国内優先権制度(条文解読)

はじめに

 


(特許出願等に基づく優先権主張)
第41条

特許を受けようとする者は、
次に掲げる場合を除き、
その特許出願に係る発明について、
その者が「特許又は実用新案登録を受ける権利」を有する「特許出願又は実用新案登録出願」であつて先にされたもの(以下「先の出願」という。)の
願書に最初に添付した「明細書」、「特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲」又は「図面」(先の出願が外国語書面出願である場合にあつては、「外国語書面」)に記載された発明に基づいて
優先権を主張することができる。

ただし、先の出願について仮専用実施権を有する者があるときは、その特許出願の際に、その承諾を得ている場合に限る。

  • 特許を受けようとする者は、所定の場合を除き、その特許出願に係る発明について、先の出願の当初明細書等に記載された発明に基づいて優先権を主張することができる。
  • 特許出願に係る発明とは、特許請求の範囲に記載された各請求項に係る発明をいう。
  • 先の出願とは、既に出願した自己の特許出願又は実用新案登録出願をいう。
  • 当初明細書等とは、願書に最初に添付した「明細書」「特許請求の範囲(実用新案登録請求の範囲)」又は「図面」をいう。
    但し、外国語書面出願である場合は、「外国語書面」をいう。なお、外国語書面とは、(i)明細書及び特許請求の範囲に記載すべきものとされる事項を外国語で記載した書面、及び(ii)必要な図面でこれに含まれる説明を外国語で記載したものをいう(第36条の2第1項)。
  • 先の出願について仮専用実施権を有する者があるときは、後の出願の際に、その者の承諾を得ていることが必要である。なお、仮専用実施権とは、特許を受ける権利を有する者が、その特許を受ける権利に基づいて取得すべき特許権について、その特許出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において設定することができる実施権である(第34条の2第1項)。仮専用実施権に係る特許出願について特許権の設定の登録があったときは、その特許権について、当該仮専用実施権の設定行為で定めた範囲内において、専用実施権が設定されたものとみなされる(同条第2項)。

 

  一 その特許出願が先の出願の日から一年以内にされたものでない場合(その特許出願を先の出願の日から一年以内にすることができなかつたことについて正当な理由がある場合であつて、かつ、その特許出願が経済産業省令で定める期間内にされたものである場合を除く。)

  • 特許法施行規則第27条の4の2第1項
    特許法第41条第1項第一号の経済産業省令で定める期間は、同号に規定する正当な理由がないものとした場合における同項の規定により優先権の主張を伴う特許出願をすることができる期間の経過後二月とする。

 

  二 先の出願が
第44条第1項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願
第46条第1項若しくは第2項の規定による出願の変更に係る特許出願若しくは
第46条の2第1項の規定による実用新案登録に基づく特許出願
又は
実用新案法第11条第1項において準用するこの法律(特許法)第44条第1項の規定による実用新案登録出願の分割に係る新たな実用新案登録出願若しくは
実用新案法第10条第1項若しくは第2項の規定による出願の変更に係る実用新案登録出願である場合

 

  三 先の出願が、その特許出願の際(国内優先権の主張を伴う後の出願の際)に、放棄され、取り下げられ、又は却下されている場合

 

  四 先の出願について、その特許出願の際(国内優先権の主張を伴う後の出願の際)に、査定又は審決が確定している場合

 

  五 先の出願について、その特許出願の際(国内優先権の主張を伴う後の出願の際)に、実用新案法第14条第2項に規定する設定の登録(実用新案権の設定の登録)がされている場合

 

2 前項の規定による優先権の主張を伴う特許出願国内優先権の主張を伴う後の出願に係る発明のうち、
当該優先権の主張の基礎とされた先の出願の願書に最初に添付した「明細書」、「特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲」又は「図面」(当該先の出願が外国語書面出願である場合にあつては、「外国語書面」)に記載された発明
(当該先の出願が同項若しくは実用新案法第8条第1項の規定による優先権(国内優先権)の主張又は第43条第1項(パリ条約優先権)、第43条の2第1項(優先期間徒過救済措置による優先権(第43条の3第3項(パリ条約の例による優先権)において準用する場合を含む。)若しくは第43条の3第1項若しくは第2項(パリ条約の例による優先権(これらの規定を同法(実用新案法)第11条第1項において準用する場合を含む。)の規定による優先権の主張を伴う出願である場合には、当該先の出願についての優先権の主張の基礎とされた出願に係る出願の際の書類(「明細書」、「特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲」又は「図面」に相当するものに限る。)に記載された発明を除く。)についての

  • 第29条(新規性・進歩性)、
  • 第29条の2本文(拡大先願)、
  • 第30条第1項及び第2項(発明の新規性喪失の例外(権利者の意に反して(1項)、権利者の行為に起因して(2項)))、
  • 第39条第1項から第4項まで(先願)、
  • 第69条第2項第二号(特許権の効力が及ばない範囲特許権の効力は、「特許出願の時から日本国内にある物」には、及ばない。)、
  • 第72条(他人の特許発明等との関係(特許権者…は、その特許発明がその特許出願の日前の出願に係る他人の特許発明、登録実用新案若しくは登録意匠若しくはこれに類似する意匠を利用するものであるとき、又はその特許権がその特許出願の日前の出願に係る他人の意匠権若しくは商標権と抵触するときは、業としてその特許発明の実施をすることができない。))、
  • 第79条(先使用による通常実施権(特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をし、又は特許出願に係る発明の内容を知らないでその発明をした者から知得して、特許出願の際現に日本国内においてその発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者は、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許出願に係る特許権について通常実施権を有する。))、
  • 第81条(意匠権の存続期間満了後の通常実施権(特許出願の日前又はこれと同日の意匠登録出願に係る意匠権がその特許出願に係る特許権と抵触する場合において、その意匠権の存続期間が満了したときは、その原意匠権者は原意匠権の範囲内において、当該特許権又はその意匠権の存続期間の満了の際現に存する専用実施権について通常実施権を有する。))、
  • 第82条第1項(意匠権の存続期間満了後の通常実施権(特許出願の日前又はこれと同日の意匠登録出願に係る意匠権がその特許出願に係る特許権と抵触する場合において、その意匠権の存続期間が満了したときは、その満了の際現にその意匠権についての専用実施権又はその意匠権若しくは専用実施権についての通常実施権を有する者は原権利の範囲内において、当該特許権又はその意匠権の存続期間の満了の際現に存する専用実施権について通常実施権を有する。))、
  • 第104条(生産方法の推定(物を生産する方法の発明について特許がされている場合において、その物が特許出願前に日本国内において公然知られた物でないときは、その物と同一の物は、その方法により生産したものと推定する。)(第65条第6項(補償金請求権)(第184条の10第2項(国際公開及び国内公表の効果等)において準用する場合を含む。)において準用する場合を含む。)並びに
  • 第126条第7項(独立特許要件(第一項(訂正審判請求)ただし書第一号(特許請求の範囲の減縮)又は第二号(誤記又は誤訳の訂正)に掲げる事項を目的とする訂正は、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。)(第17条の2第6項(特許請求の範囲の補正)、第120条の5第9項(特許異議申立てにおける訂正請求)及び第134条の2第9項(特許無効審判における訂正請求)において準用する場合を含む。)
  • 同法(実用新案法)第7条第3項(先願)及び第17条(他人の登録実用新案等との関係)、
  • 意匠法第26条(他人の登録意匠等との関係)、第31条第2項((原権利者への)存続期間満了後の通常実施権)及び第32条第2項((実施権者への)存続期間満了後の通常実施権)並びに
  • 商標法(昭和34年法律第127号)第29条(他人の特許権等との関係)並びに第33条の2第1項((原権利者への)存続期間満了後の商標の使用をする権利)及び第33条の3第1項((実施権者への)存続期間満了後の商標の使用をする権利(これらの規定を同法第68条第3項(防護標章)において準用する場合を含む。)

の規定の適用については、当該特許出願は、当該先の出願の時にされたものとみなす。

  • 国内優先権の主張を伴う後の出願に係る発明のうち、その国内優先権の主張の基礎とされた先の出願の当初明細書等に記載されている発明については、特に、以下の(i)から(vi)までの実体審査に係る規定の適用に当たり、当該後の出願が当該先の出願の時にされたものとみなされる。
    (i) 新規性
    (ii) 進歩性
    (iii) 拡大先願
    (iv) 発明の新規性喪失の例外
    (v) 先願
    (vi) 前記(i)から(v)までについての独立特許要件
  • なお、条文上、先の出願の当初明細書等には、括弧書きがあって、要約すると「当該先の出願が国内優先権、パリ条約優先権、優先期間徒過救済措置による優先権、パリ条約の例による優先権、の規定による優先権の主張を伴う出願である場合には、当該先の出願についての優先権の主張の基礎とされた出願書類に記載された発明を除く」旨の記載があります。
    たとえば、下図のように、後の出願Xをするに際し、先の出願Yに基づく優先権を主張したが、そのYはさらに先の出願Zに基づく優先権の主張を伴う場合です。先の出願Yが、さらに先の出願Zの優先権の主張を伴う場合、その先の基礎出願Zに記載されている発明については、優先権の主張の効果は認められません。優先期間の延長につながるからです。
    但し、先の出願Yだけでなく、そのさらに先の出願Zも優先権の主張の基礎として、後の出願Xをすることは可能です。もちろん、先の出願Zからの優先期間内に、後の出願Xをする必要はあります。
    この括弧書きは、第2項だけでなく、第3項にも入っています。
    特許法第41条第2項括弧書きについて

 

3 第1項の規定による優先権の主張を伴う特許出願国内優先権の主張を伴う後の出願の願書に最初に添付した「明細書」、「特許請求の範囲」又は「図面」(外国語書面出願にあつては、「外国語書面」)に記載された発明のうち、
当該優先権の主張の基礎とされた先の出願の願書に最初に添付した「明細書」、「特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲」又は「図面」(当該先の出願が外国語書面出願である場合にあつては、「外国語書面」)に記載された発明
(当該先の出願が同項若しくは実用新案法第8条第1項の規定による優先権(国内優先権)の主張又は第43条第1項(パリ条約優先権)、第43条の2第1項(優先期間徒過救済措置による優先権(第43条の3第3項(パリ条約の例による優先権)において準用する場合を含む。)若しくは第43条の3第1項若しくは第2項(パリ条約の例による優先権(これらの規定を同法(実用新案法)第11条第1項において準用する場合を含む。)の規定による優先権の主張を伴う出願である場合には、当該先の出願についての優先権の主張の基礎とされた出願に係る出願の際の書類(「明細書」、「特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲」又は「図面」に相当するものに限る。)に記載された発明を除く。)については、
当該特許出願(後の出願)について「特許掲載公報の発行」又は「出願公開」がされた時に
当該先の出願について「出願公開」又は「実用新案掲載公報の発行」がされたものとみなして、
第29条の2本文特許法の拡大先願又は同法第3条の2本文実用新案法の拡大先願の規定を適用する。

  • 国内優先権の主張を伴う後の出願の当初明細書等に記載された発明のうち、その国内優先権の主張の基礎とされた先の出願の当初明細書等に記載された発明については、後の出願について出願公開等された時に、先の出願について出願公開等がされたものとみなして、拡大先願の規定を適用する。

 

4 第1項の規定による優先権を主張しようとする者は、
その旨及び先の出願の表示を記載した書面を
経済産業省令で定める期間内に
特許庁長官に提出しなければならない。

  • 特許法施行規則第27条の4第3項
    特許出願について特許法第41条第1項…の規定により優先権を主張しようとする者は、当該特許出願の願書にその旨及び必要な事項を記載して優先権主張書面の提出を省略することができる。
  • 特許法施行規則第27条の4の2第3項
    特許法第41条第4項…の経済産業省令で定める期間は、次に掲げる場合に応じ、当該各号に定める期間とする。
      一 特許出願(特許法第44条第1項、第46条第1項若しくは第2項又は第46条の2第1項の規定による特許出願を除く。)について、同法第41条第1項…の規定による優先権の主張をする場合(第三号に規定する場合を除く。) 優先日(優先権主張書面を提出することにより優先日について変更が生じる場合には、変更前の優先日又は変更後の優先日のいずれか早い日。次号において同じ。)から一年四月の期間が満了する日又はこれらの規定による優先権の主張を伴う特許出願の日から四月の期間が満了する日のいずれか遅い日までの間(出願審査の請求又は出願公開の請求があつた後の期間を除く。)
      二 特許法第44条第1項、第46条第1項若しくは第2項又は第46条の2第1項の規定による特許出願について、同法第41条第1項…の規定による優先権の主張をする場合(第三号に規定する場合を除く。) 優先日から一年四月、同法第44条第1項の規定による新たな特許出願に係るもとの特許出願の日、同法第46条第1項若しくは第2項の規定による出願の変更に係るもとの出願の日若しくは同法第46条の2第1項の規定による特許出願の基礎とした実用新案登録に係る実用新案登録出願の日から四月又は同法第44条第1項、第46条第1項若しくは第2項又は第46条の2第1項の規定による特許出願をした日から一月の期間が満了する日のいずれか遅い日までの間(出願審査の請求又は出願公開の請求があつた後の期間を除く。)
      三 特許法第41条第1項の規定による優先権の主張(同項第一号に規定する正当な理由があるときにするものに限る。)をする場合 当該正当な理由がないものとした場合における当該優先権の主張を伴う特許出願をすることができる期間の経過後二月
      四 ・・・省略・・・

 

(先の出願の取下げ等)
第42条

前条第1項の規定による優先権の主張の基礎とされた先の出願は、
その出願の日から経済産業省令で定める期間を経過した時に
取り下げたものとみなす

  • 特許法施行規則第28条の4第2項
    特許法第42条第1項から第3項までの経済産業省令で定める期間は、一年四月とする。

ただし、
当該先の出願が放棄され、取り下げられ、若しくは却下されている場合、
当該先の出願について査定若しくは審決が確定している場合、
当該先の出願について実用新案法第14条第2項に規定する設定の登録(実用新案権の設定の登録)がされている場合又は
当該先の出願に基づく全ての優先権の主張が取り下げられている場合
には、この限りでない。

  • 国内優先権の主張の基礎とされた先の出願は、その出願の日から1年4月を経過した時に取り下げられたものとみなされる。ただし、以下の(i)から(iv)までのいずれかの場合は、この限りでない
    (i) 先の出願が放棄され、取り下げられ、又は却下されている場合
    (ii) 先の出願について査定又は審決が確定している場合
    (iii) 先の出願について実用新案権の設定の登録がなされている場合
    (iv) 先の出願に基づく全ての国内優先権の主張が取り下げられている場合

 

2 前条第1項の規定による優先権の主張を伴う特許出願の出願人は、
先の出願の日から経済産業省令で定める期間を経過した後は、
その主張を取り下げることができない

  • 国内優先権の主張を伴う後の出願の出願人は、先の出願の日から1年4月経過後は、その主張を取り下げることができない

 

3 前条第1項の規定による優先権の主張を伴う特許出願が先の出願の日から経済産業省令で定める期間内に取り下げられたときは、
同時に当該優先権の主張が取り下げられたものとみなす

  • 国内優先権の主張を伴う後の出願が先の出願の日から1年4月以内に取り下げられたときは同時に当該優先権の主張が取り下げられたものとみなされる

 


(作成2020.09.06、最終更新2021.07.02)
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