商標法3条・4条(条文解読)

商標の登録要件として、主なものに、自他商品役務の識別力を有するか(商標法第3条)、不登録事由に該当しないか(商標法第4条)、があります。

以下、これら条文を確認してみます。

なお、本頁末尾の掲載日時点の弊所把握情報です。最新かつ正確な情報は、特許庁ホームページでご確認ください。

具体的な判断基準については、特許庁の「商標審査基準」をご参照ください。

 


(商標登録の要件)
第3条

自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。

  一 その商品又は役務の普通名称普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標

  二 その商品又は役務について慣用されている商標

  三 その商品の産地販売地品質原材料効能用途形状(包装の形状を含む。…)、「生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴』、『数量』若しくは『価格
 又はその役務の提供の場所提供の用に供する物効能用途態様、「提供の方法若しくは時期その他の特徴』、『数量』若しくは『価格
 を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標

  四 ありふれた氏又は名称普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標

  五 極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標

  六 前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標

 

2 前項第三号から第五号までに該当する商標であつても、
使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては、
同項の規定にかかわらず、商標登録を受けることができる。

 


(商標登録を受けることができない商標)
第4条

次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。

 

一 「国旗菊花紋章勲章褒章又は外国の国旗」と「同一又は類似」の商標

  • 「国旗、菊花紋章、勲章、褒章又は外国の国旗」と「同一・類似」の商標
  • 「又は外国の…」とありますから、それ以前の「国旗、菊花紋章、勲章、褒章」は我が国についてのものということになります。
  • 「国旗」とは、日章旗をいいます。
  • 「菊花紋章」とは、菊花の花弁の数が16枚からなる我が国の皇室の紋章をいいます。
  • 「勲章」として、たとえば、文化勲章があります。
  • 「褒章」として、たとえば、紫綬褒章があります。

 

二 「パリ条約(…)の同盟国世界貿易機関の加盟国又は商標法条約の締約国」の
国の紋章その他の記章パリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国又は商標法条約の締約国の国旗を除く。)」であつて、
経済産業大臣が指定するもの
と「同一又は類似」の商標

  • 「パリ条約同盟国、WTO加盟国、商標法条約締約国」の「国の紋章その他の記章」であつて、経済産業大臣が指定するもの
    と「同一・類似」の商標
  • たとえば、アメリカ合衆国の記章、具体的には、ハクトウワシが翼を広げたマークが該当します。
  • 括弧書きで「パリ条約の同盟国等…の国旗を除く」とあります。既に一号で「外国の国旗」を挙げていますから、それとの重複を避けた訳です。

 

三 「国際連合その他の国際機関(ロにおいて「国際機関」という。)を表示する標章」であつて
経済産業大臣が指定するもの
と「同一又は類似」の商標(次に掲げるものを除く。

   イ 「自己の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似するもの」であつて、「その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務」について使用をするもの

   ロ 「国際機関の略称を表示する標章と同一又は類似の標章からなる商標」であつて、「その国際機関と関係があるとの誤認を生ずるおそれがない商品又は役務」について使用をするもの

  • 「国際連合その他の国際機関を表示する標章」であつて経済産業大臣が指定するものと「同一・類似」の商標
  • たとえば、国連のマーク、具体的には、世界地図にオリーブの葉があしらわれたもの、が該当します。
  • 但し、「次に掲げるものを除く」とあり、イとロの場合は、例外となります。
    イ 「自己の業務に係る商品・役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似するもの」であつて、「その商品・役務又はこれらに類似する商品・役務」について使用をするもの
    ロ 「国際機関の略称を表示する標章と同一・類似の標章からなる商標」であつて、「その国際機関と関係があるとの誤認を生ずるおそれがない商品・役務」について使用をするもの

 

四 「赤十字の標章及び名称等の使用の制限に関する法律(…)第1条の標章若しくは名称
又は「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(…)第158条第1項の特殊標章
と「同一又は類似」の商標

  • 「赤十字の標章及び名称等の使用の制限に関する法律…の標章若しくは名称」
    「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律…の特殊標章」
    と「同一・類似」の商標
  • 前者は、たとえば、赤十字の標章(マーク)や名称などです。
  • 後者は、地色がオレンジで青の正三角形を描いたマークです。
  • これらと同一・類似の商標は、商標登録を受けることができません。

 

五 「日本国又はパリ条約の同盟国世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締約国」の
「政府又は地方公共団体」の「監督用又は証明用」の「印章又は記号」』のうち
経済産業大臣が指定するもの
と「同一又は類似」の標章を有する商標であつて、
その印章又は記号が用いられている商品又は役務と同一又は類似の商品又は役務」について使用をするもの

  • 「日本国、パリ条約同盟国、WTO加盟国、商標法条約締約国」の
    『「政府・地方公共団体」の「監督用・証明用」の「印章・記号」』のうち
    経済産業大臣が指定するもの
    と「同一・類似」の標章を「有する」商標であつて、
    「その印章・記号が用いられている商品・役務と同一・類似の商品・役務」について使用をするもの

 

六 「若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関」、「公益に関する団体であつて営利を目的としないもの」又は「公益に関する事業であつて営利を目的としないもの」を表示する標章であつて
著名なもの
と「同一又は類似」の商標

  • 「国・地方公共団体・これらの機関」、「公益に関する団体であつて営利を目的としないもの」、「公益に関する事業であつて営利を目的としないもの」を表示する標章であつて
    「著名なもの」と「同一又は類似」の商標

 

七 公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標

  • 公序良俗を害するおそれがある商標

 

八 『他人の「肖像」』又は『他人の「氏名若しくは名称」若しくは「著名な雅号、芸名若しくは筆名」若しくは「これら(氏名・名称・雅号・芸名・筆名)の著名な略称」』を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。

  • 『他人の「肖像」』又は『他人の「氏名・名称」、「著名な雅号・芸名・筆名」、若しくは「これらの著名な略称」』を「含む」商標
  • 「これらの著名な略称」の「これら」についてですが、「肖像」に略称がないことを考慮して(また条文の「又は」で前後が分かれますから)、「これら」とは、氏名・名称・雅号・芸名・筆名、ということになります。
  • 他人の「肖像」、他人の「氏名・名称」・「著名な雅号・芸名・筆名」・「これら(氏名・名称・雅号・芸名・筆名)の著名な略称」を含む商標は、商標登録を受けることができません。
  • 但し、「その他人の承諾を得ているものを除く」とありますから、その他人の承諾があれば、商標登録を受けることができます。

 

九 「政府若しくは地方公共団体(以下「政府等」という。)が開設する博覧会
若しくは「政府等以外の者が開設する博覧会であつて特許庁長官の定める基準に適合するもの」
又は「外国でその政府等若しくはその許可を受けた者が開設する国際的な博覧会
と「同一又は類似」の標章を有する商標(その賞を受けた者が商標の一部としてその標章の使用をするものを除く。

  • 「政府等が開設する博覧会」
    「政府等以外の者が開設する博覧会であつて特許庁長官の定める基準に適合するもの」
    外国でその政府等若しくはその許可を受けた者が開設する国際的な博覧会」
    の賞と「同一・類似」の標章、を「有する」商標
  • 但し、括弧書きの例外があって、
    「その賞を受けた者が商標の「一部として」その標章の使用をするもの」は除かれます。

 

十 「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又は「これに類似する商標」であつて、
「その商品若しくは役務」又は「これらに類似する商品若しくは役務」について使用をするもの

  • 「他人の業務に係る商品・役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標」又は「これに類似する商標」であつて、
    「その商品・役務」又は「これらに類似する商品・役務」について使用をするもの
  • つまり、他人の周知商標と同一・類似であって、商標の使用をする商品・役務も同一・類似である場合です。

 

十一 「当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標又は「これに類似する商標であつて、
「その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務(…)又はこれらに類似する商品若しくは役務」について使用をするもの

  • 「当該商標登録出願日前の商標登録出願に係る他人の登録商標」又は「これに類似する商標」であつて、
    「その商標登録に係る指定商品・指定役務、又はこれらに類似する商品・役務」について使用をするもの
  • つまり、他人の先願登録商標と同一・類似の商標であって、
    同一・類似の商品・役務について、使用をするもの

 

十二 「他人の登録防護標章(防護標章登録を受けている標章をいう。以下同じ。)」と「同一」の商標であつて、
「その防護標章登録に係る指定商品又は指定役務」について使用をするもの

  • 「他人の登録防護標章」と「同一」の商標であつて、
    「その防護標章登録に係る指定商品・指定役務」について使用をするもの
  • つまり、他人の登録防護標章と「同一」の商標であって、
    指定商品・役務についても「同一」のもの

 

十三 削除

 

十四 「種苗法(…)第18条第1項の規定による品種登録を受けた品種の名称」と「同一又は類似」の商標であつて、
「その品種の種苗又はこれに類似する商品若しくは役務」について使用をするもの

  • 「種苗法の規定による品種登録を受けた品種の名称」と「同一・類似」の商標であつて、
    「その品種の種苗又はこれに類似する商品・役務」について使用をするもの
  • つまり、種苗法による登録品種の名称と、同一・類似の商標であって、
    その品種の種苗と同一・類似の商品・役務について使用をするもの

 

十五 他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標(第十号から前号までに掲げるものを除く。

  • 他人の業務に係る商品・役務と混同を生ずるおそれがある商標
  • 括弧書きで、「第十号から前号(十四号)までに掲げるものを除く」とあります。
    つまり、十~十四号に該当する場合には、そちらが優先適用されます。
  • 十~十四号が、一般的出所の混同の場合、十五号が、具体的出所の混同の場合、であり、
    十五号が総括条項という訳です。

 

十六 商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標

  • 商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標
  • たとえば、商品「野菜」について、商標「JPOポテト」とした場合、
    指定商品「野菜」には「じゃがいも以外の野菜(たとえばニンジン)」も含まれますが、
    その「ニンジン」に商標「JPOポテト」と付したのでは、
    品質誤認を生じるおそれがあるので、本号に該当します。
  • つまり、指定商品を「野菜」とした場合において、
    商標「JPOポテト」では、
    「じゃがいも以外の野菜」に対して品質誤認のおそれがあるとして、本号に該当します。
  • 指定商品を「野菜」ではなく、「じゃがいも」とすれば、
    商標「JPOポテト」を付しても、品質誤認は生じないことになります。
  • また、指定商品が「じゃがいも」とは無関係の商品、
    たとえば「自転車」について、商標「JPOポテト」を付した場合、
    本号には該当しません。

 

十七 「日本国のぶどう酒若しくは蒸留酒の産地のうち特許庁長官が指定するものを表示する標章」又は「世界貿易機関の加盟国のぶどう酒若しくは蒸留酒の産地を表示する標章のうち当該加盟国において当該産地以外の地域を産地とするぶどう酒若しくは蒸留酒について使用をすることが禁止されているもの」
有する商標であつて、
当該産地以外の地域を産地とするぶどう酒又は蒸留酒について使用をするもの

  • 「日本国のぶどう酒・蒸留酒の産地のうち特許庁長官指定のものを表示する標章」
    「WTO加盟国のぶどう酒・蒸留酒の産地を表示する標章のうち、当該加盟国において当該産地以外の地域を産地とするぶどう酒・蒸留酒について使用が禁止されているもの」
    を「有する」商標であつて、
    当該産地以外の地域を産地とするぶどう酒・蒸留酒について使用をするもの

 

十八 商品等(商品若しくは商品の包装又は役務をいう。…)が当然に備える特徴のうち政令で定めるもののみからなる商標

  • 商品等が当然に備える特徴のうち政令で定めるもの「のみ」からなる商標
  • 商標法第4条第1項第十八号…の政令で定める特徴は、立体的形状、色彩又は音(役務にあつては、役務の提供の用に供する物の立体的形状、色彩又は音)とする(商標法施行令1条)。
  • 商品等が「当然に備える特徴」は、原則として、第3条第1項第三号に該当する商品等の特徴に含まれるものであるため、審査において第4条第1項第十八号を適用するか否かが問題となるのは、第3条第1項第三号に該当するものであるが、実質的には第3条第2項に該当すると認められる商標についてとなります。
  • つまり、商品等が「当然に備える特徴」は、自他商品役務の識別力がないとして、原則として、3条1項三号で拒絶されます。ただ、使用に伴い識別力を獲得した場合、3条2項により登録可能性が出てくる訳ですが、それでも、この4条1項十八号をチェックするということになります。

 

十九 「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認されている商標」と「同一又は類似」の商標であつて、
不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもつて使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)

  • 「他人の業務に係る商品・役務を表示するものとして日本国内・外国における需要者の間に広く認識されている商標」と「同一・類似」の商標であつて、
    不正の目的をもつて使用をするもの
  • 括弧書きにあるように、「不正の目的」とは、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的、その他の不正の目的をいいます。
  • もう一つ括弧書きがあって、「前各号に掲げるものを除く」とあります。そのため、一号~十八号までに該当するものは除かれ、それらに該当する場合には、その号で拒絶されることになります。

 

2 「国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関」、「公益に関する団体であつて営利を目的としないもの」又は「公益に関する事業であつて営利を目的としないもの」を行つている者が
前項第六号の商標について商標登録出願をするときは、
同号の規定は、適用しない。

  • 4条1項六号は、「国・地方公共団体・これらの機関」、「公益に関する団体であつて営利を目的としないもの」又は「公益に関する事業であつて営利を目的としないもの」を表示する標章であつて著名なものと「同一又は類似」の商標は、商標登録しない、との規定でした。
  • 4条2項では、「国・地方公共団体・これらの機関」、「公益に関する団体であつて営利を目的としないもの」又は「公益に関する事業であつて営利を目的としないもの」を行つている者が、4条1項六号の商標について商標登録出願をするときは、同号の規定は、適用しない。つまり、本人なら登録を受けることができる、という訳です。

 

3 第1項第八号第十号第十五号第十七号又は第十九号に該当する商標であつても、商標登録出願の時に当該各号に該当しないものについては、これらの規定は、適用しない

  • 第1項の第八号(他人の肖像等)、第十号(周知商標)、第十五号(業務混同)、第十七号(ぶどう酒等の産地表示)、第十九号(不正目的の著名商標)に該当する商標であつても、商標登録出願の時に当該各号に該当しないものについては、これらの規定は、適用しない。
  • 普通は、査定審決時を基準に判断しますが、これら規定は、出願時でも判断します、ということです。
  • これら規定については、出願時と査定審決時の双方で該当する場合にのみ、拒絶されることになります。

 


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(作成2020.04.27、最終更新2020.06.06)
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