意匠早期審査(意匠登録出願の審査結果を早く知りたい方へ)

目次

 


意匠出願の審査期間

2024年版の特許庁統計資料によれば、意匠登録出願から「審査官による審査結果の最初の通知(主に登録査定又は拒絶理由通知書)」が出願人等へ発送されるまでの期間は、平均で5.9か月です。

しかし、自社(あるいは他社)のビジネス状況などにより、もっと早く審査結果を得たい場合もあります。

そのような場合、特許庁に早期審査を求めることができます。

早期審査対象案件になると、審査期間は平均1.8か月まで短縮できます。この期間は、早期審査の申出から「審査官による審査結果の最初の通知」が発送されるまでの期間です。

 


意匠早期審査の要件

意匠の早期審査の対象となるには、所定の要件を満たす必要があります。

しかし、創業が浅い中小企業様や個人事業主様の場合、「スタートアップによる実施関連出願」として、比較的容易に対象とできます。

「スタートアップによる実施関連出願」の要件は、以下のとおりです。簡単にいえば、「スタートアップが出願人自身(又は出願人であるスタートアップから出願意匠について実施許諾を受けた者)が、出願意匠を実施しているか、実施の準備を相当程度進めている意匠登録出願であること」が必要です。

ここでは、制度の概要を分かりやすくするために、特許庁資料を弊所において編集加工してご紹介します。2025年6月現在の弊所把握情報です。最新かつ正確な情報は、特許庁でご確認いただくか、弊所にお問合せください。

特許庁によれば、「スタートアップ対応早期審査では、実施関連出願について、一次審査結果通知前に行う面接を通じて戦略的な意匠権の取得につなげ、早期審査のスピードで対応することで、質の高い意匠権を取得できるようにします」とのことです。

 

◆スタートアップによる実施関連出願

(A)「スタートアップによる出願」であること。

具体的には、出願人が次のいずれかに該当することが必要です。

  1. その事業を開始した日以後10年を経過していない個人事業主
  2. 常時使用する従業員の数が20人(商業又はサービス業に属する事業を主たる事業として営む者にあっては5人)以下で設立後10年を経過しておらず、かつ、大企業(資本金額又は出資金額が3億円以下の法人以外の法人)に支配されていない法人
  3. 資本金の額又は出資の総額が3億円以下で設立後10年を経過しておらず、かつ大企業(資本金額又は出資金額が3億円以下の法人以外の法人)に支配されていない法人

(B)「実施関連出願」であること。

具体的には、次の要件に該当することが必要です。

  • その出願の意匠を実施しているか又は実施の準備を相当程度進めていること。

 

なお、「スタートアップによる実施関連出願」以外にも、早期審査の対象となる出願があります。具体的には、次のとおりです。

 

◆権利化について緊急性を要する実施関連出願

出願人等が出願意匠を実施しているか、実施の準備を相当程度進めている意匠登録出願であって、次のいずれかに該当し、権利化について緊急性を要するものであること。

  1. 第三者が許諾なく、出願意匠と同一・類似の意匠を実施しているか、実施の準備を相当程度進めていることが明らかな場合
  2. 出願意匠の実施行為(実施準備行為)について、第三者から警告を受けている場合
  3. 出願意匠について、第三者から実施許諾を求められている場合

 

◆外国関連出願

出願人が出願意匠について日本国特許庁以外の特許庁又は政府間機関へも出願している意匠登録出願であること。

 


意匠早期審査の費用

意匠早期審査の申請(早期審査に関する事情説明書の提出)について、特許庁への支払いは要りません(無料)。

しかし、手続を特許事務所(弁理士)にご依頼の場合、通常、特許事務所の手数料が必要です。

特許事務所の手数料は、事務所により異なります。弊所の場合、意匠登録費用をご覧ください。

 


意匠早期審査のご相談

意匠登録出願や意匠早期審査についてのご依頼・ご相談は、お問合せのページからご連絡ください。初回、相談料は無料です。

早期審査をご希望の場合、出願後、早期に手続しなければ、あまり意味がありません(通常審査との差がなくなります)。そのため、基本的には、出願前のご相談時、あるいは出願後お早めに、早期審査を希望する旨、お知らせください。

意匠早期審査をご希望の場合、手続と費用についてご説明させていただき、それに納得いただけましたら、正式にご依頼いただく流れとなります。

  • メールいただく際、「意匠早期審査を希望する」旨、明示をお願いします。
  • 技術分野や受任状況(混雑状況)などにより、ご依頼ご相談に対応できない場合もあります。予めご了承ください。
  • 他の特許事務所(弁理士)にご依頼中の案件については、弊所にはご相談いただけません。出願を依頼した特許事務所にご相談ください。

 


審判での早期審理

審査において拒絶査定に至った案件について、上級審である審判で争う場合、その審理を早める制度もあります(早期審理制度)。

 


新規性喪失例外手続との関係

出願前に意匠を実施していると原則として意匠登録を受けることはできませんが、所定手続(新規性喪失の例外規定の適用を受けるための手続)をすることで、意匠登録を受けられる場合もあります。その際、既に実施しているのですから、前述した「スタートアップによる実施関連出願」として、早期審査を受けられる場合もあります。

新規性喪失の例外規定については、「意匠の新規性喪失の例外(商品販売後・ウェブ掲載後の意匠登録出願)」をご覧ください。

 


関連情報

 


(作成2025.06.07、最終更新2025.06.09)
Copyright©2025 Katanobu Koyama. ALL RIGHTS RESERVED.