目次
- はじめに
- 通常の意匠登録出願で類似か否かを確認
- 関連意匠の意匠登録出願で類似か否かを確認
- 特許庁の判定で類似か否かを確認
- 学識経験者等による鑑定で類似か否かを確認
- 裁判所で類似か否かを確認
- 関連情報
- 本ページの解説動画:意匠の類似範囲の確認手段【動画】
>たとえば、アマゾンで自社商品と似た商品が販売されている。この他社商品が、自社の意匠権を侵害するものか確かめたい。
(2)他社が保有する意匠権について、自社商品が意匠権侵害でないか確かめたい。
>たとえば、アマゾンで気になる他社商品を見つけたが、意匠登録しているらしい。これから発売予定の自社商品は、他社の意匠権を侵害しないか確かめたい。
(3)自社が保有する意匠権について、自社商品が権利範囲に含まれるか確かめたい。
>たとえば、旧型商品について意匠登録しているが、デザイン変更後の新型商品も保護されているのか確かめたい。
はじめに
意匠登録出願しても、公知意匠と同一又は類似の意匠については、意匠登録を受けることができません(意匠の新規性)。
意匠登録を受けると、意匠権者は、登録意匠及びこれに類似する意匠について、独占的に実施(製造販売等)することができます。登録意匠と同一・類似範囲での他人の実施や登録を排除できます。
このように、意匠の出願審査や権利範囲の解釈で、『意匠が類似するか否か』の問題が生じます。意匠の類否判断の“方法”については、「意匠の類否(類似/非類似)」でご紹介のとおりです。
しかし、それでもなお、第三者による客観的で信頼性のある結論が欲しい場合があります。ここでは、意匠の類否判断の“手段”、言い換えれば、意匠の“類似範囲の確認手段”、について検討してみます。
できるだけ客観的に検討したつもりですが、あくまでも弊所の見解です。
通常の意匠登録出願で類似か否かを確認
たとえば、アマゾン(Amazon)のようなECモールで、気になる他社商品を見つけたとします。その商品販売ページには、「意匠登録済」との表示がありました。これから販売予定の自社商品は、この他社の登録意匠と似ていないと思うけども、本当に非類似なのか、確かめておきたい場合もあると思います。
そのような場合、自社商品について意匠登録出願し、審査をパスするか、つまり他社の登録意匠と類似でないか、を確かめることが考えられます。自社商品が他社の登録意匠と類似なら出願は拒絶され、非類似なら(他に拒絶理由がなければ)登録になります。

留意すべき点は、「意匠登録いろいろ(こんな実例が・・)」でご紹介のとおり、完成品と部品の利用関係など、審査をパスしたからといって、必ずしも安全に実施できるとは限らない点です。しかし、出願の仕方を工夫することで、その点のリスクを低減することはできます。意匠登録することで、一つの安心材料を得られます。
なお、意匠登録出願の場合、出願意匠が他社の登録意匠に類似するとして拒絶されても、その情報は原則として公開されません。出願の事実さえ、第三者には知られません。そのため、意匠登録出願により、比較的安全に手軽に類似範囲を確認することができます。
関連意匠の意匠登録出願で類似か否かを確認
たとえば、自社商品について、既に意匠登録出願し、意匠登録を受けているとします。今般、自社商品のデザインを少し変更しました。大幅なデザイン変更ではないので、新型デザインも、旧型デザインの意匠権で保護されていると期待します。意匠権は、登録意匠のみならず類似範囲まで及びますから、新型デザインも類似範囲に含まれていると期待します。しかし、本当に類似なのか、確かめておきたい場合もあると思います。
そのような場合、登録済の意匠を「本意匠」とし、変更後の意匠を「関連意匠」として意匠登録出願します。関連意匠として登録されたなら、両者は類似します。一方、両者が非類似の場合、関連意匠としては登録されないですが、通常の登録要件を満たせば、通常の意匠登録がなされます。その場合、出願は無駄にはなりません。

また、関連意匠を登録することで、類似範囲の確認だけでなく、類似範囲の拡張を図ることもできます。つまり、関連意匠の類似範囲には「本意匠には類似しないが関連意匠には類似する範囲」として、「関連意匠にのみ類似する範囲」ができますから、本意匠だけを登録した場合と比較して、権利範囲を拡げることができます。

なお、商品自体は同じでも、パッケージが変更になる場合もあります。パッケージについても意匠登録を受けている場合、パッケージの変更についても、関連意匠により、同様に、類似範囲の確認と拡張ができます。
関連意匠について、詳しくは「関連意匠制度とは?」をご覧ください。
特許庁の判定で類似か否かを確認
登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲については、特許庁に判定を求めることができます。結論に法的拘束力はありませんが、意匠の専門官庁である特許庁による公的な見解を得ることができます。比較的短期間に結論を得られる上、学識経験者等による鑑定と比較して安価と思われます。
たとえば、自社が権利者で、他社商品が権利侵害と考える場合、つまり「他社商品の意匠が自社の登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する」と考える場合に利用できます。

また逆に、他社が権利者で、自社商品が権利侵害と疑われているがそうとは思えない場合、つまり「自社商品の意匠が他社の登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない」と考える場合に利用できます。

その他、自社が権利者で、自社商品が権利範囲に含まれるか確認する場合、つまり「自社商品の意匠が自社の登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する」と考える場合などにも利用できます。

なお、案件により、特許庁を介してですが、相手方(他社)とのやり取りが必要となります。また、内容・結果は、公報に掲載され公開されます。この点がデメリットになるかもしれません。
特許庁の判定について、具体例は、「シャープペンシル付きボールペンの意匠判定事件」をご覧ください。
学識経験者等による鑑定で類似か否かを確認
学識経験者、弁護士、弁理士などに、鑑定・見解を求めることも考えられます。
第三者に知られず、専門家の判断を得られます。
裁判所で類似か否かを確認
侵害訴訟を提起して、類似か否か、裁判所で決着を付けることができます。
権利侵害を疑われている側が、先に、差止請求権不存在確認の訴えなどをすることもできます。
なお、判決に至らず、和解によって終了することもあります。
その他、仲裁や調停など、裁判外紛争解決手続もあります。
関連情報
- 意匠登録とは・意匠権の取り方
- ネット販売と意匠権(アマゾン等での商品販売と意匠権侵害)
- 小さな会社のはじめての意匠登録:弁理士への出願相談
- 意匠登録費用
- 意匠登録解説
(作成2025.08.21、最終更新2025.08.24)
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