意匠審決の読解13(類否判断事例)

【13】不服2022-18095

意願2021-20007「キャップ付きボトルストッパー」拒絶査定不服審判事件

原査定を取り消す。本願の意匠は、登録すべきものとする。

意匠法第3条第1項第3号(新規性)

【弊所メモ】部分意匠、位置、大きさ、範囲、用途及び機能、共通、複数部品か一体不可分か、キャップの有無、本願部分に対応する用途及び機能を有していない、一部の用途及び機能に相違、両部分の形状について検討するまでもなく非類似

◆図面・写真・画像は、審判番号から、特許庁の審決公報をご覧ください。

 


1.本願意匠

(1)意匠に係る物品

 「キャップ付きボトルストッパー」であって、上から順に、
 頭頂部に位置するキャップと、
 中空の頭部、くびれ部、中栓部から成る中間部品と、
 球体の部品と、
 中栓部に係合する外栓
 の4つの部品から成る。

 

(2)本願部分の位置、大きさ及び範囲、並びに用途及び機能

 意匠登録を受けようとする部分は、
 キャップの外面(第1部分)、
 中間部品の頭部及びくびれ部の外面(第2部分)、
 外栓の外面(第3部分)
 の3か所部分である。

 第1部分は、頭頂部に位置し、頭部の直径と同じ直径の大きさであって、頭部の一部を担う範囲である。第1部分は、中空の頭部を塞ぐという用途及び機能を有する。

 第2部分は、キャップの下端から外栓の上端までに位置し、全体の高さの約2分の1の高さとする大きさ及び範囲である。第2部分は、頭部及びくびれ部として、ボトルに栓をするときまたは栓を開けるときに手指でつまむという用途及び機能を有する。

 第3部分は、キャップ付きボトルストッパーの略下半分という位置大きさ及び範囲である。そして、外栓の外面は、ボトルに栓をしたときにボトルの口内周面に触れてボトルを密閉し、かつ、下端中央の開口部は、ボトルを傾けた際にボトルの中身が外栓の内部に流れ込むという用途及び機能を有する。

 

2.引用意匠

(1)意匠に係る物品

 「ボトルストッパー」であり、一体不可分であって、キャップは付いていない。

 

(2)引用部分の位置、大きさ及び範囲、並びに用途及び機能

 引用意匠中、本願部分に相当する部分(引用部分)は、ボトルストッパー全体の外面であって、ボトルストッパー全体の位置大きさ及び範囲である。そして、頭部及びくびれ部の外面は、ボトルに栓をするときまたは栓を開けるときにボトルストッパーを手指でつまむという用途及び機能を有するものであり、栓部の外面は、ボトルに栓をしたときにボトルの口内周面に触れてボトルを密閉するという用途及び機能を有する。

 

3.両意匠の対比

(1)意匠に係る物品の対比

 本願意匠に係る物品は「キャップ付きボトルストッパー」であって、上から順に、キャップ、中間部品、球体の部品、及び外栓の、4つの部品から成るものであるところ、引用意匠に係る物品は「ボトルストッパー」であり、一体不可分であって、キャップは付いていないものである。

 

(2)両部分の位置、大きさ及び範囲、並びに用途及び機能の対比

 本願部分は、上記1.の(2)のとおりであるのに対して、引用部分は、上記2.の(2)のとおりである。

 

4.判断

(1)意匠に係る物品の類否判断

 キャップの有無という違いがあるが、いずれもボトルに栓をするというものであるから、両意匠の意匠に係る物品は、共通していると認められる。

 

(2)両部分の位置、大きさ及び範囲、並びに用途及び機能の評価

 本願意匠の第2部分(本体部の頭部及びくびれ部の外面)と引用意匠中の頭部及びくびれ部の外面は、位置、大きさ及び範囲、並びに用途及び機能が共通しているといえる。

 本願意匠の第3部分(外栓の外面部分)と引用意匠中の栓部の外面は、位置、大きさ及び範囲が共通し、ボトルに栓をしたときにボトルの口内周面に触れてボトルを密閉する点で用途及び機能が共通している。

 しかし、引用部分は、中空の頭部を塞ぐという本願意匠の第1部分に対応する用途及び機能を有していない

 また、引用部分は、ボトルを傾けた際にボトルの中身が外栓の内部に流れ込むための開口という本願意匠の第3部分に対応する用途及び機能を有していない

 

(3)両意匠における類否判断

 以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が共通するが、本願部分と引用部分では、一部の用途及び機能に相違が認められるため、両部分の形状について検討するまでもなく、本願意匠と引用意匠とは類似するとはいえない

 


関連情報

 


弊所独自の観点で、編集・加工を行っています。
正確な全文は、審判番号から審決公報をご確認ください。
(作成2024.02.01、最終更新2024.02.01)

Copyright©2024 Katanobu Koyama. ALL RIGHTS RESERVED.