特許の重点2:出願手続

特許の重要な点を確認してみる「特許の重点」シリーズです。

第2回目は、特許出願手続です。

どのような書類が必要なのか、各書類の意味や読み方などについて、確認してみます。

 


(1)特許出願には、「願書」「明細書」「特許請求の範囲」「要約書」の他、必要に応じて「図面」を提出する。

◆「願書」で発明者や出願人(権利者)を特定し、「特許請求の範囲」で権利範囲を特定し、その説明を「明細書」や「図面」で行う。

◆「要約書」の記載は、権利範囲に影響しない。

◆詳しくは、次のリンク先をご覧ください。

 


(2)「特許請求の範囲」では、【請求項】と呼ばれる項に区分して、各請求項ごとに「特許を受けようとする発明」を特定する。

◆特許請求の範囲の例

 【請求項1】軸の断面が六角形である ことを特徴とする鉛筆。
 【請求項2】軸の一端部に消しゴムが設けられた ことを特徴とする請求項1に記載の鉛筆。

◆請求項末尾の「鉛筆」について特許が欲しい、と請求している。そして、どのような鉛筆か、説明(修飾)が付されている。

◆請求項2に「請求項1に記載の」とある。請求項1の構成要件を備え、さらに請求項2に記載の構成要件をも備えることを意味する。

◆請求項1では、断面六角形鉛筆を権利請求し、請求項2では、消しゴム付きの断面六角形鉛筆を権利請求している。

◆他の請求項を引用しないものを「独立項」、引用するものを「従属項」という。上記の例では、請求項1が独立項、請求項2が従属項である。

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(3)「特許請求の範囲」は、詳しく書けば書くほど、権利範囲が狭まる。しかし、その分、特許されやすくなる。

◆「軸の断面が六角形の鉛筆」なら、軸の断面が六角形である限り、消しゴムの有無や芯の色は問わず、いずれも権利範囲に含まれる。

◆「軸の断面が六角形で、消しゴム付きの赤鉛筆」なら、軸の断面が六角形で、消しゴムが付いていて、芯が赤色の鉛筆のみが権利範囲となる。そのため、軸の断面が六角形でも、消しゴムが付いていなかったり、芯が黒色であったりすると、権利範囲に含まれない。

◆「軸の断面が六角形の鉛筆」を権利請求して出願したが、審査において、断面六角形鉛筆が出願前から知られていると分かった場合、特許を受けることはできないが、消しゴム付きに限定すれば、特許を受けられるかもしれない。

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(4)「特許請求の範囲」と「明細書・図面」との関係

◆「特許請求の範囲」に記載がなければ、「明細書」や「図面」に記載があっても、特許を受けることはできない。

◆「特許請求の範囲」に記載がなくても、「明細書」や「図面」に記載があれば、他者が先に出願していない限り、他者に特許を取られるおそれはなくなる。

◆「明細書」や「図面」に記載があれば、その範囲で、出願後に「特許請求の範囲」を変更できる場合もある。

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(5)発明には、「物の発明」「方法の発明」「物を生産する方法の発明」という3つのカテゴリーがある。

◆たとえば、物の発明「鉛筆」、方法の発明「鉛筆の保管方法」、物を生産する方法の発明「鉛筆の製造方法」がある。

◆「特許請求の範囲」において、どのカテゴリーの発明を権利請求するかに応じて、権利行使できる態様が異なってくる。

◆一般的に、物の発明は侵害発見が容易であるが、方法の発明は侵害発見(方法が使用されているかの確認)が容易ではない。また、「鉛筆の保管方法」の特許を取得しても、個人的な使用まで制限できない。

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(6)出願書類に記載しなかった事項を、出願後に加入することはできない。

◆特許は、1日でも早く出願した者に付与される。そのため、取り敢えず出願日を確保するために出願し、あとで内容を補充することは許されない。出願後の新規事項の追加は禁止される。

◆出願後、内容を修正したい場合、新規事項の追加がなければ、通常、「補正」できる。それ以外は、新たな出願をする。

◆新たな出願をする際、先の出願日から1年以内なら、「国内優先権」を主張して出願することで、その後の手続を一本化できる。先の出願に記載されている発明については、先の出願時を基準に審査され、後の出願で加入された発明については、後の出願時を基準に審査される。

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(7)自分で出願してもよいし、弁理士に頼むこともできる。

◆自分で出願書類を作成して、出願することができる。

◆特許事務所の弁理士に依頼して、出願することもできる。

◆特許庁統計に基づく弊所計算によれば、代理人を介さない本人出願率は、特許の場合、6.4%である(2021年)。

◆日本国内に住所又は居所を有しない者(在外者)は、日本国籍を有していても、原則として、国内の代理人によらなければ(特に出願後の)各種手続ができない。

◆特許庁は東京にあるが、インターネットで出願したり、郵送で出願したりすることもできる。

◆子どもでも特許を受けられるが、手続は、通常、親にしてもらう必要がある。但し、実際の手続は、弁理士に依頼することができる。

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(8)外国でも特許が欲しい場合、別途、外国出願する必要がある。

◆外国出願の方法として、(a)保護を希望する国への直接出願と、(b)特許協力条約に基づく国際出願(PCT出願)とがある。

◆最初の国内出願から1年以内なら、パリ条約に基づく優先権を主張して、外国出願することができる。その場合、新規性や進歩性などの特許要件は、国内出願時を基準に判断される。

◆国際出願(PCT出願)しても、最終的には、各国への移行手続が必要である。世界的な統一特許が付与される訳ではない。

◆国際出願(PCT出願)は、通常、日本語又は英語で書類を作成し、日本国特許庁に提出する。つまり、日本語で日本国特許庁に手続できる。国際出願すると、原則としてPCT締約国のすべてに出願したのと同等の効果を得られる。出願後、国際調査がなされ、特許性の見解を得られる。所望の場合、書類を補正したり、国際予備審査を受けたりできる。特許性があることを確認後、翻訳して、保護を求める国へ国内移行する。国内移行まで、通常、優先日から30ヶ月の猶予が与えられる。

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(作成2022.12.31、最終更新2023.01.28)
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