明細書・特許請求の範囲・図面の補正(まとめ)

特許出願の明細書、特許請求の範囲又は図面の補正についてのまとめです。

補正の時期、要件、効果について、確認してみます。

なお、本頁末尾の掲載日時点の弊所把握情報です。
最新かつ正確な情報、さらに詳細な情報は、特許庁ホームページでご確認ください。

参考文献:特許庁編『特許・実用新案審査基準』、『特許・実用新案 審査ハンドブック』、『工業所有権法逐条解説 第14版,第20版』

 


目次

  1. 特許出願(明細書・特許請求の範囲・図面)の補正の時期・要件・効果(まとめの表)
  2. 一回目の審査結果が出願人に送られるまでの補正
  3. 最初の拒絶理由通知の指定期間内の補正
  4. 最後の拒絶理由通知の指定期間内、拒絶査定不服審判の請求と同時の補正
  5. 新規事項追加とは?
  6. 発明の特別な技術的特徴を変更する補正とは?(シフト補正とは?)
  7. 請求項の削除とは?
  8. 限定的減縮とは?
  9. 誤記の訂正とは?
  10. 明瞭でない記載の釈明とは?
  11. 独立特許要件とは?
  12. 関連情報

 


特許出願(明細書・特許請求の範囲・図面)の補正の時期・要件・効果

下記表のプリントアウト用pdfファイル「特許出願(明細書・特許請求の範囲・図面)の補正の時期・要件・効果
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特許出願(明細書・特許請求の範囲・図面)の補正の時期・要件・効果

 

関連条文へのリンク(条文解読)

 


一回目の審査結果が出願人に送られるまで

この場合、下記要件を満たす必要があり、これに違反すると、拒絶理由となります。

  • 新規事項追加禁止

 


最初の拒絶理由通知の指定期間内(ただし、第50条の2(既に通知された拒絶理由と同一である旨の通知)の規定による通知を伴う拒絶理由通知の指定期間内にする場合を除く。)
◆拒絶理由通知を受けた後の第48条の7(先行技術文献情報開示要件違反通知)の規定による通知の指定期間内

これらの場合、下記各要件を満たす必要があり、これに違反すると、拒絶理由となります。

  • 新規事項追加禁止
  • 発明の特別な技術的特徴を変更する補正(シフト補正)禁止

なお、最初の拒絶理由とは、「原則として、出願人にはじめて指摘する拒絶理由を通知するものをいい、第一回目の拒絶理由通知はもとより、第二回目の拒絶理由であっても、最初の拒絶理由に対して補正がなされなかった請求項等に対して、はじめて通知する拒絶理由を含むものは、最初の拒絶理由である。」(特許庁編『工業所有権法逐条解説 第20版』第17条の2)

 


最後の拒絶理由通知の指定期間内
◆第50条の2(既に通知された拒絶理由と同一である旨の通知)の規定による通知を伴う拒絶理由通知の指定期間内
拒絶査定不服審判の請求と同時

これらの場合、下記各要件を満たす必要があり、これに違反すると、補正却下の対象となります。

  • 新規事項追加禁止
  • 発明の特別な技術的特徴を変更する補正(シフト補正)禁止
  • 特許請求の範囲についての目的外補正禁止
    請求項の削除
    特許請求の範囲の限定的減縮
    誤記の訂正
    明瞭でない記載の釈明
  • 独立特許要件(上記限定的減縮を目的とする補正については、補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が独立して特許を受けることができるものでなければならない)

なお、最後の拒絶理由とは、「原則として、最初の拒絶理由に対する補正により通知することが必要となった拒絶理由のみを通知するものである。」(特許庁編『工業所有権法逐条解説 第20版』第17条の2)

 


新規事項追加とは?

新規事項追加とは、当初明細書等に記載した事項の範囲を超えることをいいます。具体的には、当初明細書等に明示的に記載されておらず、それら記載から自明でもない事項を、補正により追加しようとすることをいいます。

なお、当初明細書等とは、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面をいいます。

  • 補正された事項が「当初明細書等に明示的に記載された事項」である場合には、その補正は、新たな技術的事項を導入するものではないから許されます。
  • 補正された事項が「当初明細書等の記載から自明な事項」である場合には、当初明細書等に明示的な記載がなくても、その補正は、新たな技術的事項を導入するものではないから許されます。なお、補正された事項に係る技術自体が周知技術又は慣用技術であるということだけでは、「当初明細書等の記載から自明な事項」とはいえません。
  • 当初明細書等において、特定の弾性支持体を開示することなく、弾性支持体を備えた装置が記載されていた場合において、「弾性支持体としてつるまきバネを使用することができる」という情報を追加する補正は、一般に、許されません。
  • 当初明細書等には、弾性支持体を備えた装置が記載されているのみで、特定の弾性支持体について開示されていなくても、当業者であれば、出願当初の図面の記載及び出願時の技術常識からみて、「弾性支持体」は「つるまきバネ」を意味していることが自明であると理解するという場合は、「弾性支持体」を「つるまきバネ」にする補正が許されます。

 


発明の特別な技術的特徴を変更する補正とは?(シフト補正とは?)

発明の特別な技術的特徴を変更する補正とは、以下の(i)及び(ii)の発明の間で発明の単一性(一出願に含めることができる発明の範囲)の要件を満たさないものとなる補正をいいます。

  • (i) 補正前の特許請求の範囲に記載されていた発明のうち、拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについての判断が示された全ての発明
  • (ii) 補正後の特許請求の範囲に記載される事項により特定される全ての発明

つまり、補正前に受けた拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについて判断が示された発明を、それと技術的特徴の異なる別発明に変更する補正はできません

端的にいえば、拒絶理由が通知された後は、たとえ明細書又は図面に記載されていても、特許請求の範囲に記載の審査対象の発明の内容を大きく変更することはできません。審査のやり直しが生じるからです。

 


請求項の削除とは?

請求項の削除には、(i)請求項を削除する補正、(ii)請求項を削除する補正に伴って必然的に生じる他の請求項の形式的な補正が含まれます。

 


限定的減縮とは?

特許請求の範囲の限定的減縮とは、特許請求の範囲の減縮を行う補正のうち、請求項に記載した発明特定事項を限定するものであって、補正前発明と補正後発明の「産業上の利用分野」及び「解決しようとする課題」が同一であるものをいいます。典型的には、請求項に上位概念で記載されている発明を、より下位概念で記載するもの(内的付加)をいいます。

  • 請求項中の「体温を電気信号に変換するセンサ」を「体温を電気信号に変換する熱電対からなるセンサ」とする補正は、特許請求の範囲の限定的減縮に該当します。補正前の請求項に記載された発明の発明特定事項の一部である「電子体温計において体温を電気信号に変換するセンサ」を概念的に下位のものにするからです。また、補正によって、発明の解決しようとする課題や産業上の利用分野は変更されないからです。
  • 請求項中の「圧縮機を所定時間断続運転させる制御手段」を「圧縮機を所定時間断続運転させるとともに警報装置を作動させる制御手段」とする補正は、特許請求の範囲の限定的減縮に該当しません。この補正は、制御手段に、警報装置を作動させるという作用(働きや役割)を付加することにより特許請求の範囲を減縮するものですが、「警報装置を作動させる」という作用(働きや役割)は、「圧縮機を所定時間断続運転させる」という作用とは別個の作用ですから、「警報装置を作動させる」という作用は、「圧縮機を所定時間断続運転させる」という作用を概念的に下位にしたものではありません。したがって、この補正は、補正前の発明特定事項を限定するものではありません。
  • 「化合物Aと化合物Bを反応させる化合物Cの製造方法」を「化合物Aと化合物Bを80℃以上で反応させる化合物Cの製造方法」とする補正は、特許請求の範囲の限定的減縮に該当しません。この補正は、補正前の請求項に記載された発明の発明特定事項のいずれの事項の限定でもありません。なお、温度を特定することは、温度条件について言及せずに単に「化合物Aと化合物Bを反応させる」とした発明特定事項を概念的に下位のものにしたとはいえません。また、補正前の発明の課題が「化合物Cの新規な製造方法を提供する」ことであるのに対し、補正後の課題に「化合物Cの収率を高める」ことを追加する場合、この補正後の課題は、補正前の課題を概念的に下位にしたものでも、同種のものでもないなど、技術的に密接に関連しているとはいえないから、補正前後の発明の解決しようとする課題も同一ではありません。

 


誤記の訂正とは?

誤記の訂正とは、本来その意であることが明細書、特許請求の範囲又は図面の記載などから明らかな字句・語句の誤りを、その意味内容の字句・語句に正すことをいいます。

 


明瞭でない記載の釈明とは?

明瞭でない記載の釈明とは、文理上、意味の明らかでない記載など、不備を生じている記載について、その不明瞭さを正して、その記載本来の意味内容を明らかにすることをいいます。

具体的には、特許請求の範囲について、(i) 請求項の記載の意味が、文理上、不明瞭であるか、(ii) 請求項の記載が他の記載との関係において不合理を生じているか、(iii) 請求項の記載は明瞭であるが請求項に記載した発明が技術的に正確に特定されず不明瞭である場合に、その不明瞭さを正して、その記載本来の意味内容を明らかにすることをいいます。

なお、最後の拒絶理由通知に対する応答時や、拒絶査定不服審判の請求時などにおいて、明瞭でない記載の釈明を目的とする補正は、拒絶理由通知で指摘された拒絶の理由に示す事項についてするものに限られます

 


独立特許要件とは?

特許請求の範囲の限定的減縮を目的とする補正について課される独立特許要件とは、補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない、との要件をいいます。

  • 独立特許要件が判断されるのは、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とする補正がされた請求項のみです。限定的減縮を目的とせず「誤記の訂正」又は「明瞭でない記載の釈明」のみを目的とする補正がされた請求項及び補正がされていない請求項については、独立特許要件の判断の対象とはなりません。
  • 補正後発明が独立して特許を受けることができるか否かは、以下の規定に基づき判断されます。
    (i) 発明該当性及び産業上の利用可能性(第29条第1項柱書)
    (ii) 新規性(第29条第1項)
    (iii) 進歩性(第29条第2項)
    (iv) 拡大先願(第29条の2)
    (v) 不特許事由(第32条)
    (vi) 記載要件(第36条第4項第一号及び第6項第一号から第三号まで)
    (vii) 先願(第39条第1項から第4項まで)

 


関連情報

 


(作成2020.05.04、最終更新2020.05.04)
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