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特許庁統計【商標編2023年版】出願件数・審査期間・平均区分数など【動画】

特許庁統計【商標編2023年版】出願件数・審査期間・平均区分数などについて、解説動画をYouTubeに投稿しました(4分14秒)。

商標登録関係について、出願件数、本人出願率、平均区分数、審査期間、拒絶査定不服審判の件数・成否・期間などを、特許庁の統計資料から確認してみます。

特に明示する場合を除き、数値自体は、特許庁編『特許行政年次報告書2023年版』に掲載のものです。言い換えれば、当該報告書の数値を用いて、弊所において、Q&A形式に編集・加工したものとなります。

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特許庁統計【商標編2023年版】出願件数・審査期間・平均区分数など【動画】

 


(作成2023.08.25、最終更新2023.08.25)
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意匠審決の読解5(創作非容易性の判断事例)

不服2022-12251

意願2021-7361「オフィスの執務室の内装」拒絶査定不服審判事件

原査定を取り消す。本願の意匠は、登録すべきものとする。

意匠法第3条第2項(創作性)

【弊所メモ】内装意匠、部分意匠、本願出願前よりよく見られる手法、着想の新しさや独創性、本願の出願前に公然知られているもの、本願部分の他には見られないもの、当業者にとって格別の創作を要したもの、独自の着想によって創出したもの

◆図面・写真・画像は、審判番号から、特許庁の審決公報をご覧ください。

 


1本願意匠

(1)本願意匠について

 本願意匠は、オフィス内の床面と執務用テーブルからなる「オフィスの執務室の内装」である。

(2)本願部分の用途及び機能

 本願部分は、3方向から執務を行うことができるテーブルの天板の一部及び天板を中心から3方向に放射状に仕切る3枚の衝立(ついたて)の一部であって、衝立によって使用者を遮蔽し、天板の中心に形成した隙間に配線を通すことができる用途及び機能を有するものである。

(3)本願部分の位置、大きさ及び範囲

 本願部分の位置は、床面より高い位置で、水平に配置した天板の中心及び天板に対して垂直に設置した3枚の衝立の下端の内側隅であって、その大きさ及び範囲は、天板の中心の隙間を円で囲んだ範囲及び3つの衝立の表裏面のうち、天板の範囲の内側を横幅とし高さをその約1.2倍とする略縦長長方形に囲んだ範囲とするものである。

(4)本願部分の形状等

 ア 天板

 天板は、凹凸のない平坦面で、その中心に上面視略正三角形の隙間(空隙部)を設けている。

 イ 衝立

 空隙部の各頂点から中心まで延びる垂線上の中心近くまで、それぞれ略縦板状の衝立を垂直に設置したものであって、各衝立の角は直角に形成している。

 

2 引用意匠の認定

 ・・・

 

3 本願意匠の創作性の検討

 この内装を構成する物品又は建築物の属する分野において、テーブルの天板を凹凸のない平坦面とし、その中心に上面視略正三角形の空隙部を設けたものは、本願の出願前に公然知られているものである。また、空隙部の縁から3方向に放射状に外端まで延びる衝立を設置したものも、本願の出願前に公然知られているものである。さらに、衝立の内端に形成した部材を空隙部の縁の内側に形成したものも、本願の出願前に公然知られているものである。

 しかしながら、本願部分のように、上面視略正三角形の空隙部の各頂点から中心まで延びる垂線上の中心近くまで、それぞれ略縦板状の衝立を垂直に設置し、かつ各衝立の角を直角に形成したものは、本願部分の他には見られないものであるから、本願部分は、当業者にとって、格別の創作を要したものといわざるを得ない。

 そうすると、本願意匠は、この内装を構成する物品又は建築物の属する分野において、独自の着想によって創出したものであり、当業者が引用意匠に基づいて容易に本願意匠の創作をすることができたということはできない。

 


関連情報

 


弊所独自の観点で、編集・加工を行っています。
正確な全文は、審判番号から審決公報をご確認ください。
(作成2023.08.24、最終更新2023.08.24)

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意匠審決の読解4(類否判断事例)

不服2022-9862

意願2021-11582「一人用サウナ室の内装」拒絶査定不服審判事件

原査定を取り消す。本願の意匠は、登録すべきものとする。

意匠法第3条第1項第3号(新規性)

【弊所メモ】内装意匠、需要者とは、全体に対する配置や比率、内装全体を俯瞰した図、各部の配置や大きさが不明

◆図面・写真・画像は、審判番号から、特許庁の審決公報をご覧ください。

 


1 本願意匠と引用意匠の対比

(1)意匠に係る内装

 本願意匠は「一人用サウナ室の内装」であり、引用意匠も「一人用サウナ室の内装」であるから、両意匠の意匠に係る内装は、一致する

(2)両意匠の形状等

 ア 共通点

 (ア)全体

 全体は、壁で囲まれた床面を、休憩スペース、シャワースペース及びサウナスペースに仕切り、それぞれのスペースに各種備品を配置し、天井を取り付けたものである点、

 (イ)休憩スペース

 壁のコーナーに…化粧台を配置し、化粧台と正対する壁のやや上に…を取り付け、2枚の壁が直角に接する床面の隅に…イージーチェアを配置している点、

 (ウ)シャワースペース

 全体は、略縦長直方体で、休憩スペースに接する面に透明な扉(開き戸)を取り付け、その内部にシャワーヘッドシャワーホースを取り付け、奥の壁にシャワーフックを取り付け、天井にオーバーヘッドシャワーを取り付けている点、

 (エ)サウナスペース

 全体は、略横長直方体で、…扉(開き戸)を設け、その内部の奥の壁の真ん中付近に…背もたれを横幅いっぱいに配置し、その下に…腰掛けを配置し、腰掛けの前に…足置き台を配置し、横壁の手前側の隅に…ストーブを配置している点において共通する。

 イ 相違点

 (ア)全体

 平面視において、本願意匠は、…略横長長方形の壁の内側に、休憩スペースとサウナスペースを、壁を挟んで左右に約9:5の割合で配置し、休憩スペースの右上隅に休憩スペースの約2割弱の大きさのシャワースペースを配置しているのに対し、引用意匠は、内装全体を俯瞰した図等の開示がないため、各スペースの配置や大きさは不明である点、

 (イ)休憩スペース

 平面視において、本願意匠は、左上のコーナーに休憩スペースの約0.5割の大きさの化粧台を配置し、左下隅に約1割の大きさのイージーチェアを配置し、正面視において、イージーチェアの直上の天井に略球形の照明を取り付けているのに対し、引用意匠は、休憩スペース全体を俯瞰した図等の開示がないため、各部の配置や大きさは不明である点、…

 (ウ)シャワースペース

 本願意匠は、シャワーフックを奥の壁の真ん中付近に1つ取り付けているのに対し、引用意匠は、奥の壁の真ん中やや左寄りと右の壁のやや高い位置に1つずつ取り付け、また、引用意匠は、右の壁の下寄りにボトルホルダーを取り付けているのに対し、本願意匠は、ボトルホルダーは取り付けていない点、

 (エ)サウナスペース

 本願意匠は、扉側から内部を見て、ストーブを左側に配置し、足置き台を右側に配置しているのに対し、引用意匠は、本願意匠とは逆の位置に配置している点において相違する。

 

2 類否判断

(1)意匠に係る内装

 両意匠の意匠に係る内装は、同一である。

(2)両意匠の形状等の共通点及び相違点の評価

 両意匠の需要者は、当該サウナ室の利用者のほか、サウナ室の施工業者や内装業者が含まれる。

 ア 両意匠の形状等の共通点の評価

 共通点(ア)について、サウナ室の構成態様として、…利用者にとって必要不可欠なスペースであるから、…格別、需要者の注意を引くものではないが、一人用サウナ室として見たとき、…共通点(イ)ないし共通点(エ)のとおり、各スペースに応じて備品を配置したものは、両意匠に共通する特徴といえるから、需要者が注意を払うものといえ…る。

 イ 両意匠の形状等の相違点の評価

 相違点(ア)について、本願意匠は、天井を省略して俯瞰した図により、全体における各スペースの配置態様及び各部の長さ等の比率を具体的に表しているのに対し、引用意匠は、内装全体を俯瞰した図等の開示がないため、いずれも不明であり、需要者が最も注意を払うサウナ室の全体構成において、本願意匠と対比、検討することができないから、相違点(ア)が、両意匠の類否判断に与える影響は極めて大きい。

 相違点(イ)について、両意匠のイージーチェアは、前記共通点(イ)のとおり、その形状は共通するものの、引用意匠は、イージーチェアの配置において、不明であり、また、化粧台及び鏡についても、形状は、概ね一致するものの、その配置については不明であり、さらに、天井の開示がないため、照明の形状や配置も不明であることから、いずれも、本願意匠と対比、検討することができず、相違点(イ)が、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。

 相違点(ウ)及び相違点(エ)について、スペース内部における備品の僅かな変更であるから、いずれも、特段、需要者の注意を引くものとはいえず、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。

 ウ 両意匠の形状等の評価

 以上のとおり、共通点が両意匠の類否判断に与える影響は、一定程度にとどまるものであるのに対し、…相違点(ウ)及び相違点(エ)は、両意匠の類否判断に与える影響は小さいものであるが、相違点(ア)及び相違点(イ)が、両意匠の類否判断に与える影響は大きく、とりわけ相違点(ア)が両意匠の類否判断に与える影響は極めて大きいことから、相違点全体が相まって両意匠の類否判断に与える影響は大きいものである。

 

3 小括

 したがって、両意匠は、意匠に係る内装は同一で、形状等においても、共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して、相違点が両意匠の類否判断に与える影響は共通点のそれを凌駕しており、意匠全体として見た場合、両意匠は、視覚的印象を異にするというべきであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。

 


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弊所独自の観点で、編集・加工を行っています。
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(作成2023.08.24、最終更新2023.08.24)

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意匠審決の読解3(類否判断事例)

不服2022-9326

意願2021-2264「カップホルダー」拒絶査定不服審判事件

原査定を取り消す。本願の意匠は、登録すべきものとする。

意匠法3条1項3号(新規性)

【弊所メモ】引用意匠が部分意匠、表面の輪郭と模様、共通点が本願出願前から公知、使用時に見えやすい部分、使用時に最も目につく部分

◆図面・写真・画像は、審判番号から、特許庁の審決公報をご覧ください。

 


1 本願意匠及び引用意匠の対比

 引用意匠は破線で表現された部分も併せて本願意匠に対応する形状等を認定する。

(1)意匠に係る物品

 両意匠は、いずれも、飲料用のカップを保持・運搬する目的で用いられるホルダーであり、意匠に係る物品は、一致する

(2)両意匠の形状等

 ア 共通点

 (ア)基本的構成態様

 全体は、略縦長矩形状を基調とした平板で、正面視において、左辺縁部は3つの緩やかな波形の凸部(左辺凸部)、右辺縁部は中央よりやや上部に緩やかな1つの半円形の凸部(右辺凸部)を形成し、同径の4つの円孔(孔部)を配したものである点。

 (イ)孔部の構成配置及び比率

 孔部は、左辺凸部に近接するように3つの円孔を縦並びに配し、右辺凸部に近接するように1つの円孔を配し、正面視における横幅に対する孔部の径の比率を約4:1としている点。

 イ 相違点

 (ア)正面視頂部の形状等

 本願意匠の頂部がドーム状をなしているのに対し、引用意匠の頂部は略平坦状をなしている点。

 (イ)表面に施された模様の有無

 本願意匠は、表裏面にカップを手で握る模様が付されており、具体的には、孔部の周縁に指先模様が描かれ、正面視左下部には小指の指先模様が描かれ、各指先の模様には皺に相当する細線が表現され、カップはドーム状の蓋部分を有する略逆円錐台形状に表現されているのに対し、引用意匠には表面及び裏面ともに模様が一切付されていない点。

 

2 類否判断

(1)意匠に係る物品

 両意匠の意匠に係る物品は、ともに、飲料用のカップを保持・運搬するための「カップホルダー」であり、同一である

(2)両意匠の形状等の共通点及び相違点の評価

 ア 共通点の評価

 共通点(ア)について、両意匠に共通する基本的構成態様については、板状に4つの円孔を設けたカップホルダーは例を挙げるまでもなく本願出願前から公知であり、全体の輪郭形状を概括的に捉えた場合における共通性に止まり、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。

 共通点(イ)について、孔部の構成配置に係る場合の共通性に止まり、板状に本願と同様の構成配置及び比率で4つの円孔を設けたカップホルダーも例を挙げるまでもなく本願出願前から公知であることからも、この共通点が、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。

 イ 相違点の評価

 相違点(ア)について、表面の輪郭形状は通常の使用の状態において見えやすい部分に係る相違であり、本願意匠の頂部がドーム状であるのに対し、引用意匠の頂部は略平坦状をなしている点で相互に明確な相違があると評価せざるを得ず、この相違は両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものといえる。

 相違点(イ)について、表面の態様はカップを保持して使用する際に最も目につく部分であり、本願意匠は表裏面に人の手を模した指先やカップを表現した具象的な模様が広い領域にわたり施されているのに対し、引用意匠は模様が一切付されていない点は、一見して視覚的印象が大きく異なるため、大きな相違と評価せざるを得ず、この相違が両意匠の類否判断に与える影響は非常に大きい。

(3)意匠の形状等の類否判断

 両意匠の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察し判断した場合、共通点(ア)ないし(イ)が両意匠の類否判断に与える影響は小さいのに対して、相違点(イ)が両意匠の類否判断に与える影響は大きく、相違点(ア)も両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものといえる。

 したがって、両意匠の形状等を総合的に観察した場合、共通点に比べて、相違点がもたらす影響の方が大きいものであるから、両意匠の形状等は類似しない。

 

3 小括

 以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品は同一であるが、両意匠の形状等においては、共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して、相違点が類否判断に与える影響は共通点のそれを凌駕しており、意匠全体として観察した場合、両意匠は、需要者に異なる美感を与えているというべきであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。

 


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弊所独自の観点で、編集・加工を行っています。
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(作成2023.08.24、最終更新2023.08.24)

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意匠審決の読解2(類否判断事例)

不服2022-8226

意願2021-15279「便器用タンク」拒絶査定不服審判事件

原査定を取り消す。本願の意匠は、登録すべきものとする。

意匠法第3条第1項第3号(新規性)

【弊所メモ】部分意匠、完成品と部品、範囲の相違、引用部分の断面不明、共通点が格段珍しいものではない、よく目につく部分、注意を払う部分

◆図面・写真・画像は、審判番号から、特許庁の審決公報をご覧ください。

 


第4 対比

1 意匠に係る物品の対比

 本願意匠は「便器用タンク」であるのに対し、引用意匠は「取付け用便器」であって、意匠に係る物品は一致しない

2 本願部分と引用部分の用途及び機能の対比

 本願部分と引用部分は、共に…に任意に区画された部分であって、その用途及び機能は、いずれも、手洗いボウル部上で便器用タンクに水を供給する吐水部の外側面の正面下端の中央部分であるから、両部分の用途及び機能は、一致する。

3 本願部分と引用部分の位置、大きさ及び範囲の対比

 両部分の位置は、…であるから、一致し、

 大きさは、…であるから、おおむね一致するが、

 範囲は、本願部分は、正面視において全体の約1/600であるのに対し、引用部分は、正面視において全体の約1/1100であるから、一致しない

4 両部分の形状等の対比

(1)共通点

 基本的構成態様として、

 (A)吐水部の正面視、下端中央の区画された外側面である点が共通し、

 具体的構成態様として、

 (B)縦方向に緩やかに湾曲した凹曲面である点が共通する。

(2)相違点

 具体的構成態様として、

 (a)本願部分は、A-A断面図視で、上方が背面方向に向けて鉛直方向から約13度傾斜して形成されているのに対し、引用部分は斜め上から図版に現されたものであって、その傾きは不明である点、

 (b)本願部分は、横方向で、僅かに正面方向に湾曲した曲面であるのに対し、引用部分の横方向の面の態様は、不明である点が相違する。

 

第5 類否判断

1 意匠に係る物品

 両意匠の意匠に係る物品は、相違するが、引用部分は、本願部分と同様、…であるから、この相違は、両意匠の類否判断にほとんど影響を与えない

2 用途及び機能

 両部分は、いずれも、…部分であって、両部分の用途及び機能は、一致するから同一である。

3 位置、大きさ及び範囲の評価

 両部分は、位置及び大きさが一致し、範囲が相違するが、占める範囲の相違は、意匠に係る物品が完成品であるか、部品であるかの点に起因し、両部分は、…部分である点は同様であって、吐水部に占める範囲としては、大差がなく、この点が両意匠の類否判断に与える影響は小さいものである。

4 両部分の形状等の評価

(1)形状等の共通点の評価

 基本的構成態様としてあげた共通点(A)は、概括的共通点にとどまり、共通点(B)は、「取付け用便器」及び「便器用タンク」の物品分野において、…であるものは、格段珍しいものではなく、この点が両部分の類否判断に与える影響は小さいものである。

 したがって、共通点(A)及び(B)の両部分の類否判断に及ぼす影響は、総じて小さく、共通点全体であいまっても、両部分の類否判断を決定付けるとはいえないものである。

(2)形状等の相違点の評価

 これに対して、相違点(a)及び相違点(b)は、吐水部の下端中央の外側面の具体的態様に関わる相違点であって、吐水部の下端は、需要者が洗面ボウル上で吐水部から水を手に受けて洗う際には、よく目につく部分であって、手洗いの際に吐水部が邪魔にならず、需要者は、手洗いのための空間が十分にあるか否かなどの態様にも注意を払うものであるから、

 本願部分について、A-A断面図視で、上方が背面方向に向けて鉛直方向から約13度傾斜し、横方向で、僅かに正面方向に湾曲した曲面であるのに対し、引用部分がその傾き及び左右方向の面の態様が不明である点は、類否判断に与える影響は大きく、これらの点が両部分の類否判断に与える影響は大きいものである。

(3)形状等の総合評価

 そうすると、相違点(a)及び(b)は相違点の両部分の類否判断に及ぼす影響は、総じて大きいものであるのに対して、形状等の共通点(A)及び(B)は、共通点の両部分の類否判断に与える影響は総じて小さく、相違点が共通点を凌駕し、両部分の類否判断を決定付けるものであるから、両部分は類似しない。

 したがって、両意匠の意匠に係る物品は相違するものの、両意匠の類否判断にほとんど影響を与えず、両部分は、その用途及び機能、並びに位置及び大きさが共通し、範囲の相違が両部分の類否判断に与える影響が小さいものだとしても、形状等においては、両部分は類似せず、両部分の類否判断を決定付けるものであるから、本願意匠は引用意匠に類似しない。

 


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弊所独自の観点で、編集・加工を行っています。
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(作成2023.08.24、最終更新2023.08.24)

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意匠審決の読解1(類否判断事例)

不服2022-6724

意願2020-27905「検体センサーデバイス」拒絶査定不服審判事件

原査定を取り消す。本願の意匠は、登録すべきものとする。

意匠法第3条第1項第3号(新規性)

【弊所メモ】部分意匠、引用部分の形状等が不明、需要者の注意を惹く部分、他の先行意匠には見られない特徴的な形状等

◆図面・写真・画像は、審判番号から、特許庁の審決公報をご覧ください。

 


1 本願意匠と引用意匠の対比

(1)意匠に係る物品の対比

 本願意匠は「検体センサーデバイス」であり、引用意匠は「生体用センサー」であって一致しないが、いずれも…するものであるから、用途及び機能が共通する。

(2)本願部分と引用部分の用途及び機能の対比

 本願部分は、上蓋部分と、平面側円孔部分と、底面側円孔部分からなる。

 ア 上蓋部分については、…として用いられるものであり、…の機能を有するから、両部分の該部位の用途及び機能は一致する。

 イ 平面側円孔部分については、…の機能を有するから、両部分の該部位の用途及び機能は一致する。

 ウ 底面側円孔部分については、引用部分においては、その部分の形状等が全く表れていないため、両部分の該部位の用途及び機能を対比することはできない

(3)両部分の位置、大きさ及び範囲の対比

 両部分の物品全体に占める位置、大きさ及び範囲については、

 上蓋部分は、両部分の該部位の位置、大きさ及び範囲は一致する。

 平面側円孔部分は、両部分の該部位の位置、大きさ及び範囲は一致する。

 底面側円孔部分は、引用部分において形状等が全く表れていないため、両部分の該部位の位置、大きさ及び範囲を対比することはできない

(4)両部分の形状等の対比

 ア 形状等の共通点

 (共通点1)両部分は、検体センサーデバイスの本体部における、上蓋部分、平面側円孔部分及び底面側円孔部分からなる構成とした点が共通する。

 (共通点2)両部分は、上蓋部分の形状等を、…した点が共通する。

 (共通点3)両部分は、平面側円孔部分の形状等を、…している点が共通する。

 イ 形状等の相違点

 (相違点)本願部分の底面側円孔部分の形状等が、…しているのに対し、引用部分の底面側円孔部分の形状等は、全く表れていないため、両部分の該部位を対比することはできず、この形状等が共通するということはできない

 

2 両意匠の類否判断

(1)意匠に係る物品の類否判断

 用途及び機能が共通するものであるから類似するものである。

(2)両部分の用途及び機能の類否判断

 底面側円孔部分について、その用途及び機能を対比することはできないから、両部分の用途及び機能が一致又は共通するということはできない。

(3)両部分の位置、大きさ及び範囲の評価

 底面側円孔部分について、その位置、大きさ及び範囲を対比することはできないから、両部分の物品全体に占める位置、大きさ及び範囲が一致又は共通するということはできない。

(4)両部分の形状等の類否判断

 ア 共通点の評価

 (共通点1)は部分全体の構成態様に係るものであるが、これらは、両部分の形状等を概括的に捉えた場合の共通点にすぎないものであるから、部分意匠全体の美感に与える影響は小さい。

 (共通点2)は上蓋部分の具体的な形状等に係るものであるが、この種物品において、上蓋部分の形状を…したものは、本願意匠出願前に既に見られるものの、この円孔部の大きさには両部分にのみ見られる特徴が認められるから、部分意匠全体の美感に与える影響は一定程度ある。

 (共通点3)は平面側円孔部分の具体的な形状等に係るものであるところ、この円孔部の形状等には両部分にのみ見られる特徴が認められるから、部分意匠全体の美感に与える影響も一定程度ある。

 イ 相違点の評価

 (相違点)の底面側円孔部分の形状等については、この種物品の需要者である看者や医療関係者等の注意を惹くセンサー先端部が突設される部分の形状等であるところ、本願部分が、…した他の先行意匠には見られない特徴的な形状等であるのに対し、引用部分の形状等は全く不明であることから両部分の形状等は、同一若しくは類似するということはできず、この需要者の注意を惹く底面側円孔部分の形状等の相違は、部分全体の類否判断に一定以上の影響を与えている。

 ウ 両部分の形状等の類否判断

 両部分の形状等における共通点及び相違点についての個別評価に基づき、両部分全体として総合的に観察した場合、

 両部分は、需要者が注視する底面側円孔部分の形状等の相違が、部分全体の類否判断に一定以上の影響を与えているのに対し、

 上蓋部分の具体的な形状等や平面側円孔部分の具体的な形状等の共通点が、部分全体の美感に与える影響は一定程度のものでしかなく、部分全体の構成態様の共通点が部分全体の美感に与える影響も小さいものであるから、

 これらの共通点が部分全体の類否判断に与える影響は、上記相違点が類否判断に与える影響を覆すには至らず、本願部分の形状等と引用部分の形状等は類似するとはいえないものである。

(5)小括

 以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が類似するものであるが、両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲は、同一又は類似するものとは判断できず、両部分の形状等においても類似するとはいえないものであるから、本願意匠と引用意匠が類似するということはできない。

 


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特許庁統計【意匠編2023年版】出願件数・審査期間・関連意匠利用率など【動画】

特許庁統計【意匠編2023年版】出願件数・審査期間・関連意匠利用率などについて、解説動画をYouTubeに投稿しました(3分25秒)。

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(作成2023.08.18、最終更新2023.08.18)
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特許庁統計【特実編2023年版】出願件数・審査請求率・審査期間・特許査定率など【動画】

特許庁統計【特実編2023年版】出願件数・審査請求率・審査期間・特許査定率などについて、解説動画をYouTubeに投稿しました(6分46秒)。

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特許庁統計【特実編2023年版】出願件数・審査請求率・審査期間・特許査定率など【動画】

 


(作成2023.08.12、最終更新2023.08.12)
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特許庁統計【商標編2023年版】出願件数・審査期間・平均区分数など

はじめに

 


目次

  1. 【出願件数】商標登録出願件数は、年間どのくらい?
  2. 【本人出願率】弁理士等の代理人のない本人出願の割合は、どのくらい?
  3. 【平均区分数】一出願に含まれる平均区分数(多区分率)は、どのくらい?
  4. 【審査期間】商標の審査期間は、どのくらい?
  5. 【拒絶査定不服審判の件数・成否・期間】商標の拒絶査定不服審判の請求件数、請求成否件数、審理期間は、どのくらい?
  6. 【異議申立ての件数・成否・期間】商標の異議申立ての申立件数、決定件数、審理期間は、どのくらい?
  7. 【無効審判の件数・成否・期間】商標登録の無効審判の請求件数、請求成否件数、審理期間は、どのくらい?
  8. 【取消審判の件数・成否・期間】商標登録の取消審判の請求件数、請求成否件数、審理期間は、どのくらい?
  9. 【特許庁人数】特許庁の人数、審査官の人数は、どのくらい?

 


Q&A

1.【出願件数】商標登録出願件数は、年間どのくらい?

2022年の商標登録出願件数は、国際商標登録出願19,769件、それ以外の商標登録出願150,506件で、合計170,275件です。
国際商標登録出願以外の商標登録出願150,506件について、筆頭出願人による内訳は、個人23,523件、法人126,919件、官庁64件です。

 

2.【本人出願率】弁理士等の代理人のない本人出願の割合は、どのくらい?

2022年、国際商標登録出願以外の商標登録出願件数150,506件の内、弁理士代理出願は107,476件、本人出願は39,169件です。そのため、弊所計算では、商標の本人出願率は、26.0%です。

 

3.【平均区分数】一出願に含まれる平均区分数(多区分率)は、どのくらい?

2022年、国際商標登録出願以外の商標登録出願について、一出願に含まれる平均区分数は、1.99です。

 

4.【審査期間】商標の審査期間は、どのくらい?

商標のファーストアクション期間は、5.8か月です(2022年)。但し、早期審査対象案件は、1.9か月です。

なお、ファーストアクション期間とは、一次審査通知までの期間をいいます。具体的には、出願から、審査官による審査結果の最初の通知(主に登録査定又は拒絶理由通知書)が出願人等へ発送されるまでの期間です。

 

5.【拒絶査定不服審判の件数・成否・期間】商標の拒絶査定不服審判の請求件数、請求成否件数、審理期間は、どのくらい?

2022年、商標の拒絶査定不服審判について、請求件数1,532請求成立件数764、請求不成立(含却下)件数372、取下放棄件数17です。

商標の拒絶査定不服審判での平均審理期間は、8.6か月です(2022年)。但し、早期審理対象案件は、2.7か月です。
なお、審理期間とは、審判請求日から、審決の発送日、取下・放棄の確定日、又は却下の発送日までの期間の暦年平均です。

 

6.【異議申立ての件数・成否・期間】商標の異議申立ての申立件数、決定件数、審理期間は、どのくらい?

2022年、商標の登録異議申立てについて、権利単位で見たとき、申立件数565取消決定(含一部取消)件数37、維持決定(含却下)件数365、取下放棄件数54です。

登録異議申立ての審理期間は、8.9か月です(2022年)。

 

7.【無効審判の件数・成否・期間】商標登録の無効審判の請求件数、請求成否件数、審理期間は、どのくらい?

2022年、商標登録の無効審判について、請求件数96請求成立(含一部成立)件数28、請求不成立(含却下)件数27、取下放棄件数15です。

商標登録の無効審判の審理期間は、10.0か月です(2022年)。

 

8.【取消審判の件数・成否・期間】商標登録の取消審判の請求件数、請求成否件数、審理期間は、どのくらい?

2022年、商標登録の取消審判について、請求件数1,201請求成立件数1,037、請求不成立(含却下)件数94、取下放棄件数73です。

商標登録の取消審判の審理期間は、6.4か月です(2022年)。

 

9.【特許庁人数】特許庁の人数、審査官の人数は、どのくらい?

特許庁統計【特実編2023年版】の「【特許庁人数】特許庁の人数、審査官の人数は、どのくらい?」をご覧ください。

 


(作成2023.07.29、最終更新2023.07.29)
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(本頁に掲載の数値は特許庁編『特許行政年次報告書2023年版』に基づきます。)

特許庁統計【意匠編2023年版】出願件数・審査期間・関連意匠利用率など

はじめに

 


目次

  1. 【出願件数】意匠登録出願件数は、年間どのくらい?
  2. 【本人出願率】弁理士等の代理人のない本人出願の割合は、どのくらい?
  3. 【関連意匠利用割合】出願全体に占める関連意匠の出願件数割合は、どのくらい?
  4. 【審査期間】意匠の審査期間は、どのくらい?
  5. 【拒絶査定不服審判の件数・成否・期間】意匠の拒絶査定不服審判の請求件数、請求成否件数、審理期間は、どのくらい?
  6. 【無効審判の件数・成否・期間】意匠登録の無効審判の請求件数、請求成否件数、審理期間は、どのくらい?
  7. 【特許庁人数】特許庁の人数、審査官の人数は、どのくらい?

 


Q&A

1.【出願件数】意匠登録出願件数は、年間どのくらい?

2022年の意匠登録出願件数は、国際意匠登録出願3,353件、それ以外の意匠登録出願28,358件で、合計31,711件です。
国際意匠登録出願以外の意匠登録出願28,358件について、筆頭出願人による内訳は、個人2,494件、法人25,864件、官庁0件です。

 

2.【本人出願率】弁理士等の代理人のない本人出願の割合は、どのくらい?

2022年、国際意匠登録出願以外の意匠登録出願件数28,358件の内、弁理士代理出願は21,922件、本人出願は6,293件です。そのため、弊所計算では、意匠の本人出願率は、22.2%です。

 

3.【関連意匠利用割合】出願全体に占める関連意匠の出願件数割合は、どのくらい?

2022年、国際意匠登録出願も含めた意匠登録出願件数31,711件の内、関連意匠出願件数は4,035件です。そのため、出願全体に占める関連意匠の出願件数割合は、12.7%です。

 

4.【審査期間】意匠の審査期間は、どのくらい?

意匠のファーストアクション期間は、6.1か月です(2022年)。但し、早期審査対象案件は、1.9か月です。

なお、ファーストアクション期間とは、一次審査通知までの期間をいいます。具体的には、出願から、審査官による審査結果の最初の通知(主に登録査定又は拒絶理由通知書)が出願人等へ発送されるまでの期間です。

 

5.【拒絶査定不服審判の件数・成否・期間】意匠の拒絶査定不服審判の請求件数、請求成否件数、審理期間は、どのくらい?

2022年、意匠の拒絶査定不服審判について、請求件数340請求成立件数258、請求不成立(含却下)件数54、取下放棄件数1です。

意匠の拒絶査定不服審判での平均審理期間は、6.8か月です(2022年)。但し、早期審理対象案件は、4.1か月です。
なお、審理期間とは、審判請求日から、審決の発送日、取下・放棄の確定日、又は却下の発送日までの期間の暦年平均です。

 

6.【無効審判の件数・成否・期間】意匠登録の無効審判の請求件数、請求成否件数、審理期間は、どのくらい?

2022年、意匠登録の無効審判について、請求件数13請求成立(含一部成立)件数5、請求不成立(含却下)件数6、取下放棄件数1です。

意匠登録の無効審判の審理期間は、12.3か月です(2022年)。

 

7.【特許庁人数】特許庁の人数、審査官の人数は、どのくらい?

特許庁統計【特実編2023年版】の「【特許庁人数】特許庁の人数、審査官の人数は、どのくらい?」をご覧ください。

 


(作成2023.07.29、最終更新2023.07.29)
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(本頁に掲載の数値は特許庁編『特許行政年次報告書2023年版』に基づきます。)