商標登録出願から登録までの流れ

目次

  1. 重要事項
  2. 商標登録の流れ図(フローチャート)
  3. 個々の手続について
    商標登録出願
    特許庁における審査
    登録査定
    設定登録料の納付
    商標権の設定登録
    商標公報の発行
    存続期間の更新登録
  4. 参考条文
  5. 参考リンク集
  6. <補足>商品及び役務の類似について

本ページの解説動画商標登録出願から登録までの流れ【動画】

 


(1)まずは、二つの重要事項です。


重要事項1

商標登録出願では、商標(ネーミングやマーク等)だけでなく、その商標をどういう商品又は役務(えきむ:サービス)に使うのかを明らかにする必要があります。

商標登録出願の審査や商標権の権利範囲の判断では、「商標」の同一類似関係と共に、「商品又は役務」の同一類似関係も問題になります。

よって、仮に「商標」が同一又は類似であっても、「商品又は役務」が非類似ならば、同一又は類似の商標が別個の人にそれぞれ登録されることがあります。たとえば、ビールに「Asahi」、新聞に「朝日」、靴に「アサヒ」、自転車小売りに「あさひ」など、同一・類似の商標であっても、登録可能な場合があります。

 


重要事項2

商標登録出願は、商標の使用をする一又は二以上の商品又は役務を指定して、商標ごとにしなければなりません。そして、この商品又は役務の指定は、政令で定める商品及び役務の区分に従ってしなければなりません。

つまり、商標登録出願に際しては、一つの「商標」と、一以上の「商品・役務」の指定に加えて、その指定した商品・役務が第何類に属するかという「商品及び役務の区分」も明らかにする必要があります

商標を現に使用しているか、将来における使用の意思がある限り、一つの区分内であれば、その類に含まれる商品・役務をいくつ指定してもかまいません。そして、このようにして指定された商品・役務は、「指定商品」又は「指定役務」と呼ばれます。

「商品及び役務の区分」は、45区分に分けられており、第1類から第34類までが、商品についての区分で、第35類から第45類までが、役務についての区分です。

 


(2)次は、全体の流れ図(フローチャート)です。


商標登録の流れ

商標登録の流れ(フローチャート)

 


(3)以下、個々の手続について、順に、解説します。


商標登録出願

商標登録を受けようとする者は、次に掲げる事項などを記載した願書に必要な書面を添付して特許庁長官に提出しなければなりません。

ご参考(pdfファイル):商標登録出願書類の例(サンプル)

 

(1)商標登録を受けようとする商標

いわゆるネーミングやマークなどをいい、人の知覚によって認識することができるもののうち、次のいずれかから構成されます。
 a. 文字(標準文字又はそれ以外)
 b. 図形
 c. 記号
 d. 立体的形状
 e. 色彩
 f. a~eの結合
 g.
 h. その他政令で定めるもの

たとえば、ビールに「ABC」という名前を付けて売り出す場合、文字「ABC」が「商標登録を受けようとする商標」です。

文字商標の場合、特許庁長官の指定する標準文字で出願することもできますし、文字の種類(漢字、平仮名、片仮名、アルファベットなど)、大きさ、書体(明朝体、ゴシック体など)、文字間隔などを任意に調整して商標見本を作成の上、イメージデータで出願することもできます。

もちろん、商標は、文字である必要はなく、マークやキャラクター図形などであっても構いません。また、二次元つまり平面的な商標に限らず、三次元つまり立体的な商標であっても結構です。

2015年4月1日より、動き商標ホログラム商標色彩のみからなる商標音商標位置商標が、保護対象に追加されました。これら商標について商標登録を受けようとするときは、経済産業省令で定めるところにより、その【商標の詳細な説明】を願書に記載し、又は経済産業省令で定める物件を願書に添付しなければなりません。

出願する商標のタイプに応じて、願書に、【標準文字】、【立体商標】、【動き商標】、【ホログラム商標】、【色彩のみからなる商標】、【音商標】又は【位置商標】と記載する必要もあります。

 

(2)指定商品又は指定役務

商標の使用をする一又は二以上の商品又は役務(えきむ、サービス)を指定します。このようにして願書で指定される商品又は役務を、「指定商品」又は「指定役務」といいます。

たとえば、ビールに「ABC」という名前を付けて売り出す(つまりビールの名前に「ABC」を付ける)場合、「ビール」が指定商品になります。

また、各種のビールを店内でお客様に飲み比べてもらうようなビール専門の飲食店の名前に「ABC」を付ける場合、たとえば、「アルコール飲料を主とする飲食物の提供」が指定役務になります。

さらに、ビールの持ち帰り販売店(酒店)の名前に「ABC」を付ける場合、たとえば、「酒類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」が指定役務になります。

指定商品と指定役務との差は、典型的には次のとおりです。すなわち、商標を商品に付して販売しようとする場合において、その販売商品として願書にて指定される商品を「指定商品」といい、商標を役務つまりサービスの提供に際して使用しようとする場合において、その提供サービスとして願書にて指定される役務を「指定役務」といいます。

 

(3)商品及び役務の区分

前記(2)で指定した商品又は役務が、政令で定める商品及び役務の区分の内、第何類に属するかを明らかにする必要があります。

たとえば、指定商品を「ビール」とする場合、ビールは、商品及び役務の区分において、第32類に属しています。そのため、商品及び役務の区分は、「第32類」ということになります。また、指定役務を「アルコール飲料を主とする飲食物の提供」とする場合、商品及び役務の区分は「第43類」ということになります。さらに、指定役務を「酒類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」とする場合、商品及び役務の区分は「第35類」ということになります。

なお、商品及び役務の区分は、45区分に分けられており、第1類から第34類までが、商品についての区分で、第35類から第45類までが、役務についての区分です。

 

(4)特殊な出願

通常の商標登録出願の他に、団体商標の商標登録出願、地域団体商標の商標登録出願、防護標章登録出願も用意されています。

 


特許庁における審査

審査においては、主として次の点が審査されます。

(1)自他商品役務の識別力を有するか(商標としての機能を発揮するか)

 a. 普通名称でないか
その商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標)
 ・商品「時計」について、商標「時計」
 ・商品「スマートフォン」について、商標「スマホ」
 ・役務「損害保険の引受け」について、商標「損保」

 b. 慣用商標でないか
その商品又は役務について慣用されている商標)
 ・商品「自動車の部品、付属品」について、商標「純正」、「純正部品」
 ・商品「清酒」について、商標「正宗」
 ・役務「宿泊施設の提供」について、商標「観光ホテル」

 c. 記述的商標[商品の産地・販売地・品質等、役務の提供の場所・質等]でないか
その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状(包装の形状を含む)、生産若しくは使用の方法若しくは時期、その他の特徴、数量若しくは価格、又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期、その他の特徴、数量若しくは価格、を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標)
 ・「東京」、「一級」、「実演」、「うまーい」

 d. ありふれた氏又は名称でないか
(ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標)
 ・「佐藤」、「TANAKA」

 e. 極めて簡単かつありふれた標章でないか
(極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標)
 ・数字、ローマ字1~2字、仮名文字1字、△、□、○

 f. その他、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標でないか
 ・単位、元号、地模様

なお、その商標を商品等に付しても、自分の商品等と他人の商品等とを見分けることができるか否かという観点でみますので、商標の態様や使用実績等によっては、登録を受けられる場合も出てきます。

詳しくは、商標法3条・4条(条文解読)をご覧ください。

 

(2)不登録事由に該当しないか(代表的なもの)

 a. 他人の先願登録商標と同一類似でないか
(商品又は役務の同一類似関係も考慮されます。わが国では「使用」の先後ではなく、「出願」の先後にて一日でも早く出願した者に権利が付与されます。登録商標との同一類似関係は、商標権の効力商標の類否商品及び役務の類似についてをご覧ください。)

 b. 公序良俗(公の秩序又は善良の風俗)を害するおそれがないか

 c. 他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがないか

 d. 商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがないか
(チョコレートに「ガム」、卵の入っていないシャンプーに「タマゴシャンプー」、ハリウッドで生産又はハリウッドから輸入されていない化粧品に「Hollywood」)

 e. 他人の周知商標と同一又は類似で不正の目的をもって使用をするものでないか
(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的などがないか)

詳しくは、商標法3条・4条(条文解読)をご覧ください。

 

(3)一商標一出願の要件に違反していないか

 a. 指定商品又は指定役務の表示が不明確なとき

 b. 政令で定める商品及び役務の区分に従っていないとき

 

(4)審査の流れ

審査において、登録要件を満たさないと認められたときは、「拒絶理由の通知」がなされます。

これに対して、指定期間内に「意見書」や「手続補正書」を提出して、審査官を説得することになります。

審査官が拒絶理由を発見しない(又は前記拒絶理由が解消した)と認めるときは、「登録査定」がなされます。

一方、前記拒絶理由が解消されないときは、「拒絶査定」がなされ、それに対しては「拒絶査定不服審判」(3名又は5名の審判官合議体にて審理)や、さらには「審決取消訴訟」(知的財産高等裁判所~最高裁判所)にて争うことができます。

 


登録査定

・審査官が拒絶理由を発見しない(又は前記拒絶理由が解消した)と認めるときは、「登録査定」がなされます。

 


設定登録料の納付

・登録査定の謄本送達日から30日以内に、10年分の登録料を納付しなければなりません。但し、割高になりますが、5年ごとの分割納付も可能です。

 


商標権の設定登録

・商標権が発生します。

・商標権の存続期間は、設定登録日から10年をもって終了します。但し、10年ごとに更新すれば、半永久的に権利を保有することができます。

登録後、継続して3年以上日本国内において各指定商品又は指定役務についての登録商標の使用をしていないときは、第三者からの審判請求により、商標登録が取り消されることがあります。

 


商標公報の発行

・登録内容が掲載された商標公報が発行されます。

公報発行日から2月間、第三者から「登録異議の申立て」が受け付けられ、所定の場合には商標登録が取り消されることがあります。

 


存続期間の更新登録

・設定登録日から10年ごとに、「存続期間の更新登録の申請」を行うことで、存続期間の更新が可能です。

・更新登録の申請は、商標権の存続期間の満了前6月から満了日までの間にしなければなりません。

 


(4)以下、参考のため、登録要件についての商標法の条文を示します。


参考条文(2020.04.20)

(商標登録の要件)
第3条 自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。

  一 その商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標

  二 その商品又は役務について慣用されている商標

  三 その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状(包装の形状を含む。…)、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標

  四 ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標

  五 極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標

  六 前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標

 2 前項第三号から第五号までに該当する商標であつても、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては、同項の規定にかかわらず、商標登録を受けることができる。

 

(商標登録を受けることができない商標)
第4条 次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。

  一 国旗、菊花紋章、勲章、褒章又は外国の国旗と同一又は類似の商標

  二 パリ条約(…)の同盟国、世界貿易機関の加盟国又は商標法条約の締約国の国の紋章その他の記章(パリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国又は商標法条約の締約国の国旗を除く。)であつて、経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の商標

  三 国際連合その他の国際機関(ロにおいて「国際機関」という。)を表示する標章であつて経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の商標(次に掲げるものを除く。)
   イ 自己の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似するものであつて、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの
   ロ 国際機関の略称を表示する標章と同一又は類似の標章からなる商標であつて、その国際機関と関係があるとの誤認を生ずるおそれがない商品又は役務について使用をするもの

  四 赤十字の標章及び名称等の使用の制限に関する法律(…)第1条の標章若しくは名称又は武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(…)第158条第1項の特殊標章と同一又は類似の商標

  五 日本国又はパリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締約国の政府又は地方公共団体の監督用又は証明用の印章又は記号のうち経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の標章を有する商標であつて、その印章又は記号が用いられている商品又は役務と同一又は類似の商品又は役務について使用をするもの

  六 国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であつて営利を目的としないもの又は公益に関する事業であつて営利を目的としないものを表示する標章であつて著名なものと同一又は類似の商標

  七 公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標

  八 他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)

  九 政府若しくは地方公共団体(以下「政府等」という。)が開設する博覧会若しくは政府等以外の者が開設する博覧会であつて特許庁長官の定める基準に適合するもの又は外国でその政府等若しくはその許可を受けた者が開設する国際的な博覧会の賞と同一又は類似の標章を有する商標(その賞を受けた者が商標の一部としてその標章の使用をするものを除く。)

  十 他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であつて、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの

  十一 当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標であつて、その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務(…)又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの

  十二 他人の登録防護標章(防護標章登録を受けている標章をいう。以下同じ。)と同一の商標であつて、その防護標章登録に係る指定商品又は指定役務について使用をするもの

  十三 削除

  十四 種苗法(…)第18条第1項の規定による品種登録を受けた品種の名称と同一又は類似の商標であつて、その品種の種苗又はこれに類似する商品若しくは役務について使用をするもの

  十五 他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標(第十号から前号までに掲げるものを除く。)

  十六 商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標

  十七 日本国のぶどう酒若しくは蒸留酒の産地のうち特許庁長官が指定するものを表示する標章又は世界貿易機関の加盟国のぶどう酒若しくは蒸留酒の産地を表示する標章のうち当該加盟国において当該産地以外の地域を産地とするぶどう酒若しくは蒸留酒について使用をすることが禁止されているものを有する商標であつて、当該産地以外の地域を産地とするぶどう酒又は蒸留酒について使用をするもの

  十八 商品等(商品若しくは商品の包装又は役務をいう。…)が当然に備える特徴のうち政令で定めるもののみからなる商標

  十九 他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であつて、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもつて使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)

 2 国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であつて営利を目的としないもの又は公益に関する事業であつて営利を目的としないものを行つている者が前項第六号の商標について商標登録出願をするときは、同号の規定は、適用しない。

 3 第1項第八号、第十号、第十五号、第十七号又は第十九号に該当する商標であつても、商標登録出願の時に当該各号に該当しないものについては、これらの規定は、適用しない。

 


(5)最後は、参考リンク集です。


参考リンク集

 


<補足>

商品及び役務の類似について

上記商品・役務名検索において、検索キーワード「商品・役務名」を「ビール」として検索すると、検索結果として、「ビール」の区分は「32」(第32類)と分かります。

ちなみに、その検索結果には、「類似群コード」も表示されます。
「ビール」の「類似群コード」は、「28A02」です。

審査においては、原則として、同じ類似群コードが付された商品等は、互いに類似する、と推定されます。

たとえば、「レモンスカッシュ」と「オレンジジュース」とをそれぞれ検索してみると、いずれも、類似群コードが「29C01」ですから、両者は「類似する商品」と「推定」されることになります。

一方、「ビール」の類似群コードは「28A02」ですから、レモンスカッシュ等とビールとは「非類似の商品」と「推定」されることになります。

 


(作成2001.12.08、最終更新2022.09.18)
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