部分意匠の類否と活用(関連意匠・全体意匠・非類似物品との関係)

目次(全体意匠・部分意匠・関連意匠・組物の意匠の登録例)

 


はじめに

部分意匠の類否(類似か否か)について、飲食用スプーン、フォーク、ナイフで、事例を確認してみます。

(1)意匠Aがあるのに意匠Bが別個に意匠登録されているなら、両意匠は非類似です。

(2)意匠Bが意匠Aの関連意匠として登録されているなら、両意匠は類似です。

(3)意匠の類否判断には、形態(形状・模様・色彩)だけでなく、物品も関係します。仮に形態が同じでも、「物品が異なれば意匠は異なる」という原則があります。たとえば、飲食用スプーンとフォークとは、基本的には別個の意匠(非類似の意匠)となります。但し、後述するように、部分意匠なら、類似となる場合(関連意匠として登録される場合)もあります。一方で、部分意匠でも、やはり非類似とされることもあります。

全体意匠と部分意匠、通常意匠と関連意匠、物品の違い(スプーン、フォーク、ナイフの違い)による意匠の類否判断事例を確認してみます。

なお、下記事例の意匠登録の創作者様、出願人様及び代理人様と、弊所とは一切関係ありません。内容・図面が分かりやすいため、事例として挙げさせていただきました。関係者の皆様には何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます。

 


全体意匠の例(類似)

飲食用スプーンが関連意匠として登録されています。つまり、両意匠は、類似です。

類似
本意匠 関連意匠
登録第1500912号 登録第1502109号
飲食用スプーン 飲食用スプーン

 


全体意匠の例(非類似)

スプーンとフォークが、互いに無関係で、通常の意匠登録がされています。つまり、両意匠は、非類似です。

非類似
登録第1694568号 登録第1694569号
スプーン フォーク

 


ほぼ全体意匠の例(非類似)

スプーン、フォーク、ナイフが、部分意匠ではあるものの、“ほぼ全体意匠”として、互いに無関係で、通常の意匠登録がされています。つまり、これら意匠は、互いに非類似です。

厳密にいえば、各意匠は部分意匠として登録されていますが、全体意匠に近いです。

非類似
登録第1791507号 登録第1791508号 登録第1793450号
飲食用スプーン 飲食用フォーク 飲食用ナイフ
白色に着色した部分以外の部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。

 


部分意匠の例1(類似)

スプーンの柄、フォークの柄についての部分意匠です。スプーンが本意匠(基礎意匠)で、フォークが関連意匠として登録されています。つまり、両意匠は、類似です。

一方、ナイフの柄についての部分意匠は、通常の意匠登録です。つまり、スプーンやフォークとは非類似です。

類似 非類似
本意匠 関連意匠
登録第1791509号 登録第1791572号 登録第1793451号
飲食用スプーン 飲食用フォーク 飲食用ナイフ
白色に着色した部分以外の部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。

◆その他の同種の例

  • 本意匠(登録第1776599号:飲食用スプーン)と、関連意匠(登録第1776623号:飲食用フォーク)
  • 本意匠(登録第1771435号:飲食用スプーン)と、関連意匠(登録第1771509号:飲食用フォーク)と、これらと非類似の通常意匠(登録第1766125号:飲食用ナイフ)
  • 本意匠(登録第1096090号:飲食用スプーン)と、関連意匠(登録第1099902号:飲食用フォーク)
  • 本意匠(登録第1327562号:飲食用フォーク)と、関連意匠(登録第1328020号:飲食用スプーン)

 


部分意匠の例2(類似)

スプーンの柄、ナイフの柄、フォークの柄の一部(装飾凹部)についての部分意匠です。スプーンが本意匠(基礎意匠)で、ナイフとフォークが関連意匠として登録されています。つまり、ナイフとフォークは、スプーンに類似します。

類似
本意匠 関連意匠 関連意匠
登録第1213602号 登録第1214115号 登録第1215311号
飲食用スプーン 飲食用ナイフ 飲食用フォーク
実線で表された部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。

◆その他の同種の例

  • 本意匠(登録第1071305号:飲食用スプーン)と、関連意匠(登録第1071398号:飲食用フォーク)と、関連意匠(登録第1071399号:飲食用ナイフ)

 


部分意匠の例3(非類似)

スプーンの柄、フォークの柄についての部分意匠でも、非類似とされることもあります。

  • 登録第1727438号(飲食用スプーン)と、登録第1727439号(飲食用フォーク)
  • 登録第1272898号(飲食用スプーン)と、登録第1277103号(飲食用フォーク)

 


組物の意匠の例

組物として、一組の飲食用ナイフ、フォーク及びスプーンのセットとしても、意匠登録できます。ナイフ、フォーク、スプーンそれぞれの権利ではなく、あくまでもセットとしての権利となります。

登録第1626598号
一組の飲食用スプーン、フォーク及びナイフセット
組物の意匠

 


関連情報

 


(作成2025.03.22、最終更新2025.03.24)
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