建築物の意匠とは(意匠登録の対象)

令和元年の意匠法改正により、「建築物」や「内装」も、意匠(いしょう)登録の対象となりました。意匠登録を受けることで、同一・類似の意匠を独占排他的に実施(建築等)することができます。

意匠法の条文に、「建築物」の文言が出現する条文を順に確認していきます。今回は、第2条第1項(意匠の定義)です。

特許庁編『意匠審査基準』に基づき、意匠法上の建築物の要件、建築物に該当する例、建築物に該当しない例、一出願できる建築物、建築物の一部を構成するもの、構成しないもの、も確認してみます。

なお、審査基準については、弊所において、編集・加工を行っています。最新かつ正確な情報、さらに詳細な情報は、特許庁ホームページにてご確認ください。

目次

 


意匠法第2条第1項(意匠の定義)

この法律で「意匠」とは、
 物品(物品の部分を含む。以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合(以下「形状等」という。)、
 建築物(建築物の部分を含む。以下同じ。)の形状等
 又は画像(機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限り、画像の部分を含む。次条第2項、第37条第2項、第38条第七号及び第八号、第44条の3第2項第六号並びに第55条第2項第六号を除き、以下同じ。)であつて、
 視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。
 

建築物について意匠登録を受けるには、意匠法上の「意匠」でなければならない。

意匠法上の「意匠」とは、建築物(建築物の部分を含む。)の形状等であって、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。ここで、形状等とは、形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合をいう。

建築物の全体について意匠登録できる以外に、建築物の部分について意匠登録できる。

意匠登録の対象となる建築物は、視覚を通じて美感を起こさせるものである。

 

意匠法上の建築物に該当するための要件

  • 土地の定着物であること。
  • 人工構造物であること。土木構造物を含む。

 

意匠法上の建築物に該当するもの

  • 商業用建築物、住宅、学校、病院、工場、競技場、橋りょう、電波塔など

 

意匠法上の建築物に該当しないもの1(土地の定着物でないもの)

  • 土地に定着させ得るが、動産として取引されるもの
    例:(建築物に付随しない)庭園灯
  • 一時的に設営される仮設のもの
    例:仮設テント
  • 不動産等の登記の対象となり得るが、動産として取引されるもの
    例:船舶、航空機、キャンピングカー

但し、これらに該当するものであっても、意匠法上の物品に該当するものは、物品の意匠として意匠登録の対象となり得る。

 

意匠法上の建築物に該当しないもの2(人工構造物でないもの)

  • 人工的なものでないもの
    例:自然の山、自然の岩、自然の樹木、自然の河川、自然の滝、自然の砂浜
  • 人の手が加えられているものの、自然物や地形等を意匠の主たる要素としているもの
    例:スキーゲレンデ、ゴルフコース
  • 土地そのもの又は土地を造成したにすぎないもの

 

複数の構成物でも一出願できるもの

意匠登録出願は、意匠ごとにしなければならない(一意匠一出願の原則(第7条))。たとえば、住宅と電波塔とを一出願できない。

但し、たとえば、次のものは、複数の構成物が表されていても、一の建築物と判断される。

  • 中央で分離している可動橋
  • 学校の校舎と体育館
  • 複数の棟からなる商業用建築物

 

建築物の一部を構成するもの

  • 建築物の仕上げ材等
    例:瓦、壁紙、タイル、フローリング、床に張り込んで用いるカーペット、畳
  • 建具、固定された什器等
    例:扉、窓、作り付けの間仕切り壁、天井つり下げ灯、天井埋め込み灯、ブラインド、映画館の座席
  • 建築物に付随する屋外に固定されたもの
    例:ウッドデッキ、ペデストリアンデッキ、門柱、敷設ブロック
  • 建築物に付随する範囲内のものと判断する植物や石等の自然物
    例:建築物の外壁に固定したグリーンウォール、建築物の床面に固定するなどして位置を変更しないプランター内の植物、家屋とそれに付随する門柱との間に植えた立木、ホテルに付随する前庭の植物

 

建築物の一部を構成しないもの

  • 例:住宅のテーブル、オフィスの椅子、ホテルのベッド、洗濯機、冷蔵庫、ラグ、置き畳、ゴミ箱

 


関連情報

 


(作成2024.10.03、最終更新2024.10.03)
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