特許明細書の書き方(実践編)

はじめに

 


明細書の書き方

  • 明細書では、当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)が、特許を受けようとする発明を実施することができる程度に、明確かつ十分に、発明を開示します。具体的には、発明が解決しようとする課題、その解決手段など、当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載します。
  • 「【発明の名称】」など、予め定められた欄名の前後にすみ付き括弧【】を用いる場合を除き、「【」、「】」、「▲」及び「▼」は用いることはできません。
  • 明細書には、原則として、すみ付き括弧【】を付した4桁のアラビア数字で【0001】、【0002】のように連続した段落番号を付けます。段落番号は、所定の見出しの次に付け、見出しの前には付けません。原則として段落ごとに段落番号を付けますが、必ずしも段落ごとに厳密に段落番号が必要な訳ではありません。ある段落番号の文章に、段落(改行)があっても、出願可能です。出願後、段落番号を単位として、書類の補正が可能です。
  • 用語は、辞書や用語辞典などに掲載の普通の意味で使用し、出願書類全体を通じて統一して使用します。通常の意味ではなく、特定の意味で使用する場合、その意味を明細書において定義して使用します。
  • 企業の商品名等である登録商標は、原則として使用できません。やむを得ず使用する場合には、登録商標である旨を記載します。特許庁資料として、「明細書への登録商標の記載について」、特許・実用新案審査ハンドブック「2003 明細書、特許請求の範囲又は図面に商標名が記載されている場合の取扱い」(pdf)があります。
  • 以下、特許出願の明細書について、具体的な書き方を示します。明細書本文を赤字で示した後、それに対する解説を入れております。

 

【書類名】明細書
【発明の名称】鉛筆

  • 発明の名称として、特許を受けようとする発明の内容を簡明に表示します。
  • 通常、特許請求の範囲の各請求項の末尾と対応します。
  • 発明のカテゴリー(物の発明か、方法の発明か、物を生産する方法の発明か)を明確にします。特許庁審査基準上、特許請求の範囲の明確性要件に関し、請求項末尾の「…方式」や「…システム」は、「物」のカテゴリーとして扱われ、「…の使用」や「…の利用」は、「使用方法」として、「方法」のカテゴリーとして扱われます。発明のカテゴリーは、権利範囲に影響を与えます(特許請求の範囲と発明の実施)。
  • 「山田式」や「最新型」などの修飾語を付けてはいけません。
  • 発明の名称については、半角を用いてはいけません。
  • ある程度具体的な名称とします。たとえば、「日用品」とするよりは、通常、その内の特定の物でしょうから、その旨(たとえば「文房具」と)明らかにします。また、種々の文房具全般についてではなく、筆記具だけならば「筆記具」となりますし、その内、さらに鉛筆だけならば「鉛筆」とします。同様に、「家電製品」ではなく、掃除機なら「(電気)掃除機」、さらに自走式なら所望により「自走式掃除機」などにします。
  • 発明の名称の例を挙げると、「鉛筆」「多機能ペン」「**装置」「**方法」「**の製造装置」「**の製造方法」「**の運転方法」「**の制御方法」「**構造」「**具」などがあります。また、ソフトウェア関連発明・ビジネスモデル特許の特許請求の範囲に記載のとおり、「**を実行させる(**として機能させる)ためのプログラム」、そのような「プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」としても権利請求可能ですが、その場合、たとえば「**プログラム」「**プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」とできます。さらに、「**システム」「**サーバ」「**端末」などもあります。
  • 特許請求の範囲において、複数の物や方法を記載した場合、通常、それらすべてを発明の名称とします。たとえば、「インクジェットプリンタとそのインクカートリッジ」、「インクカートリッジとそれを備えたプリンタ」、「インクジェットプリンタおよびその制御方法」、「インクジェットカートリッジ、その製造装置および製造方法」の他、「商品売上予測装置、商品売上予測プログラム、このプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」などです。

 

【技術分野】
 【0001】
 本発明は、鉛筆に関するものである。

  • 特許を受けようとする発明の属する技術の分野を記載します。
  • 本発明は、・・・に関するものである。」または「本発明は、・・・に関する。」としてまとめます。この内、「・・・」の箇所には、(本願発明の内容を知らずに)従来技術(これまでの知識)だけで分かる技術分野を記載します。つまり、今回発明した内容を知らない人が明細書を読み始める際、どのような技術分野の発明なのかが分かるように、今回の発明のネタばらしではなく、従来技術から分かる程度の用語で説明します。
  • たとえば、鉛筆の断面を六角形にしたことが発明なら、その発明内容すべてを書くのではなく(「断面六角形鉛筆」とはせずに)、「本発明は、鉛筆に関するものである。」とだけ書きます。一方、今回、はじめて鉛筆というものを発明したのなら、(鉛筆という概念がまだないので)たとえば「本発明は、筆記具に関するものである。」と書きます。

 

【背景技術】
 【0002】
 従来、下記特許文献1に開示されるように、・・・構造の鉛筆が知られている。この鉛筆は、・・・するものである。そのため、・・・のような不都合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
 【0003】
  【特許文献1】特開2009-000000号公報

  • 本願発明に至るまでの背景技術(従来技術)を説明します。
  • 特許を受けようとする発明に関連する先行文献のうち、特許を受けようとする者が特許出願時に知っているものがあるときは、その刊行物の名称などを明らかにしなければなりません。典型的には、出願人が既に知っている特許や実用新案の公報を挙げて、背景技術を説明します。当該公報で使用されている図面中の符号を括弧書きして、説明する場合もあります。必要なら、その符号が(本願に添付の図面の符号ではなく)当該公報のものである旨の補足を入れます。
  • たとえば、「従来、下記特許文献1に開示されるように、・・・が知られている。この従来技術は、・・・のようなもので、・・・のような不都合がある。」というように、先行技術文献を挙げて、従来技術とその問題点を指摘します。
  • 特許または実用新案に関する公報の名称を記載するときは、公報番号を記載します。たとえば、「【特許文献1】特開〇〇〇〇-〇〇〇〇〇〇号公報」と記載します。
  • 公報番号のあとに、括弧書きで、本願発明と特に関連した記載のある段落番号や図番を記載する場合もあります。たとえば、「【特許文献1】特開〇〇〇〇-〇〇〇〇〇〇号公報(段落番号0010~0018、図1)」と記載します。
  • 学術論文の名称その他情報の所在を記載するときは、著者、書名、発行年月日等の必要な事項を記載します。たとえば、「【非特許文献1】〇〇〇〇著、「△△△△」××出版、〇〇〇〇年〇月〇日発行、p.〇〇~〇〇」と記載します。
  • 特許文献や非特許文献が複数ある場合、次のように記載します。
      【先行技術文献】
      【特許文献】
       【0005】
        【特許文献1】特開2001―○○○○○○号公報
        【特許文献2】特公昭○○-○○○○○○号公報
      【非特許文献】
       【0006】
        【非特許文献1】〇〇〇〇著、「△△△△」××出版、〇〇〇〇年〇月〇日発行、p.〇〇~〇〇
        【非特許文献2】〇〇〇〇著、「△△△△」××出版、〇〇〇〇年〇月〇日発行、p.〇〇~〇〇
  • 記載すべき先行技術文献がない場合、【先行技術文献】の欄(上の赤字の例では【先行技術文献】からの4行)は不要です。記載すべき先行技術文献情報がない場合、その旨及びその理由を記載することが望ましいとされます。
  • 本願の出願時に未公開であるが、先になされた出願に記載された発明が本願発明と関連する場合には、先願の出願番号をなるべく記載します。
  • 先行技術文献の記載方法についての詳細は、明細書への先行特許文献等の記載(先行技術文献情報開示要件)をご覧ください。

 

【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
 【0004】
 本発明が解決しようとする課題は、・・・できる鉛筆を提供することにある。

  • たとえば、「本発明が解決しようとする課題は、・・・(を提供)することにある。」としてまとめます。
  • 発明が解決しようとする課題は、原則として、メインクレーム(請求項1またはその他の独立項)が解決しようとする課題です。従属項においてはじめて解決できる課題は、記載しないか、その旨分かるように記載します。たとえば、メインクレームの課題を記載した後、「また(好ましくはさらに)・・・することを課題とする。」というように、メインの課題とは分けて記載します。実施例においてはじめて解決できる課題は、ここには記載しません。課題を複数記載する場合、メインクレームにおいて、その両者を解決すべきなのか、一方でも解決できればよいのか、記載振りに注意します。独立項とは何か、従属項とは何か、については、独立項と従属項をご覧ください。

 

【課題を解決するための手段】
 【0005】
 本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、・・・することを特徴とする鉛筆である。

  • 課題解決手段は、原則として、メインクレームの内容となります。典型的には、請求項1の内容が記載されますが、必ずしも一文で記載される必要はなく、請求項1の内容を複数の文に切って記載することもできます。
  • メインクレームの構成要件(発明特定事項)よりも多くの構成要件を記載するのは避けます。課題解決にメインクレーム記載の構成要件以外が必要であるかに読めないように注意します。但し、必要なら、「(好ましくは)さらに・・・を備えてもよい。」旨の記載をして、従属項対応の課題解決手段を記載しても構いません。
  • 所望により、特許請求の範囲の各請求項について、その内容(発明特定事項)と、それに基づく作用効果を記載しても構いません。請求項ごとに作用効果を記載することで、従属項作成の意図が明らかとなります。また、従属項の特許性のアピールにもつながります。もちろん、作用効果は、次の【発明の効果】の欄に記載することもできます。いずれにしても、あくまでも当該請求項に係る発明で達成可能な作用効果のみを記載し、実施例レベルで達成可能な作用効果は、【発明を実施するための形態】の欄に記載します。

 

【発明の効果】
 【0006】
 本発明の鉛筆によれば、・・・することができる。

  • 【発明が解決しようとする課題】と対応した内容となります。つまり、原則として、メインクレーム(請求項1またはその他の独立項)により生ずる効果です。従属項においてはじめて奏する効果は、記載しないか、その旨分かるように記載します。たとえば、メインクレームによる効果を記載した後、「また(好ましくはさらに)・・・を備える場合、・・・の効果がある。」というように、メインの効果とは分けて記載します。実施例においてはじめて奏する効果は、ここには記載しません。効果を複数記載する場合、メインクレームにおいて、その両者を奏するのか、一方だけ奏するのか(残りの効果は従属項で奏するのか)、記載振りに注意します。

 

【図面の簡単な説明】
 【0007】
  【図1】本発明の一実施例の鉛筆を示す斜視図である。
  【図2】図1におけるII-II断面図である。

  • 図面の種類として、「六面図とは」に記載のとおり、正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図、底面図があります。また、これ以外にも、様々なものがあり、たとえば、断面図(縦断面図、横断面図、X-X断面図など)、端面図、斜視図、分解斜視図、部品図、一部拡大図、グラフ、フローチャート、タイムチャート、ブロック図、回路図などがあります。なお、表は、明細書中にも加入できますが、図面として入れることもできます。
  • ビジネスモデル特許の場合、たとえば、システム構成図、機能ブロック図、サーバ等のハードウェア構成図、画面遷移図、フローチャート、データベースへのデータ格納構造図、画面例を示す図などが用いられます。
  • 従来技術の図は、通常、わざわざ作成する必要はありませんが、本願発明と対比して説明したい場合には、添付します。従来技術の図を付ける場合、その図は、後ろに配置します。たとえば、全体として3図ある場合において、図1および図2が本願発明の説明図で、図3が従来技術の説明図となります。
  • なお、図面において、所望により、仮想線で物の動作(たとえば開き戸の開閉範囲)を示したり、点線で見えない箇所を示したり、破断線で内部を示したりします。

 

【発明を実施するための形態】
 【0008】
 図1は、本発明の一実施例の鉛筆を示す斜視図である。
 【0009】
 この図に示すように、本実施例の鉛筆は、・・・
 ~構成・作用効果~
 ~具体例・変形例~

  • 特許を受けようとする発明を当業者が実施することができるように、発明をどのように実施するかを示す「実施形態」の他、必要に応じて、これを具体的に示した「実施例」を記載します。実施形態として、特許出願人が最良と思うものを少なくとも一つ掲げて記載します。
  • 明細書中に化学式を記載しようとするときは、化学式の記載の前に「【化1】」、「【化2】」のように記載します。実際の記載例は、後述の「参考資料1(明細書中への化学式・数式・表の加入)」の「(1)化学式の加入例」をご覧ください。
  • 明細書中に数式を記載しようとするときは、数式の記載の前に「【数1】」、「【数2】」のように記載します。実際の記載例は、後述の「参考資料1(明細書中への化学式・数式・表の加入)」の「(2)数式の加入例」をご覧ください。
  • 明細書中に表を記載しようとするときは、表の記載の前に「【表1】」、「【表2】」のように記載します。実際の記載例は、後述の「参考資料1(明細書中への化学式・数式・表の加入)」の「(3)表の加入例」をご覧ください。
  • 上記数式などを加入するにあたって、すみ付き括弧による「【数1】」等を用いた場合、必ず画像ファイル(gif、jpeg)ファイルを挿入します。仮に、文字を打ち込んで数式等を表現する場合、すみ付き括弧を用いないで、通常の文章と同様に記載することになります。その際、後述の「参考資料1(明細書中への化学式・数式・表の加入)」の「(4)画像ファイルを用いない例」のように記載することもできます。
  • 後述の「参考資料2(実施形態と実施例)」から明らかなとおり、機械系の特許出願では、「実施形態」と「実施例」とにさほどの差はありません。そのため、ここでは「実施例」の文言を用いていますが、これに代えて「実施形態」などの文言を用いても構いません。特許法施行規則の明細書の様式の備考では、「特許を受けようとする発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができるように、発明をどのように実施するかを示す発明の実施の形態を記載し、必要があるときは、これを具体的に示した実施例を記載する。」とされており、厳密には、実施形態をさらに具体化したものが実施例となります。
  • たとえば、温度などの条件を変えたものを比較して説明する際、本願発明に含まれるものが「実施例」となります。そして、本願発明の実施例を、従来技術などの「比較例」と比較して、作用効果などを確認した試験結果を記載する場合があります。このような試験結果を開示する場合、その箇所で「実施例」の文言を用い、それ以前の全体的説明には「実施形態」の文言を用いる場合もあります。
  • 【発明を実施するための形態】の欄では、「本発明では・・・」というよりも、「本実施例では・・・」とするのが無難です。つまり、本願発明(請求項に係る発明)全般についての説明をするよりも、あくまでも一実施例における説明(例示)として止めた方がよいと思います。実施例の記載が本願発明を限定する記載振りとなるのを避けるということです。
  • 「実施例」の文言を利用する際、たとえば、「図*は、本発明の一実施例の**装置を示す図である」とか、「本実施例では…の構成である」のような表現が用いられます。一実施例を説明した後、「別の実施例」または「変形例」として、変更箇所の説明をすることもあります。実施例が複数の場合、「実施例1」「実施例2」…とする方が、施行規則の様式に沿った表現となります(特許明細書の書き方(法令・様式編))。実際の記載例は、後述の「参考資料3(実施例が複数の場合)」をご覧ください。
  • 【発明を実施するための形態】には、実施形態(実施例)として、特許請求の範囲の各請求項と同レベルの発明はもちろん、それよりもさらに具体化した発明(詳しい内容)を記載します。逆にいえば、特許請求の範囲よりも具体化した下位概念の発明だけでなく、特許請求の範囲レベルの上位概念の発明の開示も意図した説明を心掛けます。一般的には、上位概念から下位概念へと、徐々に具体化していく形で記載します。たとえば、請求項に「弾性材」の文言を利用した場合、明細書でも「弾性材」を登場させた後、その弾性材が、本実施例ではたとえば「板バネ」である旨説明し、必要に応じて「コイルバネ」や「ゴム材」などでもよい旨の説明を記載します。同様に、特許請求の範囲に出現の文言(部品や材質等)について、その具体例を、可能であれば複数開示します。
  • ある装置が、どのような領域(アセンブリ)から構成されるのか、そして、各領域がどのような部品から構成されるのか、各部品がどのような構成なのか、各領域や各部品同士の関係(どこに何がどのように設けられるのか、どのように組み立てられ機能するのかなど)を記載します。
  • たとえば、次のように、規則的に段階的に記載していくと、きれいにまとまります。すなわち、「【0010】装置は、AとBとCとを備える。【0011】Aは、a1とa2とを備える。a1は…であり、a2は…である。【0012】Bは、b1とb2とを備える。b1は…であり、b2は…である。【0013】Cは、・・・」という具合です。
  • 方法の発明については、望ましくはフローチャートやタイムチャートなどに基づき、料理レシピのように、処理の順序を時系列に説明します。必須でない工程、追加できる工程、代替できる工程、順序入替え可能な工程などがあれば、それも説明します。
  • 典型的な態様、好ましい態様、さらに好ましい態様として、どのような構成で、どのような作用効果を奏するのか、を記載します。たとえば、装置やその部品等について、その大きさ、形状、材質、加工方法(加工条件)、製造方法、使用方法、運転方法、用途などを記載します。
  • 「本実施例では・・・であるが、好ましくは(…の理由で)・・・であり、さらに好ましくは(…の理由で)・・・である。」というように、必要に応じて、理由と共に段階的に記載します。将来、特許請求の範囲を減縮(補正)して、従来技術との差異を主張するのに利用できるかもしれません。
  • 特許を受けようとする発明を具体的に説明するのですが、その発明が審査において従来技術と同一類似である(新規性や進歩性がない)とされた場合に備えて、従来技術との相違点を主張できるように、特許請求の範囲の減縮候補(補正ネタ)を入れておきます。つまり、特許請求の範囲の各請求項に係る発明について、審査において特許性がないとされた場合に備え、その反論材料(権利範囲の減縮候補)を入れておきます。特許請求の範囲を将来減縮する際に、使いやすい用語か(たとえばいきなり相当下位概念にならないか)を考慮して記載します。そのために、発明を、段階的に具体化していきます(「好ましい態様」から「さらに好ましい態様」へ)。
  • 実施例の記載では、図面に付した符号(部品番号)を用いて説明します。たとえば、鉛筆の発明について、「鉛筆1」「軸材2」「芯3」などの文言を用いて説明します。もちろん、図面中には、特許出願書類の例の図1に示すように、鉛筆、軸材、芯に、それぞれ1、2、3の符号をとります。なお、「鉛筆(1)」のように、括弧書きして符号を取っても構いませんが、多くの出願では括弧なしです。但し、特許請求の範囲において符号を入れる場合、特許法施行規則の様式の定めから、括弧書きが必要です(特許請求の範囲の書き方(実践編))。フローチャートの場合、「ステップS1」(または「ステップST1」)のような符号を用います。
  • 図面において、当然ながら、同一の箇所(部品)には、すべての図に共通して、同一符号を付します。変形例や別実施例でも、同等箇所には、同一符号を付すのが一般的です。変形例や別実施例でも、同等の箇所には同一の符号を付すことで、明細書における説明を省略または簡略することができます。
  • 符号は、1からの連番を取るのが簡易ですが、特に決まりはありません。必ずしも、1からスタートする必要はなく、また連番とする必要もありません。たとえば、複数の領域(部品)から構成される装置において、第一領域を構成する部品には「101」「102」…、第二領域を構成する部品には「201」「202」…というような、一定の法則で付けても構いません。また、ある部品に、たとえば符号「13」を付した場合において、その部品中のいくつかの場所を示すために、符号「13a」「13b」などの添え字を使用することもできます。
  • 実施例1、実施例2、…と、複数の実施例(実施形態)を開示する場合、実施例2において、実施例1と共通する箇所は説明を省略できます。たとえば、実施例2の冒頭で、「本実施例2の**装置も、基本的には前記実施例1と同様である。そこで、以下においては、両者の異なる点を中心に説明し、同様の箇所については説明を省略する。また、前記実施例1と対応する箇所には、同一の符号を付して説明する。」のような記載を入れます。両実施例で多少でも異なる箇所、同一か(対応するか)どうか疑わしい箇所は、念のため再度説明するのが無難です。
  • 実施例の説明では、部品名を見ただけでその部品がどのような部品か分かる方が読みやすくなります。たとえば、運転停止用のスイッチなら、単に「スイッチ」や「第一スイッチ」とするよりも、「運転停止スイッチ」などとした方が読みやすくなります(特に複数のスイッチが登場する場合)。但し、特許請求の範囲で登場する(あるいは補正により将来登場し得る)文言については、特許請求の範囲と明細書とで文言を揃えるか、括弧書きするなどして対応関係を明らかにしておきます。
  • 【発明を実施するための形態】の冒頭で、【図面の簡単な説明】の欄をそのまま繰り返すように、「図1は・・・図であり、図2は・・・図であり、図3は・・図であり、・・・」と、すべての図面について説明するのは、できれば避けます。「図1は・・・図である。この図に示すように、・・・(図1を用いた説明)・・・。図2は・・・図である。この図に示すように、・・・(図2を用いた説明)・・・。」というように、実際に説明で用いる直前に、その用いる図面を説明した方が、どの図を用いた説明なのかが分かり、読みやすくなるように思います。もちろん、常に一図ごとに説明していける訳ではないので、必要に応じて、「図*に示すように」「図*~図*から分かるように」のような記載を入れて、発明を説明していきます。冒頭で複数の図を一気に説明した場合には、あとは必要に応じて、「図*に示すように」のような記載で、使用図面を明示しつつ説明いくこともできます。
  • 符号を主語として、「1は・・・する鉛筆であり、2は・・・する軸材であり、3は・・・する芯である。」とするよりも、「鉛筆1は、・・・である。軸材2は、・・・である。芯3は、・・・である。」とした方が、部品名と符号との対応関係が、一見して分かります。但し、例外的に、「符号*は、・・・である。」と付記したい場合はあるかもしれません。
  • 実施例について、構成の説明の他、作用効果として、使い方、動作内容、制御方法、運転内容、メリットなどを記載します。
  • 一実施例について説明した後、必要なら、変形例、別実施例なども説明します。実施例の構成に、**を付加してもよい(追加)、**はなくてもよい(削除)、**に代えて***してもよい(代替)など、変更可能な点があれば記載します。ある構成要件の存在が、必須なのか、任意なのか、任意だとして、ある方がよいのか、(製造上の事情等で現状は止む無く存在するが)できればない方がよいのか、なども考慮します。
  • 特許請求の範囲に「物(装置)」と「方法」など、カテゴリーの異なる発明を記載した場合、両カテゴリーの発明が明確に開示されているか確認します。現時点では、いずれかのカテゴリーだけ特許請求している場合でも、将来の補正や出願分割により、異なるカテゴリーを権利請求する可能性がある場合も同様です。
  • 自分の実施範囲、将来の展開範囲、他者への牽制範囲(他社に実施されたくない、他社に権利取得されたくない範囲)を開示するのが望ましいです。なお、特許請求の範囲には記載されていなくても(つまり権利請求していなくても)、明細書や図面に開示しておけば、同一発明について、その後出願した他者に権利を取得されるおそれはなくなります(出願による他者権利化阻止効果(防衛出願))。そのため、権利請求する訳ではないけども、他者に権利取得されたくない範囲については、明細書や図面で開示しておきます。出願時には特許請求の範囲に記載がなくても、明細書や図面に記載しておけば、出願後、一定要件下、補正により、あるいは出願分割により、権利取得できる場合があります。一方、将来、別途出願予定の内容、ノウハウとしておきたい内容などについては、敢えて、今回の出願では開示を控える場合もあり得ます。
  • 【発明を実施するための形態】の記載量が多い場合、適宜、見出し(タイトル)を付けても構いません。たとえば、ある段落【0010】で、「≪**システムの構成≫」と見出しを付けた後、システムの構成について説明し、その後の段落【0015】で、「≪**システムの動作≫」と見出しを付けた後、システムの動作について説明します。その他、【発明を実施するための形態】の冒頭に、目次の付いた明細書を見たことがあります。
  • 一または複数の実施例を説明した後、たとえば、「本発明は、前記実施例の構成に限らず適宜変更可能である。たとえば、・・・」として、変形例を記載することも多いです。【発明を実施するための形態】の最終部に、疑似請求項とでもいうべきか、まるで請求項のような記載振りの説明文を加入した明細書を見たことがあります。将来の補正や分割に備えた記載と思われ、明細書の綺麗さを度外視すれば、場合により有効な手法かもしれません。
  • 明細書には開示したが、特許請求の範囲には記載していない発明(上位概念つまり一番権利範囲の広い請求項にも含まれない発明)があるか否か、あってもよいのかを確認します。
  • 特許請求の範囲に記載するか記載予定のものについては、特許請求の範囲の記載要件を考慮します。たとえば、上限又は下限だけを示すような数値範囲限定(「~以上」、「~以下」等)は、発明が不明確として拒絶理由を招くおそれがあります(特許請求の範囲の明確性)。また、将来、特許請求の範囲を数値限定(たとえば温度条件を加入)するかもしれないなら、明細書において、特定の数値一点だけの開示(たとえば「約50℃」のような記載)は避けます。特許請求の範囲を補正する際、「約」は許容されないことが多いので、「50℃」との記載にならざるを得ず、権利範囲として相当狭くなるおそれがあります。そのため、できるだけ、「*℃~*℃」(*℃以上*℃未満)というような数値範囲で開示しておきます。そして、そのような数値範囲とした理由(メリット)なども記載しておきます。その数値範囲の内で、さらに好ましい数値範囲があるのなら、その理由と共に記載しておきます。つまり、好ましくは、数値範囲を段階的に記載しておきます。
  • 特許明細書に独特の用語が用いられることもありますが、意味がよく分からないのなら、無理に用いる必要はありません。むしろ、できるだけ平易な文言で説明することが望まれます。特許明細書によく使われる用語として、たとえば「嵌合(かんごう)」「係合(けいごう)」「係止(けいし)」「螺合(らごう)」「回動(かいどう)」などがあります。それぞれ、たとえば、はめ合わせる、かかわり合わせる、かかわり合わせて止める、ねじ込む、回転させるなどとして表現できるかもしれません。その際、「嵌合」に関連して、適合してぴったりはまり合うのか、緩くはまり合うのか、きつくはまり合う(圧入される)のかの限定も、必要なら行います。また、「係合」「係止」に関連して、どのように関わり合うのか、はまり合うのか、引っ掛かるのかなどの限定も、必要なら行います。もしかしたら、単に、取り付けられる、設けられる、のような表現で済むかもしれません。さらに、「回動」に関連して、一方向(時計方向または反時計方向のうちの一方)へのみ回転可能なのか、正転および逆転の双方が可能なのかの限定も、必要なら行います。特許用語を用いるにしても、万一不明確と指摘された場合に備えて、言い換えが必要な場合もあるかもしれません。なお、「係合部」と「被係合部」、「係止部」と「被係止部」など、部品名としてもよく登場します。
  • 特許請求の範囲の各請求項と対応して、その内容(発明特定事項)と、それに基づく作用効果が記載されているか、確認します。
  • 出願後の明細書の修正(特に追加)は、相当に困難です。出願日から1年以内ですと、国内優先権制度を利用して出願すれば、改良発明などを加えた形での権利取得が可能です。出願日から1年経過後であっても、出願公開(出願日から1年6月経過後の公報発行)前であれば、別個の出願として権利化できる可能性もあります(特許Q&A)。

 

【符号の説明】
 【0010】
 1 鉛筆
 2 軸材
 3 芯

  • 少なくとも、特許請求の範囲に出現する構成については、符号の説明を入れます。符号数が少なければ(あるいは所望により)、すべての符号について、説明を入れても構いません。
  • 図面がなければ、【図面の簡単な説明】と【符号の説明】の欄は、不要です。

 


参考資料1(明細書中への化学式・数式・表の加入)

(1)化学式の加入例

 【0010】
 **物とは、次式で示される化合物である。
 【0011】
  【化1】

化学式
 【0012】
 この化合物は、・・・

 

(2)数式の加入例

 【0010】
 **は、次式により求められる。
 【0011】
  【数1】

数式
 【0012】
 この数式1から分かるように、・・・

 

(3)表の加入例

 【0010】
 試験結果を、表1に示す。
 【0011】
  【表1】

表
 【0012】
 この表1から分かるように、・・・

 

(4)画像ファイルを用いない例

 【0010】
 長方形の面積Sは、縦寸法aと横寸法bとにより、次式により求められる。
 【0011】
  [数1] S=a×b
 【0012】
 この数式1から分かるように、・・・

 


参考資料2(実施形態と実施例)

(1)特許庁インターネット出願のひな型抜粋(2020年1月版)
P1-特許願>1100_特許願(特記事項なし)(予納)

『・・・
【発明を実施するための形態】
 【0012】
 ハウジング外または可能な限りハウジング側端部に近い位置からイメージを入力するという目的を、最小の部品点数で、光学系構成部品の厚みを損なわずに実現した。
【実施例1】
 【0013】
 図1は、本発明装置の1実施例の断面図であって、1~5は、図2と同様である。また、6はセンサドライバー、7は信号入出力端子、8は手送り速度検出機構である。・・・』

 

(2)独立行政法人 工業所有権情報・研修館編『特許出願書類の書き方ガイド』(2020年5月版)

『・・・
【発明を実施するための形態】
 【0013】
 図1ないし図3は本発明に係るプライヤーの実施例を示す。図1においてプライヤーは、X字状に配置した第1アーム1と第2アーム2とを連結軸3で相対揺動可能に連結して構成する。・・・』

 


参考資料3(実施例が複数の場合)

【発明を実施するための形態】
 【0010】
 以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
 【0011】
 図1は、本発明の実施例1の**装置を示す斜視図である。
 【0012】
 本実施例1の**装置は、・・・
 ・・・・・
【実施例2】
 【0021】
 次に、本発明の実施例2の**装置について説明する。
 本実施例2の**装置も、基本的には前記実施例と同様である。そこで、以下においては、両者の異なる点を中心に説明し、同様の箇所については説明を省略する。また、前記実施例1と対応する箇所には、同一の符号を付して説明する。
 【0022】
 本実施例2の**装置は、・・・

 


関連情報

 


(作成2020.07.19、最終更新2020.07.23)
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