「各~ごと」の表現は間違いではない!?

各~ごと」の表現は、「重複表現」で好ましくない、とされます。
絶対に許されないのでしょうか。

先日、たまたま法律条文から「各~ごと」の表現を発見しましたので、許されないことはないようです。

「各~ごと」の表現について、検討してみます。

 


Microsoft Word上での扱い

重複表現・重ね言葉

ワードで特許明細書などを書いていると、重複表現を指摘されることがあります。

たとえば「ユニットごとにまとめる」と書くと、「各」と「ごと」に青の下線が引かれ、文章校正の内容を見ると、「重ね言葉」とのことです。

具体的には、「同じ意味の言葉が二重に現れており、冗長な表現と取られることもあります。一部はすでに認められているものもありますが、確認のうえ、必要ならば片方を削るか、置き換えるとよいでしょう。」と出ました。

このような重複表現は、「各」の文言を削除するか、「ごと」を削除することで解消します。
たとえば、「各ユニットごと」を単に「ユニットごと」とすればよいのです。

 


法律に「各~ごと」が出現!?

特許法では、「各~ごと」が普通に使われているのです。
その他の法律についても、少しみてみたら、やはり使われているようです。
たとえば、以下の条文を挙げることができます。

特許法 第36条第5項
「第2項の特許請求の範囲には、請求項に区分して、請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない。この場合において、一の請求項に係る発明と他の請求項に係る発明とが同一である記載となることを妨げない。」

特許法 第107条第3項
「第1項の特許料は、特許権が…共有に係る場合であって持分の定めがあるときは、第1項の規定にかかわらず、国以外の共有者ごとに同項に規定する特許料の金額(減免を受ける者にあっては、その減免後の金額)にその持分の割合を乗じて得た額を合算して得た額とし、国以外の者がその額を納付しなければならない。

特許法 第195条第6項
「特許を受ける権利が…共有に係る場合であって持分の定めがあるときは、これらの者が自己の特許を受ける権利について第2項の規定により納付すべき出願審査の請求の手数料は、同項の規定にかかわらず、国以外の共有者ごとに同項に規定する出願審査の請求の手数料の金額(減免を受ける者にあつては、その減免後の金額)にその持分の割合を乗じて得た額を合算して得た額とし、国以外の者がその額を納付しなければならない。」

 

人権擁護委員法 第4条第2項
市町村ごとの人権擁護委員の定数は、その土地の人口、経済、文化その他の事情を考慮し、法務大臣が定める。」

公害健康被害の補償等に関する法律 第53条第1項
「各ばい煙発生施設等設置者から徴収する汚染負荷量賦課金の額は、次の各号に掲げるばい煙発生施設等設置者の種別に従い、当該各号に定める額とする。
 一 前条第一項第一号のばい煙発生施設等設置者 当該ばい煙発生施設等設置者が排出する同号の政令で定める物質ごとの単位排出量当たりの賦課金額に前年度の初日の属する年における年間排出量を乗じて得た額の合計額 …」

 


まとめ

ワードの校正機能が指摘するように、「冗長な表現と取られることもある」「一部はすでに認められているものもある」のですから、元々、間違いとまではいえないようです。

そして、法律上は、「各~ごと」という表現は、問題なしということでしょうか。

厳密性が要求される法律だからこそ、重複表現とした可能性もあります。

一方で、法律上でも、単に「~ごと」との表現の箇所も多いことを考慮すると、「各」の有無で、何らかの意図、微妙なニュアンスの違いなどがあるかもしれません。

いずれにしても、ワードの編集画面で文章校正を促す下線が出るのは気分がよくないので、基本的には重複表現は避けたいです。

 


(作成2019.06.10、最終更新2019.06.11)
出典を明示した引用などの著作権法上の例外を除き、無断の複製、改変、転用、転載などを禁止します。
Copyright©2019 Katanobu Koyama. ALL RIGHTS RESERVED.