【16】不服2025-14379
意願2024-17854「包装用噴射器」拒絶査定不服審判事件
原査定を取り消す。本願の意匠は、登録すべきものとする。
意匠法第3条第1項第3号(新規性)
【弊所メモ】部分意匠の類否判断。意匠に係る物品は同一、両部分の位置・大きさ・範囲は一致、両部分の形状等は類似するが、両部分の用途及び機能は類似しておらず、用途及び機能の相違が類否判断に与える影響が極めて大きいため、本願意匠は引用意匠に類似しない。
◆図面・写真・画像は、審判番号から、特許庁の審決公報をご覧ください。
1 本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品
どちらも液体等の内容物を収容して注出する容器であって、その用途及び機能は共通しているから、意匠に係る物品は、一致する。
(2)両部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲
ア 両部分の位置、大きさ及び範囲
両部分は、いずれも容器本体の上端部に設けられた注出口の周囲の、容器本体よりやや縮径させた位置から上方に、突出して注出口の外側に設けた略円筒状の周壁であり、容器全体に占める位置、大きさ及び範囲は一致する。
イ 両部分の用途及び機能
両部分は、周壁により注出口付近に空間を設けるという点では機能の一部に共通性が認められるが、空間の用途は相違しており、その他の用途及び機能についても、以下のように一致しない。
本願部分は、キャップの噴射口周りの略円筒状の周壁であり、その用途及び機能は、本願部分を噴射対象物である布製身回品に押しつけることで、内容物を噴射口から噴射し、また、噴射される内容物を布製身回品と共に区画して空間を構成する用途及び機能を有している。
一方で、引用部分は、キャップの一部である周壁箇所であり、キャップを下にして容器を倒立させて保管する際に、注出開口と接地面が接触しないように空間を設ける用途及び機能を有しており、両部分の用途及び機能は一致しない。
(3)両部分の形状等
ア 共通点
両部分は、全体が一定の厚みの略短筒形状である点において、共通する。
イ 相違点
全体の縦、横(径)の長さの比率について、本願部分が約1:3.14であるのに対し、引用部分は、約1:3.57で、本願部分の方が引用部分より縦長である点において相違する。
2 両意匠の類否判断
(1)意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は、一致するから、同一である。
(2)両部分の位置、大きさ及び範囲並びに用途及び機能
両部分の位置、大きさ及び範囲は一致する。また、両部分は注出口付近に空間を設けるという、一部の機能について共通する。
しかしながら、本願部分は、当該部分を噴射対象物である布製身回品に押しつけることで、内容物を噴射口から噴射し、また、噴射される内容物を布製身回品に浸透させるため、布製身回品と共に区画して空間を構成する用途及び機能を有しているのに対し、引用部分は注出開口と接地面が接触しないように空間を設ける用途及び機能を有しており、両部分は用途及び機能に相違点を有している。
この相違点は、当該箇所の可動性にも係る相違点であり、すなわち、当該箇所が使用時において、本願部分は下方に押し込まれるのに対し、引用部分は固定されているといった相違も相まって、需要者の注意を引くものである。
そうすると、需要者は、本願部分について主に、内容物の噴射が空間内に行き渡るかとの観点から観察するのに対し、引用部分については、倒立させた際、抽出口が接地しない程度の間隔が設けられるかとの観点から観察することとなる。この観点の相違は、両部分について、需要者に異なる美感をもたらすものといえる。
したがって、両部分の用途及び機能は一致しておらず類似していないのであって、当該用途及び機能の相違が両意匠の類否判断に与える影響は極めて大きい。
(3)両部分の形状等
ア 共通点の評価
両部分は、一定の厚みの中空円筒形状である点において共通しており、この共通点は需要者に共通の美感を強く与えていることから、両部分の共通点が類否判断に与える影響は大きい。
イ 相違点の評価
両部分においては全体の縦、横径の長さの比率について、本願部分が約1:3.14であるのに対し、引用部分は、約1:3.57で、本願部分の方が引用部分より縦長であるものの、その差はわずかであるから、相違点が両部分の類否判断に与える影響は小さい。
ウ 形状等の類否判断
両部分の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、部分全体として総合的に観察し判断した場合、共通点が両部分の類否判断に与える影響は大きいのに対して、相違点が両部分の類否判断に与える影響は小さいものであるから、両部分の形状等は、類似する。
(4)小括
そうすると、両意匠は、意匠に係る物品は同一であり、両部分の位置、大きさ及び範囲は一致し、両部分の形状等においては類似するが、両部分の用途及び機能は類似しておらず、当該用途及び機能の相違が類否判断に与える影響が極めて大きいため、本願意匠は引用意匠に類似しない。
関連情報
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正確な全文は、審判番号から審決公報をご確認ください。
(作成2026.02.18、最終更新2026.02.18)
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