目次
- ECモール等での商品販売と意匠権侵害
- 意匠権とは?
- 自社が権利者となる場合
>(a)どのような内容で意匠登録するか
>(b)原則としてデザイン公開前に出願
>(c)意匠権の効力について
>(d)類似範囲について - 他社が権利者となる場合
>(a)意匠権侵害
>(b)侵害している場合
>(c)侵害成否の判断前に
>(d)類似範囲か否か
>(e)先使用権と無効審判 - その他(特許権侵害・商標権侵害)
- 関連情報
- 本ページの解説動画:ネット販売と意匠権【動画】
ECモール等での商品販売と意匠権侵害
アマゾン(Amazon)、楽天市場(Rakuten)、ヤフーショッピング(Yahoo!)のようなECモール、自社独自のECサイトなど、各種のショッピングサイトで、様々な商品が販売されています。そのようなショッピングサイトでの商品販売(物販)において、商品等の外観・デザインに関する権利、意匠権(いしょうけん)との関係が問題になることがあります。
たとえば、自社オリジナル商品なのに、他社に真似されて売上げが減少することがあります。他社に真似されたくなければ、意匠権を取得する必要があります。
逆に、自社で販売する商品について、ある日、突然、他社から意匠権侵害として販売中止を求められるかもしれません。あるいは、モール運営者側の判断で、自社の商品販売ページが削除されるかもしれません。
そのため、ネットでの商品販売には、意匠権についての知識が必要となります。意匠権とは何か、自社が権利者となる場合(意匠登録出願と意匠権の効力)、他社が権利者となる場合(意匠権侵害とその対応)について、順にみていきます。
意匠権とは?
意匠(いしょう)とは、物品、建築物、画像の美的な外観・デザインをいいます。美的といっても、芸術作品である必要はありません。意匠登録の対象には、食品、被服、日用雑貨、食器、調理器具、工具、工業製品、工業部品、包装容器、楽器、文具、おもちゃ、スポーツ用品、化粧道具、医療器具、園芸用品、ペット用品、ハンドメイド作品なども含まれます。
ネットショップでは通常、商品販売がなされますから、主として関係するのは「物品の意匠」になります。ディスプレイを備えた製品や、外部に画像を投影する製品の他、商品販売サイトの画面などは、「画像の意匠」が関係することもあります。その他、組立家屋などについて、「建築物の意匠」が関係することもあります。
ここでは、物販での典型例として、「物品の意匠」について、みていきます。
新製品の外観が斬新で、他社に真似されたくなければ、意匠登録する必要があります。意匠登録を受けるには、図面や写真でデザインを特定して、特許庁に意匠登録出願し、審査をパスしなければなりません。審査では、新規性(同一又は類似の意匠がないこと)、創作非容易性(容易に創作できないこと)など、所定の登録要件を満たすか否か審査されます。登録要件を満たさない場合、出願は拒絶され、意匠登録を受けることはできません。一方、登録要件を満たす場合、意匠登録され、出願人に意匠権が付与されます。登録内容は、原則として登録公報により公開されます。
意匠権者は、出願し登録した登録意匠そのものだけでなく、それに類似する意匠についても、独占的に実施(製造販売等)することができます。同一又は類似の意匠を、もし他社が勝手に実施すれば、たとえば、製造販売等の差止めを求めたり、損害賠償を請求したりできます。また、直接侵害でなくても、所定の予備的・幇助的行為も侵害とみなされます(間接侵害)。その他、意匠権を侵害した場合には、刑事罰が科される場合もあります。
自社が権利者となる場合
自社の新製品の意匠を保護したい場合、言い換えれば同一又は類似のデザインの商品販売を独占したい場合、意匠登録しなければなりません。留意点は、次のとおりです。
(a)どのような内容で意匠登録するか
どのような内容で出願するかで、「登録のしやすさ」や「権利範囲」が変わってきます。たとえば、次の点について検討する必要があります。これらの組合せ・併用も可能です。
- 物品の全体で登録するか、部分で登録するか、あるいは部品で登録するか
- 部分意匠の場合、どの部分で登録するか
- 形状のみで登録するか、形状に模様や色彩も付けたもので登録するか
- 物品そのものではなく、包装(パッケージ)の保護は必要ないか
- 物品そのものではなく、出力画像の保護は必要ないか
- 物品そのものではなく、商品販売画面の保護は必要ないか
意匠登録の対象、必要性、全体意匠と部分意匠について、詳しくは、次のリンク先をご覧ください。
- 意匠登録の対象(どのようなものを意匠登録できるのか)
- 意匠登録のメリット・デメリット(意匠登録の必要性)
- 部分意匠について(全体意匠と部分意匠の例、どちらで出願すべきか)
(b)原則としてデザイン公開前に出願
意匠の登録要件として、新規性(出願前に知られていないこと)が要求されます。自社の商品であっても、出願前に販売等でデザイン公開すると、新規性がなくなり、もはや意匠登録を受けることはできません。そのため、原則として、デザインを公開する前に出願する必要があります。但し、例外的に、あとから登録を受けられる場合もあります。
すなわち、まずは販売により売行きを打診してみて、売行きが良いなら意匠登録したい場合もあるかもしれません。最初の公開から1年以内でしたら、所定の例外手続をすることで、意匠登録を受けられる場合もあります。しかし、(発売日ではなく)実際の出願日を基準に審査されるため、出願前の他社の販売や出願には対抗できません。また、海外で権利取得する際に、出願前の販売が障害となることもあります。そのため、出願前のデザイン公開(販売やSNS投稿等)は、本来、好ましくありません。
特許庁でも、次のように、呼びかけています。
- 意匠の新規性喪失の例外規定は、あくまでも意匠登録出願より前に公開された意匠は意匠登録を受けることができないという原則に対する例外規定であることに留意する必要があります。
- 新規性喪失の例外規定は、使わないで済むなら、使わない方が望ましい。
- ウェブサイト等での公開は、必ず意匠登録出願をした後に行う習慣を付けることが大切!
しかし、実際問題として、意匠制度の不知(出願前に販売したらダメだと知らなかった)により、あるいは費用面で売れるか不明の段階で意匠登録に費用をかけてられないなどの事情がある場合もあります。
既に販売してしまったがやはり意匠登録を受けたい場合、できるだけ早く意匠登録出願する必要があります。しかも、出願時、所定の手続をする必要もあります。なお、最初の公開は、不特定多数へのビラ配りや店頭販売などではなく、インスタグラム(Instagram)やエックス(旧Twitter)への投稿のように、公開日や公開内容を立証しやすいものがおすすめです。
意匠の新規性とその例外について、詳しくは、次のリンク先をご覧ください。
(c)意匠権の効力について
意匠権者は、登録意匠及びこれに類似する意匠の実施(製造販売等)を独占できます。
正当な権原又は理由なく、第三者が事業として登録意匠又はこれに類似する意匠を実施し、あるいは所定の予備的・幇助的行為をすることは、意匠権の侵害となります。
意匠権侵害に対して、権利者は、商品販売等の差止めや損害賠償などを請求できます。ECモールの場合、モール運営者に侵害の疑いを報告して、商品削除などを求めることができる場合もあります。
なお、他社の商品が侵害品である旨をその取引先に宣伝することは、不正競争防止法との関係で、裁判で権利侵害が確定するまで、控えた方が無難です。また、個人的・家庭的な実施は、事業としての実施ではないので、意匠権侵害とはなりません。
意匠権の効力について、詳しくは、次のリンク先をご覧ください。
(d)類似範囲について
意匠権は、登録意匠と同一のみならず類似範囲まで及びます。類似範囲の確認と拡張は、関連意匠制度により可能です。
たとえば、最初の意匠登録後、その登録意匠と類似と考える別意匠を出願し、関連意匠として登録されたなら、両者は類似します。
両者が非類似の場合、関連意匠としては登録されないですが、通常の登録要件を満たせば、通常の意匠登録がなされます。
登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲については、特許庁に対し、判定を求めることもできます。
意匠の類似範囲について、詳しくは、次のリンク先をご覧ください。
- 意匠の類否(類似/非類似)
- 意匠の類似範囲の確認手段(関連意匠、判定、鑑定など)
他社が権利者となる場合
(a)意匠権侵害
正当な権原又は理由なく、事業として他人の登録意匠又はこれに類似する意匠を実施すれば、意匠権の侵害となります。また、所定の予備的・幇助的行為も侵害とみなされます(間接侵害)。
意匠権を侵害した場合、たとえば、権利者から警告を受けたり、商品販売等の中止を求められたり、損害賠償を請求されたりします。ECモールの場合、権利者がモール運営者に通知して、侵害している旨、知らされるかもしれません。
なお、自社が製造している訳ではなく、他社製品を仕入れて販売、あるいは外国から輸入して販売する場合でも、意匠権侵害とならないように留意する必要があります。
(b)侵害している場合
意匠権を侵害している場合、速やかに実施(製造販売等)を中止する必要があります。
実施を中止しても、過去の実施については、損害賠償請求されるかもしれません。
実施を継続したい場合、たとえば、デザインを変更するか、実施許諾(ライセンス)を受ける必要があります。
(c)侵害成否の判断前に
まずは、相手方が正当な権利者なのか、相手方の主張する権利が本当にあるのか、現在も存続しているのか、どのような内容なのか、先行意匠としてどのようなものがあるのか、自社商品の意匠は相手方の登録意匠と同一又は類似なのかなど、各種事項を確認する必要があります。侵害事件の場合、早い段階から、弁護士に相談をおすすめします。弁護士への相談前に、まずは弁理士に相談することもできます。
(d)類似範囲か否か
実際に、意匠が類似しているか否かの判断は、なかなか難しいです。最終的には、侵害訴訟において、裁判所で決着されるものです。登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲については、弁護士や弁理士に見解・鑑定を求めたり、特許庁に判定を求めたりできます。
他社の気になる意匠権を事前に知っており、まだ自社商品を販売していないのであれば、意匠登録出願して、審査をパスするか(つまり類似でないか)を確認することも考えられます。しかし、完成品と部品の利用関係など、審査をパスしたからといって、必ずしも安全に実施できるとは限らない点には留意する必要があります。出願の仕方を工夫することで、その点のリスクを低減することはできます。
意匠の類似範囲について、詳しくは、次のリンク先をご覧ください。
- 意匠の類否(類似/非類似)
- 意匠の類似範囲の確認手段(関連意匠、判定、鑑定など)
(e)先使用権と無効審判
権利者の出願前から自社が実施している場合、継続して実施できる場合もあります(先使用権)。
出願前から知られた意匠の場合、それを立証することで、登録を無効とできる場合もあります(無効審判)。
先使用権について、詳しくは、次のリンク先をご覧ください。
その他(特許権侵害・商標権侵害)
アマゾン、楽天市場、Yahoo!ショッピングなどのECモールでの商品販売について述べましたが、自社ECサイトやクラウドファンディングでも同様です。
意匠権との関係について述べましたが、特許権や商標権との関係でも同様に注意する必要があります。商品デザインについては意匠権(いしょうけん)、技術的事項については特許権(とっきょけん)、ブランドやロゴについては商標権(しょうひょうけん)となります。
その他、商品パッケージや販売サイトに使用する文章や画像などについて、著作権(ちょさくけん)が関係する場合もあります。
関連情報
- 意匠登録とは・意匠権の取り方
- 小さな会社のはじめての意匠登録:弁理士への出願相談
- 意匠登録のメリット・デメリット(意匠登録の必要性)
- 意匠の新規性喪失の例外(商品販売後・ウェブ掲載後の意匠登録出願)
- 意匠登録費用
- 意匠登録解説
- 知的財産(知財)とは?
- 特許とは・特許の取り方
- 実用新案登録とは・実用新案権の取り方
- 商標登録とは・商標権の取り方
(作成2025.08.11、最終更新2025.08.21)
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