を順次に実行する○○方法」)を請求項1とし、その他の工程は記載しないか、従属項とします(たとえば請求項2で「前記B工程の前に、…するA工程を実行する請求項1に記載の○○方法」)。請求項1で、他の工程が気になる場合には、「少なくとも…工程を含む」などの文言を使用できます。
  • 出来上がった請求項(特に請求項1)に、従来技術が含まれていないか、を確認します。一見含まれていないと思われる場合でも、“嫌な読み方”をすれば(つまり敢えて含むように読めば)、請求項に係る発明に従来技術が含まれているように読めなくもない場合があります。特許庁の審査において引用文献(先行技術として挙げられた文献)が本願発明と全く異なるのになぜ?という場合、請求項の読み方によっては、本願発明(請求項の記載で特定される発明)に従来技術が含まれているようにも読めなくもない、という場合があります。
  • 請求項の作成直後には分からない欠点も、別の日に確認すると見えてくることもあります。たとえば、日を改めて読むと、本願発明に従来技術が含むように読めたり、記載が不明確に思えたりすることがあるかもしれません。請求項を別の人(作成者以外の人)が読むと、欠点が見えてくるのに似ています。

 


その他

  • 上位概念でとらえられないか(ボールペンを筆記具に)
  • 置換できるものがないか(ボールペンをサインペンに)
  • 別観点からみれないか(マーカーペンにスタイラスペンを設けるのではなく、スタイラスペンにマーカーペンを設ける。マーカーペンに他の機能を付加する。)
  • 他社牽制できているか(自社が特許を取得したとして、他社はどう回避して製造販売してくるだろうか)
  • 将来の改良改変他への展開(将来、自社又は他社はどう改良、改変するか。他の分野や製品への応用ができないか。)
  • 発明者が従来技術と認識する技術は、本当に従来公知か(たとえば社内研究での従来技術かも)
  • 権利行使しやすい内容か(製品を見て分かる内容か)
  • メーカの場合、できるだけ「物」で権利取得する(最終消費者であるユーザが使用する「方法」で権利取得したのでは、競合他社ではなくユーザが特許発明を使用することになる)。とはいっても、「方法」クレームもあるに越したことはない。
  • 従来公知でない消耗品(又は完成品に対する部品)があるなら、消耗品のみの権利取得も(プリンタとそのインクカートリッジ)
  • 各請求項間で、及び明細書との間で、用語が統一されているか
  • 発明の範囲を広げ過ぎて、【発明が解決しようとする課題】を維持できているか、従来技術を含んでいないか、発明が明確であるか、発明が完成しているか、本命の請求項が審査され特許されるか
  • プロダクト・バイ・プロセス・クレーム(物の発明についての請求項にその物の製造方法が記載されている場合)に該当しないか(物の発明についての請求項にその物の製造方法が記載されている場合、当該物の発明は不明確であるという拒絶理由が通知されるおそれ)。たとえば、「AにBを溶接し」と記載するよりは、「Aに溶接されたB」と記載する方が無難です。
  • 「前記***」の文言について、「***」がそれ以前に出現しているか。特に、従属項で「前記」を使用した場合、従属先(さらにその従属先)に「***」が出現するかを確認します。詳しくは、本書末尾の「補足:請求項の従属先(特に「前記」の扱い)」をご覧ください。

 


請求項の具体例(事例の場合)

同じ発明を様々な記載振りで特定できることを、下記に示します。作成例1が分かりやすいと思います。作成例1の第1段落を削除することも考えられます。なお、念のためですが、下線は説明用であって、実際には付けません。作成例2以降にも、作成例1の請求項2や請求項3を付けることができるのは、言うまでもありません。

≪作成例1≫
【特許請求の範囲】
 【請求項1】
 媒体に対する筆記具及び位置座標入力具として使用される多機能ペンであって、
 内部にインクが充填された本体と、
 この本体に取り付けられて前記インクを外部に導出するマーカーペン用ペン先と、
 前記マーカーペン用ペン先を覆うように前記本体に着脱可能に装着されるキャップと、
 前記キャップに突設されたスタイラスペン用ペン先と
 を備えることを特徴とする多機能ペン。
 【請求項2】
 前記スタイラスペン用ペン先は、前記媒体側に設けられた感圧センサを加圧することにより位置座標を入力する
 ことを特徴とする請求項1に記載の多機能ペン。
 【請求項3】
 前記スタイラスペン用ペン先は、前記媒体側に設けられた電磁センサとの電磁作用により位置座標を入力する
 ことを特徴とする請求項1に記載の多機能ペン。

≪作成例2≫
【特許請求の範囲】
 【請求項1】
 内部にインクが充填された本体に、前記インクを外部に導出するマーカーペン用ペン先が設けられ、このマーカーペン用ペン先を覆うように前記本体にキャップが着脱可能に装着されるマーカーペンと、
 このマーカーペンの前記キャップに突設されたスタイラスペン用ペン先と
 を備えることを特徴とする多機能ペン。

≪作成例3≫
【特許請求の範囲】
 【請求項1】
 内部にインクが充填された本体に、前記インクを外部に導出するマーカーペン用ペン先が設けられ、このマーカーペン用ペン先を覆うように前記本体にキャップが着脱可能に装着されるマーカーペンにおいて、
 前記キャップにスタイラスペン用ペン先を突設した
 ことを特徴とするマーカーペン

≪作成例4≫
【特許請求の範囲】
 【請求項1】
 内部にインクが充填された本体に、前記インクを外部に導出するマーカーペン用ペン先が設けられ、
 このマーカーペン用ペン先を覆うように、前記本体にキャップが着脱可能に装着され、
 このキャップにスタイラスペン用ペン先が突設された
 ことを特徴とする多機能ペン。

 


補足:請求項の従属先(特に「前記」の扱い)

次のような特許請求の範囲について考えてみます(下線は説明用です)。
【特許請求の範囲】
 【請求項1】
 …する本体と、…するマーカーペン用ペン先と、…するキャップと、…するスタイラスペン用ペン先と
 を備えることを特徴とする多機能ペン。
 【請求項2】
 前記本体にはグリップが設けられると共に、前記マーカーペン用ペン先は先細りに形成されている
 ことを特徴とする請求項1に記載の多機能ペン。
 【請求項3】
 前記マーカーペン用ペン先は、前記本体に対し付替可能に設けられる
 ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の多機能ペン。
 【請求項4】(×間違いの例)
 前記グリップは前記本体に対し着脱可能に設けられる
 ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の多機能ペン。

さて、請求項4には、「請求項1~3のいずれか1項に記載の」とありますから、(a)「請求項1に記載の」で読む場合には「請求項1+4」の発明内容となり、(b)「請求項2に記載の」で読む場合には「請求項1+2+4」の発明内容となり、(c)「請求項3に記載の」で読む場合には(後述する(x),(y)を考慮して)「請求項1+3+4」又は「請求項1+2+3+4」の発明内容となります。

そして、請求項4には「前記グリップ」との文言がありますが、その「グリップ」は請求項2が初出ですから、請求項4を請求項1に従属させることはできません。つまり、前記(a)のように「請求項1+4」で読むと、「…する本体と、…するマーカーペン用ペン先と、…するキャップと、…するスタイラスペン用ペン先とを備え、前記グリップは前記本体に対し着脱可能に設けられる」という内容になりますが、「前記グリップ」とは何かが不明となり、記載不備(拒絶理由)となります。

同様に、請求項3にも従属させることができません。なぜなら、請求項3には、「請求項1又は請求項2に記載の」とありますから、(x)「請求項1に記載の」で読む場合には「請求項1+3」の発明内容となり、(y)「請求項2に記載の」で読む場合には「請求項1+2+3」の発明内容となります。そして、この内、(x)の発明に、請求項4が従属する場合(つまり「請求項1+3+4」の場合)を考えると、「…する本体と、…するマーカーペン用ペン先と、…するキャップと、…するスタイラスペン用ペン先とを備え、前記マーカーペン用ペン先は、前記本体に対し付替可能に設けられ、前記グリップは前記本体に対し着脱可能に設けられる」という内容になりますが、「前記グリップ」とは何かが不明となり、やはり記載不備となります。

従って、請求項4は請求項2にしか従属させることはできません(請求項4の末尾を「請求項2に記載の」とする必要があります)。あるいは、請求項3の(末尾で指定の)従属先を、請求項2のみにすれば、請求項4の(末尾で指定の)従属先を「請求項2又は請求項3」とすることができます。もちろん、請求項1に「グリップ」を登場させれば、それ以下の各請求項で「前記グリップ」を登場させることはできますが、請求項1の権利範囲が狭くなります(最も広い請求項1の権利でもグリップが必須となります)。

このように従属項で限定しようとする事項(典型的には「前記***」の「***」)が、その従属項の(末尾で指定の)従属先(さらにはその従属先)に出現するかを、あらゆるパターンについて確認する必要があります。請求項の順序を入れ替えることでうまくまとまることもあります。

 


参考条文(2019.05.01)

特許法
(特許出願)
第36条 特許を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。
  一 特許出願人の氏名又は名称及び住所又は居所
  二 発明者の氏名及び住所又は居所
 2 願書には、明細書、特許請求の範囲、必要な図面及び要約書を添付しなければならない。
 3 前項の明細書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
  一 発明の名称
  二 図面の簡単な説明
  三 発明の詳細な説明
 4 前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
  一 経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。
  二 その発明に関連する文献公知発明(…)のうち、特許を受けようとする者が特許出願の時に知っているものがあるときは、その文献公知発明が記載された刊行物の名称その他のその文献公知発明に関する情報の所在を記載したものであること。
 5 第二項の特許請求の範囲には、請求項に区分して、各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない。この場合において、一の請求項に係る発明と他の請求項に係る発明とが同一である記載となることを妨げない。
 6 第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
  一 特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。
  二 特許を受けようとする発明が明確であること。
  三 請求項ごとの記載が簡潔であること。
  四 その他経済産業省令で定めるところにより記載されていること。
 7 第二項の要約書には、明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した発明の概要その他経済産業省令で定める事項を記載しなければならない。

 

(特許発明の技術的範囲)
第70条 特許発明の技術的範囲は、願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない。
 2 前項の場合においては、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮して、特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するものとする。
 3 前二項の場合においては、願書に添付した要約書の記載を考慮してはならない。

 

特許法施行規則
(特許請求の範囲の記載)
第24条の3 特許法第36条第6項第4号の経済産業省令で定めるところによる特許請求の範囲の記載は、次の各号に定めるとおりとする。
  一 請求項ごとに行を改め、一の番号を付して記載しなければならない。
  二 請求項に付す番号は、記載する順序により連続番号としなければならない。
  三 請求項の記載における他の請求項の記載の引用は、その請求項に付した番号によりしなければならない。
  四 他の請求項の記載を引用して請求項を記載するときは、その請求項は、引用する請求項より前に記載してはならない。

 

特許法施行規則
様式29の2〔備考〕
 7 文章は口語体とし、技術的に正確かつ簡明に特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを出願当初から記載する。この場合において、他の文献を引用して特許請求の範囲の記載に代えてはならない。
 8 技術用語は、学術用語を用いる。
 9 用語は、その有する普通の意味で使用し、かつ、明細書及び特許請求の範囲全体を通じて統一して使用する。ただし、特定の意味で使用しようとする場合において、その意味を定義して使用するときは、この限りでない。
 10 登録商標は、当該登録商標を使用しなければ当該物を表示することができない場合に限り使用し、この場合は、登録商標である旨を記載する。
 11 微生物、外国名の物質等の日本語ではその用語の有する意味を十分表現することができない技術用語等は、その日本名の次に括弧をしてその原語を記載する。
 12 微生物の寄託について付された受託番号は、その微生物名の次に記載する。
 13 化学物質を記載する場合において、物質名だけではその化学構造を直ちに理解することが困難なときは、物質名に加え、化学構造を理解することができるような化学式をなるべく記載する。
 14 「特許請求の範囲」は、第24条の3並びに特許法第36条第5項及び第6項に規定するところに従い、次の要領で記載する。
  イ 「特許請求の範囲」の記載と「明細書」の記載とは矛盾してはならず、字句は統一して使用しなければならない。
  ロ 請求項の記載の内容を理解するため必要があるときは、当該願書に添付した図面において使用した符号を括弧をして用いる。
  ハ 他の請求項を引用して請求項を記載するときは、その請求項は、原則として引用する請求項に続けて記載する。
  ニ 他の2以上の請求項の記載を引用して請求項を記載するときは、原則としてこれらを択一的に引用し、かつ、これらに同一の技術的限定を付して記載する。
  ホ 請求項に付す番号は、「【請求項1】」、「【請求項2】」のように記載する。ただし、他の請求項の記載を引用して請求項を記載するときは、引用される請求項に付した番号を「請求項1」、「請求項2」のように記載する。
 16 化学式等を特許請求の範囲中に記載しようとする場合には、化学式を記載しようとするときは化学式の記載の前に「【化1】」、「【化2】」のように、数式を記載しようとするときは数式の記載の前に「【数1】」、「【数2】」のように、表を記載しようとするときは表の記載の前に「【表1】」、「【表2】」のように記載する順序により連続番号を付して記載する。化学式等は、横170mm、縦255mmを超えて記載してはならず、1の番号を付した化学式等を複数ページに記載してはならない。

 


関連情報

 


(作成2019.05.06、最終更新2020.08.07)
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