ルイ・ヴィトン事件:意匠的効果をねらった商標の使用

商標と意匠について

商標(しょうひょう)とは、キャラメルに「グリコ」、ビールに「キリン」など、商品等に使用されるネーミングやマークなどをいいます。商標は、自分の商品等と他人の商品等とを識別するために用いられ、それ故、自他商品等の識別機能を有することが必要です。商標を保護したい場合、特許庁に商標登録出願して、審査をパスし、商標登録を受けなければなりません。

一方、意匠(いしょう)は、物品等の美的な外観・デザインをいいます。同程度の機能、品質、価格なら、需要者はデザイン的に優れた方を選択すると考えられます。意匠を保護したい場合、特許庁に意匠登録出願して、審査をパスし、意匠登録を受けなければなりません。

意匠であって商標でもあることがあるのか意匠的効果をねらった登録商標の使用が商標権侵害となるかが争われた「ルイ・ヴィトン事件(商標権侵害訴訟、大阪地裁)」を確認してみます。この判決は、大阪高裁、最高裁でも支持されております。

なお、弊所において編集・加工を行っています。詳細は、事件番号から判決全文をご確認ください。

 


ルイ・ヴィトン事件:大阪地裁、昭和61年(ワ)第4147号、昭和62年3月18日

本件標章(一) 本件標章(二)
商標登録第1332979号 商標登録第1446773号
ルイ・ヴィトン事件:意匠と商標との関係1 ルイ・ヴィトン事件:意匠と商標との関係2

主文

一 被告は原告に対し、金662万円及びこれに対する昭和61年7月21日から支払ずみまで年5分の割合による金員を支払え

二 被告は、別紙目録(一)、(二)記載の標章を付したかばん類及び袋物を譲渡し、譲渡のため展示してはならない

三 被告は、前項記載のかばん類及び袋物を廃棄せよ

四 訴訟費用は被告の負担とする。

五 この判決は仮に執行することができる。

 

理由

被告は、本件標章(一)、(二)と同一のものを使用し素材、色、デザイン等も細部に至るまで原告の商品に酷似したかばん類を、他から仕入れ、第三者に販売した。

 

被告は、被告のなした本件標章(一)、(二)の使用は意匠としての使用であるから商標権の侵害とはならないと主張するようであるけれども、

商標と意匠とは排他的、択一的な関係にあるものではなくして、意匠となりうる模様等であっても、それが自他識別機能を有する標章として使用されている限り、商標としての使用がなされているものというべきところ、

証拠によれば、原告及び被告は本件標章(一)、(二)をその商品に自他識別機能を有する標章として使用していることが明らかであるから、被告の本件標章(一)、(二)の使用は商標としての使用として商標権の侵害となるのであり、被告の前掲主張は理由がない。

 

以上認定の事実によれば、原告の本訴請求のうち商標法36条、民法709条に基づく請求はすべて理由がある。

よつて、右請求(商標権侵害行為差止め、同侵害物件廃棄、損害賠償の各請求)をいずれも認容することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法89条を、仮執行の宣言につき同法196条1項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

 


関連事件

  • 大阪高裁:昭和62年(ネ)第670号、昭和62年7月15日(請求棄却)
  • 最高裁:昭和62年(オ)第1298号、昭和63年1月19日(上告棄却)

 


関連情報

 


(作成2024.09.21、最終更新2024.09.21)
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