建築物の意匠の実施(意匠権の効力・侵害)

目次

 


意匠法第2条第2項(意匠の実施)

この法律で意匠について「実施」とは、次に掲げる行為をいう。
 一 意匠に係る物品製造、使用、譲渡、貸渡し、輸出若しくは輸入(外国にある者が外国から日本国内に他人をして持ち込ませる行為を含む。以下同じ。)又は譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡又は貸渡しのための展示を含む。以下同じ。)をする行為
 二 意匠に係る建築物建築、使用、譲渡若しくは貸渡し又は譲渡若しくは貸渡しの申出をする行為
 三 意匠に係る画像・・・(以下省略)・・・
 

建築物の意匠の実施とは?

意匠権者は、業として登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有する(第23条)。つまり、原則として意匠権者のみが、事業として、登録意匠と同一・類似の意匠について、独占的に実施することができる。

ここで、建築物の意匠について、実施とは、建築物の「建築」、「使用」、「譲渡」若しくは「貸渡し」又は「譲渡若しくは貸渡しの申出」をする行為をいう。そして、「譲渡若しくは貸渡しの申出」には、「譲渡又は貸渡しのための展示」が含まれる(一号括弧書き)。

 

物品の意匠と建築物の意匠の違い?

物品の意匠と建築物の意匠とを比較すると、物品の「製造」が、建築物の「建築」に対応する。また、物品の実施行為には「輸出」や「輸入」があるが、建築物は不動産のため、建築物の実施行為に輸出や輸入がない。

このように、物品の意匠と建築物の意匠とは、実施行為が異なる。それに伴い、権利行使できる内容も異なる。たとえば、物品の意匠として「組立家屋」で出願するか、建築物の意匠として「住宅」で出願するかで、権利内容が異なることになる。

 

意匠権者の独占行為と意匠権侵害

建築物の意匠の場合、登録意匠及びこれに類似する意匠については、権利者のみが、次の行為をすることができる。

  • 建築物の建築
  • 建築物の使用
  • 建築物の譲渡
  • 建築物の貸渡し
  • 建築物の譲渡又は貸渡しの申出譲渡又は貸渡しのための展示を含む。)

これらの行為を権利者以外の者が無断で行うと、原則として意匠権の侵害となる。但し、事業として(ビジネスとして)の実施が要件となるため、個人的・家庭的な実施なら意匠権侵害とはならない。

意匠権侵害に対し、権利者は、侵害行為の差止めや、損賠賠償などを請求することができる。

意匠権の効力について、詳しくは、次をご覧ください。

 


意匠法第37条(差止請求権)

意匠権者…は、自己の意匠権…を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
 2 意匠権者…は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物品、建築物若しくは画像・・・の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができる。
 3 ・・・
 

差止請求権

意匠権者は、自己の意匠権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。また、この請求をするに際し、侵害の行為を組成した建築物などの廃棄侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができる。

差止請求権について、詳しくは、次をご覧ください。

 

間接侵害

一定の行為は、侵害行為とみなされる(間接侵害:第38条第四号~第六号が建築物の意匠)。

間接侵害について、詳しくは、次をご覧ください。

 


関連情報

 


(作成2024.10.08、最終更新2024.10.08)
Copyright©2024 Katanobu Koyama. ALL RIGHTS RESERVED.