意匠審決の読解17(共通点は公知であるが、相違点は先行意匠に照らして本願意匠のみの特徴的なもの)

【17】不服2025-9614

意願2024-7657「浴槽」拒絶査定不服審判事件

原査定を取り消す。本願の意匠は、登録すべきものとする。

意匠法第3条第1項第3号(新規性)

【弊所メモ】外形状、内部の形状等、需要者の注意を強く惹く部分、共通点は出願前から公然知られている、両意匠にのみ見られる態様とはいえない、姿勢の安定性や出入りのしやすさを想起、秩序のある凹凸に富む入り組んだ印象、先行意匠に照らして本願意匠のみの特徴的なもの

◆図面・写真・画像は、審判番号から、特許庁の審決公報をご覧ください。

 


1 本願意匠と引用意匠の対比

(1)意匠に係る物品

 いずれも「浴槽」であり、両意匠の意匠に係る物品は、一致する。

 

(2)両意匠の形状等

 ア 共通点

 (共通点ア)全体について、平面から見た浴槽の輪郭形状を、浴槽の左右をそれぞれ同径の略円形部とし、その両円形部と最もくびれた中間部とを滑らかな略凹弧状でつなぎ、一体となるように形成した略落花生形状としている点

 (共通点イ)縁部について、平面視において端部を略鋭角状の細幅とし、正面視において縁部全体を水平に形成している点

 (共通点ウ)壁部について、正面視において縁部から外壁の下方に向けて外方向に緩やかに傾斜させ、外壁の下部付近で丸みのある膨らみを有する点

 

 イ 相違点

 (相違点ア)内壁下方について、平面視において本願意匠の内壁には左側及び右側の略円形部の最も膨らんだ箇所に互いに対向するように、略変形三角形状の載置台を計4つ形成しているのに対し、引用意匠の内壁には載置台が確認できない点

 (相違点イ)浴槽底部について、平面視において本願意匠の浴槽底部には略円形部と中間部との境界部分にそれぞれ直線状の段差を形成しているのに対し、引用意匠の浴槽底部は、お湯が張られているため、具体的に特定出来ない点

 

2 両意匠の類否判断

(1)意匠に係る物品

 両意匠の意匠に係る物品は浴槽であり、一致するから、同一である。

 

(2)両意匠の形状等の共通点及び相違点の評価

 両意匠は、床面に設置する「置き型」と呼ばれるタイプの浴槽であり、設置後も浴槽の外形状全体が見られることから、浴槽の外形状は、需要者の注意を強く惹く部分である。また、浴槽は内部に湯を張り、座って入浴することから、外形状だけでなく浴槽の内部の形状等も需要者の注意を強く惹く部分である。

 

 ア 共通点の評価

 この種物品分野について、

 (共通点ア)浴槽の左右を同径の略円形部とし、その両円形部と最もくびれた中間部とを滑らかな略凹弧状でつなぎ、一体となるように形成した略落花生形状の輪郭形状とするものは、例えば、参考意匠1に見られ、

 (共通点イ)縁部を平面視において略鋭角状の細幅とし、縁部全体を水平とするものは、例えば、参考意匠2に見られ、

 (共通点ウ)壁部を正面視において縁部から外壁の下方に向けて緩やかに外方向に傾斜させ、外壁の下部付近で丸みのある膨らみを有するものは、例えば、参考意匠3に見られるとおり、

 いずれも本願出願前から公然知られており、両意匠にのみ見られる態様とはいえないが、(共通点ア)から(共通点ウ)は、両意匠の外形状全体の態様を表し、共通感を醸し出しているから、両意匠の類否判断に一定の影響を与えている

 

 イ 相違点の評価

 (相違点ア)は、内壁下方に係るものであって、本願意匠が内壁に左側及び右側の略円形部の最も膨らんだ箇所に互いに対向するように載置台を計4つ形成したものであり、入浴中の姿勢の安定性や入浴時の出入りのしやすさを想起させるととともに、秩序のある凹凸に富む入り組んだ印象であるのに対して、引用意匠は内壁に載置台が確認できないことから、需要者に与える美感は大きく異なり、(相違点ア)が両意匠の類否判断に与える影響は大きいものである。

 (相違点イ)は、浴槽底部の形状等についての細部に係る態様の相違点であるが、中央部が左右よりも低くなっている本願意匠の態様は、この種物品の先行意匠に照らして、本願意匠のみの特徴的なものであり、引用意匠の浴槽底部が特定できないことを踏まえても、(相違点イ)が、類否判断に与える影響は一定程度ある。

 

 ウ 形状等の類否判断

 上記した共通点及び相違点の評価に基づくと、両意匠の形状等について、共通点が類否判断に与える影響は一定程度であるのに対して、相違点が類否判断に与える影響は大きいか、一定程度あって、需要者に別異の美感を与えているというべきであるから、両意匠の形状等は、類似しない。

 

(3)小括

 以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品は同一であるが、その形状等においては、相違点が両意匠の類否判断に与える影響は共通点のそれを凌駕しており、意匠全体として見た場合、両意匠は、需要者に別異の美感を与えているというべきであるから、両意匠は類似するということはできない。

 


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(作成2026.02.18、最終更新2026.02.18)

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