商標の類否判断(商標審査基準の読解)

商標審査基準による類否判断(類似・非類似)

他人の先願(せんがん:先の出願)の登録商標と同一・類似の商標であって、同一・類似の商品又は役務(えきむ:サービス)について使用をするものは、商標登録を受けることができません(商標法第4条第1項第11号)。

本規定について、特許庁編『商標審査基準』(改訂第15版)を確認してみます。

出願商標と引用商標(審査で挙げられた他人の登録商標)とが類似するか否か、つまり「商標の類否判断方法」について、詳しく解説されています。

なお、下記において、商標審査基準の記載そのままではありません。弊所において、編集・加工を行っています。本頁末尾の掲載日時点の弊所把握情報です。最新かつ正確な情報、さらに詳細な情報は、「特許庁編『商標審査基準』のご案内」から、特許庁ホームページにてご確認ください。

 


目次

第3 第4条第1項及び第3項(不登録事由)
十、第4条第1項第11号(先願に係る他人の登録商標)

1.商標の類否判断方法について
(1)類否判断における総合的観察
(2)商標の観察方法
(3)類否判断における注意力の基準

2.類否判断における商標の認定について
(1)外観、称呼、観念の認定について
 (ア)【外観】の認定
 (イ)【称呼】の認定
 (ウ)【観念】の認定

3.外観、称呼、観念の類否について
(1)外観の類否について
(2)称呼の類否について
 (ア)【音質】に関する判断要素
 (イ)【音量】に関する判断要素
 (ウ)【音調】に関する判断要素
 (エ)【音節】に関する判断要素
 (オ)その他、称呼の【全体的印象】が近似すると認められる要素
 (カ)上記(ア)から(オ)に該当する場合であっても、全体的印象が近似しないと認められる要素
(3)観念の類否について

4.結合商標の称呼、観念の認定及び類否判断について
(1)結合商標の称呼、観念の認定について
 (ア)結合商標は、その【一部だけ】から称呼、観念が生じ得る
 (イ)結合の強弱の程度において考慮される要素について
 (ウ)商号商標(商号の略称からなる商標を含む。)について
 (エ)立体商標について
 (オ)地域団体商標について
(2)結合商標の類否判断について
 (ア)結合商標の類否判断
 (イ) 地域団体商標について

5.立体商標について(省略)

6.動き商標の類否について(省略)

7.ホログラム商標の類否について(省略)

8.色彩のみからなる商標の類否について(省略)

9.音商標の類否について(省略)

10.位置商標の類否について(省略)

11.商品又は役務の類否判断について
(1)【商品】の類否について
(2)【役務】の類否について
(3)【商品】【役務】間の類否について
(4)商品又は役務の類否判断における【取引の実情】の考慮について

12.存続期間経過後の引用商標の取扱いについて(省略)

13.出願人と引用商標権者に支配関係がある場合の取扱い(省略)

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関連情報

 


1.商標の類否判断方法について

(1)類否判断における総合的観察

商標の類否は、
出願商標及び引用商標がその【外観】、【称呼】、【観念】等によって需要者に与える【印象】、【記憶】、【連想】等を総合して【全体的に】観察し、
出願商標を指定商品又は指定役務に使用した場合に【引用商標と出所混同のおそれ】があるか否かにより判断する。

なお、判断にあたっては
指定商品又は指定役務における【一般的・恒常的な取引の実情】を考慮するが、
当該商標が現在使用されている商品又は役務についてのみの【特殊的・限定的な取引の実情】は考慮しないものとする。

 

(2)商標の観察方法

(ア)商標の類否においては、【全体観察】のみならず、商標の構成部分の一部を他人の商標と比較して類否を判断する場合がある(【分離観察】(「富士白鳥」と「富士」)、【要部観察】(「スーパーライオン」と「ライオン」))。

(イ)商標の類否は、「時」と「場所」を異にする【離隔的観察】により判断する(「時」と「場所」を同じにして直接対比する【対比観察】は避ける)。

 

(3)類否判断における注意力の基準

商標の類否は、
・商標が使用される指定商品又は指定役務の【主たる需要者層】(例えば、専門的知識を有するか、年齢性別等の違い)
・その他指定商品又は指定役務の【取引の実情】(例えば、日用品と贅沢品大衆薬と医療用医薬品などの商品の違い)を考慮し、
指定商品又は指定役務の需要者が【通常有する注意力】を基準として判断する。

 


2.類否判断における商標の認定について

(1)外観、称呼、観念の認定について

(ア)【外観】の認定

外観とは、商標に接する需要者が、視覚を通じて認識する【外形】をいう。

 

(イ)【称呼】の認定

称呼とは、商標に接する需要者が、取引上自然に認識する【音】をいう。

例えば、次のとおり称呼の認定を行う。

(例)

(1) 「竜田川」自然に称呼される「タツタガワ」のみが生じる。
→「リュウデンセン」のような不自然な称呼は、生じない。

(2) 「紅梅\ベニウメ」自然に称呼される「コウバイ」の称呼も生ずる。

(3) 「白梅」→「ハクバイ」及び「シラウメ」のように2以上の自然な称呼を有する。
一方を振り仮名として付した場合であっても、他の一方の称呼も生ずる。

(4) 色彩を有するときは、その部分からも称呼を生ずることがある(例えば、「白い」馬や「赤い」旗の図形)。

 

(ウ)【観念】の認定

観念とは、商標に接する需要者が、取引上自然に想起する【意味】又は【意味合い】をいう。

例えば、次のとおり観念の認定を行う。

(例)

(1) 商標を構成する外国語について、【辞書】等にその意味が掲載されているとしても、当該商標に接する需要者がその意味を直ちに理解、認識し得ないと判断する場合には、当該商標からその意味による観念は生じない

(2) 商標が【色彩】を有するときは、その部分からも観念を生ずることがある(例えば、「白い」馬や「赤い」旗の図形)。

 


3.外観、称呼、観念の類否について

(1)外観の類否について

商標の【外観】の類否は、
商標に接する需要者に強く印象付けられる両外観を比較するとともに、
需要者が、視覚を通じて認識する外観の【全体的印象】が、互いに紛らわしいか否かを考察する。

 

(例)外観については類似する場合
(注)以下の例示は、外観についての類否の例であり、商標全体として、類否を判断したものではない。

(1) 「Japax」「JapaX」

(解説)両者は、語尾の「X」の大文字と小文字の差異を有するが、その差はわずかであることから、外観上全体として近似した印象を与える。

 

(例)外観については類似しない場合
(注)以下の例示は、外観についての類否の例であり、商標全体として、類否を判断したものではない。

(1) リアルな馬の(右向き)シルエットと、マンガの馬の(左向き)イラスト

(解説)両商標の馬の図形は、その構成態様に判然とした差異を有しており、外観上全体として異なる印象を与える。

(2) 獣の足跡4つと、人の足跡2つ

(解説)左図は、4個の丸みのある獣の足跡が左右互い違いの歩行跡の如く描かれているが、右図は人間の足跡であるから、外観上全体として異なる印象を与える。

(3) 「E+F」「EF」

(解説)両者は、欧文字の「E」と「F」を組み合わせてなるが、「+」の記号の有無、書体の違い、色の違いから外観上全体として異なる印象を与える。

 

(2)称呼の類否について

商標の【称呼】の類否は、
比較される両称呼の【音質】、【音量】及び【音調】並びに【音節】に関する判断要素のそれぞれにおいて、「共通」し、「近似」するところがあるか否かを比較するとともに、
両商標が称呼され、聴覚されるときに需要者に与える称呼の【全体的印象】が、互いに紛らわしいか否かを考察する。

  • 音質=母音、子音の質的きまりから生じる音の性質
  • 音量=音の長短
  • 音調=音の強弱及びアクセントの位置
  • 音節=「言語における音の単位。ひとまとまりの音として意識され、単語の構成要素となる。」(「デジタル大辞泉」小学館)

(注)以下の(ア)から(オ)の例示は、称呼が類似する例であり、商標全体として、類否を判断したものではない。

 

(ア)【音質】(母音、子音の質的きまりから生じる音の性質)に関する判断要素

(1) 相違する音の【母音を共通】にしているか、【母音が近似】しているか

(例)ともに同音数の称呼からなり、相違する1音が【母音を共通】にする場合
 「ダイマックス」と「ダイマックス」
 「セレティ」と「セレティ」

(解説)1音の相違にあって、
 (i)その音が【中間又は語尾】に位置し、【母音を共通】にするとき、
 (ii)【子音が調音の位置、方法において近似】(ともに両唇音である、ともに摩擦音であるなどのように、子音表において、同一又は近似する調音位置、方法にある場合をいう。ただし、【相違する音の位置】、【音調】、【全体の音数の多少】によって異なることがある。)し、【母音を共通】にするとき等
においては、全体的印象が近似して聴覚されることが多い。

  • 調音=「ある音声を発するために、声門より上の音声器官を閉鎖したり狭めたりすること」(「デジタル大辞泉」小学館)
  • ご参考:商標類否判断のための子音の比較(調音位置、呼気の流れ方、有声・無声の別に基づく子音間の類否関係)

 

(2) 相違する音の【子音を共通】にしているか、【子音が近似】しているか

(例)ともに同数音の称呼からなり、相違する1音が【50音図の同行】に属する場合
 「プロセッティ」と「プロセッティ」
 「ビスリン」と「ビスリン」

(解説)1音の相違にあって、相違する音の子音がともに【50音図の同行】に属し、その【母音が近似】するとき(例えば、口の開き方と舌の位置の比較から、母音エはアとイに近似し、母音オはアとウに近似する。ただし、【相違する音の位置】、【音調】、【全体の音数の多少】によって異なることがある)。

(例)ともに同数音の称呼からなり、相違する1音が【清音、濁音、半濁音の差】にすぎない場合
 「ビューレックス」と「ビューレックス」
 「バーラックス」と「バーラックス」

(解説)相違する音が濁音(ガ、ザ、ダ、バ行音)、半濁音(パ行音)、清音(カ、サ、タ、ハ行音)の違いにすぎないとき等においては、全体的印象が近似して聴覚されることが多い。

 

(イ)【音量】(音の長短)に関する判断要素

(1) 相違する1音が【長音の有無】【促音の有無】【長音と促音の差】又は【長音と弱音の差】にすぎないか

(注)弱音とは、口の開き方の小さな音()、口を開かずに発せられる音()、声帯が振動せずに発せられる音()等の聴覚上、明瞭でなくひびきの弱い音をいう。

(例)相違する音が【長音の有無】にすぎない場合
 「モガレマン」と「モガレマン」

(例)相違する音が【促音の有無】にすぎない場合
 「コレクシト」と「コレクシト」

(例)相違する音が【長音と促音の差】にすぎない場合
 「コロネト」と「コロネト」
 「アドポク」と「アドポク」

(例)相違する音が【長音と弱音の差】にすぎない場合
 「タカラト」と「タカラト」
 「イスタパック」と「イスタパック」

(解説)音の長短は、長音、促音が比較的弱く聴覚されることから、音調(音の強弱)と関係があり(通常、長音、促音の前音が強く聴覚される。)、また、長音、促音は発音したときに1単位的感じを与えることから、1音節を構成し音節に関する判断要素とも関係がある。

 

(ウ)【音調】(音の強弱及びアクセントの位置)に関する判断要素

(1) 相違する音が【ともに弱音】であるか、【弱音の有無】にすぎないか、【長音と促音の差】にすぎないか(弱音は通常、前音に吸収されて聴覚されにくい。)

(例)相違する1音が【ともに弱音】である場合
 「ダネル」と「ダネル」
 「シーピーエ」と「シーピーエ

(例)【弱音の有無の差】にすぎない場合
 「ブリテックス」と「ブリテックス」
 「デントレック」と「デントレック」

 

(2) 相違する音が【ともに中間又は語尾に位置】しているか

(例)同数音からなる【比較的長い称呼で1音だけ異なる】場合
 「サイトロン」と「サイトロン」
 「パラビタミン」と「パラビタミン」

(解説)中間音、語尾音は比較的弱く聴覚されることが多い。

 

(3) 【語頭又は語尾】において、共通する音が【同一の強音】(聴覚上、ひびきの強い音)であるか

(例)【語頭】において共通する音が【同一の強音】の場合
ロトン」と「ロトン」
ヴェロル」と「ロル」

(解説)これが強音であるときには、全体的印象が近似して聴覚されることが多い。

 

(4) 欧文字商標の称呼において【強めのアクセントがある場合に、その位置が共通】するか

(例)【強めのアクセントの位置】が共通する場合
 「SUNRICHY」と「SUNLICKY」
 (サンーの称呼)(サンーの称呼)
 「RISCOAT」と「VISCOAT」
 (ートの称呼)(ートの称呼)

(解説)音の強弱は音自体からだけでなく、【相違する音の位置】、【全体の音数の長短】等によって、相対的にその強弱が聴覚されることが多い。(例えば、相違する1音が音自体において、弱音であっても、その前後の音も弱音である場合には弱音とはいえない場合がある。)

 

(エ)【音節】に関する判断要素

(1) 音節数(音数)の比較において、【ともに多数音】であるか

(注)仮名文字1字が1音節をなし、拗音(「キャ」、「シャ」、「ピョ」等)は2文字で1音節をなす。長音(符)、促音(「ッ」)、撥音(「ン」)もそれぞれ1音節をなす。

(例)【比較的長い称呼】【1音だけ多い】場合
 「ビプレックス」と「ビプレックス」

(解説)1音の相違があっても、音数が比較的多いときには、全体的印象が近似して聴覚されることが多い。

 

(2) 一つのまとまった感じとしての【語の切れ方、分かれ方】(シラブル、息の段落)において共通性があるか

(例)一つのまとまった感じとして語が切れる場合
 「バーコラルジャックス」と「バーコラルックス」

(解説)その共通性があるときには、全体的印象が近似して聴覚されることが多い。

 

(オ)その他、称呼の【全体的印象】が近似すると認められる要素

(1) 2音相違するが、【上記(ア)から(エ)に挙げる要素の組合せ】である場合

 「コレクシット」と「コレスキット」

 「アレジエール」と「アリジェール」

(2) 相違する1音が【拗音と直音の差】にすぎない場合

 「シャボネット」と「ボネット」

(3) 相違する音の一方が【外国語風の発音】をするときであって、これと他方の【母音又は子音が近似】する場合

 「TYREX」と「TWYLEX」
 (タイレックスの称呼)(トウイレックスの称呼)

 「FOLIOL」と「HELIOL」
 (フォリオールの称呼)(リオールの称呼)

(4) 相違する1音の【母音又は子音が近似】する場合

 「サリージェ」と「サリージー

 「セレック」と「セレック」

(5) 発音上、聴覚上【印象の強い部分が共通】する場合

 「ハヤ」と「パッヤ」

(6) 前半の音に多少の差異があるが、【全体的印象が近似】する場合

 「ポピスタン」と「ホスピタン」

 

(カ)上記(ア)から(オ)に該当する場合であっても、全体的印象が近似しないと認められる要素

(1) 【語頭音】【音質】又は【音調】著しい差異があること

(2) 相違する音が【語頭音でないが】その【音質】(例えば、相違する1音がともに同行音であるが、その母音が近似しないとき)【音調】(例えば、相違する音の部分に強めアクセントがあるとき)上著しい差異があること

(3) 【音節】に関する判断要素において
 (i) 称呼が【少数音】であること
 (ii) 【語の切れ方、分かれ方】(シラブル、息の段落)が明らかに異なること

 

(3)観念の類否について

商標の【観念】の類否は、
商標構成中の文字や図形等から、需要者が想起する【意味】又は【意味合い】が、互いにおおむね同一であるか否かを考察する。

(例)観念については類似する場合
(注)以下の例示は、観念についての類否の例であり、商標全体として、類否を判断したものではない。

(1) 「でんでんむし物語」「かたつむり物語」

(解説)「でんでんむし」及び「かたつむり」の語は、いずれも同じ意味を表すものとして一般に理解認識されている。

 

(例)観念については類似しない場合
(注)以下の例示は、観念についての類否の例であり、商標全体として、類否を判断したものではない。

(1) 「EARTH」「terre」
 (指定商品 第9類「テレビ」)(指定商品 第9類「テレビ」)

(解説)当該指定商品に関する我が国の需要者の外国語の理解度からすれば、「EARTH」からは「地球」の観念を生じるが、フランス語「terre」(テール)からは「地球」の観念を生じないため観念は異なる。なお、商品名等にフランス語が一般に採択されている商品等の分野においては、当該観念が生じる場合がある

(2) 「虫(文字)」「テントウムシ(図形)」

(解説)右の図形は、「虫」ではなく、「テントウムシ」と認識されるため、観念は異なる。

(3) 「ギター(図形)」「ヴァイオリン(図形)」

(解説)左の図形は、「ギター」と認識され、右の図形は、「ヴァイオリン」と認識されるため、観念は異なる。

 


4.結合商標の称呼、観念の認定及び類否判断について

(1)結合商標の称呼、観念の認定について

(ア)結合商標は、商標の各構成部分の結合の強弱の程度を考慮し、各構成部分がそれを分離して観察することが【取引上不自然】であると思われるほど強く結合しているものと認められない場合には、その【一部だけ】から称呼、観念が生じ得る

 

(イ)結合の強弱の程度において考慮される要素について

文字のみからなる商標においては、
「大小」があること、「色彩」が異なること、「書体」が異なること、平仮名・片仮名等の「文字の種類」が異なること等の【商標の構成上の相違点】
【著しく離れて記載されていること】
【長い称呼を有すること】
【観念上のつながりがないこと】等を考慮して判断する。

 

(例)【構成上の相違点】、【長い称呼を有すること】等が認められる場合

 「富士白鳥」(文字の大小)
 「サンムーン」(書体の相違)
 「鶴亀   万寿」(著しく離れて記載)
 「chrysanthemumbluesky」(長い称呼)
 「ダイヤフロンティア」(観念上のつながりがない)

 

(ウ)商号商標(商号の略称からなる商標を含む。)について

商標の構成中に、商号の一部分として通常使用される「株式会社」「商会」「CO.」「K.K.」「Ltd.」「組合」「協同組合」等の文字が含まれる場合には、これらの文字を除外した称呼、観念も生ずるものとする。

 

(エ)立体商標について

(1) 立体商標は、その全体ばかりでなく、特定の方向から観た場合に視覚に映る姿に相応した称呼又は観念も生じ得る。

(2) 立体商標が、立体的形状と文字の結合からなる場合には、当該文字部分のみに相応した称呼又は観念も生じ得る。

 

(オ)地域団体商標について

地域団体商標として登録された商標については、使用をされた結果商標全体の構成が不可分一体のものとして需要者の間に広く認識されている事情を考慮し、商標全体の構成を不可分一体のものとして判断する。

 

(2)結合商標の類否判断について

(ア)結合商標の類否は、例えば、次のように判断するものとする。ただし、著しく異なった外観、称呼又は観念を生ずることが明らかなときは、この限りでない。

(1) 【識別力を有しない文字】を構成中に含む場合

指定商品又は指定役務との関係から、【普通に使用される文字】【慣用される文字】又は【商品の品質、原材料等を表示する文字】、若しくは【役務の提供の場所、質等を表示する識別力を有しない文字】を有する結合商標は、原則として、それが付加結合されていない商標と類似する

(例)類似する場合

指定役務「写真の撮影」について、「スーパーライオン」と「ライオン」
 (解説)「スーパー」は、役務の質を表示する。

指定商品「せんべい」について、「銀座小判」と「小判」
 (解説)「銀座」は、商品の産地・販売地を表示する。

指定商品「被服」について、「グリーンジャイス」と「ジャイス」
 (解説)「グリーン」は、商品の品質(色彩)を表示する。

指定商品「清酒」について、「男山富士」と「富士」
 (解説)「男山」は、清酒の慣用商標である。

指定役務「宿泊施設の提供」について、「黒潮観光ホテル」と「黒潮」
 (解説)「観光ホテル」は、「宿泊施設の提供」の慣用商標である。

 

(2) 【需要者の間に広く認識された商標】を構成中に含む場合

指定商品又は指定役務について【需要者の間に広く認識された他人の登録商標】と【他の文字又は図形等】と結合した商標は、「その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの」又は「観念上の繋がりがあるもの」を含め、原則として、その他人の登録商標と類似するものとする。ただし、その他人の登録商標の部分が既成の語の一部となっているもの等を除く。

(例)類似する

指定商品「化粧品」について
 「ラブロレアル」と「L‘OREAL」「ロレアル」

指定商品「かばん類」について
 「PAOLOGUCCI」と「GUCCI」

指定役務「航空機による輸送」について
 「JALFLOWER」と「JAL」

指定役務「映画の制作」について
 「東宝白梅」と「東宝」

指定商品「テープレコーダ」について
 「SONYLINE」又は「WALKMAN LINE」と、「SONYWALKMAN」

 

(例)類似しない

指定商品「金属加工機械器具」について
 「TOSHIHIKO」と「IHI」

指定商品「時計」について
 「アルバイト」と「ALBA/アルバ」

指定商品「遊戯用機械器具」について
 「せがれ」と「セガ」

(注)需要者の間に広く認識されているか否かの認定に当たっては、この基準第3の九(第4条第1項第10号)の2.を準用する。

 

(3) 商標の構成部分中【識別力のある部分】が【識別力のない部分】に比較して著しく小さく表示された場合であっても【識別力のある部分】から称呼、観念を生ずるものとする。

 

(4) 商標の一部が、それ自体は自他商品・役務の識別力を有しないものであっても、使用により識別力を有するに至った場合は、その識別力を有するに至った部分から称呼、観念を生ずるものとする。

 

(イ) 地域団体商標について

地域団体商標として登録された商標と同一又は類似の文字部分を含む商標は、原則として、地域団体商標として登録された商標と類似するものとする。

 


5.立体商標について

省略

 


6.動き商標の類否について

省略

 


7.ホログラム商標の類否について

省略

 


8.色彩のみからなる商標の類否について

省略

 


9.音商標の類否について

省略

 


10.位置商標の類否について

省略

 


11.商品又は役務の類否判断について

商品又は役務の類否は、
商品又は役務が通常同一営業主により製造・販売又は提供されている等の事情により、
出願商標及び引用商標に係る指定商品又は指定役務に同一又は類似の商標を使用するときは、同一営業主の製造・販売又は提供に係る商品又は役務と誤認されるおそれがあると認められる関係にあるかにより判断する。

 

(1)【商品】の類否について

【商品】の類否を判断するに際しては、例えば、次の基準を【総合的に】考慮するものとする。この場合には、原則として、類似商品・役務審査基準によるものとする。

(1) 【生産部門】が一致するかどうか
(2) 【販売部門】が一致するかどうか
(3) 【原材料】及び【品質】が一致するかどうか
(4) 【用途】が一致するかどうか
(5) 【需要者の範囲】が一致するかどうか
(6) 【完成品と部品との関係】にあるかどうか

 

(2)【役務】の類否について

【役務】の類否を判断するに際しては、例えば、次の基準を【総合的に】考慮するものとする。この場合には、原則として、類似商品・役務審査基準によるものとする。

(1) 【提供の手段、目的又は場所】が一致するかどうか
(2) 【提供に関連する物品】が一致するかどうか
(3) 【需要者の範囲】が一致するかどうか
(4) 【業種】が同じかどうか
(5) 【当該役務に関する業務や事業者を規制する法律】が同じかどうか
(6) 【同一の事業者が提供するもの】であるかどうか

 

(3)【商品】【役務】間の類否について

【商品】と【役務】の類否を判断するに際しては、例えば、次の基準を【総合的に】考慮した上で、【個別具体的に】判断するものとする。この場合には、原則として、類似商品・役務審査基準によるものとする。

(1) 「商品の製造・販売」と「役務の提供」が【同一事業者】によって行われているのが一般的であるかどうか
(2) 「商品」と「役務」の【用途】が一致するかどうか
(3) 「商品の【販売場所】」と「役務の【提供場所】」が一致するかどうか
(4) 【需要者の範囲】が一致するかどうか

 

(4)商品又は役務の類否判断における【取引の実情】の考慮について

本号に該当する旨の拒絶理由通知において、引用した登録商標の商標権者(以下「引用商標権者」という。)から、「引用商標の指定商品又は指定役務」と「出願商標の指定商品又は指定役務」が類似しない旨の陳述がなされたときは、
類似商品・役務審査基準にかかわらず、出願人が主張する商品又は役務の取引の実情(ただし、上記(1)から(3)に列挙した事情に限る)を考慮して、商品又は役務の類否について判断することができるものとする。

なお、以下のような場合には、取引の実情を考慮することはできない。

(1) 引用商標権者が、単に商標登録出願に係る商標の登録について承諾しているに すぎない場合

(2) 類似商品・役務審査基準において類似すると推定される指定商品又は指定役務 のうち、一部についてしか類似しない旨の陳述がなされていない場合

(3) 引用商標の商標権について専用使用権又は通常使用権が設定登録されている場合にあって、専用使用権者又は通常使用権者が類似しない旨の陳述をしていない場合

 


12.存続期間経過後の引用商標の取扱いについて

省略

 


13.出願人と引用商標権者に支配関係がある場合の取扱い

省略

 


特許庁編『商標審査基準』のご案内

最新かつ正確な情報、さらに詳細な情報は、次のURLから、特許庁ホームページにてご確認ください。

  • 商標審査基準(特許庁)
    https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/trademark/kijun/index.html

 


関連情報

 


(作成2022.04.06、最終更新2022.04.06)
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