拒絶査定不服審判(条文解読)

はじめに

特許出願について審査を行った結果、特許出願が所定の拒絶理由に該当するとき、まずは拒絶理由を通知して、出願人に反論の機会を与えます。出願人から提出された意見書等を考慮しても拒絶理由が解消していないと判断すると、拒絶査定がなされます。

拒絶査定に不服がある場合、出願人は、拒絶査定不服審判を請求することができます。

審判請求時に特許請求の範囲等について補正(前置補正:ぜんちほせい)があったときは、まずは、審査官による再審査(前置審査:ぜんちしんさ)に付されます。そして、拒絶理由が解消したと判断すれば、特許査定がなされ、依然として拒絶理由が解消していないと判断すれば、審査結果を特許庁長官に報告(前置報告)の上、審判へ移行します。

審査では、1名の審査官により審査されましたが、審判では、3名または5名の審判官の合議体により審理されます。

審判において審理された結果、特許審決(請求認容審決)または拒絶審決(請求棄却審決)がなされます。

 

以下、これらを条文から確認してみます。

なお、本頁末尾の掲載日時点の弊所把握情報です。最新かつ正確な情報は、特許庁ホームページでご確認ください。

 


目次

 


(拒絶査定不服審判)
第121条

拒絶をすべき旨の査定を受けた者は、
その査定に不服があるときは、
その査定の謄本の送達があつた日から三月以内
拒絶査定不服審判を請求することができる

  • 拒絶査定には、通常の特許出願の拒絶査定以外に、特許権の存続期間の延長登録出願の拒絶査定も含まれる。
  • 特許権又は特許を受ける権利の共有者がその共有に係る権利について審判を請求するときは、共有者の全員が共同して請求しなければならない(第132条第3項)。
  • 特許庁長官は、遠隔又は交通不便の地にある者のため、請求により又は職権で、…第121条第1項…に規定する期間を延長することができる(第4条)。

 

2 拒絶査定不服審判を請求する者が
その責めに帰することができない理由により
前項に規定する期間内にその請求をすることができないときは、
同項の規定にかかわらず、
その理由がなくなつた日から十四日(在外者にあつては、二月)以内
その期間の経過後六月以内
その請求をすることができる。

 


(拒絶査定不服審判における特則)
第158条

審査においてした手続は、拒絶査定不服審判においても、その効力を有する。

  • 拒絶査定不服審判の審理は、審査を引き継いでなされる(続審主義)。

 


第159条

第53条(補正の却下)の規定は、拒絶査定不服審判に準用する。

この場合において、第53条第1項中
「第17条の2第1項第一号又は第三号」とあるのは「第17条の2第1項第一号、第三号又は第四号」と、
「補正が」とあるのは「補正(同項第一号又は第三号に掲げる場合にあつては、拒絶査定不服審判の請求前にしたものを除く。)が」と
読み替えるものとする。

  • 本条による読替え後の第53条第1項:
    第17条の2第1項第一号(最初の拒絶理由通知応答期間内の補正)、第三号(最後の拒絶理由通知応答期間内の補正又は第四号拒絶査定不服審判請求時の補正)に掲げる場合同項第一号(最初の拒絶理由通知応答期間内の補正)に掲げる場合にあつては、拒絶の理由の通知と併せて第50条の2(既に通知された拒絶理由と同一である旨の通知)の規定による通知をした場合に限る。において、
    願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面についてした補正(同項第一号又は第三号に掲げる場合にあつては、拒絶査定不服審判の請求前にしたものを除く。)が第17条の2第3項から第6項まで(新規事項追加禁止シフト補正禁止目的外補正禁止独立特許要件)の規定に違反しているものと
    特許をすべき旨の査定(審決)の謄本の送達前に認められたときは、
    審査官(審判官)は、決定をもつてその補正を却下しなければならない。
  • 拒絶査定不服審判でも、所定の場合、補正を却下する(準53条)。
  • 拒絶査定不服審判において補正却下の対象となるのは、「拒絶査定不服審判請求時の補正(第17条の2第1項四号)」、「拒絶査定不服審判における最後の拒絶理由通知に対する補正(第17条の2第1項第三号)」、及び「拒絶査定不服審判における拒絶理由通知と併せて50条の2(既に通知された拒絶理由と同一である旨の通知)の規定による通知がされた場合における補正(第17条の2第1項第一号)」である。
  • 審査段階でなされた補正が不適法であっても、審査段階で一旦看過された場合には、審判における却下の対象とはしない。必要な場合(新規事項が追加されている場合)、拒絶理由が通知される。

 

2 第50条(拒絶理由の通知)及び第50条の2(既に通知された拒絶理由と同一である旨の通知)の規定は、
拒絶査定不服審判において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合に準用する。

この場合において、第50条ただし書中
「第17条の2第1項第一号又は第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)」とあるのは、
「第17条の2第1項第一号(拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限るものとし、拒絶査定不服審判の請求前に補正をしたときを除く。)、第三号(拒絶査定不服審判の請求前に補正をしたときを除く。)又は第四号に掲げる場合」と読み替えるものとする。

  • 本条による読替え後の第50条:
    審査官(審判官)は、拒絶をすべき旨の査定(審決)をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。
    ただし、第17条の2第1項
     第一号(最初の拒絶理由通知応答期間内の補正)(拒絶の理由の通知と併せて次条(既に通知された拒絶理由と同一である旨の通知)の規定による通知をした場合に限るものとし、拒絶査定不服審判の請求前に補正をしたときを除く。)、
     第三号(最後の拒絶理由通知応答期間内の補正)拒絶査定不服審判の請求前に補正をしたときを除く。)
     又は第四号(拒絶査定不服審判請求時の補正)
    に掲げる場合において、第53条第1項の規定による却下の決定をするときは、この限りでない。
  • 審判において新たな拒絶理由を発見した場合、拒絶審決をする前に、拒絶理由を通知して、出願人に意見書提出の機会を与える。
  • 但し、「拒絶査定不服審判請求時の補正(第17条の2第1項四号)」、「拒絶査定不服審判における最後の拒絶理由通知に対する補正(第17条の2第1項第三号)」、及び「拒絶査定不服審判における拒絶理由通知と併せて50条の2(既に通知された拒絶理由と同一である旨の通知)の規定による通知がされた場合における補正(第17条の2第1項第一号)」が、第17条の2第3項から第6項まで(新規事項追加禁止、シフト補正禁止、目的外補正禁止、独立特許要件)の規定に違反するものである場合には、前項で準用する第53条の補正却下の規定を優先して適用する。
  • 審査段階でなされた補正が不適法な場合、審判では補正却下の対象とはせず(第50条ただし書を適用せず)、必要なら、第50条本文に基づき拒絶理由が通知される。

 

3 第51条(特許査定)、第67条の3第2項から第4項まで(期間補償のための特許権の存続期間の延長登録出願についての特許査定)及び第67条の7第2項から第4項まで(医薬品等の特許権の存続期間の延長登録出願についての特許査定)の規定は、拒絶査定不服審判の請求を理由があるとする場合における当該審判について準用する。

  • 審査官(審判官)は、特許出願(又は延長登録出願)について拒絶の理由を発見しないときは、特許(又は延長登録)をすべき旨の査定(審決)をしなければならない。

 


第160条

拒絶査定不服審判において査定を取り消すときは、さらに審査に付すべき旨の審決をすることができる

  • 審査への差戻し審決ができる。

2 前項の審決があつた場合における判断は、その事件について審査官を拘束する

3 第1項(審査への差戻し)の審決をするときは、前条第3項(特許査定(審決))の規定は、適用しない。

 


第161条

第134条第1項から第3項まで(答弁書の提出等)、第134条の2(特許無効審判における訂正の請求)、第134条の3(取消しの判決等のあった場合における訂正の請求)、第148条(参加)及び第149条(参加の申請)の規定は、拒絶査定不服審判には、適用しない。

  • 当事者対立構造の無効審判に固有の規定は、拒絶査定不服審判には適用しない。

 


第162条

特許庁長官は、
拒絶査定不服審判の請求があつた場合において、
その請求と同時にその請求に係る特許出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正があつたときは、
審査官にその請求を審査させなければならない

  • 拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求と同時に、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる(第17条の2第1項第四号)。
  • 審判請求時に特許請求の範囲等について補正(前置補正:ぜんちほせい)があったときは、審査官による再審査(前置審査:ぜんちしんさ)に付される。

 


第163条

第48条(審査官の除斥)、第53条(補正の却下)及び第54条(訴訟との関係)の規定は、前条の規定による審査に準用する。

この場合において、第53条第1項中
「第17条の2第1項第一号又は第三号」とあるのは「第17条の2第1項第一号、第三号又は第四号」と、
「補正が」とあるのは「補正(同項第一号又は第三号に掲げる場合にあつては、拒絶査定不服審判の請求前にしたものを除く。)が」と読み替えるものとする。

  • 本条による読替え後の第53条第1項:
    第17条の2第1項第一号(最初の拒絶理由通知応答期間内の補正)、第三号(最後の拒絶理由通知応答期間内の補正又は第四号拒絶査定不服審判請求時の補正)に掲げる場合同項第一号(最初の拒絶理由通知応答期間内の補正)に掲げる場合にあつては、拒絶の理由の通知と併せて第50条の2(既に通知された拒絶理由と同一である旨の通知)の規定による通知をした場合に限る。において、
    願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面についてした補正(同項第一号又は第三号に掲げる場合にあつては、拒絶査定不服審判の請求前にしたものを除く。)が第17条の2第3項から第6項まで(新規事項追加禁止シフト補正禁止目的外補正禁止独立特許要件)の規定に違反しているものと
    特許をすべき旨の査定の謄本の送達前に認められたときは、
    審査官は、決定をもつてその補正を却下しなければならない。
  • 前置審査でも、所定の場合、補正を却下する(準53条)。
  • 前置審査において補正却下の対象となるのは、「拒絶査定不服審判請求時の補正(第17条の2第1項四号)」、「前置審査における最後の拒絶理由通知に対する補正(第17条の2第1項第三号)」、及び「前置審査における拒絶理由通知と併せて50条の2(既に通知された拒絶理由と同一である旨の通知)の規定による通知がされた場合における補正(第17条の2第1項第一号)」である。
  • 但し、次条(第164条)第2項の規定により、審査官は、特許査定をする場合を除き、補正却下の決定をしてはならない。
  • 審判請求前の審査段階でなされた補正が不適法であっても、審査段階で一旦看過された場合には、前置審査における却下の対象とはしない。必要な場合(新規事項が追加されている場合)、拒絶理由が通知される。

 

2 第50条(拒絶理由の通知)及び第50条の2(既に通知された拒絶理由と同一である旨の通知)の規定は、
前条(前置審査)の規定による審査において
審判の請求に係る査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合に準用する。

この場合において、第50条ただし書中
「第17条の2第1項第一号又は第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)」とあるのは、
「第17条の2第1項第一号(拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限るものとし、拒絶査定不服審判の請求前に補正をしたときを除く。)、第三号(拒絶査定不服審判の請求前に補正をしたときを除く。)又は第四号に掲げる場合」と
読み替えるものとする。

  • 本条による読替え後の第50条:
    審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。
    ただし、第17条の2第1項
     第一号(最初の拒絶理由通知応答期間内の補正)(拒絶の理由の通知と併せて次条(既に通知された拒絶理由と同一である旨の通知)の規定による通知をした場合に限るものとし、拒絶査定不服審判の請求前に補正をしたときを除く。)、
     第三号(最後の拒絶理由通知応答期間内の補正)拒絶査定不服審判の請求前に補正をしたときを除く。)
     又は第四号(拒絶査定不服審判請求時の補正)
    に掲げる場合において、第53条第1項の規定による却下の決定をするときは、この限りでない。
  • 前置審査において新たな拒絶理由を発見した場合、拒絶理由を通知して、出願人に意見書提出の機会を与える。
  • 但し、「拒絶査定不服審判請求時の補正(第17条の2第1項四号)」、「前置審査における最後の拒絶理由通知に対する補正(第17条の2第1項第三号)」、及び「前置審査における拒絶理由通知と併せて50条の2(既に通知された拒絶理由と同一である旨の通知)の規定による通知がされた場合における補正(第17条の2第1項第一号)」が、第17条の2第3項から第6項まで(新規事項追加禁止、シフト補正禁止、目的外補正禁止、独立特許要件)の規定に違反するものである場合には、前項で準用する第53条の補正却下の規定を優先して適用する。
  • 審判請求前の審査段階でなされた補正が不適法な場合、前置審査では補正却下の対象とはせず(第50条ただし書を適用せず)、必要なら、第50条本文に基づき拒絶理由が通知される。
  • いずれにしても、次条(第164条)第2項の規定により、審査官は、特許査定をする場合を除き、補正却下の決定をしてはならない。

 

3 第51条(特許査定)及び第52条(査定の方式)の規定は、前条(前置審査)の規定による審査において審判の請求を理由があるとする場合に準用する。

  • 審査官は、特許出願について拒絶の理由を発見しないときは、特許をすべき旨の査定をしなければならない。

 


第164条

審査官は、第162条(前置審査)の規定による審査において特許をすべき旨の査定をするときは、審判の請求に係る拒絶をすべき旨の査定を取り消さなければならない。

 

2 審査官は、前項に規定する場合(前置審査で特許査定する場合)を除き、前条(第163条)第1項において準用する第53条第1項(補正却下)の規定による却下の決定をしてはならない。

 

3 審査官は、第1項に規定する場合(前置審査で特許査定する場合)を除き、当該審判の請求について査定をすることなくその審査の結果を特許庁長官に報告しなければならない。

  • 前置審査において、依然として拒絶理由が解消されていないと判断された場合、「前置報告」の上、審判へ移行する。

 


関連情報

 


(作成2020.04.29、最終更新2021.08.28)
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