特許の重点4:特許後

特許の重要な点を確認してみる「特許の重点」シリーズです。

第4回目は、特許後の話です。

特許権の存続期間、特許料の納付、特許権の侵害、他の権利との利用・抵触などについて、確認してみます。

 


(1)特許権の存続期間は、出願日から20年をもって終了する。

◆特許権は、通常、出願日から20年まで保有することができる。

◆医薬品等の分野では、5年を限度として延長できる場合もある。

◆詳しくは、次のリンク先をご覧ください。

 


(2)特許後も、毎年、特許料の納付が必要である。

◆特許後、独占権に対する対価として、毎年、特許料の支払いが必要である。

◆第1~3年分は、特許前に納付しているが、第4年目以降も権利を維持するには、各年分の特許料を前年以前に納付しなければならない。たとえば、第4年分は、第3年目が終了する前に納付する必要がある。

◆権利者自らが期限管理して納付する。期限までに納付しないとき、権利は消滅する。

◆特許料は段階的に高くなる。費用対効果を考慮して、納付の要否を決める。

  • 特許料(2023年1月現在)
    第1~3年 毎年 4,300円+(請求項数×300円)
    第4~6年 毎年 10,300円+(請求項数×800円)
    第7~9年 毎年 24,800円+(請求項数×1,900円)
    第10年~ 毎年 59,400円+(請求項数×4,600円)
  • 特許庁統計によれば、平均請求項数は10である(2021年)。その場合、第1~3年は、毎年7,300円だが、第10年目以降は、毎年105,400円となる。
  • 代理人(特許事務所など)に納付を依頼する場合、別途、納付手数料が必要である。

◆中小企業、個人、大学などは、減免措置を受けられる場合がある。

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(3)特許権の効力について

◆特許権者は、業として、特許発明を独占排他的に実施することができる。

◆独占できる範囲は、「特許請求の範囲」の記載に基づいて定められる。

◆個人的・家庭的な実施は、特許権侵害とはならない。

◆契約で実施権(ライセンス)を付与された者は、実施できる。また、法律で実施権が生じる場合もある。

◆試験又は研究のためにする実施、医師の処方箋による調剤行為などには、特許権の効力は及ばない。

◆特許権侵害に対しては、製造販売の差止めや、損害賠償などを請求できる他、粗悪品提供者には謝罪広告掲載などを請求することもできる。

◆権利行使しやすいように、所定の行為を侵害とみなしたり(間接侵害)、侵害した者には過失がある旨を推定したり、損害額を推定したりする規定が設けられている。

◆侵害した者への刑事罰の規定も設けられている。

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(4)特許権の侵害とは

◆原則として、特許請求の範囲に記載した構成要件の全ての実施が、侵害となる。

◆特許発明が「構成要件AとBとを備える装置」の場合、他社の装置が構成要件AとBとを備えている限り、権利侵害となり、さらにCを備えているか否かは原則として問わない。

◆「軸の断面が六角形の鉛筆」なら、軸の断面が六角形である限り、消しゴムの有無や芯の色は問わず、いずれも権利範囲に含まれる(侵害となる)。しかし、断面が円形であれば、権利範囲に含まれない(侵害ではない)。

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(5)特許権があるからといって、特許発明を実施できるとは限らない。

◆実施すれば他人の特許権や意匠権などを侵害してしまう場合、特許権があっても、実施することはできない。

◆たとえば、「消しゴム付きの断面六角形鉛筆」について特許を得ても、先に他人が「断面六角形鉛筆」について出願して特許を得ていれば、実施することはできない。消しゴム付きであっても、「断面六角形鉛筆」を実施することに変わりはないからである。

◆つまり、基本発明「断面六角形鉛筆」について特許がある場合において、改良発明「消しゴム付きの断面六角形鉛筆」について特許を得ても、改良発明を実施すると基本発明を実施してしまう場合(利用関係にある場合)、改良発明を無断で実施することはできない。

◆逆に、基本発明について特許があるからといって、安心することもできない。あとから改良発明について特許が成立した場合、その範囲では、実施できなくなってしまう。常に改良・改善を進めていかなければならない。

 


(6)特許が取消・無効となることもある。

◆特許後、特許異議申立てや特許無効審判請求を受け、特許が取り消されたり、特許が無効とされたりすることもある。

◆たとえば、特許後に、新規性や進歩性を否定する文献が新たに見つかった場合である。

 


(7)権利者は、特許品やその包装に、特許表示を付するように努めなければならない。

◆物の発明の場合は「特許第○○○○○○○号」と表示する。

◆生産方法の発明の場合は「方法特許第○○○○○○○号」と表示する。

◆特許表示は義務ではない。特許表示しないことで罰則はない。

◆特許品以外に特許表示したり、権利消滅後も特許表示することは、虚偽表示として禁止される。違反した場合、刑事罰の対象となり得る。

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(作成2023.01.21、最終更新2023.01.22)
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