実用新案登録請求の範囲について

 


実用新案登録請求の範囲とは?

実用新案登録請求の範囲とは、実用新案登録を受けようとする考案を特定する文書をいい、この記載に基づいて登録実用新案の技術的範囲(権利範囲)が定められます。

実用新案登録請求の範囲では、「請求項」と呼ばれる項に区分して、各請求項ごとに実用新案登録出願人が実用新案登録を受けようとする考案を特定します。

 

請求項とは?

請求項とは、実用新案登録請求の範囲において、実用新案登録出願人が実用新案登録を受けようとする考案を特定する項をいい、より具体的には、「実用新案登録を受けたい考案」ごとに区分けされて考案が記載される欄をいいます。

実用新案登録請求の範囲には、少なくとも一つの請求項(【請求項1】)が記載されます。

 

【実用新案登録請求の範囲】や【請求項】の具体例については、下記(5)の具体例をご参照ください。

なお、実用新案登録請求の範囲(又は請求項)を「クレーム(claim)」ということがあります。

以下、実用新案登録請求の範囲について、詳細にみていきます。

 


(1)実用新案登録請求の範囲の役割

実用新案登録は、実体的要件の審査を行わずになされますから、本来無効となるような権利が登録されることがあります。そこで、警告や権利行使に際して、実用新案技術評価と呼ばれる審査を受けて、権利の有効性を確認しなければなりません。

【実用新案登録請求の範囲】の各【請求項】は、実用新案技術評価の評価対象の考案を特定すると共に、権利範囲を特定します。

 

(2)実用新案登録請求の範囲の記載

【実用新案登録請求の範囲】の各【請求項】には、実用新案登録出願人が“実用新案登録を受けたい考案(物品)”を記載します。従って、各【請求項】の末尾は、たとえば「○○装置」などになります。「○○装置」について実用新案登録して欲しい、と請求する訳です。そして、その装置がどのようなものであるのかについて、装置を説明(修飾)する文言が、各請求項中に記載されます。

なお、実用新案の保護対象は、物品の形状、構造又は組合せに係る考案に限られます。そのため、方法や材料自体、コンピュータプログラム自体は保護対象ではありません。これらの保護を求める場合、特許出願します。

 

(3)記載の基本原則

各【請求項】には、“考案特定事項”を過不足なく記載します。考案特定事項とは、「実用新案登録出願人が実用新案登録を受けようとする考案を特定するために必要と認める事項」をいいます。

そのため、各【請求項】(特に【請求項1】)には、“あってもなくてもよい事項”は入れてはいけません。逆に、明細書の【考案が解決しようとする課題】を解決するために“必ずなくてはならない事項”は入れなければなりません。

また、“あったほうがよい事項”は、請求項2以下で順次、それより上位の請求項に記載された考案をさらに限定していく形で記載できます。後述の(5)の具体例をご参照ください。

 

(4)原則として構成を記載

各【請求項】には、原則として、実用新案登録を受けようとする考案の“構成”を記載します。その構成に基づく“作用効果”は【明細書】に記載します。たとえば、「滑りにくい」という“作用効果”ではなく、「滑りにくい」という作用効果を奏するために施した“構成”を記載します。

作用効果的な記載は、考案の内容が不明確になりがちです。たとえば、「滑りにくい」とはどの程度のものか、基準があいまいですから、権利範囲も不明確となってしまいます。また、作用効果的な記載は、考案が願望的記載になりがちです。たとえば、「空飛ぶ絨毯(じゅうたん)」などの表現も可能となりますが、実際にそれを実現する構成の記載がなければ、単なる願望に読めてしまいます。

但し、情報関連技術などの分野については、装置の物理的な構造や具体的手段を記載するよりも、その装置の作用や動作内容などによって装置を定義する方が適切に考案を表現できる場合も多いので、そのような場合には、構成で特定する必要はありません。

 

(5)複数項の実用新案登録請求の範囲

 【請求項2】以下の末尾に、「請求項○に記載の」などの文言が記載されている場合があります。たとえば、【請求項2】の末尾に、「請求項1に記載の」との文言が記載されているとします。この場合、請求項1の構成要件を備え、さらに請求項2に記載の構成要件をも備えることを意味します。

具体例(鉛筆)

鉛筆

【請求項1】 軸材の中心線に沿って芯が設けられた ことを特徴とする鉛筆。
【請求項2】 前記軸材が断面六角形である ことを特徴とする請求項1に記載の鉛筆。
【請求項3】 前記軸材の一端部に消しゴムが設けられた ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鉛筆。

請求の範囲の具体例(鉛筆)

【請求項1】に記載の鉛筆には、断面が六角形であろうが円形であろうがすべて含まれます。また、消しゴムの有無も問いません。さらに、芯の色も問わず、赤鉛筆などであっても含まれます。

 

【請求項2】に記載の鉛筆は、請求項1に記載の鉛筆の内、「軸材が断面六角形である」鉛筆に限定したものです(請求項1+2の内容)。つまり、請求項2には、断面が六角形の鉛筆のみ含まれます。但し、断面が六角形である限り、消しゴムの有無や芯の色は問いません。

なお、請求項2に記載の考案が、鉛筆を転がりにくくするという作用効果を意図するのであれば、断面は六角形に限らず、三角形や四角形などでもよいことになります。これらも権利範囲に含めたいのであれば、たとえば、これら各形状を「又は」で接続したり、「多角形」などの表現を用いたりすることも考えられます。但し、「多角形」の場合、あまりに角が多いと円形に近くなり、所期の作用効果を奏しないと思われます。

 

【請求項3】は、末尾に「請求項1または請求項2に記載の」とあります。この場合、「請求項1に記載の」と「請求項2に記載の」に分けて考える必要があります。

前者の場合(「請求項1に記載の」で読む場合)、請求項1に記載の鉛筆の内、「軸材の一端部に消しゴムが設けられた」鉛筆を権利請求することになります(請求項1+3の内容)。この場合、軸材の断面形状や芯の色は問いません。

後者の場合(「請求項2に記載の」で読む場合)、請求項2に記載の鉛筆(つまり断面六角形の鉛筆)の内、「軸材の一端部に消しゴムが設けられた」鉛筆を権利請求することになります(請求項1+2+3の内容)。

結果として、請求項3には、前者(消しゴム付き鉛筆)と後者(消しゴム付き六角形鉛筆)の双方が含まれます。

 

なお、出願前に「鉛筆」が公知でなく(つまり世の中に知られておらず)、今回はじめて考案したのであれば、「鉛筆」という用語がそもそもないでしょうから、各請求項の末尾は厳密には、たとえば「筆記具」となります。

 

(6)独立項と従属項

やや専門的になりますが、ある請求項にそれ以前に記載した他の請求項を引用して「請求項○に記載の…」の文言がある請求項を「従属項(従属クレーム)」といい、そのような引用のない請求項を「独立項(独立クレーム)」といいます。独立項を「独立形式請求項」、従属項を「引用形式請求項」ということもあります。

上の例では、請求項1が独立項、請求項2と請求項3が従属項、です。

独立項は、権利範囲が最も広くなります。また、各実施例(実施形態・変形例)を一出願で権利取得しようとすれば、典型的には、それら各実施例の構成をまとめた形で独立項を表現する必要があります(独立項の考案は全ての実施例の包括概念として記載)。そして、特に好ましい形態の実施例は、従属項として記載されます。

前記(5)の鉛筆の具体例のように、従属項を活用して、徐々に考案を限定していくように複数の請求項を作成しておけば、実用新案技術評価において、請求項1は否定的評価(新規性や進歩性等がない)とされても、請求項2や請求項3は肯定的評価(新規性や進歩性等がある)を得られるかもしれません。そのような点を考慮して、考案を徐々に具体化するように、上位概念から下位概念まで、多様な請求項を作成しておくのが望ましいといえます。また、従属項を作成しておくことで、その内容が権利範囲に含まれるのか、明確にすることもできます。

なお、従属項は、独立項を限定していくものですから、有意な限定が必要です。たとえば、請求項1が「鉛筆」である場合に、請求項2において「芯が黒、赤、青、黄、…又は白である」など、すべての態様を記載したのでは実質的に意味がないことが多くなります。但し、実用新案登録を受けようとする考案を、徐々に明確化、具体化するのには使えます。

独立項と従属項について、さらに詳しくは、「独立項と従属項」をご覧ください。

 

(7)権利範囲の解釈

【請求項】に記載事項と同一事項を他社製品が備えていれば、原則として権利侵害を構成します。たとえば【請求項1】が「構成要件AとBとを備えた装置」の場合、他社の装置が構成要件AとBとを備えている限り、権利侵害となり、さらにCを備えているか否かは原則として問いません。

前述した鉛筆の事例において、請求項1の権利は、断面の形状、消しゴムの有無、芯の色などを問わず、いずれも権利範囲に含まれます。請求項2の権利は、断面の形状は六角形に限られ、円形は権利範囲外となります。但し、消しゴムの有無や、芯の色などは問わず、いずれも権利範囲に含まれます。

よくある誤解が、たとえば、請求項1において、芯の色が特定されていないことを不安に思い、「黒色の芯」と明示してしまったり、さらには軸材の断面形状や消しゴム付きである旨までを限定してしまったりすることです。

ところが、請求項1でそのような限定、つまり、黒色の芯で、軸材の断面が六角形で、消しゴム付きまで明示すれば、それらすべての要件を備えた鉛筆のみが権利範囲となります。そのため、他社製品が、芯の色を赤色にしたり、断面を四角形にしたり、又は消しゴムを付けなかったりすれば、権利侵害とはならず、他社製品の製造販売を止めることができなくなります。

要は、各請求項(特に請求項1)では、できるだけ、かんたんな記載、少ない記載の方が、一般的には権利範囲は広いことになります。但し、後述しますように、権利範囲を広げれば、それだけ審査をパスする(実用新案技術評価で肯定的な評価を得る)のが難しくなります。

 

(8)一出願に含めることができる範囲

実用新案登録請求の範囲の各請求項について、一出願に含めることができる範囲には、制限があります。各請求項の考案は、同一の又は対応する特別な技術的特徴を有している必要があります。考案の単一性を満たさない場合、実用新案登録を受けることができません。

但し、万一、一出願に含められる範囲を超えていると指摘されても、出願を分割する手続などで、救済することは可能です。

 

(9)権利範囲と権利の有効性

権利範囲の広狭は、実用新案技術評価のハードルの高低と関係します。すなわち、広めの権利範囲を目指そうとすれば、否定的な評価(新規性や進歩性等の欠如)となる可能性が高まります。逆に、肯定的な評価(新規性や進歩性等の具備)を得ようとすれば、権利範囲は狭くなりがちです

 

(10)登録後の訂正について

実用新案の場合、出願後早期に登録されるため、実用新案登録請求の範囲を修正する場合、通常、登録後となります。

登録後、実用新案登録請求の範囲の減縮等を目的とする訂正が、所定要件下、1回のみ可能です。一方、請求項の削除を目的とする訂正は、原則として、いつでも何回でも可能です。その他、実用新案登録後も、所定要件下、特許出願に変更可能ですから、場合によっては、特許出願に変更後の補正を検討します。

いずれにしても、出願時の明細書等に開示の範囲を超えることはできません。つまり、出願後に新規事項を追加することはできません。

 


参考条文

実用新案法 第5条第5項
「…実用新案登録請求の範囲には、請求項に区分して、各請求項ごとに実用新案登録出願人が実用新案登録を受けようとする考案を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない。この場合において、一の請求項に係る考案と他の請求項に係る考案とが同一である記載となることを妨げない。」

実用新案法 第5条第6項
「…実用新案登録請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
  一 実用新案登録を受けようとする考案が考案の詳細な説明に記載したものであること。
  二 実用新案登録を受けようとする考案が明確であること。
  三 請求項ごとの記載が簡潔であること。
  四 その他経済産業省令で定めるところにより記載されていること。」

実用新案法 第26条第1項
「特許法…第70条…の規定は、実用新案権に準用する。」

特許法 第70条第1項
「特許発明の技術的範囲は、願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない。」

実用新案法施行規則 第4条
「実用新案法第5条第6項第四号の経済産業省令で定めるところによる実用新案登録請求の範囲の記載は、次の各号に定めるとおりとする。
  一 請求項ごとに行を改め、一の番号を付して記載しなければならない。
  二 請求項に付す番号は、記載する順序により連続番号としなければならない。
  三 請求項の記載における他の請求項の記載の引用は、その請求項に付した番号によりしなければならない。
  四 他の請求項の記載を引用して請求項を記載するときは、その請求項は、引用する請求項より前に記載してはならない。」

 


関連情報

 


(作成2006.01.01、最終更新2021.04.20)
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