特許手続の補正(条文解読)

補正とは

特許法第17条(手続の補正)についても言及のある『特許庁編「意匠審査基準」第8部 願書・図面等の記載の補正』には、次のとおり解説されています。

補正とは、出願に関する書類等について法律又は所定の様式に照らして誤記や不明瞭な記載などの記載不備がある場合に、出願人が自発的に、あるいは特許庁長官又は審判長の命令に基づいて、その記載不備を治癒するために出願後に当該出願書類等を訂正又は補充する手続行為をいう。

補正は、先願主義のもとで手続の円滑な進行を図るために、一定の制限の範囲内で出願人に法律上認められた手続行為であり、出願人が適法な手続補正書を提出(…特許法第17条第4項)することによって、書類等は出願当初から補正後の状態で提出されたものとして取り扱われることになる。

ただし、補正はそのような効果を生じるものであることから、出願当初に記載されていた内容を自由に補正することができるとすると、先願主義の趣旨に反し、第三者に不測の不利益を与えることとなるため、内容的な制限と時間的な制限が課せられている。』

 

以下、特許法における補正関係の主要条文を確認してみます。

なお、本頁末尾の掲載日時点の弊所把握情報です。最新かつ正確な情報は、特許庁ホームページでご確認ください。
各種期限に変更がある場合があります。

参考文献:特許庁編『工業所有権法逐条解説 第20版』

 


(手続の補正)
第17条

手続をした者は、
事件が特許庁に係属している場合に限り、
その補正をすることができる

ただし、
次条から第17条の5までの規定により補正をすることができる場合を除き、
 ・願書に添付した明細書、特許請求の範囲、図面若しくは要約書
 ・「第41条第4項(国内優先権主張書)」若しくは「第43条第1項(パリ条約優先権主張書(第43条の2第2項(優先期間徒過救済措置による優先権主張)(第43条の3第3項(パリ条約の例による優先権主張)において準用する場合を含む。)及び第43条の3第3項(パリ条約の例による優先権主張)において準用する場合を含む。)」に規定する書面
 ・又は「第120条の5第2項(特許異議申立てにおける訂正請求)若しくは第134条の2第1項(特許無効審判における訂正請求)の訂正」若しくは「訂正審判」の請求書に添付した訂正した明細書、特許請求の範囲若しくは図面
について補正をすることができない

2 第36条の2第2項の外国語書面出願の出願人は、
前項本文の規定にかかわらず、
同条第1項の外国語書面及び外国語要約書面について補正をすることができない

3 特許庁長官は、次に掲げる場合は、相当の期間を指定して、手続の補正をすべきことを命ずることができる
  一 手続が第7条第1項から第3項まで(未成年者、成年被後見人等の手続をする能力)又は第9条(代理権の範囲)の規定に違反しているとき。
  二 手続が「この法律」又は「この法律に基づく命令」で定める方式に違反しているとき。
  三 手続について第195条第1項から第3項まで(手数料)の規定により納付すべき手数料を納付しないとき。

4 手続の補正(手数料の納付を除く。)をするには、次条第2項(誤訳訂正書)に規定する場合を除き、手続補正書を提出しなければならない。

  • 特許法施行規則(手続補正書の様式等)第11条
    ・第1項=手続補正書(様式13,14)
    ・第4項=「請求項の数を増加する補正により納付しなければならない手数料は、当該手続補正書を提出する際に納付しなければならない。」
    ・第5項=手数料補正書(様式15)

 


(願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の補正)
第17条の2

特許出願人は、
特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、
願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる

ただし、第50条(拒絶理由通知)の規定による通知を受けた後は、次に掲げる場合に限り、補正をすることができる。

  一 第50条(拒絶理由通知)(第159条第2項(拒絶査定不服審判)(第174条第2項(再審)において準用する場合を含む。)及び第163条第2項(前置審査)において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定による通知(以下この条において「拒絶理由通知」という。)を最初に受けた場合において、第50条の規定により指定された期間内にするとき。
  (*最初の拒絶理由とは、「原則として、出願人にはじめて指摘する拒絶理由を通知するものをいい、第一回目の拒絶理由通知はもとより、第二回目の拒絶理由であっても、最初の拒絶理由に対して補正がなされなかった請求項等に対して、はじめて通知する拒絶理由を含むものは、最初の拒絶理由である。」(特許庁編『工業所有権法逐条解説 第20版』第17条の2))

  二 拒絶理由通知を受けた後第48条の7(先行技術文献情報開示要件違反通知の規定による通知を受けた場合において、同条の規定により指定された期間内にするとき。(*通常、48条の7の通知は、最初の拒絶理由通知前になされると思われ、その場合は最初の拒絶理由通知の応答期間まではいつでも補正できるが、最初の拒絶理由通知の応答期間経過後に通知された場合は本号による。)

  三 拒絶理由通知を受けた後更に拒絶理由通知を受けた場合において、最後に受けた拒絶理由通知に係る第50条の規定により指定された期間内にするとき。
  (*最後の拒絶理由とは、「原則として、最初の拒絶理由に対する補正により通知することが必要となった拒絶理由のみを通知するものである。」(特許庁編『工業所有権法逐条解説 第20版』第17条の2))

  四 拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求と同時にするとき。

2 第36条の2第2項の外国語書面出願の出願人が、
誤訳の訂正を目的として、
前項の規定により明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をするときは、
その理由を記載した誤訳訂正書を提出しなければならない。

3 第1項の規定により明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をするときは、
誤訳訂正書を提出してする場合を除き、
願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面第36条の2第2項の外国語書面出願にあつては、同条第8項の規定により明細書、特許請求の範囲及び図面とみなされた同条第2項に規定する外国語書面の翻訳文誤訳訂正書を提出して明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をした場合にあつては、翻訳文又は当該補正後の明細書、特許請求の範囲若しくは図面。…に記載した事項の範囲内においてしなければならない。(*新規事項追加禁止(外国語書面出願にあっては翻訳文新規事項追加禁止))

4 前項(新規事項追加禁止)に規定するもののほか、
第1項各号に掲げる場合において特許請求の範囲について補正をするときは、
その補正前に受けた拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについての判断が示された発明」と、「その補正後の特許請求の範囲に記載される事項により特定される発明」とが、第37条の発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものとなるようにしなければならない。(*発明の特別な技術的特徴を変更する補正(シフト補正)の禁止。拒絶理由が通知された後に発明の内容を大きく変更することは禁止される。)

5 前2項(新規事項追加禁止、シフト補正禁止)に規定するもののほか、
第1項第一号(最初の拒絶理由通知応答期間内の補正)、第三号(最後の拒絶理由通知応答期間内の補正)及び第四号(拒絶査定不服審判請求時の補正)に掲げる場合同項第一号(最初の拒絶理由通知応答期間内の補正)に掲げる場合にあつては、拒絶理由通知と併せて第50条の2(既に通知された拒絶理由と同一である旨の通知)の規定による通知を受けた場合に限る。において特許請求の範囲についてする補正は
次に掲げる事項を目的とするものに限る。(*既になされた審査結果を有効に活用できる範囲内に限る。)

  一 第36条第5項に規定する請求項の削除
  二 特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、「その補正前の当該請求項に記載された発明」と「その補正後の当該請求項に記載される発明」の「産業上の利用分野」及び「解決しようとする課題」が同一であるものに限る。)(*限定的減縮
  三 誤記の訂正
  四 明りようでない記載の釈明拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)

6 第126条第7項(独立特許要件)の規定は、前項第二号(限定的減縮)の場合に準用する。(*補正後の発明が独立して特許を受けることができるものでなければならない。)

 


(要約書の補正)
第17条の3

特許出願人は、
経済産業省令で定める期間内に限り、
願書に添付した要約書について補正をすることができる

  • 特許法施行規則(要約書の補正の期間)
    第11条の2の2 特許法第17条の3の経済産業省令で定める期間は、特許出願の日(同法第41条第1項、第43条第1項、第43条の2第1項(同法第43条の3第3項において準用する場合を含む。)又は第43条の3第1項若しくは第2項の規定による優先権の主張を伴う特許出願にあつては、当該優先権主張の基礎とした出願の日のうち最先の日。以下「優先日」という。)から一年四月(特許出願(同法第184条の4第1項の外国語特許出願を除く。)の願書に添付した要約書を補正する場合にあつては出願公開の請求があつた後の期間を除き国内書面提出期間内に出願人から出願審査の請求のあつた同法第184条の4第1項の外国語特許出願であつて国際公開がされているものの願書に添付された要約書を補正する場合にあつては出願審査の請求があつた後の期間を除く。)とする。

 


(優先権主張書面の補正)
第17条の4

第41条第1項(国内優先権主張)又は第43条第1項(パリ条約優先権主張)、第43条の2第1項(優先期間徒過救済措置による優先権主張(第43条の3第3項(パリ条約の例による優先権主張)において準用する場合を含む。)若しくは第43条の3第1項若しくは第2項の規定(パリ条約の例による優先権主張)による優先権の主張をした者は、
経済産業省令で定める期間内に限り、
第41条第4項(国内優先権主張書)又は第43条第1項(パリ条約優先権主張書(第43条の2第2項(優先期間徒過救済措置による優先権主張)(第43条の3第3項(パリ条約の例による優先権主張)において準用する場合を含む。)及び第43条の3第3項(パリ条約の例による優先権主張)において準用する場合を含む。)に規定する書面について補正をすることができる

  • 本規定は、あくまでも「補正」に限られる。優先権主張の追加や取下げについては、別の手続となる。
  • 特許法施行規則(優先権主張書面の補正の期間)
    第11条の2の3 特許法第17条の4の経済産業省令で定める期間は、次に掲げる場合に応じ、当該各号に定める期間とする。
     一 特許出願(特許法第44条第1項(出願分割)、第46条第1項若しくは第2項(出願変更)又は第46条の2第1項(実用新案登録に基づく特許出願)の規定による特許出願を除く。)について、同法第17条の4の規定により同法第41条第4項に規定する書面又は同法第43条第1項(同法第43条の2第2項(同法第43条の3第3項において準用する場合を含む。)及び第43条の3第3項において準用する場合を含む。)に規定する書面(以下これらの書面を「優先権主張書面」という。)について補正をする場合
     「優先日(優先権主張書面について補正をすることにより優先日について変更が生じる場合には、変更前の優先日又は変更後の優先日のいずれか早い日。次号において同じ。)から一年四月の期間が満了する日」又は「これらの規定による優先権の主張を伴う特許出願の日から四月の期間が満了する日のいずれか遅い日までの間出願審査の請求又は出願公開の請求があつた後の期間を除く。

     二 特許法第44条第1項(出願分割)、第46条第1項若しくは第2項(出願変更)又は第46条の2第1項(実用新案登録に基づく特許出願)の規定による特許出願について、同法第17条の4の規定により優先権主張書面について補正をする場合
     「優先日から一年四月」、「同法第44条第1項の規定による新たな特許出願に係るもとの特許出願の日」、「同法第46条第1項若しくは第2項の規定による出願の変更に係るもとの出願の日」若しくは「同法第46条の2第1項の規定による特許出願の基礎とした実用新案登録に係る実用新案登録出願の日から四月又は「同法第44条第1項、第46条第1項若しくは第2項又は第46条の2第1項の規定による特許出願をした日から一月の期間が満了する日のいずれか遅い日までの間出願審査の請求又は出願公開の請求があつた後の期間を除く。

 


(訂正に係る明細書、特許請求の範囲又は図面の補正)
第17条の5

特許権者は、
第120条の5第1項(特許異議申立て:取消理由通知に対する意見書提出)又は第6項(訂正拒絶理由通知に対する応答)の規定により指定された期間内に限り、
同条第2項の訂正の請求書に添付した訂正した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる

2 特許無効審判の被請求人は、
第134条第1項若しくは第2項(無効審判:答弁書提出)、第134条の2第5項(訂正拒絶理由通知に対する応答)、第134条の3(特許有効審決が取り消されて差戻しの判決があつた場合における訂正の請求)、第153条第2項(職権審理結果の通知(無効理由通知))又は第164条の2第2項(無効審決予告に対する訂正請求)の規定により指定された期間内に限り、
第134条の2第1項の訂正の請求書に添付した訂正した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる

3 訂正審判の請求人は、
第156条第1項(審理終結通知)の規定による通知がある前(同条第3項の規定による審理の再開がされた場合にあつては、その後更に同条第1項の規定による通知がある前)に限り、
訂正審判の請求書に添付した訂正した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる

 


(手続の却下)
第18条

特許庁長官は、
 ・第17条第3項の規定により手続の補正をすべきことを命じた者が同項の規定により指定した期間内にその補正をしないとき
 ・又は特許権の設定の登録を受ける者が第108条第1項(設定登録料納付)に規定する期間内に特許料を納付しないときは、
その手続を却下することができる

2 特許庁長官は、
第17条第3項の規定により第195条第3項の規定による手数料の納付をすべきことを命じた特許出願人が第17条第3項の規定により指定した期間内にその手数料の納付をしないときは、
当該特許出願を却下することができる

  • 第195条第3項:特許出願人でない者が出願審査の請求をした後において、当該特許出願の願書に添付した特許請求の範囲についてした補正により請求項の数が増加したときは、その増加した請求項について前項の規定により納付すべき出願審査の請求の手数料は、同項の規定にかかわらず、特許出願人が納付しなければならない。

 


(不適法な手続の却下)
第18条の2

特許庁長官は、
不適法な手続であつて、その補正をすることができないものについては、
その手続を却下するものとする

ただし、第38条の2第1項各号(特許出願日の認定)に該当する場合は、この限りでない。

2 前項の規定により却下しようとするときは、
手続をした者に対し、その理由を通知し、
相当の期間を指定して、弁明を記載した書面(以下「弁明書」という。)を提出する機会を与えなければならない。

 


関連情報

 


(作成2020.03.09、最終更新2020.03.11)
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