御木本幸吉の代表特許:真珠素質被着法
御木本 幸吉(みきもと こうきち)氏による真珠養殖方法の特許について、“解読”してみました。
正確には、特許第2670号公報(pdf)をご確認ください。
御木本幸吉氏は、日本の十大発明家のお一人で、真珠のミキモトの創業者です。
特許第2670号
第91類
出願 明治27年9月13日
特許 明治29年1月27日
特許年限 15年
存続期間延長許可 明治44年2月28日
存続期間 10年
三重県・・・
特許権者 御木本 幸吉
明細書
真珠素質被着法
本発明は、人工真珠培養法に改良を加え、それによって使用する所の核に真珠素質を良好に被着させる方法に係り、その目的とする所は、第一、真珠層の付着を平等になるようにし、第二、各種の物質を核として用いることを可能とし、それによって真珠の光沢の調子を任意になるようにし、第三、珠と貝殻との連絡をなるべく薄弱になるようにし、第四、なるべく核を吐出させない、にある。
本発明に使用する所の核は、真珠と比重の著しき差等なき物質、すなわちガラス、陶磁器、貝殻又は下等の真珠を球形の小粒としてよくその面を琢磨し、球形のまま、又は粒の一小部分に切落としを設けてその転動を防ぐようにする。そして、これを使用するには、前記小粒の多数を入れた器中に食塩を投じてよく振揺するか又は濃厚な食塩水に浸し、ピンセットにて粒を挟出し、生きた真珠貝の外套膜に接して挿入するのである。もし、真珠貝を開くのが難しいときは、少時、これを水中より取り出してその製筋が弱るのをうかがい、これを開くのもよい。
真珠には、露珠、銀珠、金珠等の呼称があって、各々光沢の調子を異にするのである。故に、もしこれらの別を活かそうとするときは、核の質を透明又は白色、黄色等とすることによりでき、その色沢を変更し得るものとする。
前記のように製作した核を前記のように使用するときは、その付着する所の真珠層一様であってその反射力に差等がないのみならず、貝殻と核とを真珠素質にて連絡着合させることを厚強となることなく、その分界著しくなるか、又はほとんど貝殻と着合しない真珠を得られる。もし濃塩水に浸さない核を貝中に挿入するなら、核は真珠素質を被ること遅緩で、それゆえに核の面に真珠素質の被ることなく貝殻外に吐出される所のものの割合、増加するのみならず、たまたま貝中に止まって真珠層を被るものがあってもその貝殻に接する部分のみ厚層となって十分に目的を達することできないものである。
特許条例により本発明の特許を請求する区域は左のとおりである。
一 本文記載の第一から第四の目的を達成させるための硝子、貝殻、又はこの場合にあって硝子、貝殻と等しき用をなせる物質をもって、球、又は一所切落としの球を作り、食塩をもってこれを磨くか、又は濃厚食塩水中にこれを浸し、その後、生きた真珠貝の中に挿入して、真珠素質を被らせる方法
用語解説
- 被着(ひちゃく)とは、「物の表面に膜をはるようにつける」ことをいう(石井重三 著『特許明細書の作成用語集 第2版』日刊工業新聞社、1990年)。
- 琢磨(たくま)とは、「玉や石を、とぎみがくこと」をいう(梅棹忠夫・金田一春彦・阪倉篤義・日野原重明 監修『日本語大辞典』講談社、1989年)。
- 夾出(きょうしゅつ)とは、「挟み出す」ことをいう。
- 外套膜(がいとうまく)とは、貝殻と内蔵との間の膜をいう。
- 色沢(しきたく)とは、「いろつや」のことをいう(電子辞書「広辞苑 第7版」岩波書店)。
- 分界(ぶんかい)とは、「さかいめをつけること。またはそのさかいめ」のことをいう(電子辞書「広辞苑 第7版」岩波書店)。
(作成2019.10.06、最終更新2019.10.15)
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