斜視図(等角図)の描き方

等角図の描き方について、基本を分かりやすくご説明いたします。

斜視図、立体図、ポンチ絵、スケッチの基本となるものです。

 


目次

 


等角図とは?

等角図とは?(座標と立方体)

等角図とは、物体を斜め上方等から見た斜視図であり、前後、左右、上下の3本の座標軸(等角軸)が互いに等角(120度)で配置された図で、かつ等角軸の軸方向寸法を実寸とした図をいいます。

等角図は、等測図とも呼ばれます。

等角図(等測図)と似たものに、等角投影図(等測投影図)というものがあります。等角図は、等角軸の軸方向寸法を実寸(実長)としますが、等角投影図は、実寸の0.82倍(√2/√3)とします。そのため、両者の違いは、大きさの違いです。詳しくは、「等角図と等角投影図」をご覧ください。

上図から分かるように、X軸とY軸とは、水平線に対し30度の傾きで配置されます。また、Z軸は、水平線に対し垂直に配置されます。等角図では、等角軸の軸方向寸法を実寸としますから、上図において、原点から各軸の「1」と記載した箇所までの距離は1cm、「2」と記載した箇所までの距離は2cmとなっています。

なお、「原点」とは、X軸、Y軸、Z軸の交点をいいます。つまり、XもYもZも、いずれも0の位置が「原点」です。

 


等角図と不等角図

等角投影図(等角図)と不等角投影図(不等角図)

なぜ「等角図」というのでしょうか?
どこが「等角」なのでしょうか?

等角投影図(等角図)と不等角投影図(不等角図)との違いを確認してみます。

上図から分かるように、等角投影図(等角図)で立方体を描いた場合、手前側の上方角部をみると、隣接する二辺でなす角α(アルファ)、β(ベータ)、γ(ガンマ)は、いずれも120度となっています。これら角度α、β、γが、互いに等しい角、つまり「等角」だから、「等角投影図(等角図)」という訳です。

一方、不等角投影図(不等角図)の場合、α、β、γは、互いに異なります。これらα、β、γは、物体を見る角度によって、様々な角度をとることになります。その内、α、β、γを120度としたものが等角投影図(等角図)になります。

 


等角図の描き方

立方体

一辺が2cmの立方体を描いてみます。

等角図の描き方(立方体)

(a)原点から、X軸方向に2cm、Y軸方向に2cm、Z軸方向に2cmだけ、線を引きます。

(b)Xが2の位置と、Yが2の位置から、それぞれ上方へ(つまりZ軸と平行に)2cmだけ、線を引きます。

(c)いま引き終えたXが2の位置から上方へ2cmの線の上端と、Zが2の位置とを線でつなぎます。この線は、X軸と平行な線となります。同様に、Yが2の位置から上方へ2cmの線の上端と、Zが2の位置とを線でつなぎます。この線は、Y軸と平行な線となります。

(d)いま引き終えた各線と平行に、残りの線を描き、立方体は完成です。

 

直方体とその応用

縦3cm、横2cm、高さ2cmの直方体を描いてみます。

等角図の描き方(直方体とその応用)

(a)原点から、X軸方向に3cm、Y軸方向に2cm、Z軸方向に2cmだけ、線を引きます。また、Xが3の位置と、Yが2の位置から、それぞれ上方へ(つまりZ軸と平行に)2cmだけ、線を引きます。

(b)残りの線を、X軸に平行な線と、Y軸に平行な線とでつないで、直方体は完成です。

(c)直方体の応用として、一部に段差を付けることもできます。各点の座標が分かれば、より複雑な図形も描けます。

(d)直方体の応用として、一部に傾斜面を付けることもできます。

 

円柱

直径2cm、高さ3cmの円柱を描いてみます。

等角図の描き方(円柱)

(a)円柱の高さとして、原点と、原点からZ軸方向に3cmの箇所に、それぞれ水平線(またはX軸やY軸に平行な線)を引きます。円柱の下面と上面の高さ位置です。そして、それぞれの箇所で、直径2cm(図面中では20mmと表示)の上下面を描きます。等角図では、物体を斜め上方から見る関係上、円ではなく、「楕円(だ円)」となります。等角図の場合、35度の楕円が用いられます。ここでは、直径2cmですから、斜軸(X軸・Y軸)の軸方向長さが2cmとなる楕円を用います。等角図では、長軸や短軸ではなく、斜軸の方向(X軸方向やY軸方向)の長さで、楕円の大きさを決めます。底面の楕円は、手前側半分しか見えませんから、半周分だけで大丈夫です。

楕円を描くには、楕円定規(テンプレート)を用いるのが便利ですが、楕円定規がなくても、コンパスで近似楕円を描くこともできます(コンパスによる楕円の描き方)。

なお、仮に、円柱を真上から見る場合、水平面に対し90度の位置から見ることになり、楕円度は90度となります。90度の楕円が通常の円です。これに対し、等角図では、楕円度35度(厳密には35度16分)となります。楕円度が90に近づくほど、丸形(円形)となり、0に近づくほど、細長くなる(線に近づく)ことになります。

(b)上下の各楕円を、Z軸に平行な線でつないで、円柱は完成です。

 

【補足】楕円の長軸・短軸・斜軸とは?

楕円の長軸・短軸・斜軸

  • 楕円の長軸とは、楕円の長手方向をいいます。楕円の長径とは、長軸方向の長さ(径)をいいます。
  • 楕円の短軸とは、楕円の短手方向をいいます。楕円の短径とは、短軸方向の長さ(径)をいいます。
  • 楕円の斜軸とは、楕円の中心を通る線の内、傾斜した等角軸(上図において水平線に対し30度の傾きの線)の方向をいいます。なお、等角軸については、前記「等角図とは?」をご覧ください。

 

円錐

底面の直径が2cm、高さが3cmの円錐を描いてみます。

等角図の描き方(円錐)

(a)円錐の高さは、Z軸上の原点と、原点から3cmとの位置になります。底面は、直径2cmの楕円となります。35度の楕円で、且つ、斜軸(X軸・Y軸)の軸方向長さが2cmとなる楕円を用います。上図の(a)から分かるように、楕円がX軸上の1(および-1)と、Y軸上の1(および-1)とを通過します。

(b)円錐の頂点(Zが3の位置)と、前記楕円とを「接線で」つないで、円錐は完成です。

 

直径2cmの球を描いてみます。

等角図の描き方(球)

球は、どこから見ても形は変わらないので、通常の円となります。但し、等角図の場合、実寸の1.22倍(√3/√2)で描きます。ここでは、直径2cmの球を描こうとしていますから、直径が2.44cm(2×1.22)の円を描きます。

等角図は、物体を斜め上方から見た図となります。この場合、前記立方体の各辺の寸法などは、本来は実寸よりも小さく(つまり等角図ではなく等角投影図のように0.82倍(√2/√3)で)描くべきとなります。ところが、図面作成の便宜上、等角図では、これら寸法を実寸とする関係で、どこから見ても形状(大きさ)の変わらない球は、逆に1.22倍(√3/√2)します。

なお、等角図で、直径2cmの円(球ではなく円板)を描く場合、斜軸(X軸・Y軸)の寸法を2cmとする楕円を用いますが、その楕円の長軸寸法は、斜軸寸法の1.22倍(2.44cm)となり、これは球を描く場合の直径と一致します。詳しくは、等角図と等角投影図(等角図と等角投影図との違いの図)をご覧ください。

 

段付き棒、円筒、四角錐

いままでの知識を組み合わせて、段付き棒、円筒、四角錐なども描くことができます。

下図において、(a)は、直径2cm、高さ1.5cmの大径部と、直径1cm、高さ1.5cmの小径部とが連なった段付き棒です。(b)は、内径1.5cm、外径2cm、高さ3cmの円筒(パイプ)です。(c)は、一辺が2cmの正方形を底面とし、高さが3cmの正四角錐です。底面が四角形以外の多角形でも、各角の座標が分かれば、同様に図示できます。

等角図の描き方(段付き棒、円筒、四角錐)

 

穴あき板

角にアール(丸み)の付いた穴あき板は、下図のように描くことができます。ここでは、一辺が4cmで厚さ0.5cmの四角形の板材で、中央部には直径2cmの貫通穴があいています。また、板材の四隅は、半径0.5cmの円弧で、丸みを付けられています。

等角図の描き方(角にアール(丸み)の付いた穴あき板)

 

 


等角図の作図方向(見る方向)

座標軸の配置

物体の底部や側部を中心に図示したい場合もあります。下図において、(a)は斜め上方から見た図、(b)は斜め下方から見た図、(c)は側方から見た図となります。(a)の図を回転させたものが(b)や(c)ということもできます。

等角図の描き方(見る方向)

 

様々な方向からの図示

角にアール(丸み)の付いた穴あき板を、様々な方向から描いてみます。下図において、(a)は上方から見た図、(b)は下方から見た図、(c)は左側から見た図、(d)は右側から見た図となります。

等角図の描き方(様々な方向からの図示)

 


最後に

特許出願用の図面では、斜視図が必要になることもあります。特許業界では、図面作成を専業でお仕事されている方もいらっしゃいます。

プロの手を借りなければ、難しいことも多いですが、発明者様との打合せなど、最低限の知識は必要と思われます。日々精進です。

 


関連情報

 


(作成2021.01.28、最終更新2021.02.14)
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