要約書について

 


特許出願の要約書とは?

要約書とは、発明の概要を記載した文書をいい、その内容は、通常、公開公報のフロントページに掲載されます。

以下、要約書について、具体的にみていきます。
要約書の具体例については、後記「要約書の例」の他、別資料「特許出願書類の例」をご参照ください。

 


(1)要約書への記載事項

  • 【要約書】には、明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した発明の概要(要約)を記載します。また、機械分野の発明では、通常、後記(3)でいう「選択図」も指定しておきます。
  • 後記「要約書の例」に示すように、【要約】の欄は、【課題】【解決手段】に分けるのが一般的です。
  • 特許請求の範囲のコピーではなく、より分かりやすく、発明の概要を、平易、簡潔、明瞭に記載します。後記条文(特許法第36条第7項)からも分かるように、【要約書】には、【特許請求の範囲】に記載した発明に限らず、【明細書】【特許請求の範囲】又は【図面】に記載した発明の概要を記載します。
  • 重複記載(発明の名称との重複)、引用記載(「…に記載のように」)、従来技術(「従来技術では…」)、自明事項(「本発明は」の文言)の記載を避けます
  • 機械分野では、機能や動作処理や信号の流れが分かるように記載します。
  • 選択図がある場合、後記「要約書の例」の「ブレーキレバー5」のように、選択図中の符号を用いて説明します。(他の図面に存在していても)選択図に存在しない符号を使用することはできません。たとえば、図面として図1と図2とを添付して出願するに際し、図1を選択図とする場合、図1には出現せず図2にのみ出現する符号を、要約書で使用することはできません。
  • 将来、英語に翻訳されるので、主語や目的語などの省略をなくし、翻訳が容易な文章を心掛けます。

 

(2)権利範囲の解釈への影響

  • わが国では、権利範囲(特許発明の技術的範囲)を解釈するに当たっては、「要約書の記載を考慮してはならない」との規定があります。

 

(3)公報への掲載

  • 出願後1年6月で、出願内容は公開特許公報に掲載(出願公開)されますが、その際、【要約書】の内容が、フロントページ(表紙)に掲載されます。
  • 図面を添付して特許出願する場合、そのうちから一図を選択しておくことで、その「選択図」も公報フロントページに掲載されます。たとえば、図1を選択する場合、「【選択図】図1」と記載します。図面を添付せずに出願する場合など、選択図を用いない場合、「【選択図】なし」と記載します。
  • 特許庁長官は、必要に応じて、出願人作成の要約書に代えて、自ら作成した事項を公報に掲載することができます。この場合、公報の【要約】の欄には、「(修正有)」と表示されます。

 

(4)文字数の制限

  • 公報フロントページに掲載する関係上、要約書には、文字数に制限があります。
  • 400字以内で簡潔に記載する必要があり、200~400字の範囲で記載するのが好ましいとされます。後記「要約書の例」において、青字部分(「【」~「。」)が、400字以内(好ましくは200~400字)となるように作成します。

 


要約書の例(機械分野)

*特許庁編、平成30年度知的財産権制度説明会(実務者向け)テキスト『要約書作成のポイント』第34頁より

【書類名】要約書
【要約】
【課題】洗濯機の脱水機やミシン等の回転体のブレーキとして、耐熱性が大きく、かつ、均一に摩耗するブレーキシュー構造を得る。
【解決手段】ブレーキレバー5に固着したブレーキシュー4を多層構造とする。ブレーキホイール6に接触する側は熱硬化性樹脂からなるライニング部11をもつ。ライニング部11を保持するブロック部12には熱可塑性樹脂を用いる。ライニング部11の先端がブレーキホイール6に接触し、摩擦力によってブレーキシュー4に巻込み力が生じる。このとき、弾性力のあるブロック部12が変形し、ライニング部11がブレーキホイール6の全面に強く当てられて制動がかかり、大きなブレーキ力が得られる。
【選択図】図1

 

*選択図として選択した図1の内容は次のとおり
【書類名】図面
【図1】

要約書の選択図

 


参考条文

特許法第36条第7項
「…要約書には、明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した発明の概要その他経済産業省令で定める事項を記載しなければならない。」

特許法第70条
「特許発明の技術的範囲は、願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない。
 2 前項の場合においては、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮して、特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するものとする。
 3 前二項の場合においては、願書に添付した要約書の記載を考慮してはならない。」

特許法施行規則 第25条の2
「特許法第36条第7項に規定する経済産業省令で定める事項は、出願公開又は同法第66条第3項に規定する特許公報への掲載の際に、明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した発明の概要と共に特許公報に掲載することが最も適当な図に付されている番号とする。」

 


関連情報

 


(作成2006.01.01、最終更新2020.10.15)
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