意匠権侵害訴訟での意匠の類否判断手法:増幅器付スピーカー事件

はじめに

増幅器付スピーカー事件における意匠の類否判断手法を確認してみます。つまり、対比する両意匠が類似するか否かについて、結論に至るまでの流れの骨格を確認してみます。詳しくは、増幅器付スピーカー事件をご確認ください。

なお、(裁判所ではなく)特許庁の意匠審査基準に基づく類否判断については、「意匠の類否判断(意匠審査基準の読解)」をご覧ください。

 


本件登録意匠と相手方意匠の類否判断

1 事実認定

(1)本件登録意匠の構成態様

ア 基本的構成態様
 【1】 ・・・である。
 【2】 ・・・である。
イ 具体的構成態様
 【3】 ・・・である。
 【4】 ・・・である。
 【5】 ・・・である。

(2)相手方意匠の構成態様

ア 基本的構成態様
 【1’】 ・・・である。
 【2’】 ・・・である。
イ 具体的構成態様
 【3’】 ・・・である。
 【4’】 ・・・である。
 【5’】 ・・・である。

 

2 類否の検討

意匠権の効力は、登録意匠及びこれに類似する意匠に及ぶ(法23条)ところ、意匠は、物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせる創作である(法1条,2条1項)。そのため、意匠の類否は、登録意匠と対象意匠とが美感を共通にするかどうかによって判断されるが、その際には、登録意匠の創作性の程度、対象意匠に係る物品と登録意匠の意匠に係る物品との同一又は類似性などが考慮されることになる。

そこで、1で認定した、本件登録意匠及び相手方意匠の構成態様をもとに、両者の類否を検討する。

 

(1)物品の同一又は類似性

本件物品は・・・、相手方製品は・・・である。

両物品が同一でない場合、両物品の用途・機能等から、それらの類似性を検討する。

 

(2)意匠の形態面における類似性

意匠の類否の判断は、当該意匠に係る物品の取引者・需要者において、視覚を通じて最も注意を惹かれる部分をその意匠の中から抽出し、「当該部分の共通点及び差異点」を検討した上、「その他の部分の共通点及び差異点」についても検討し、これらを勘案した結果、全体として、美感を共通にするか否かを基本として行うべきである。

ア 本件登録意匠の要部

登録意匠について、当該意匠に係る物品の取引者・需要者が、視覚を通じて最も注意を惹かれる部分、すなわち、「意匠の要部」を把握するに際しては、当該意匠の出願時点における公知又は周知の意匠等を参酌するとともに、当該意匠において新規な美感をもたらすべき創作性の程度の評価等を踏まえて、これを検討すべきものである。

 (ア) 本件出願日時点において公知であった意匠の認定(本件登録意匠との差異も)

 (イ) 通常の使用時において、どの方向から観察される外観が当該物品の利用者の注意を惹くものであるか(その理由も)

 (ウ) 以上を踏まえて検討すると、本件登録意匠の要部は、上記1(1)において認定した本件登録意匠の構成態様のうち、基本的構成態様【1】及び【2】、並びに具体的構成態様【3】とを組み合わせた形状である。

なお、各部分について公知ないし周知の意匠があることから、直ちに、これらを組み合わせた部分が要部と認められなくなるものではなく、意匠を全体的に観察した場合に、当該部分が意匠全体の支配的位置を占め、意匠的まとまりを形成し、看者の注意を最も惹くときは、要部と認められる。

 

イ 本件登録意匠及び相手方意匠との共通点及び差異点

 (ア) 共通点
 a 基本的構成態様【1】に関し、いずれも、・・・である。
 b 基本的構成態様【2】に関し、いずれも、・・・である。
 c 具体的構成態様【3】に関し、いずれも、・・・である。

 (イ) 差異点
 a 具体的構成態様【4】に関し、本件登録意匠においては、・・・であるのに対し、相手方意匠においては、・・・である。
 b 具体的構成態様【5】に関し、本件登録意匠においては、・・・であるのに対し、相手方意匠においては、・・・である。

 

ウ 本件登録意匠及び相手方意匠の類否

 (ア) 上記イ(ア)のとおり、本件登録意匠及び相手方意匠とは、基本的構成態様【1】【1’】及び【2】【2’】、並びに具体的構成態様【3】【3’】の点で共通する。

 (イ) そうすると、上記ア(ウ)のとおり、本件登録意匠の要部は、基本的構成態様【1】及び【2】、さらに、具体的構成態様【3】の形状であるところ、相手方意匠も、本件登録意匠の要部と共通の構成態様を有することになる。
 本件登録意匠の要部は、同様の組合せを有する意匠が他にはなく、新規な、創作性の高い意匠であると認められるのであり、このような要部の構成態様を共通して有することは、本件登録意匠及び相手方意匠の類否判断に、大きな影響を与えるものといわなければならない。

 (ウ) 他方、差異点について検討すると、・・・の差異(具体的構成態様【4】)については、・・・であるから、この点の差異は、本件登録意匠及び相手方意匠の類否において、大きな意味を有するものではない(大きく影響するものではない,差異は微差にとどまる)。

 (エ) ・・・の差異(具体的構成態様【5】)については、・・・の形状が見当たらないことからすれば、相応に、看者の受ける印象に影響を与えるものといえる。しかしながら、本件登録意匠の要部の持つ新規性、創作性の程度と、それを相手方意匠と共通にすることが、意匠の類否判断に大きく影響を及ぼすものである以上、上記差異は、両意匠における前記共通性、類似性を凌駕するものではない。

 

3 まとめ

したがって、相手方意匠は、本件登録意匠に類似する。

 


関連情報

 


(作成2024.11.24、最終更新2024.11.24)
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