はじめに
- 意匠法第38条について、条文を解読してみます。意匠権の間接侵害についての規定です。
- 令和元年意匠法改正(間接侵害)をベースに、再度詳細に条文解読した内容となります。
- 直接侵害と間接侵害との比較も、条文に基づき確認してみます。
- 条文等は、本頁末尾の掲載日時点の弊所把握情報です。
- 参考文献:特許庁『工業所有権法逐条解説 第21版』
目次
- 第38条(侵害とみなす行為)
- 意匠権の直接侵害と間接侵害(1):物品の意匠
- 意匠権の直接侵害と間接侵害(2):建築物の意匠
- 意匠権の直接侵害と間接侵害(3):画像の意匠
- 関連情報
- 本ページの解説動画:意匠法第38条の条文解読(意匠権の間接侵害)【動画】
(侵害とみなす行為)
第38条
次に掲げる行為は、当該意匠権又は専用実施権を侵害するものとみなす。
第一号~第三号は【物品の意匠】
一 「登録意匠又はこれに類似する意匠」に係る物品の製造に【のみ】用いる『物品又はプログラム等若しくはプログラム等記録媒体等』について業として行う次のいずれかに該当する行為
イ 当該製造に【のみ】用いる『物品又はプログラム等記録媒体等』の「製造」、「譲渡」、「貸渡し」若しくは「輸入」又は「譲渡若しくは貸渡しの申出」をする行為 ≪有体物≫
ロ 当該製造に【のみ】用いる『プログラム等』の「作成」又は「電気通信回線を通じた提供」若しくは「その申出(電気通信回線を通じた提供の申出)」をする行為 ≪無体物≫
- 直接侵害との違い?:意匠に係る物品の「製造」、「使用」、「譲渡」、「貸渡し」、「輸出」若しくは「輸入」又は「譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡又は貸渡しのための展示を含む。)」をする行為をいう(第2条第2項第一号)。
- 『プログラム等』とは、特許法第2条第4項に規定するプログラム等をいう(意匠法第2条第2項第三号括弧書き)。つまり、プログラム(電子計算機に対する指令であつて、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。)その他電子計算機による処理の用に供する情報であつてプログラムに準ずるものをいう。但し、「画像」に「画像を表示する機能を有するプログラム等を含む」関係上、「プログラム等」から「画像を表示する機能を有するプログラム等を除く」ことになる(第37条第2項)。
- 『プログラム等記録媒体等』とは、プログラム等を記録した記録媒体又は記憶した機器をいう(第37条第2項)。
- 【参考】第2条第2項第一号「意匠に係る物品の製造、使用、譲渡、貸渡し、輸出若しくは輸入又は譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡又は貸渡しのための展示を含む。以下同じ。)をする行為」
- 【参考】第2条第2項第三号「意匠に係る画像(その画像を表示する機能を有するプログラム等(特許法第2条第4項に規定するプログラム等をいう。以下同じ。)を含む。以下この号において同じ。)について行う次のいずれかに該当する行為・・・」
- 【参考】第37条第2項「意匠権者又は専用実施権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物品、建築物若しくは画像(その画像を表示する機能を有するプログラム等を含む。第64条及び第65条第一号を除き、以下同じ。)若しくは画像を記録した記録媒体若しくは内蔵する機器(以下「一般画像記録媒体等」という。)又はプログラム等(画像を表示する機能を有するプログラム等を除く。以下同じ。)若しくはプログラム等を記録した記録媒体若しくは記憶した機器(以下「プログラム等記録媒体等」という。)の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができる。」
二 「登録意匠又はこれに類似する意匠」に係る物品の製造に用いる『物品又はプログラム等若しくはプログラム等記録媒体等(これらが日本国内において広く一般に流通しているものである場合を除く。)』であつて「当該登録意匠又はこれに類似する意匠」の視覚を通じた美感の創出に不可欠なものにつき、
「その意匠が登録意匠又はこれに類似する意匠であること」及び「その物品又はプログラム等若しくはプログラム等記録媒体等がその意匠の実施に用いられること」を知りながら、
業として行う次のいずれかに該当する行為
イ 当該製造に用いる『物品又はプログラム等記録媒体等』の「製造」、「譲渡」、「貸渡し」若しくは「輸入」又は「譲渡若しくは貸渡しの申出」をする行為 ≪有体物≫
ロ 当該製造に用いる『プログラム等』の「作成」又は「電気通信回線を通じた提供」若しくは「その申出(電気通信回線を通じた提供の申出)」をする行為 ≪無体物≫
三 「登録意匠又はこれに類似する意匠」に係る物品を
業としての譲渡、貸渡し又は輸出のために「所持」する行為
第四号~第六号は【建築物の意匠】
四 「登録意匠又はこれに類似する意匠」に係る建築物の建築に【のみ】用いる『物品又はプログラム等若しくはプログラム等記録媒体等』について業として行う次のいずれかに該当する行為
イ 当該建築に【のみ】用いる『物品又はプログラム等記録媒体等』の「製造」、「譲渡」、「貸渡し」若しくは「輸入」又は「譲渡若しくは貸渡しの申出」をする行為 ≪有体物≫
ロ 当該建築に【のみ】用いる『プログラム等』の「作成」又は「電気通信回線を通じた提供」若しくは「その申出(電気通信回線を通じた提供の申出)」をする行為 ≪無体物≫
- 直接侵害との違い?:意匠に係る建築物の「建築」、「使用」、「譲渡」若しくは「貸渡し」又は「譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡又は貸渡しのための展示を含む。)」をする行為をいう(第2条第2項第二号)。
五 「登録意匠又はこれに類似する意匠」に係る建築物の建築に用いる『物品又はプログラム等若しくはプログラム等記録媒体等(これらが日本国内において広く一般に流通しているものである場合を除く。)』であつて「当該登録意匠又はこれに類似する意匠」の視覚を通じた美感の創出に不可欠なものにつき、
「その意匠が登録意匠又はこれに類似する意匠であること」及び「その物品又はプログラム等若しくはプログラム等記録媒体等がその意匠の実施に用いられること」を知りながら、
業として行う次のいずれかに該当する行為
イ 当該建築に用いる『物品又はプログラム等記録媒体等』の「製造」、「譲渡」、「貸渡し」若しくは「輸入」又は「譲渡若しくは貸渡しの申出」をする行為 ≪有体物≫
ロ 当該建築に用いる『プログラム等』の「作成」又は「電気通信回線を通じた提供」若しくは「その申出(電気通信回線を通じた提供の申出)」をする行為 ≪無体物≫
六 「登録意匠又はこれに類似する意匠」に係る建築物を
業としての譲渡又は貸渡しのために「所有」する行為
- 物品は「所持」(第三号)、建築物は「所有」(第六号)
第七号~第九号は【画像の意匠】
七 「登録意匠又はこれに類似する意匠」に係る画像の作成に【のみ】用いる『物品若しくは画像若しくは一般画像記録媒体等又はプログラム等若しくはプログラム等記録媒体等』について業として行う次のいずれかに該当する行為
イ 当該作成に【のみ】用いる『物品若しくは一般画像記録媒体等又はプログラム等記録媒体等』の「製造」、「譲渡」、「貸渡し」若しくは「輸入」又は「譲渡若しくは貸渡しの申出」をする行為 ≪有体物≫
ロ 当該作成に【のみ】用いる『画像又はプログラム等』の「作成」又は「電気通信回線を通じた提供」若しくは「その申出(電気通信回線を通じた提供の申出)」をする行為 ≪無体物≫
- 直接侵害との違い?:意匠に係る画像(その画像を表示する機能を有するプログラム等を含む。)について行う次のいずれかに該当する行為をいう(第2条第2項第三号)。
イ 意匠に係る「画像」の「作成」、「使用」又は「電気通信回線を通じた提供」若しくは「その申出(電気通信回線を通じた提供の申出(提供のための展示を含む。))」をする行為
ロ 意匠に係る画像を「記録した記録媒体」又は「内蔵する機器」の「譲渡」、「貸渡し」、「輸出」若しくは「輸入」又は「譲渡若しくは貸渡しの申出」をする行為
八 「登録意匠又はこれに類似する意匠」に係る画像の作成に用いる『物品若しくは画像若しくは一般画像記録媒体等又はプログラム等若しくはプログラム等記録媒体等(これらが日本国内において広く一般に流通しているものである場合を除く。)』であつて「当該登録意匠又はこれに類似する意匠」の視覚を通じた美感の創出に不可欠なものにつき、
「その意匠が登録意匠又はこれに類似する意匠であること」及び「その物品若しくは画像若しくは一般画像記録媒体等又はプログラム等若しくはプログラム等記録媒体等がその意匠の実施に用いられること」を知りながら、
業として行う次のいずれかに該当する行為
イ 当該作成に用いる『物品若しくは一般画像記録媒体等又はプログラム等記録媒体等』の「製造」、「譲渡」、「貸渡し」若しくは「輸入」又は「譲渡若しくは貸渡しの申出」をする行為 ≪有体物≫
ロ 当該作成に用いる『画像又はプログラム等』の「作成」又は「電気通信回線を通じた提供」若しくは「その申出(電気通信回線を通じた提供の申出)」をする行為 ≪無体物≫
九 「登録意匠若しくはこれに類似する意匠」に係る画像を業としての電気通信回線を通じた提供のために「保有」する行為
又は「登録意匠若しくはこれに類似する意匠」に係る画像記録媒体等を業としての譲渡、貸渡し若しくは輸出のために「所持」する行為
- 画像は「保有」、画像記録媒体等は「所持」
意匠権の直接侵害と間接侵害(1):物品の意匠
意匠権の直接侵害と間接侵害(2):建築物の意匠
意匠権の直接侵害と間接侵害(3):画像の意匠
関連情報
(作成2022.04.11、最終更新2022.09.13)
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