特許出願の拒絶査定への対応

はじめに(拒絶理由通知~拒絶査定)

特許出願について「出願審査請求」があると、審査官が出願を審査します。

審査の結果、所定の拒絶理由を発見したときは、出願人に対し「拒絶理由通知」がなされます。

これに対し、出願人は、「意見書」や「手続補正書」を提出することができます。意見書では、たとえば「本願発明は先行技術と同一ではないし先行技術から容易に考えられる程度でもない」などの意見を述べます。手続補正書では、たとえば「誤記の訂正」や「特許請求の範囲の減縮(つまり権利範囲を狭める)」など、書類の補正(修正)を行います。

拒絶理由がないか解消した場合、「特許査定」がなされます。特許査定とは、特許する旨の審査官の最終処分です。

一方、拒絶理由が解消しない場合、「拒絶査定」がなされます。拒絶査定とは、特許しない旨の審査官の最終処分です。

この拒絶査定に対して、出願人は、下記のような対応をとることができます。

 


目次

  1. 拒絶査定不服審判の請求(+手続補正)
  2. 出願の分割
  3. 出願の変更
  4. 新たな出願
  5. 権利化の断念(放置・取下げ・放棄)
  6. 関連情報

 


(1)拒絶査定不服審判の請求(+手続補正)

◆出願人は、拒絶査定に不服があるときは、拒絶査定不服審判を請求することができます。

◆審査段階でした補正が却下されて拒絶査定を受けた場合、その補正却下の決定に対する不服も、拒絶査定不服審判にて申し立てることができます。

◆拒絶査定不服審判は、原則として拒絶査定謄本送達日から3月以内に請求しなければなりません。

◆審査では1名の審査官により審査されましたが、審判では3名(又は5名)の審判官からなる合議体により審理されます。

審判請求と同時に、明細書、特許請求の範囲又は図面について、補正をすることができます。明細書等について補正するなら、審判請求と(同日ではなく)「同時に」しなければなりません。つまり、審判請求書と手続補正書とを、一緒に一括して提出しなければなりません。

審判請求時の補正は、次の要件を満たす必要があります。詳しくは、「明細書・特許請求の範囲・図面の補正(まとめ)」をご覧ください。

◆審判請求後の流れ

  • 審判請求時に特許請求の範囲等について補正(前置補正:ぜんちほせい)があった場合、まずは、審査官による再審査(前置審査:ぜんちしんさ)に付されます。そして、拒絶理由が解消したと判断すれば、特許査定がなされ、依然として拒絶理由が解消していないと判断すれば、審査結果を特許庁長官に報告(前置報告)の上、審判(審判官合議体の審理)へ移行します。
  • 審判請求時に補正がなかった場合、あるいは補正があっても前置審査で特許査定されずに前置報告された場合、審判官合議体による審理に付されます。審判では、審査官による審査が適切であったか、本願発明は特許されるべきか、について審理されます。審理の結果、特許できるときは特許審決(請求認容審決)がなされ、特許できないときは拒絶審決(請求棄却審決)がなされます。拒絶審決に対しては、裁判所(知的財産高等裁判所)に出訴することができます。
  • なお、審判において、拒絶査定の理由とは異なる拒絶理由が発見された場合、改めて拒絶理由が通知され、反論の機会が与えられます。

◆参考情報(特許庁統計より、2019年)

 


(2)出願の分割

◆出願人は、二以上の発明を包含する特許出願の一部を、一又は二以上の新たな特許出願とすることができます。

◆たとえば、次のような目的のために、出願の分割を行います。

  • 発明の単一性違反(一出願に含めることができる発明の範囲を超えている旨)の拒絶理由を解消するために、特許請求の範囲の各請求項を複数の出願に分ける。
  • 特許性(権利化できる見込み)の高低、審査状況などを考慮して、特許請求の範囲の各請求項を複数の出願に分ける(特許できるものは迅速に特許化し、争うものと分ける)。
  • 明細書又は図面に記載しているが特許請求の範囲には記載していない発明について、分割出願により権利化を目指す。
  • 審判請求時の特許請求の範囲の補正は、前述したとおり要件が厳しいため、補正が難しい場合には分割出願する。

◆典型的には、明細書や図面の記載はそのままに(あるいは特許請求の範囲の記載に合わせて多少修正して)、特許請求の範囲が異なる分割出願(新たな特許出願・子出願)をします。もちろん、その内容は、原出願(げんしゅつがん:もとの特許出願・親出願)の出願当初(所定の場合には分割直前)の明細書等に記載の範囲内である必要があります。出願分割があったとき、その新たな出願(分割出願)は、原則として、もとの出願の時にしたものとみなされます。

拒絶査定時の出願分割の例

原出願(拒絶査定を受けた出願・親出願)について審判請求すると共に、分割出願(子出願)することも可能です。たとえば、上図に示すように、原出願について、請求項1にのみ拒絶理由があり、請求項2には拒絶理由がないとします(一部に拒絶理由があるだけでも出願全体が拒絶されます)。この原出願から、拒絶理由のある請求項1を削除して、拒絶理由のない請求項2のみを残して審判請求することで、請求項2について早期の権利化を図る(前置審査で特許査定を得る)ことができます。一方、原出願から削除した旧請求項1については、分割出願(子出願)して、別途争うことができます。その際、明細書等に開示のある範囲で、旧請求項1の発明イに対し何らかのプラスα(権利範囲を減縮)した上で再審査を受けると、その内容によっては、異なる審査結果(特許査定)を期待できます。なお、分割出願について、別途、出願審査請求を所定期間内に忘れずに行う必要があります。

拒絶査定を受けた特許出願については、前述したとおり補正の要件が厳しい(限定的減縮などに限られる)ので、補正が難しい場合には、分割出願することが考えられます。たとえば、仮に明細書又は図面に記載がある発明であっても、現状、特許請求の範囲に挙げられていない発明に差し替える補正は通常できませんから、その場合には分割出願することになります。

◆原出願(親出願)について審判請求すると共に、分割出願(子出願)することもできますし、あるいは、原出願(親出願)については審判請求しないが、分割出願(子出願)で特許化に向けて再審査を受けることもできます。

◆拒絶査定に対する対応としての分割出願は、次のいずれかの場合にすることができます。なお、下記(a)の補正できる時(審判請求時)に分割した方が分割の要件が緩やかですから、審判請求するなら、審判請求と同時に分割するのが安全です。

  • (a)明細書等について補正をすることができる時(拒絶査定不服審判の請求時(審判請求と同時))
  • (b)最初の拒絶査定謄本送達日から3月以内

 


(3)出願の変更

実用新案登録出願への変更

特許出願人は、所定要件下、特許出願を実用新案登録出願に変更することができます。但し、特許出願についての最初の拒絶査定謄本送達日から3月を経過した後、又はその特許出願日から9年6月を経過した後は、この限りではありません。出願変更があったとき、その実用新案登録出願は、もとの特許出願の時にしたものとみなされます。

意匠登録出願への変更

特許出願人は、所定要件下、特許出願を意匠登録出願に変更することができます。但し、特許出願についての最初の拒絶査定謄本送達日から3月を経過した後は、この限りではありません。出願変更があったとき、その意匠登録出願は、もとの特許出願の時にしたものとみなされます。

 


(4)新たな出願

別途の新規出願

拒絶査定を受けた出願が未公開(出願公開前)であれば、出願内容を充実させた新たな出願をして再トライすることも考えられます。

但し、先の出願の出願日を確保できませんから(つまり新たな出願の出願日を基準に審査されるので)、先の出願後に他人の出願がなされていると、それが新たな拒絶理由となる可能性があります。

また、先の出願内容を既に公開・実施(ホームページ掲載や製造販売等)している場合、特許を受けられない場合があります。所定の場合、新たな出願について、新規性喪失の例外規定の適用を受けたり、先の出願に基づき国内優先権を主張することも考えられます。

 


(5)権利化の断念

放置(対応しない)

拒絶査定を受け入れる場合、そのまま放置すれば足ります。これにより拒絶査定は確定します。

出願公開前に拒絶査定が確定した場合、原則として、出願公開されません。そのため、拒絶査定確定の時期によっては、出願内容の公開を防止できる場合があります

出願公開後に拒絶査定が確定した場合、特許を受けられなくても、出願公開されていれば、同一発明について後日他人が出願して権利化するのを防止することができます出願による他者権利化阻止効果(防衛出願))。

出願の取下げ・放棄

所望により、出願を取下げ又は放棄することもできます。

出願公開前に出願が取下げ又は放棄された場合、原則として、出願公開されません。そのため、出願の取下げ又は放棄の時期によっては、出願内容の公開を防止できる場合があります

◆その他
拒絶理由の引用文献として、他人の先願が挙げられた場合、その権利を侵害しないように留意する必要があります。先行技術とされた公報の出願が権利化されたのか、その権利が現在も存続中なのか、その権利の内容と自社製品の関係など、様々な検討が必要です。

 


関連情報

 


(作成2021.03.06、最終更新2021.03.06)
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