特許率(特許査定率・特許取得率)とその注意点

特許される割合、つまり特許率(特許査定率・特許取得率)について、統計的な数値をご紹介します。

また、特許率を比較する際の注意点、ランキングの意味、についても解説します。

なお、統計の数値自体は、特許庁編『特許行政年次報告書』に掲載のものです。

目次

 


全体の特許査定率

特許出願について、審査を受けたものの内、特許される割合は?

特許査定率は、75.9%です(2022年)。

なお、特許査定率=特許査定件数/(特許査定件数+拒絶査定件数+ファーストアクション後の取下げ・放棄件数)です。

「特許事務所ごと、会社ごと、大学の特許査定率」と、「特許事務所の特許査定率を比較する際の注意点」については後述します。

特許される割合:特許査定率の推移:2004年~現在

 


特許事務所ごとの特許率(特許査定率・特許取得率)

特許事務所ごと(または弁理士ごと)の特許率?、特許率を比較する際の注意点?、ランキングの意味?

通常、特許事務所ごとの特許率(特許査定率・特許取得率)を知ることはできません。仮にできても、次の理由により、単純に比較・ランキングすることはできません

  • それぞれ異なる案件を処理しており、同一案件での力量を測るものではない。
  • 技術分野や取扱件数などにより、特許率は変動する。仮に1件だけを受任して特許にできれば特許率100%となってしまう。
  • 特許の場合、権利範囲を狭めれば特許率を高くできる。一般に、広めの権利範囲を目指そうとすれば、審査で拒絶される可能性が高まる一方、審査での拒絶を避けようとすれば(特許を取ることを最優先にすれば)、権利範囲は狭くなりがちとなる。特許の内容(権利範囲)も考慮する必要がある。
  • 出願人(特許事務所への依頼者)により、狭い範囲なら特許は不要との考えと、狭い範囲でも特許が欲しいとの考えがある。依頼者の考えにより、事務所の特許率が左右される。なお、「狭い範囲」とは、「(想定していた)希望の権利範囲でない範囲」ということができる。特許の成立や維持には費用がかかるため、費用対効果が考慮される。

「誤導又は誤認のおそれのある広告等」あるいは「誇大又は過度な期待を抱かせる広告等」に当たるとして、所定の場合を除き、特許率を明示した広告は禁止されております(日本弁理士会「会員の広告に関するガイドライン」)。「所定の場合」とは、「誤導又は誤認を生じるおそれがなく、誇大又は過大な期待を抱かせるものでないことが明らかな場合」をいいます(会員の広告等に関する規則 第4条の2第2号括弧書き)。

詳しくは、次のリンク先をご覧ください。

 


会社ごとの特許査定率・最終特許率

主要な会社の特許率は?、その意味は?

特許庁のウェブサイトには、次の資料が掲載されています。審査段階の特許査定率と、審判段階を含んだ最終特許率とが掲載されています。

  • 特許登録件数上位200社(2022年)の出願・審査関連情報(https://www.jpo.go.jp/resources/report/nenji/2023/document/index/020211.pdf)

但し、前述した「特許事務所ごとの特許率(特許査定率・特許取得率)」で述べたのと同様の事情はあると思います。

一方で、出願人の技術力、出願人や代理人の先行技術調査力なども関係すると思われます。

その他、国内企業と外国企業との差もあると思います。

 


大学の特許査定率

大学の特許率は?

大学の特許査定率は、79%です(2022年)。
(出願人が大学長又は大学を有する学校法人名の出願及び承認TLOの出願を検索・集計。企業等との共同出願を含む。)

前述した全体の特許率75.9%よりも高くなっています。

一部の大学については、前述した「会社ごとの特許査定率・最終特許率」でご紹介の「特許登録件数上位200社(2022年)の出願・審査関連情報」にも掲載されています。

 


関連情報

 


(作成2022.07.28、最終更新2023.07.29)
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