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実用新案のメリット・デメリット【動画】

実用新案は意味がないのかに関連して、実用新案のメリットとデメリットについて、解説動画をYouTubeに投稿しました(12分54秒)。

実用新案のメリットとデメリットについて解説します。

実用新案は意味がないことはないです。実用新案も意味があります。実際、実用新案でも「1億円を超える高額の損害賠償請求」や「製造販売等の差止請求」が認められることもある“事実”があります。

実用新案にはデメリットもあります。大手企業の多くが特許を選択するのは事実です。しかし、資金力に差がありますから、大手企業の知財戦略を真似る必要はありません。

資金力に不安がなければ特許、手軽に安価にということであれば実用新案です。

2024年1月現在の情報であり、弊所の見解です。

なお、再生速度は変更可能です。画面右下の歯車のアイコンをクリックいただき、1.25倍、1.5倍などに変更できます。
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実用新案のメリット・デメリット【動画】

 


(作成2024.01.03、最終更新2024.01.03)
出典を明示した引用などの著作権法上の例外を除き、無断の複製、改変、転用、転載などを禁止します。
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小山特許事務所のYouTubeチャンネルの再生リスト

知財動画のご紹介

小山特許事務所の弁理士小山は、「小山特許事務所のYouTubeチャンネル」として、特許、実用新案、意匠登録、商標登録などの知財について、各種の解説動画をYouTubeに投稿しております。投稿は、分野別に「再生リスト(プレイリスト)」にまとめています。

以下は、その再生リストへのリンク集となっています。

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特許の解説動画(その1)

動画再生リスト「特許 その1」=特許とは、特許の取り方、特許出願から登録までの流れ、特許費用などの動画

 

特許の解説動画(その2)

動画再生リスト「特許 その2」=出願審査の請求時期、特許拒絶理由、進歩性判断などの動画

 

特許法の逐条解説の動画

動画再生リスト「特許法の条文解読」=条文の読み方、特許法と実用新案法の用語の対応関係、特許法第1条~の逐条解説の動画

 

実用新案の解説動画

動画再生リスト「実用新案登録」=実用新案登録とは、実用新案権の取り方、特許との違い、実用新案登録出願から登録までの流れなどの動画

 

意匠登録の解説動画

動画再生リスト「意匠登録」=意匠登録とは、意匠権の取り方、意匠登録の例、意匠登録出願から登録までの流れなどの動画

 

商標登録の解説動画

動画再生リスト「商標登録」=商標登録とは、商標権の取り方、商標登録の必要性、商標登録出願から登録までの流れなどの動画

 

商標類否判断の解説動画

動画再生リスト「商標類否判断」=商標類否判断手順、商標類否判断のための子音の比較などの動画

 

図面関係の解説動画

動画再生リスト「図面関係」=斜視図・等角図の描き方、コンパスによる楕円の描き方、六面図などの動画

 

特許庁統計の解説動画

動画再生リスト「特許庁統計」=特許庁統計の特実編、意匠編、商標編の動画

 

その他の動画

動画再生リスト「その他」=知的財産・知財とは、特許庁の期限通知サービスのご紹介、特許事務所・弁理士の守秘義務などの動画

 


人気の動画は、次のとおりです。

 


(作成2024.01.02、最終更新2024.01.07)
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意匠審決の読解12(類否判断事例)

【12】不服2022-13618

意願2021-6762「収納容器」拒絶査定不服審判事件

原査定を取り消す。本願の意匠は、登録すべきものとする。

意匠法第3条第1項第3号(新規性)、第10条第1項(関連意匠)

【弊所メモ】公知日が不明、引用意匠として認定できない、各部の具体的形状が不明、当該分野において他にも見受けられる、需要者が注目、共通点が需要者にまとまった1つの美感を与える、関連意匠

◆図面・写真・画像は、審判番号から、特許庁の審決公報をご覧ください。

 


第1 原査定における拒絶の理由及び引用意匠

(1)原査定における拒絶の理由について

 引用意匠は、本願意匠の出願前に、下記ウェブサイトに掲載された収納容器の意匠(別紙第2)である。

 ・掲載者の名称 Amazon.com, LLC

 ・表題 Amazon.com: HOMZ Handles, Storage Bin, Waterproof, Light Blue Base, White Rope Flexible Tub : Home & Kitchen

 ・・・・・

(2)引用意匠について

 別紙第2の第2頁によれば、「←引用意匠」の挿入見出しで示された「意匠A」は、本体部が青灰色であり、把手部が薄灰色である。そして、第3頁には、「※掲載年月日・2020年12月8日」の挿入見出しが添えられたレビュー内に「意匠B」が現されており、意匠Bの本体部は濃褐色であって、把手部は黄白色である。

 そうすると、意匠Aと意匠Bは、色彩の異なる別意匠であると判断せざるを得ず、意匠Aについては、公知となった日時が不明である。したがって、意匠Aを引用意匠として認定することはできないので、本願意匠は、原査定における拒絶の理由に引用した意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできない。

 なお、意匠Bについては、斜視方向から見た形状等が現されているのみであり、また、内部に多数の木片が収められているため、各部の具体的形状が不明であるから、本願意匠の形状等と十分に対比をすることができない。

 

第2 本願意匠が意匠法第10条第1項の規定に該当するか否かについて

 本願意匠と本意匠は、意匠に係る物品が同一であり、形状等についても、主たる相違点が本体部の上端形状であって、本願意匠のその形状が水平状であるところ、本体部の上端形状を水平状にすることは収納容器の物品分野において他にも見受けられるから、需要者が本願意匠の上端形状に注目するとはいい難いので、本体部の上端形状に係る相違点は類否判断に大きな影響を及ぼさない。

 他方、本願意匠と本意匠は、本体部の長手方向の両側面に荒縄の把手部が設けられている点で共通しており、この共通点が需要者にまとまった1つの美感を与えているから、本願意匠は本意匠に類似するということができる。

 したがって、本願意匠は、関連意匠として意匠登録を受けることができるものである。

 


関連情報

 


弊所独自の観点で、編集・加工を行っています。
正確な全文は、審判番号から審決公報をご確認ください。
(作成2023.12.31、最終更新2023.12.31)

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特許と意匠の違い

特許(とっきょ)と意匠(いしょう)との違いについて、具体例を挙げて、わかりやすく解説します。

保護対象、権利内容、具体例、登録要件、審査期間、権利期間、費用、出願件数などのまとめです。

特許と意匠以外の比較として、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権などの要点と具体例については、「知的財産(知財)とは?」をご覧ください。

目次

 


特許と意匠の違い【概要】

特許は、技術的アイデア(発明)を保護しますが、意匠登録は、物品・建築物・画像のデザインを保護します。

たとえば、シャープペンシルをはじめて発明した場合、その技術(芯の繰り出し機構)は、特許で保護されます。また、そのデザインは、意匠登録で保護されます。特許と意匠登録との重複保護も可能です。

一方、既にシャープペンシルの構造自体は知られている状況で、(技術的に新しくなくても)デザインが新しければ、そのデザインは意匠登録で保護されます。シャープペンシルの構造に改良を加えた場合、その改良の程度によっては、特許でも保護されます。

特許と意匠登録の違いについて、詳しくは、下記比較表をご覧ください。

 


特許と意匠の比較表【詳細】

  特許(特許権) 意匠登録(意匠権)
保護対象

技術的アイデア「発明」
・「物」の発明(各種装置、日用品、プログラムなど)
・「方法」の発明(製造方法、加工方法など)

物品・建築物・画像のデザイン「意匠」
・全体意匠(物品等の全体のデザイン)
・部分意匠(物品等の一部のデザイン)
権利内容 発明の独占実施 登録意匠及びその類似意匠の独占実施

具体例1(シャープペンシルの場合)

シャープペンシル

◆シャーペンの特許例
・芯の繰り出し機構
・芯ケースの構造
・芯の材料
・芯の製造方法など
◆シャーペンの意匠登録例
・シャープペンシルの外観
・芯ケースの外観など

具体例2(ヤマザキビスケット株式会社の成型ポテトチップ『chip star(チップスター)』(登録商標)の場合)
(※仮想例を含みます。)

チップスター

◆チップスターの特許例
・スナック菓子の製造装置
・スナック菓子の製造方法
・包装容器の構造など
◆チップスターの意匠登録例
・スナック菓子の外観
・包装容器の外観など
主な登録要件 いずれも特許庁に出願して審査をパスしなければならない。
新規性:先行技術と同一でないこと
進歩性:先行技術から容易に発明できないこと
先願(せんがん):出願日が早いこと
新規性:公知意匠と同一又は類似でないこと。
創作非容易性:容易に創作できないこと。
先願(せんがん):出願日が早いこと。
審査期間 ◆出願後、審査を受けるには3年以内に出願審査請求が必要で、その出願審査請求から審査結果の最初の通知までの期間は、平均10.1か月(2022年) ◆出願後、自動的に審査に付され、出願から審査結果の最初の通知までの期間は、平均6.1か月(2022年)
権利存続期間 いずれも特許庁の審査をパスして登録後に権利が発生するが、終わりは出願日を基準に計算される。
◆原則として出願日から20年まで ◆原則として出願日から25年まで
権利取得費用 権利取得までの最低費用。特許印紙代のみ。代理人手数料(特許事務所の手数料)は別途必要。特許については請求項と呼ばれる権利請求欄が一つだけの場合。
169,800円~
◆内訳は以下のとおり
・出願料=14,000円
・出願審査請求料=142,000円~
・設定登録料(第1~3年分の特許料)=13,800円~
◆出願審査請求料と設定登録料について、大学・中小企業・個人は、1/2、1/3又は0への減免制度がある。
24,500円
◆内訳は以下のとおり
・出願料=16,000円
・設定登録料(第1年分の登録料)=8,500円
出願件数 289,530件(2022年) 31,711件(2022年)
詳細情報へのリンク 特許とは・特許の取り方
特許・実用新案の例3:文房具
特許出願書類の例
・その他の特許解説
意匠登録とは・意匠権の取り方
意匠登録の例・種類
意匠登録出願書類の例
・その他の意匠登録解説
特許、実用新案登録、意匠登録、商標登録の違い ◆特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権などの要点と具体例は?
知的財産(知財)とは?

 


関連情報

 


(作成2023.12.17、最終更新2023.12.17)
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意匠審決の読解11(類否判断事例)

【11】不服2021-611

意願2020-7485「自動車用タイヤ」拒絶査定不服審判事件

原査定を取り消す。本願の意匠は、登録すべきものとする。

意匠法第3条第1項第3号(新規性)

【弊所メモ】部分意匠、大きさは共通、位置および範囲が異なる、基本的構成態様、具体的構成態様、需要者(使用者と取引者)、特に注視して観察、通常取り得る形態、視覚的印象、斜め方向からは観察可能

◆図面・写真・画像は、審判番号から、特許庁の審決公報をご覧ください。

 


第1 対比

1 意匠に係る物品の対比

 いずれも「自動車用タイヤ」であるから、一致する。

 

2 本願部分と引用部分の用途および機能の対比

 いずれも自動車用タイヤのトレッド部の溝部分であり、トレッド部は、自動車の重量を支え、路面からの衝撃を吸収し、…部分であるから、用途および機能が一致する。

 

3 両部分の位置、大きさおよび範囲の対比

 両部分は、いずれも全体が環状体をなすタイヤの、横方向溝部を除く、外周を周方向に略帯状に並行して一周する3本の溝部分であって、

 それぞれ大きさは共通するが、位置および範囲については、

 

 正面視で左側の溝部分(左側溝部)は、

 本願意匠は、位置が全体の横方向の左から約4/13で、範囲は、横幅の約1/13幅の縦方向溝部であるのに対して、

 引用意匠は、位置が全体の横方向の左から約1/3で、範囲は、横幅の約1/15幅の縦方向溝部である点で相違し、

 

 正面視で中央の溝部分(中央溝部)は、

 本願意匠は、位置が横方向の中央よりもやや左寄りの左から約2/5で、範囲は、横幅の約2/43幅の縦方向溝部であるのに対して、

 引用意匠は、位置が横方向の略中央で、範囲は、横幅の約2/37幅の縦方向溝部である点で相違し、

 

 正面視で右側の溝部分(右側溝部)は、

 本願意匠は、位置が横方向の中央よりもやや右寄りの左から約4/7で、範囲は、横幅の約1/16幅の縦方向溝部であるのに対して、

 引用意匠は、位置が全体の横方向の左から約2/3で、範囲は、横幅の約1/15幅の縦方向溝部である点で相違する。

 

4 両部分の形態の対比

(1)両部分の形態の共通点

基本的構成態様

 (共通点A)両部分は、タイヤの外周を、近接して周方向に一周する、正面視で縦方向の3本の蛇行する溝部である点、

具体的構成態様

 (共通点B)両部分は、3本の溝部が正面視で縦方向に同間隔で蛇行し、中央溝部が左右側溝部に比して最も細いものである点で共通する。

 

(2)両部分の形態の相違点

具体的構成態様

 (相違点a)正面視の蛇行形態について、本願部分は、正面視で蛇行の右側の山部が11個看取できる縦長の緩やかな蛇行形態であるのに対して、引用部分は、正面視で右側の山部が29個看取できる縦に短く細かい蛇行形態である点、

 (相違点b)溝部の形態について、本願部分は、断面視で略隅丸逆等脚台形状の溝部であるのに対し、引用部分は、断面視で底が丸みを帯びた略谷状の溝部である点、

 (相違点c)蛇行山一単位(谷部から谷部)に対するそれぞれの溝部の縦横長さ比について、本願意匠は、左側溝部の蛇行山一単位の縦幅に対する横幅の長さ比が約5.4:1で、中央溝部は、約9:1、左側溝部は6.8:1であるのに対し、引用部分は、左側溝部の蛇行山一単位の縦幅に対する横幅の長さ比が3.3:1で、中央溝部は、3.6:1、右側溝部は3.3:1である点、

 (相違点d)3本の溝部の横幅の長さの比率については、左から順に本願意匠が約4.5:3:4であるのに対し、引用部分は、約11:10:11である点、

 (相違点e)横方向の溝部による内壁の除外部について、両部分は横方向の溝部を除く部分であるから、溝部内壁には、横溝部が除かれた箇所が存在し、本願部分の左側溝部は左側の蛇行の谷部の底付近および左側の山部と谷部の切り替え付近の内壁から横溝形成箇所を除き、中央溝部の内壁に除外部はなく、右側溝部は右側の山部頂点の内壁から横溝形成箇所を除いているのに対し、引用部分は、左側溝部は左側の山部頂点および右側の山部頂点内壁から横溝形成箇所を除き、中央溝部は左側の山部の谷部寄りおよび右側の谷部の山部寄りの内壁から横溝形成箇所を除き、右側溝部は左側の谷部底付近の内壁から横溝形成箇所を除いたものである点で、両意匠は相違する。

 

第2 判断

1 意匠に係る物品の類否判断

 両意匠の意匠に係る物品は、同一である。

 

2 両部分の用途および機能の類否判断

 両部分の用途および機能は一致するものであるから、同一である。

 

3 両部分の位置、大きさおよび範囲の評価

 両部分の位置、大きさおよび範囲については、

 両部分は、物品全体の形態の中における大きさは、一致するから同一であるが、

 それぞれ位置については、引用意匠が左から約1/3、略中央、約2/3(右から約1/3)と横方向の中央に対し線対称に配置されているのに対し、本願部分は中央に対して左寄りに配置され、横方向の中央が、中央溝部と右側溝部間に位置する点は、本願部分の特徴でもあるから、範囲については多少の相違にとどまるものの、類否判断に一定程度の影響を与えるものである。

 

4 両部分の形態の共通点および相違点の評価

 両意匠の意匠に係る物品の需要者は、主に、その使用者である一般ドライバーや自動車メーカーおよびタイヤ販売業者等の取引者がその需要者であって、発進、加速、減速および制動時の力を路面に伝えるトレッド部の溝部等の形態を特に注視して観察するといえる。

(1)両部分の形態の共通点

 (共通点A)および(共通点B)は、いずれも両部分全体の態様に係るものではあるが、周方向に一周する3本の縦方向の蛇行する溝部とすることも、同間隔で蛇行し、中央溝部が左右側溝部に比して最も細いものとすることも通常取り得る形態であるから、これらの共通点が両部分の類否判断に与える影響は小さい。

(2)両部分の形態の相違点

 (相違点a)および(相違点c)について、(相違点a)は、溝部の具体的な蛇行態様であって、正面視での比較であるが、本願部分は、正面視で蛇行の右側への山部が11個看取できるのに対して、引用部分は、29個看取できる点は、溝部の視覚的印象に大きく関わり、また、(相違点c)の蛇行山一単位に対する溝部の縦横の長さ比の相違も、引用部分が横幅の長さに対し短く細かな蛇行形態であるのに対し、本願意匠がより縦長で緩やかな蛇行形態であるとの印象を強め、溝部の形態を特に関心を持って注視する需要者にとって、全く別異の印象を与えるものであるから、いずれも両部分の類否判断におよぼす影響は大きい。

 次に、(相違点d)の3本の溝部の横幅の長さの比率については、本願意匠各々の溝部の横幅の長さがそれぞれ相違するものであるのに対し、引用部分は左右側溝部は同幅で、それに比して中央溝部が僅かに細く、注視してそれと分かるような各々の横幅の長さの差である点は、溝部の具体的形態の印象に関わり、類否判断におよぼす影響は大きい

 そして、(相違点b)および(相違点e)は、溝部の断面視での形態および内壁の形態であって、正面視で看取し難いものの、斜め方向からは観察可能であって、溝部内の具体的態様に関わるから、両部分の類否判断におよぼす影響は一定程度あるものである。

 

5 両意匠の類否判断

 そうすると、形態における相違点の(相違点b)および(相違点e)は両部分の類否判断に及ぼす影響は一定程度あるものであり、(相違点a)、(相違点c)および(相違点d)は、類否判断に及ぼす影響は大きいものであるから、(相違点a)ないし(相違点e)の両部分の類否判断に及ぼす影響は、総じて大きいものであって、両部分の類否判断を決定付けるものであるのに対して、形態の共通点の(共通点A)および(共通点B)の両部分の類否判断に与える影響は、いずれも小さく、それら(共通点A)および(共通点B)があいまっても、共通点の両部分の類否判断に与える影響は総じて小さく、相違点が共通点を凌駕し、両部分の類否判断を決定付けるものであるから、両部分は類似しない。

 したがって、両意匠は、意匠に係る物品並びに両部分の用途および機能は同一であり、大きさも同一であるが、両部分の位置および範囲は相違するものであって、類否判断に一定の影響を与え、また、形態においては、両部分は類似しないものであって、これは、両部分の類否判断を決定付けるものであるから、本願意匠は引用意匠に類似しない。

 


関連情報

 


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(作成2023.10.30、最終更新2023.10.30)

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意匠審決の読解10(類否判断事例)

不服2015-13721

意願2014-18744「コップ」拒絶査定不服審判事件

原査定を取り消す。本願の意匠は、登録すべきものとする。

意匠法第3条第1項第3号(新規性)

【弊所メモ】意匠に係る物品が共通、引用意匠はコップと言って差し支えない、基本的構成態様、具体的構成態様、細身とずんぐり、円錐台形状と円筒形、約半分の部分と約4分の1部分、帽子の鍔状と鳥のくちばし様、突起の有無、一見若干の共通感、異なる目的を合理的に達成させるための態様、使用の目的が異なることを想起させる態様

◆図面・写真・画像は、審判番号から、特許庁の審決公報をご覧ください。

 


1 意匠に係る物品について

 本願意匠の意匠に係る物品は「コップ」であるところ、

 引用意匠の考案の名称は「喫飲用食器」であるが、…飲み口部を備えた飲みやすい飲食用の食器であって、…おおむね細い円筒形であることを加えて勘案すると、引用意匠は「コップ」と言って差し支えないものであるから、

 両意匠の物品は、共通する。

 

2 形態について

(2-1)共通点

 基本的構成態様において、周面から底面にかけて角丸とした縦長の略円筒形であって、具体的構成態様においては、開口上縁部の一部分を下り傾斜にしつつ、突出部を設けている点で、共通する。

 

(2-2)相違点

 具体的構成態様において、

 (a)全体のプロポーション(縦横比)につき、本願意匠は、相対的にやや細長いのに対して、引用意匠は、ややずんぐりとしている点、

 (b)周面の角度につき、本願意匠は、円錐台形状(下すぼみ形状)と直ちに分かるほど角度が付いているのに対して、引用意匠は、ほぼ円筒形と思われるほど垂直に近い点、

 (c)上縁部の、下り傾斜していない部分につき、引用意匠が、開いてやや外側に広がる態様としているのに対して、本願意匠は、そのような態様としていない点、

 (d)下り傾斜の部分につき、本願意匠は、側面視で上縁部の長さの約半分の部分であるのに対して、引用意匠は、約4分の1部分である点、

 (e)突出部の態様につき、本願意匠は、三日月状平面で、帽子の鍔状(つばじょう)としているのに対して、引用意匠は、垂直断面形状を先端に向かって徐々に小さくなる丸V字状の溝とした鳥のくちばし様としている点、

 (f)内底面の態様につき、本願意匠は、突起を1つ設けているのに対して、引用意匠は、突起を設けていない点、で相違する。

 

3 類否判断

 上縁部に突出部などを設けないのが通常であるこの種物品分野においては、上縁部の一部分に突出部を設けたのみで、一見、若干の共通感を生み出すものである。

 しかし、相違点(a)及び同(b)が相まって、本願意匠は、より細身であると感じさせる態様であるのに対して、引用意匠は、ずんぐりとした感じであるから、この点については、僅かに両意匠の類否判断に影響を与えるもので、

 相違点(d)及び同(e)に示した各々の態様は、本願意匠は、…傾斜倒立させる際に、より安定するようにしたものであるのに対して、引用意匠は、口内に注ぎやすいようにしたものであって、それぞれ両意匠の異なる目的を合理的に達成させるための態様であって、これらの相違点は、両意匠のそれぞれの使用の目的が異なることを想起させる態様と認められるから、両意匠の類否判断に強く影響を与えるものである。

 よって、その他の相違点を挙げるまでもなく、上記相違点がもたらす印象で、共通点が醸し出す印象をしのいでおり、見る者に両意匠が別異であると認識させるものであり、両意匠の形態は類似しないといえる。

 したがって、両意匠の意匠に係る物品は共通しているが、形態は類似しないから、両意匠は、類似しているとはいえない。

 


関連情報

 


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(作成2023.10.26、最終更新2023.10.26)

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意匠登録の例・種類【動画】

意匠登録の例・種類について、解説動画をYouTubeに投稿しました(6分29秒)。

意匠登録の例・種類を一挙にご紹介します。

全体意匠(完成品と部品)、部分意匠、関連意匠、動的意匠、秘密意匠、組物の意匠、建築物の意匠、画像意匠、内装の意匠についての解説です。

実際の登録意匠そのものではありません。

2023年10月現在の情報です。

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意匠登録の例・種類【動画】

 


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特許か実用新案かの費用面からの検討【動画】

特許か実用新案かの費用面からの検討について、解説動画をYouTubeに投稿しました(8分17秒)。

特許か実用新案かを決める際、気になるのは費用の違いだと思います。ここでは、費用面に重点を置いて検討してみます。特許について減免措置(特許庁費用の軽減・減額)を受けられる場合や、実用新案について技術評価を請求する場合についても検討します。

2023年9月現在の情報です。特許庁費用は、改定される場合があります。最新の情報は、特許庁ホームページでご確認ください。

なお、再生速度は変更可能です。画面右下の歯車のアイコンをクリックいただき、1.25倍、1.5倍などに変更できます。
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特許か実用新案かの費用面からの検討【動画】

 


(作成2023.10.13、最終更新2023.10.13)
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知的財産(知財)とは?【動画】

知的財産(知財)とは?について、解説動画をYouTubeに投稿しました(9分4秒)。

知的財産、知的財産権、産業財産権、工業所有権、特許権(特許)、実用新案権(実用新案登録)、意匠権(意匠登録)、商標権(商標登録)、著作権とは何か、それぞれの要点と、具体例をご紹介します。

ヤマザキビスケット株式会社の成型ポテトチップ『chip star(チップスター)』(登録商標)を例に、産業財産権の例を示します。商標以外は弊所作成の仮想事例が含まれます。

2023年10月現在の弊所把握情報です。法改正される場合もありますから、最新情報は、特許庁や文化庁などのホームページでご確認ください。

なお、再生速度は変更可能です。画面右下の歯車のアイコンをクリックいただき、1.25倍、1.5倍などに変更できます。
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知的財産(知財)とは?【動画】

 


(作成2023.10.06、最終更新2023.10.06)
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