主な更新情報のご案内です。
2023年10月6日、実用新案は意味がないのか(メリット、デメリット、権利者勝訴例など)を更新しました。
特許・実用新案・意匠・商標登録の出願・相談
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2023年10月6日、実用新案は意味がないのか(メリット、デメリット、権利者勝訴例など)を更新しました。
知的財産、知的財産権、産業財産権、工業所有権、特許権(特許)、実用新案権(実用新案登録)、意匠権(意匠登録)、商標権(商標登録)、著作権とは何か、それぞれの要点と、具体例をご紹介します。
目次
「知的財産(知財)」とは、「(a)発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの」、「(b)商標、商号その他事業活動に用いられる商品又はサービスを表示するもの」及び「(c)営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報」をいいます(知的財産基本法)。
「知的財産権」とは、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、育成者権などをいいます。
以下、代表的な知的財産権について、概要と具体例を示します。
この発明について詳しくは、特許・実用新案の例3:文房具
この考案について詳しくは、特許・実用新案の例3:文房具
「産業財産権」とは、特許権、実用新案権、意匠権、商標権をいいます。「工業所有権」とも呼ばれます。
知的財産権の内、特許庁への登録を必要とするものが産業財産権です。
特許庁に登録することで得られる独占排他権で、権利者のみが製造販売や使用等を許されます。
ヤマザキビスケット株式会社の成型ポテトチップ『chip star(チップスター)』(登録商標)を例に、産業財産権の例を示します(産業財産権の例)。商標以外は弊所作成の仮想事例が含まれます。
(作成2023.10.01、最終更新2023.10.02)
出典を明示した引用などの著作権法上の例外を除き、無断の複製、改変、転用、転載などを禁止します。
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目次
特許出願にするか、実用新案登録出願にするか、お悩みではありませんか?
どちらにするか決める際、やはり気になるのは費用だと思います。
ここでは、費用面に重点を置いて検討してみます。2023年9月現在の情報で、弊所の見解が含まれます。
実際には、費用面以外も考慮する必要があります。次のリンク先もご参照ください。
以前、「特許と実用新案の費用の比較」をしてみました。
出願から登録までのトータルの費用を比較すると、平均的な請求項数10の場合、次のとおりでした(2023年9月現在)。
但し、中小企業や個人などは、特許の出願審査請求料と設定登録料について、軽減を受けられる場合があります。その場合、たとえば次のとおり安くなります。
◆1/2に軽減される場合(中小企業、大学など)=113,950円
◆1/3に軽減される場合(小規模企業(法人・個人事業主)など)=80,620円
実用新案技術評価を請求しない場合、特許と実用新案の価格差は歴然です。特許について、1/2や1/3への軽減を受けても、依然として価格差は大きいです。
実用新案技術評価を請求する場合でも、やはり特許と実用新案の価格差は歴然です。但し、特許について、1/2や1/3への軽減を受けた場合、実用新案との価格差は少なくなってきます。
つまり、「実用新案について技術評価を請求する場合」と、「特許について1/2や1/3への軽減を受けられる場合」とでは、特許と実用新案との価格差が少なくなります。そして、特許の方が、権利取得までの手続面(補正や不服申立て等の機会)、登録後の権利行使のし易さ、権利の存続期間などでメリットがあります。
そのため、もし当初から実用新案について技術評価を受けることが前提なら、しかも特許について1/2や1/3への軽減を受けられるなら、「特許は高い!」と思い込まずに、特許も検討してみてください。特許庁費用(特許印紙代)の差は、上記「緑の囲み枠」に記載のとおりですから、あとは代理人費用(特許事務所手数料)によります。
一方、取り敢えず技術評価を請求するつもりがないなら(そして将来も請求しないままなら)、あるいは特許について軽減措置を受けられないなら、実用新案の方が費用面で大きなメリットがあります。その場合、もし出願日から3年以内に技術評価請求したい状況(たとえば侵害品を排除したい状況)になったのなら、技術評価請求するか、あるいは要件を満たせば、特許へ移行できます。出願日から3年経過後は、特許への移行はできませんが、技術評価請求は可能です。特許の場合は、出願日から3年以内に出願審査請求しないと、出願は取り下げたものとみなされますが、実用新案の場合は、技術評価請求しなくても、登録料を納付する限り、登録を維持することができます。特許出願して審査請求せずに取下げ扱いになるくらいなら、実用新案権を維持するという手も考えられます。
なお、2022年の実用新案登録出願件数は4,513件ですが、実用新案技術評価書の作成件数は281件です。そのため、実用新案技術評価を請求しない方が多いといえます。実用新案技術評価を請求すると、「実用新案登録に基づく特許出願(特許への変更)」や「実用新案登録請求の範囲の減縮等を目的とする訂正(権利範囲の修正等)」が制限されるので、評価請求すべき機会(たとえば侵害品を排除したい状況)が生じるまで、温存することになります。また、出願・登録するだけでも一定の効果がありますから、評価請求は必須ではありません。すなわち、出願・登録することで、後から出願した他社に権利を取られることはなくなるし、他社を牽制することもできます(実用新案は意味がないのか)。
最後に、念のためですが、特許を選択した場合、登録前に実体審査を受けるため、必ずしも特許されるとは限りません。特許される場合でも、一回又は複数回の拒絶理由通知対応が必要となったり、審判請求が必要となったりすることもあります。つまり、出願経過によって費用が変わります。一方、実用新案を選択した場合、通常は登録になるでしょうが、技術評価が必ずしも肯定的(新規性や進歩性あり)とは限りません。費用の方は、特許よりも事前に見通しがつきやすいと思います。
(作成2023.09.30、最終更新2023.10.01)
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特許と実用新案の費用の比較について、解説動画をYouTubeに投稿しました(9分47秒)。
特許と実用新案について、出願から登録までの費用を比較してみます。特許庁統計による平均的な請求項数10の場合で比較してみます。特許庁の減免制度を利用した場合についても解説します。実用新案について、技術評価請求と訂正請求をした場合についても比較してみます。
2023年9月現在の情報です。特許庁費用は、改定される場合があります。最新の情報は、特許庁ホームページでご確認ください。
なお、再生速度は変更可能です。画面右下の歯車のアイコンをクリックいただき、1.25倍、1.5倍などに変更できます。
手っ取り早く動画内容を確認されたい場合、お試しください。
(作成2023.09.28、最終更新2023.09.28)
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目次
特許と実用新案について、出願から登録までの費用を比較してみます。
特許と実用新案の違いの内、費用以外の違いについては、特許と実用新案の違いをご覧ください。
特許の場合、「出願」だけでなく、「出願審査請求」や「設定登録料納付」など、段階に応じて費用が発生します。また、審査において特許できない旨を通知された場合、「拒絶理由通知対応」が必要となります。審査(拒絶理由通知対応)では、請求項(権利請求欄)が増加しない限り、特許庁費用の追加はありません。審査で拒絶査定がなされ、上級審である審判で争うには、別途費用がかかります。
実用新案の場合、基本的に「出願」時に費用が発生します。出願時に出願料だけでなく設定登録料も納付するので、出願時だけのご負担です。実用新案の場合、所望により実用新案技術評価とよばれる審査を受けることができます。その場合、「実用新案技術評価請求」に費用が発生します。その評価に基づき(登録が無効とされないように権利範囲を減縮するなどの)「訂正請求」ができ、その際、費用が必要です。
このように、特許の場合、少なくとも「出願」「出願審査請求」「設定登録料納付」の各段階で費用が発生する一方、実用新案の場合、通常「出願」の段階だけ費用が発生します。そして、実用新案の場合、(必須ではなく)所望により、「実用新案技術評価請求」や「訂正請求」ができ、その際、費用が発生します。
ところで、特許も実用新案も、権利請求するに際し、「請求項」と呼ばれる項に区分して、発明又は考案を特定します。請求項ごとに審査がなされ権利が付与されるため、請求項の数に応じて費用が変わる手続があります。特許庁統計によれば、平均請求項数は9.8です(2022年)。そのため、ここでは、平均的な請求項数10の場合を示しています。請求項について詳しくは、特許請求の範囲についてをご覧ください。
特許庁費用は、軽減又は免除される場合があります。大学、中小企業、個人などは、出願審査請求料や設定登録料などが、「1/2」、「1/3」、又は「免除」される場合があります。詳しくは、お問合せください。後掲の表では、これら減免がなされた場合についても比較しています。
手続を特許事務所(弁理士)にご依頼の場合、「特許庁費用(特許庁の印紙代)」の他、「代理人費用(特許事務所の手数料)」が必要です。代理人費用は、事務所により異なります。発生タイミングも事務所により異なることがあります。小山特許事務所の場合、一般的な費用は、「特許費用」や「実用新案登録費用」のページをご覧ください。打合せを通じてアイデアの内容を把握した上で、お見積りさせていただき、それに納得いただけましたら、正式にご依頼の流れとなります。
個々の手続費用については、後掲の「特許と実用新案の費用の比較表」のとおりです。要点だけを述べれば、次の囲み枠に記載のとおりです。
但し、特許の出願審査請求料と設定登録料について、費用の減免制度があります。その場合、特許の出願から登録までのトータル費用213,900円は、次のとおり安くなります。
1/2に軽減される場合(中小企業、大学など)=113,950円
1/3に軽減される場合(小規模企業(法人・個人事業主)など)=80,620円
【ご参考】 2022年の実用新案登録出願件数は4,513件ですが、実用新案技術評価書の作成件数は281件です。そのため、実用新案技術評価を請求しない方が多いといえます。実用新案技術評価を請求すると、「実用新案登録に基づく特許出願(特許への変更)」や「実用新案登録請求の範囲の減縮等を目的とする訂正(権利範囲の修正等)」が制限されるので、評価請求すべき機会(たとえば侵害品を排除したい状況)が生じるまで、温存することになります。また、出願・登録するだけでも一定の効果がありますから、評価請求は必須ではありません。すなわち、出願・登録することで、後から出願した他社に権利を取られることはなくなるし、他社を牽制することもできます(実用新案は意味がないのか)。
但し、特許の出願審査請求料と設定登録料について、費用の減免制度があります。その場合、特許の出願から登録までのトータル費用213,900円は、次のとおり安くなります。
1/2に軽減される場合(中小企業、大学など)=113,950円
1/3に軽減される場合(小規模企業(法人・個人事業主)など)=80,620円
【ご参考】もし当初から実用新案について技術評価を受けることが前提なら、しかも特許について1/2や1/3への軽減を受けられるなら、特許出願もご検討ください。詳しくは、特許か実用新案かの費用面からの検討をご覧ください。
(作成2023.09.27、最終更新2023.09.30)
出典を明示した引用などの著作権法上の例外を除き、無断の複製、改変、転用、転載などを禁止します。
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意願2019-7559「手袋」拒絶査定不服審判事件
原査定を取り消す。本願の意匠は、登録すべきものとする。
意匠法第3条第2項(創作性)
【弊所メモ】部分意匠、物理的に離れた複数の部分、機能的一体性、一意匠、図面間の矛盾、物品の部分に係る創作非容易性の判断、部分の形態、部分の用途及び機能、物品全体の形態の中における位置・大きさ・範囲、よく見受けられるもの、形態の組合せ・配置、ありふれた手法
◆図面・写真・画像は、審判番号から、特許庁の審決公報をご覧ください。
1 本願意匠
本願意匠の意匠に係る物品は「手袋」であって、右手側の5本指の短手袋のうち、意匠登録を受けようとする部分を、親指を除く4本の指の指先から指の股の手前までの指袋部を区画した部分としたものであって、本願は、物理的に離れた複数の部分から成るが、手袋の指袋部という機能的一体性をもって形成されたものであるから、1意匠として認められる。
形態については、
(ア)人差し指袋部を正面視、上側の甲側材と下側の掌側材の2枚はぎに、中指袋部及び薬指袋部をさらに両側マチ材を含む4枚はぎに、小指袋部を片側マチ材を含む3枚はぎのものとし、手袋の指袋部として、一体のものとして形成したものであって、
(イ)人差し指の指袋部は、平面視、略縦長U字状の甲側材と側面及び掌側を連なって被覆する略ドーム状の掌側材の2枚から成る略縦長キャップ状に形成し、
(ウ)中指及び薬指の指袋部は正面視(指先側)を甲側と掌側が広い略扁平X字状に分割する略尖塔状の甲側材及び掌側材と左右の略槍の穂先状の細長いマチ材から成る4枚はぎのマチ付きの略縦長キャップ状に形成し、
(エ)小指の指袋部は、正面視(指先側)倒Yの字状に分割する略尖塔状の甲側材及び掌側材と薬指袋側の略槍の穂先状の細長いマチ材から成る3枚はぎのマチ付きの略縦長キャップ状に形成しているものである。
2 引用意匠(公知意匠)
意匠に係る物品は「ゴルフ用手袋」であり、原審拒絶理由において、人差し指の指袋のみマチを付けない構成とした例示としてあげられたものであって、…
人差し指袋部は、指先側は、蛇行する傾斜線によって2分されているので2枚はぎであるように見えるものの、甲側では…が表され、掌側でも…が表れているため、正面視で観察可能と推認できる縦方向接合部が3カ所となり、正面視の形態と矛盾するから2枚はぎであるかは不明であって、略縦長キャップ状に形成したものである。
中指袋部及び薬指袋部は…
小指の指袋部は、…
3 本願部分の創作非容易性について
物品の部分に係る創作非容易性の判断については、
当該部分の形態が、当該意匠登録出願前に公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて当業者であれば容易に創作することができたものであるか否かを判断すると共に、
当該部分の用途及び機能を考慮し、「意匠登録を受けようとする部分」を当該物品全体の形態の中において、その位置、大きさ及び範囲とすることが、当業者にとってありふれた手法であるか否かを判断することにより行うべきである。
本願部分の用途及び機能は、「手袋」として、主に指部の防寒、防汚、保護などのために、指部を被覆する機能に係るものと認められ、手袋の物品分野において、ごく普通の用途及び機能であるから、格別の機能及び用途に係るものであるということはできない。
位置、大きさ及び範囲について検討すると、本願部分は、サイズによる大小はあれ、人の手の指程度の大きさであると認められ、手袋の物品分野において、よく見受けられる程度の大きさであり、その全体の中の位置についても親指を除く4本の指の指袋部分であるからごく普通に見受けられる程度のものであって、範囲については、各指袋部の指先から指の股手前までの範囲であって、略各指の指袋部といえ、範囲として格別のものとまではいうことはできない。
本願部分の形態については、
(イ)の形態については、引例意匠では(不明であるから)表されているといえないが、指袋部が本願部分と同様に甲側材と側面及び掌側を連なって被覆する掌側材から成るような形態は、手袋の物品分野においてはよく見受けられるものであって、
(ウ)及び(エ)の形態については、マチ材を別材で設けた形態も、手袋の物品分野においてはよく見受けられるものであるから、
上記1の(イ)ないし(エ)のこれらの指袋部の個々の形態については、格別の創意を施したということはできない。
しかしながら、各部分の形態のみならず、どのような形態を組み合わせ、どのような配置で表すかという点にも創作の余地が存在するというべきところ、
上記1の(ア)については、本願出願前に公然知られた形態である引例意匠、参考意匠1及び2のいずれにも表されておらず、人差し指袋部を甲側材と掌側材の2枚はぎに、中指袋部及び薬指袋部を両側マチ材を含む4枚はぎに、小指袋部を片側マチ材を含む3枚はぎのものとし、いわば、異なる裁断手法から成る指袋部を、1つの手袋の指袋部として一体のものとして形成することが「手袋」の物品分野において本願意匠出願前にありふれた手法であったとする証拠もないから、周知の創作手法であったとすることはできず、本願部分の独自の特徴を形成しているといえる。
4 小括
本願部分の用途、機能とすること、また、「意匠登録を受けようとする部分」を当該物品全体の形態の中において、その位置,大きさとすることが、ごく普通に見受けられる程度のものであり、範囲についても格別の創作ということはできないものであり、いずれも当業者が公然知られた意匠に基づいて容易に想到することができたものであったとしても、形態について、上記1の(ア)の形態とすることが、「手袋」の物品分野において本願意匠出願前にありふれた手法であったとする証拠はなく、「当該物品分野において周知の創作手法」によって創作することができたということはできない。
弊所独自の観点で、編集・加工を行っています。
正確な全文は、審判番号から審決公報をご確認ください。
(作成2023.09.04、最終更新2023.09.04)
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意匠登録の例・種類についての解説です。様々な意匠登録を一挙にご紹介します。
詳しくは、意匠登録とは・意匠権の取り方をご覧ください。
目次(意匠登録の例・種類)
(作成2023.08.26、最終更新2023.12.16)
出典を明示した引用などの著作権法上の例外を除き、無断の複製、改変、転用、転載などを禁止します。
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意願2021-26244「電気自転車」拒絶査定不服審判事件
原査定を取り消す。本願の意匠は、登録すべきものとする。
意匠法第3条第1項第3号(新規性)
【弊所メモ】部分意匠、意匠に係る物品の類似、基本的構成態様と具体的態様、両部分以外にも見られるもの、使用時に需要者の視界に入りやすい、需要者が注目、需要者の注意を惹く部分、類否判断に与える影響、直線状と凸弧状・屈曲、角張ったと丸みを帯びた
◆図面・写真・画像は、審判番号から、特許庁の審決公報をご覧ください。
1 本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠は「電気自転車」、引用意匠は「自転車」であって、補助動力源として電気を用いるか否かという相違があるものの、どちらも人が乗車して移動する目的のために用いる2輪車である点で共通しているから、両意匠の意匠に係る物品は、類似する。
(2)本願部分と引用部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲
いずれも、使用時及び保管時を問わず、全体の加重を受け止めて、その形状や機構を保持するためのフレームであるから、両部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲は、一致する。
(3)両部分の形状等
ア 共通点
基本的構成態様として、
(ア)両部分は、右側面視において、後方に傾いた縦向き略円筒形の「シートチューブ」の上端近くから、前方斜め上に向かって略変形円筒形の「トップチューブ」が設けられ、シートチューブとほぼ並行な略円筒形の短い「ヘッドチューブ」に接合されている。また、シートチューブの下端から前方斜め上に向かって設けられた略縦長円筒形の「ダウンチューブ」は、ヘッドチューブ及びトップチューブと接合されており、シートチューブ、トップチューブ及びダウンチューブにより略三角形状を形成している。また、シートチューブにおけるトップチューブとの接合部よりやや下側の位置から、後方斜め下に向かって略円筒形の「シートステー」が設けられ、シートチューブ下端からは、後方やや斜め上に向かって略円筒形の「チェーンステー」が設けられており、後輪中央の位置でシートステーと接合され、シートチューブ、シートステー及びチェーンステーにより略三角形を形成している点、
具体的態様として、
(イ)トップチューブのシートチューブ近傍がやや下方に屈曲している点、
(ウ)シートステーの後輪中央の近傍が、やや上方に屈曲している点において共通する。
イ 相違点
(ア)トップチューブについて、右側面視において、本願意匠は、全体が直線状で、両側に長手方向に沿って稜線が表れる程度に角張った筒体であるのに対し、引用意匠は、右端から左端寄りまで、わずかに凸弧状としたあと上方に屈曲し、ヘッドチューブ側の丸みを帯びた筒体から、漸次変化することにより、シートチューブ側ではパイプを押しつぶしたような縦長の筒体としている点、
(イ)トップチューブのシートチューブへの接合点について、本願意匠は、シートチューブ上端のすぐ下であるのに対して、引用意匠は、上端からやや下側である点、
(ウ)シートステーの後輪中央からの形状について、本願意匠は、略「く」形状に屈曲しているのに対して、引用意匠は、直線状である点において相違する。
2 類否判断
(1)意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は、類似する。
(2)両部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲
両部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲は一致する。
(3)両部分の形状等
ア 共通点の評価
この種物物品分野において、共通点(ア)ないし(ウ)は、両部分以外にも見られるものであることから、両部分の類否判断に与える影響は小さい。
イ 相違点の評価
相違点(ア)及び(イ)は、主に使用時に需要者の視界に入りやすく、一見して異なる視覚的印象となって、需要者に異なる美感を起こさせるものといえるから、両部分の類否判断に与える影響は大きい。
また、主に物品の保管時に、需要者はフレームの外形に注目すると考えられるが、相違点(ウ)は、フレームの外形を形作る一部として需要者の注意を相当程度惹く部分であるから、両部分の類否判断に与える影響は大きい。
ウ 形状等の類否判断
両部分の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察し判断した場合、共通点(ア)ないし(ウ)は、両部分の類否判断に与える影響は小さいものであるのに対し、相違点(ア)ないし(ウ)は、両部分の類否判断に与える影響は大きいものである。
したがって、両部分の形状等を全体として総合的に観察した場合、両部分の形状等は、共通点に比べて、相違点が両部分の類否判断に与える影響の方が大きいものであるから、両部分の形状等は類似しない。
3 小括
以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が同一で、両部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲も同一で、形状等において、共通点が未だ両部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して、相違点が両部分の類否判断に与える影響は共通点のそれを凌駕しており、意匠全体として見た場合、両部分は、需要者に異なる美感を与えているというべきであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。
弊所独自の観点で、編集・加工を行っています。
正確な全文は、審判番号から審決公報をご確認ください。
(作成2023.08.26、最終更新2023.08.26)
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意願2021-12382「いす」拒絶査定不服審判事件
原査定を取り消す。本願の意匠は、登録すべきものとする。
意匠法第3条第1項第3号(新規性)
【弊所メモ】基本的構成態様と各部の態様、引用意匠に不明な点、本願の出願前から公然知られている、両意匠のみに共通するものか、使用感、需要者が最も強く注意を払う部位、基本的構成が一般的なら需要者はより具体的な形状等に着目する、小振りで控え目な印象と大きく目立つ印象、最も目立つ正面
◆図面・写真・画像は、審判番号から、特許庁の審決公報をご覧ください。
1 本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品
共に「いす」であるから、一致する。
(2)両意匠の形状等
ア 共通点
(ア)基本的構成態様
両意匠は、本体は、背もたれと座を一体状に形成したものであって、外枠を略変形楕円形のフレームで枠取り、これにやや粗目のメッシュ材を張設し、底面に4本の略丸棒状の脚を裾広がり状に開脚して取り付け、脚の中程に2本の略角棒状の貫(ぬき)を対角線状に形成している点、
各部の態様として、
(イ)本体は、全体的にやや背面側に傾斜している点、
(ウ)背もたれは、左右に凹湾曲状とし、上端はほぼ水平で左右の角から前方に向かって外側に膨らみながら緩やかに傾斜している点、
(エ)脚は、前脚より後脚の方が外側に傾斜し、両側の前脚と後脚の付け根の間に略横棒状の座枠を取り付けている点において、共通する。
イ 相違点
(ア)本体について、本願意匠は、座面の奥行きが浅く、左右の湾曲度合いも緩やかであるのに対し、引用意匠は、座面の奥行きが深く、左右の湾曲度合いが急で上に迫り上がっている点、
(イ)背もたれについて、本願意匠は、両側が上方に向かって内側に傾斜しているのに対し、引用意匠は、両側が上方に向かって外側に傾斜している点、
(ウ)本体のフレームについて、本願意匠は、フレーム全体を細い平紐で籐巻き(とまき)状に巻いているのに対し、引用意匠は、不明である点において、相違する。
2 類否判断
(1)意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は一致するから、同一である。
(2)形状等の共通点及び相違点の評価
ア 共通点の評価
この種物品の分野において、メッシュ材で張設した略変形楕円形の本体底面に4本の脚を開脚して取り付け、脚の中程に対角線状に貫を形成し、両側の前後の脚の付け根の間に座枠を取り付けたものが、…本願の出願前から公然知られていることから、この共通するとした態様は、両意匠のみに共通するものとはいえず、共通点(ア)ないし共通点(エ)が、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
イ 相違点の評価
当該物品において、背もたれや座は、身体に接し、使用感に大きく関わるから、需要者が最も強く注意を払う部位であり、また、前記アのとおり、両意匠の基本的な構成はごく一般的なものであるから、需要者は、本体のより具体的な形状等に着目するものといえるところ、
相違点(ア)のとおり、座面の奥行きが浅く、左右の湾曲度合いも緩やかである本願意匠と、座面の奥行きが深く、左右の湾曲度合いが急で上に迫り上がっている引用意匠とは、一見して異なる視覚的印象となって、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、相違点(ア)が、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
相違点(イ)についても、背もたれの両側を内側に傾斜している本願意匠の態様は、座に比べて小振りで控え目な印象を与えているのに対し、引用意匠の背もたれは、外側に大きく張り出して大きく目立っており、需要者に別異の印象を与えるものといえるから、相違点(イ)が、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
相違点(ウ)についても、最も目立つ正面のフレームにおいて、本願意匠は、メッシュ材の隙間から籐巻きされたフレームがはっきり確認できるところ、フレームの態様が不明である引用意匠との相違は、需要者に異なる美感を起こさせるものといえるから、相違点(ウ)は、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
ウ 形状等の類否判断
両意匠の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察し判断した場合、共通点は、両意匠の類否判断に与える影響は小さいものであるのに対し、相違点(ア)ないし相違点(ウ)が、両意匠の類否判断に与える影響は大きいものである。
したがって、両意匠の形状等を全体として総合的に観察した場合、両意匠の形状等は、共通点に比べて、相違点が両意匠の類否判断に与える影響の方が大きいものであるから、両意匠の形状等は類似しない。
(3)小括
以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品は同一であるが、形状等において、共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して、相違点が両意匠の類否判断に与える影響は共通点のそれを凌駕しており、意匠全体として見た場合、両意匠は、需要者に異なる美感を与えているというべきであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。
弊所独自の観点で、編集・加工を行っています。
正確な全文は、審判番号から審決公報をご確認ください。
(作成2023.08.26、最終更新2023.08.26)
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意願2021-17784「包装用容器」拒絶査定不服審判事件
原査定を取り消す。本願の意匠は、登録すべきものとする。
意匠法第3条第1項第3号(新規性)
【弊所メモ】形状等を箇条書きで認定して対比(共通点、相違点)、ネット掲載写真の一部を引用意匠、構成の推認、この種物品分野において出願前から数多く存在、両意匠のみの特徴、共通点に相違が内在、躍動感と安定感、丸みのある印象とシャープな印象、ほとんど目に触れない部分、透明と有色半透明
◆図面・写真・画像は、審判番号から、特許庁の審決公報をご覧ください。
1.本願意匠
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「包装用容器」である。
(2)本願意匠の形状等
〔A1〕本願意匠は、雄ネジを形成した口部を、上端に設けた本体部から成っている。
〔A2〕本体部は、水滴型の上端と下端を水平面で切ったような形状である。
・・・
〔A11〕本願意匠は、全体が透明である。
2.引用意匠
(1)意匠に係る物品
引用意匠の意匠に係る物品は、ノズル及びキャップを除く「包装用容器本体」である。
(2)引用意匠の形状等
〔B1〕…に掲載された意匠は、本体部の上方にノズル及びキャップを搭載していることから、引用意匠は、雄ネジを形成した口部を、上端に設けた本体部から成っていると推認することができる。
〔B2〕本体部は、水滴型の上端と下端を水平面で切ったような形状である。
・・・
〔B11〕引用意匠は、全体が水色半透明である。
3.両意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠に係る物品は「包装用容器」であり、引用意匠に係る物品は、ノズル及びキャップを除く「包装用容器本体」である。
(2)両意匠の形状等の対比
ア.共通点について
〔共通点1〕雄ネジを形成した口部を、上端に設けた本体部から成っている。
〔共通点2〕本体部は、水滴型の上端と下端を水平面で切ったような形状である。
〔共通点3〕本体部は、口部の下端に接している上端の肩部と、その下の胴部から成っている。
〔共通点4〕本体部の縦長さ(高さ)を100とすると、本体部の最大直径は、75前後である。
〔共通点5〕本体部が最大直径になる高さ位置は、下から約3分の1の位置である。
イ.相違点について
〔相違点1〕本体部の縦長さ(高さ)を100としたときの本体部の最大直径につき、本願意匠は、約73であるのに対して、引用意匠は、約77である。
〔相違点2〕本体部が最大直径になる高さ位置につき、本願意匠は、下から3分の1弱の位置であるのに対して、引用意匠は、下から3分の1強の位置である。
〔相違点3〕肩部の角における角丸のRの大きさにつき、本願意匠は、やや大きめのRであるのに対して、引用意匠は、とても小さいRである。(A6とB6)
〔相違点4〕肩部の上方の形状につき、本願意匠は、本の僅かに裾広がりであるのに対して、引用意匠は、垂直である。(A7とB7)
〔相違点5〕肩部の下方の形状(胴部へのつながり形状)につき、本願意匠は、肩部の下半分は、へこみRとなっており、それから胴部につながっているのに対して、引用意匠は、下端で屈曲(谷折り)して胴部につながっている。(A8とB8)
〔相違点6〕本体部の縦長さに対する肩部の縦長さにつき、本願意匠は、約10分の1であるのに対して、引用意匠は、ごく僅かである。(A9とB9)
〔相違点7〕底面の脚につき、本願意匠は、ごく僅かな高さの細い円弧状の脚を3か所設けているのに対して、引用意匠は、脚を設けていない。(A10とB10)
〔相違点8〕全体につき、本願意匠は、透明であるのに対して、引用意匠は、水色半透明である。(A11とB11)
4.判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
…本願意匠と引用意匠は、表記が異なるが、共に被包装物を入れておく器部分であるから、両意匠の意匠に係る物品は共通する。
(2)両意匠における形状の評価
ア.共通点について
共通点1については、この種物品分野においては、本願意匠の出願前から数多く存在し、両意匠のみの特徴とはいえず、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
共通点1ないし5によって、一見大まかには共通感を生み出している。
しかし、共通点4には、詳細には相違点1の相違を内包しており、両意匠の類否判断に与える影響は限定的である。
そして、共通点5には、詳細には相違点2の相違を内包しており、両意匠の類否判断に与える影響は限定的である。
イ.相違点について
相違点1の相違は小さいが、相違点2と相まって、引用意匠は、重心位置がやや高く見えることから躍動感(不安定)を感じさせるが、本願意匠は、重心位置がやや低く見えることから安定感を感じさせており、両意匠の類否判断に与える影響は、大きいといえる。
相違点3ないし6については、本願意匠は各部のR半径が大きく、全体的に丸みのある印象を与えるのに対して、引用意匠は、シャープな印象を与えており、両意匠に別異の印象を生じさせているといえるから、両意匠の類否判断に与える影響は、大きいといえる。
相違点7は、販売陳列時や使用状態において、ほとんど目の触れない部分における相違であるから、両意匠の類否判断に与える影響は小さいといえる。
相違点8については、この種物品分野においては、全体を透明、有色半透明、不透明などとしたり、または無色や各種の色を採用したりして、様々な態様のものが認められるから、両意匠の類否判断に与える影響は小さいといえる。
(3)両意匠における形状の類否判断
以上のとおり、共通点は、両意匠の類否判断に与える影響が、小さいまたは限定的なものであり、この共通点によっては、両意匠の類否判断を決するものといえないのに対して、相違点1ないし6によって、需要者に別異の印象を起こさせるものであるから、両意匠の類否判断を決するものといえる。
そうすると、本願意匠の形状と引用意匠の形状は、類似するとは認められない。
(4)両意匠における類否判断
よって、両意匠は、意匠に係る物品は共通するが、上記のとおり本願意匠と引用意匠の形状は類似するものではないから、本願意匠と引用意匠は類似するとはいえない。
弊所独自の観点で、編集・加工を行っています。
正確な全文は、審判番号から審決公報をご確認ください。
(作成2023.08.25、最終更新2023.08.25)
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