商標登録とは・商標権の取り方

商標登録

商品を製造販売したり、サービスを提供したりする場合、その商品やサービスに固有のネーミングやマークを付して、他の同種の商品やサービスから識別させることが行われます。

このようなネーミングやマークを「商標(しょうひょう)」といいます。

たとえば、キャラメルに「グリコ」、ビールに「キリン」、文房具に「トンボ」、銀行業に「トマト」、飲食店に「ガスト」などがあります。あらゆる商品やサービスに、商標が使われます。

商標の使用を独占したい場合、特許庁に「商標登録」する必要があります。

以下、商標登録とは何か、商標とは何か、役務(えきむ)とは何か、商標の類似、商品及び役務の区分、商標登録出願から登録までの流れ、商標登録されるための要件、審査期間、登録費用、出願時の注意点などについて、わかりやすく解説します。

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目次

 


商標登録とは?

商標登録の例(各種の登録商標)

商標登録とは、商品又はサービスに使用するネーミングやマーク等について、商標登録出願し審査をパスすることで得られる特許庁への登録をいいます。

商標登録されることで商標権を得られ、商標権者は、指定した商品又はサービスについて、登録商標を独占排他的に使用することができます。登録商標と同一のみならず類似範囲についても、他人の使用を禁止することができます。

権利侵害に対しては、差止請求権や損害賠償請求権などを行使することができます。また、商標権を侵害した場合には、刑事罰が科される場合もあります。

商標権の存続期間は、登録日から10年ですが、10年ごとに更新することができます。これにより、半永久的に商標権を保有することができます。

商標登録の必要性、商標権の効力、商標の使用については、次のリンク先をご覧ください。

 


商標とは?

商標法の保護対象は、「商標(しょうひょう)」です。

商標とは、自分の商品やサービスについて、他人の商品やサービスと区別するために使用するネーミングやマーク等をいいます。より具体的には、人の知覚によって認識することができるもののうち、次のいずれかから構成されます。

  • (a) 文字(標準文字又はそれ以外)
  • (b) 図形
  • (c) 記号
  • (d) 立体的形状
  • (e) 色彩
  • (f) a~eの結合
  • (g) 音
  • (h) その他政令で定めるもの

たとえば、ビールに「ABC」という名前を付けて売り出す場合、文字「ABC」が「商標」です。

文字商標の場合、特許庁長官の指定する標準文字で出願することもできますし、文字の種類(漢字、平仮名、片仮名、アルファベットなど)、大きさ、書体(明朝体、ゴシック体など)、文字間隔などを任意に調整して「商標見本」を作成の上、イメージデータで出願することもできます。

もちろん、商標は、文字である必要はなく、マークやキャラクター図形などであっても構いません。また、二次元つまり平面的な商標に限らず、三次元つまり立体的な商標であっても構いません。2015年4月1日より、動き商標、ホログラム商標、色彩のみからなる商標、音商標、位置商標も、保護対象に追加されました。

 


役務(えきむ)とは?

役務(えきむ)とは、「他人のために行う労務又は便益であって、独立して商取引の目的たり得るべきもの」をいいます(特許庁編『工業所有権法逐条解説 第22版』)。

つまり、役務とは、他人のために行うサービスであって、且つ、独立して商取引の対象となり得るものをいいます。

たとえば、広告業、金融業、不動産業、輸送業、飲食業、通信業、旅行業、小売・卸売業などにおいて行われるサービスをいいます。

また、小売及び卸売の業務において行われるサービスも、商標法上の役務に含まれます。

役務に使用する商標を、特に「サービスマーク」と呼ぶこともあります。しかし、サービスマークも「商標」であることに変わりありません。

 


商品又は役務との関係

商標登録出願では、「商標(ネーミングやマーク等)」だけでなく、その商標をどのような「商品又は役務(えきむ:サービス)」に使用するのかも明らかにする必要があります。

商標登録出願の審査や商標権の権利範囲の判断では、「商標」の同一・類似関係と共に、「商品又は役務」の同一・類似関係も問題となります。

従って、仮に「商標」が同一又は類似であっても、「商品又は役務」が非類似ならば、同一又は類似の商標が別個の人にそれぞれ登録されることがあります。たとえば、ビールに「Asahi」、新聞に「朝日」、靴に「アサヒ」、自転車小売りに「あさひ」など、同一・類似の商標であっても、登録可能な場合があります。

 


商標の類似とは?

商標の類否(類似・非類似)は、比較する両商標の外観(見た目)」「称呼(読み)」「観念(意味)」等を考慮して、同一又は類似の商品又は役務に使用した場合に、出所混同(商品や役務の提供者について誤認)のおそれがあるか否かにより判断されます。

類似商標の例

  • 「Japax」と「JapaX」は、外観において類似します。
  • 「ダイマックス」と「ダイマックス」は、称呼において類似します。
  • でんでんむし物語」と「かたつむり物語」は、観念において類似します。

詳しくは、次のリンク先をご覧ください。

 


商品及び役務の区分

商標登録出願は、商標の使用をする一又は二以上の商品又は役務(えきむ:サービス)を指定して、商標ごとにしなければなりません。そして、この商品又は役務の指定は、政令で定める商品及び役務の区分に従ってしなければなりません。

つまり、商標登録出願に際しては、一つの「商標」と、一以上の「商品・役務」の指定に加えて、その指定した商品・役務が(特許庁が定める区分の)第何類に属するかという「商品及び役務の区分」も明らかにする必要があります。

商標を現に使用しているか、将来における使用の意思がある限り、一つの区分内であれば、その類に含まれる商品・役務をいくつ指定しても構いません。そして、このようにして指定された商品・役務は、「指定商品」又は「指定役務」と呼ばれます。

「商品及び役務の区分」は、45区分に分けられており、第1類から第34類までが、商品についての区分で、第35類から第45類までが、役務についての区分です。

 

たとえば、ビールに「ABC」という名前を付けて売り出す(つまりビールの名前に「ABC」を付ける)場合、「ビール」が指定商品になります。そして、その場合、商品及び役務の区分は「第32類」です。

また、各種のビールを店内でお客様に飲み比べてもらうようなビール専門の飲食店の名前に「ABC」を付ける場合、たとえば、「ビールを主とする飲食物の提供」が指定役務になります。そして、その場合、商品及び役務の区分は「第43類」です。

さらに、ビールの持ち帰り販売店(酒店)の名前に「ABC」を付ける場合、たとえば、「酒類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」が指定役務になります。そして、その場合、商品及び役務の区分は「第35類」です。

 

このように、「商品及び役務の区分」を明示して出願する必要があります。そして、後述しますように、区分の数により、費用が異なります。特許庁統計2023年版によれば、平均区分数は1.99です。

 


商標登録出願から登録までの流れ

商標登録出願から登録までの流れは、典型的には次のとおりです(pdf:商標登録手続の流れ図(フローチャート))。

  1. 商標登録出願
  2. 審査(登録できない場合には拒絶理由通知が出され、出願人に反論の機会あり)
  3. 登録査定(登録する旨の通知)
  4. 設定登録料納付(10年分の登録料納付、但し5年ごとの分割払い可)
  5. 商標登録(商標権の設定登録)

より具体的に述べると、次のとおりです。すなわち、商標登録を受けたい場合、特許庁に商標登録出願します。その後、出願は、審査官による実体審査に付されます。審査において、審査官は、所定の拒絶理由を発見した場合、出願人に拒絶理由を通知し反論の機会を与えます。拒絶理由通知に対し出願人が応答しないか、応答しても拒絶理由が解消しない場合、拒絶査定がなされます。拒絶査定に対しては、審判や訴訟で争うことができます。一方、拒絶理由を発見しないか、拒絶理由が解消した場合、登録査定がなされます。出願人が設定登録料(10年分の登録料、但し5年ごとの分割払い可)を納付することで、商標権の設定登録がなされます。

詳しくは、次のリンク先をご覧ください。

 

なお、先に他人に出願されていると、後で自分が出願しても、権利を取得できず、手間や費用が無駄になります。また、自分が使用すると、他人の権利を侵害するおそれもあります。そこで、できるだけ、出願前に先行商標調査を行います特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)では、誰でも無料で、先行する商標の出願や登録を調査することができます。「商標」の「商標検索」や「商品・役務名検索」をご利用ください。

 


商標登録要件

商標登録出願の審査では、所定の登録要件を満たしているかが審査されます。

代表的な登録要件として、次のものがあります。

 

自他商品役務の識別力を有するか(商標としての機能を発揮するか)

  • 商品又は役務の普通名称のみ(時計に「時計」、スマートフォンに「スマホ」)
  • 商品又は役務の慣用商標(清酒に「正宗」、宿泊施設の提供に「観光ホテル」)
  • 記述的商標[商品の産地・販売地・品質等、役務の提供の場所・質等のみ](「東京」、「一級」、「実演」)
  • ありふれた氏又は名称のみ(「佐藤」、「TANAKA」)
  • 極めて簡単かつありふれた標章のみ(数字、ローマ字1~2字、仮名文字1字、△、□、○)
  • その他、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標(単位、元号、地模様)

商標は、自分の商品等と他人の商品等とを識別するためのものですから、識別できることが必要です。たとえば、商品等の普通名称を普通に用いられる方法で表示するのみでは、他人の商品等と識別することができないので、商標登録を受けることができません。

但し、商標の態様や使用実績等によっては、識別可能となり、登録を受けられる場合もあります。

 

不登録事由に該当しないか(代表的なもの)

  • 国旗、菊花紋章、勲章、褒章、外国の国旗と同一・類似の商標
  • 公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標
  • 他人の肖像、他人の氏名・名称、他人の著名な雅号・芸名・筆名、これらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く)
  • 他人の周知商標と同一・類似の商標であって、同一・類似の商品又は役務に使用するもの
  • 他人の先願登録商標と同一・類似の商標であって、同一・類似の商品又は役務に使用するもの
  • 他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標
  • 商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標(チョコレートに「ガム」)
  • 他人の周知商標と同一・類似の商標であって、不正の目的をもって使用するもの(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的など)

 

一商標一出願の要件に違反していないか

  • 指定商品又は指定役務の表示が不明確なとき
  • 政令で定める商品及び役務の区分に従っていないとき

 

詳しくは、次のリンク先をご覧ください。

 


商標の審査期間

「出願」から「登録査定又は拒絶理由通知書」が出願人等へ発送されるまでの期間は、平均5.8か月です(2022年)。

所定の場合、審査を早めてもらうことができ、その場合は、1.9か月です。

詳しくは、次のリンク先をご覧ください。

 


商標登録費用

  特許庁費用
特許庁統計2023年版によれば、平均区分数=1.99
代理人費用
1区分の場合 2区分の場合
出願時の費用 12,000円 20,600円

事務所により異なります。
小山特許事務所の商標登録費用

拒絶理由通知対応時の費用
登録時の費用 32,900円(10年分) 65,800円(10年分)

登録時の費用は、10年分の一括払いではなく、5年ごとの分割払いも可能です。しかし、5年ごとの分割払いにされますと、トータルとして特許庁費用が高くなります。また、特許事務所(弁理士)に手続をご依頼の場合、5年後に再び代理人費用(事務所手数料)もかかりますので、通常、10年分を一括納付された方がお得です。5年後には商標を使用していない可能性もあるなら、まずは5年分の納付で足ります。

特許庁に支払う費用について、詳細は、商標登録費用(商標の出願から登録までの費用)をご覧ください。

出願手続を特許事務所の弁理士にご依頼の場合、別途、代理人費用がかかります。代理人費用は、現在自由化されており、事務所により異なります。小山特許事務所の場合、次のリンク先をご覧ください。

 


商標登録出願の注意点

(1)出願の早い者勝ち

商標登録は、原則として、「使用」の先後ではなく、「出願」の先後にて、一日でも早く特許庁へ出願した者に付与されます。商標登録しないで商標を使用している場合、仮に自社の方が使用開始が早くても、他社に先に出願され商標登録されてしまうと、他社の商標権の侵害となるおそれが出てきます。そのため、できるだけ早く出願する必要があります。

(2)「商標」と「商品・役務」と「その区分」

商標登録出願に際しては、一つの「商標」と、一以上の「商品・役務」の指定に加えて、その指定した商品・役務が(特許庁が定める区分の)第何類に属するかという「商品及び役務の区分」も明らかにする必要があります。

(3)実際の使用範囲とのズレ

「商品・役務」の指定内容が極めて重要です。「商品・役務」の指定を間違えると、商標登録されても(一見保護されているように思えても)、実は保護されていない、使えない権利の可能性があります。商標登録していても、「商標登録の内容」と「実際の使用範囲」とに“ズレ”があると、他社から使用差止や損害賠償を請求されたり、不使用を理由に商標登録が取り消されたりするおそれがあります。詳しくは、「商標登録は内容次第(こんな実例が・・)」をご覧ください。

 


商標登録に関するご相談

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関連情報

 


(作成2021.05.03、最終更新2024.03.10)
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