特許公報の種類

特許公報の種類について解説します。

特許・実用新案関係の公報として、様々な種類がありますが、代表的なものに、以下のものがあります。

 


公開特許公報(公開公報)

  • 原則として、出願日から1年6月経過後、発行されます。これを「出願公開」といいます。
  • 審査段階のいかんにかかわらず、出願内容を早期に公開することで、重複研究、重複投資、重複出願の防止を図ろうとするものです。
  • 特許されたことを示すものではありませんが、その後(あるいは既に)特許されている可能性もあります。仮に特許されていても、権利範囲としての特許請求の範囲の記載は、変更になって可能性があります。
  • 出願日から3年以内に出願審査請求をしないと特許庁は出願内容を審査しませんが、公開公報は出願日から1年6月の段階で発行されますから、未審査段階の出願も含まれます。出願日から3年以内に出願審査請求しないと、出願は取下げ扱いとなります。
  • 出願公開された出願が、出願審査請求されたか、審査をパスして特許されたか、特許された場合の権利範囲はどのようなものか、特許権が現在も存続しているかなどは、別途調べる必要があります。
  • 条文上、「特許掲載公報の発行をしたものを除き、その特許出願について出願公開をしなければならない」とされており(特許法第64条第1項)、既に特許掲載公報が発行されている場合にはさらに公開特許公報を発行する必要はありません。但し、特許庁では、先行技術調査の対象とするニーズに対応するため、現在では、特許掲載公報を発行した場合においても、行政サービスとして公開特許公報を発行しているようです。
  • 出願公開前に出願が取下げ、放棄又は却下され若しくは拒絶査定が確定している場合には、原則、公開特許公報は発行されません。

 


特許公報(特許掲載公報)

  • 特許権の設定登録があったときに発行されます。
  • 審査をパスして特許された内容を知らせるための公報です。
  • 特許掲載公報の発行日から6月以内に限り、特許異議の申立てが可能です。
  • 特許されたことを示すものですが、その後(既に)権利が消滅している可能性もあります。たとえば、存続期間(出願日から20年)の満了、第4年以後の各年分の特許料の未納による消滅、取消決定や無効審決の確定などにより、現時点では特許権がない可能性もあります。

 


公表特許公報

  • 外国語特許出願についての前記公開公報に相当するものです。これを「国内公表」といいます。なお、「外国語特許出願」については、「国際出願、国際特許出願、外国語特許出願、日本語特許出願とは?」をご覧ください。
  • 日本国に所定の書面及び翻訳文が提出され、国内移行された案件を公表します。
  • PCT(特許協力条約)に基づき国際出願され、日本国での保護を求め、且つ外国語でされた出願について、出願内容の翻訳文を公表します。

 


再公表特許

  • 日本語特許出願についての前記公開公報に相当するものです。実務上、「再公表」といいます。なお、「日本語特許出願」については、「国際出願、国際特許出願、外国語特許出願、日本語特許出願とは?」をご覧ください。
  • 日本国に所定の書面が提出され、国内移行された案件を公表します。
  • PCT(特許協力条約)に基づき国際出願され、日本国での保護を求め、且つ日本語でされた出願について、出願内容を公表します。
  • 法律上の公報ではありません。先行技術調査に必要な技術情報の提供を目的とする行政サービスとして過去発行されていました。既に国際公開されたものについて、国内での再公表です。
  • 令和4年(2022年)1月~、再公表特許は廃止されました。

 


登録実用新案公報(実用新案掲載公報)

  • 実用新案権の設定登録があったときに発行されます。
  • 実用新案登録では、無審査登録制度を採用するため、本来無効となるような権利(新規性や進歩性などが欠如した考案)が登録される場合があります。そのため、登録公報ではありますが、権利が有効であるとは限りません。権利の有効性を確認するために、誰でも、特許庁に実用新案技術評価(実体審査)の請求が可能です。
  • 実用新案登録されたことを示すものですが、その後(既に)権利が消滅している可能性もあります。たとえば、存続期間(出願日から10年)の満了、第4年以後の各年分の登録料の未納による消滅、無効審決の確定などにより、現時点では実用新案権がない可能性もあります。

 



法改正により現在は発行されておりませんが、過去に発行されていた公報として、代表的なものに、以下のものもあります。

 


公開実用新案公報

  • 平成5年法改正前の実用新案法に基づく出願公開です。
  • 特許の公開公報に対応する公報です。実用新案制度では、以前は、特許と同様に、実体審査を経た後に設定登録していた時代があり、その頃は、特許と同様に公開公報が発行されていました。

 


実用新案登録公報

  • 平成5年法改正前の実用新案法に基づく出願であって、実体審査を経た後、実用新案権の設定登録があったときに発行される公報です。
  • 特許の特許公報に対応する公報です。実用新案制度では、以前は、特許と同様に、実体審査を経た後に設定登録していた時代があり、その頃は、特許と同様に登録公報が発行されていました。

 


公告公報

  • 以前の特許制度及び実用新案登録制度では、実体審査を経た後、まずは公告公報を発行して第三者に異議申立ての機会を与え、その後、設定登録していました。審査をパスした後であるが、設定登録前に発行される公報が、「公告公報」です。

 



用語について

国際出願、国際特許出願、外国語特許出願、日本語特許出願とは?

特許協力条約PCT:Patent Cooperation Treaty)という条約があります。この条約によれば、一つの国際出願を所定の受理官庁にすることによって、PCT加盟国であるすべての国(指定国)に同時に出願したことと同じ効果を受けることができます。PCT条約上の出願を「国際出願」といいます。

PCTに基づき国際出願日が認められた国際出願であって、指定国に日本国を含むもの(特許出願に係るものに限る)は、その国際出願日にされた特許出願(日本国にされた特許出願)とみなされ、「国際特許出願」とよばれます。

そして、この国際特許出願の内、外国語でされた国際特許出願を「外国語特許出願」いい、日本語でされた国際特許出願を「日本語特許出願」といいます。

なお、国際出願は、一定の場合を除き、優先日から1年6月経過後、速やかにジュネーブで「国際公開」されます。この国際公開を補完する形で、わが国では、前述の「国内公表」(や「再公表」)がなされます。但し、令和4年(2022年)1月からの「再公表」は廃止されました。

国際特許出願の詳細については、特許法第184条の3~第184条の20:特許協力条約に基づく国際出願に係る特例(条文解読)をご覧ください。

 


参考条文(2019.06.01)

特許法
(出願公開)
第64条 特許庁長官は、特許出願の日から1年6月を経過したときは、特許掲載公報の発行をしたものを除き、その特許出願について出願公開をしなければならない。次条第1項に規定する出願公開の請求があつたときも、同様とする。
2 出願公開は、次に掲げる事項を特許公報に掲載することにより行う。ただし、第四号から第六号までに掲げる事項については、当該事項を特許公報に掲載することが公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると特許庁長官が認めるときは、この限りでない。
 一 特許出願人の氏名又は名称及び住所又は居所
 二 特許出願の番号及び年月日
 三 発明者の氏名及び住所又は居所
 四 願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項並びに図面の内容
 五 願書に添付した要約書に記載した事項
 六 外国語書面出願にあつては、外国語書面及び外国語要約書面に記載した事項
 七 出願公開の番号及び年月日
 八 前各号に掲げるもののほか、必要な事項
3 特許庁長官は、願書に添付した要約書の記載が第36条第7項の規定に適合しないときその他必要があると認めるときは、前項第五号の要約書に記載した事項に代えて、自ら作成した事項を特許公報に掲載することができる。

 

(特許権の設定の登録)
第66条 特許権は、設定の登録により発生する。
2 第107条第1項の規定による第1年から第3年までの各年分の特許料の納付又はその納付の免除若しくは猶予があつたときは、特許権の設定の登録をする。
3 前項の登録があつたときは、次に掲げる事項を特許公報に掲載しなければならない。ただし、第五号に掲げる事項については、その特許出願について出願公開がされているときは、この限りでない。
 一 特許権者の氏名又は名称及び住所又は居所
 二 特許出願の番号及び年月日
 三 発明者の氏名及び住所又は居所
 四 願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項並びに図面の内容
 五 願書に添付した要約書に記載した事項
 六 特許番号及び設定の登録の年月日
 七 前各号に掲げるもののほか、必要な事項
4 第64条第3項の規定は、前項の規定により同項第五号の要約書に記載した事項を特許公報に掲載する場合に準用する。

 

(国内公表等)
第184条の9 特許庁長官は、第184条の4第1項又は第4項の規定により翻訳文が提出された外国語特許出願について、特許掲載公報の発行をしたものを除き、国内書面提出期間(同条第1項ただし書の外国語特許出願にあつては、翻訳文提出特例期間。以下この項において同じ。)の経過後(国内書面提出期間内に出願人から出願審査の請求があつた国際特許出願であつて条約第21条に規定する国際公開(以下「国際公開」という。)がされているものについては出願審査の請求の後、第184条の4第4項の規定により明細書等翻訳文が提出された外国語特許出願については当該明細書等翻訳文の提出の後)、遅滞なく、国内公表をしなければならない。
2 国内公表は、次に掲げる事項を特許公報に掲載することにより行う。
 一 出願人の氏名又は名称及び住所又は居所
 二 特許出願の番号
 三 国際出願日
 四 発明者の氏名及び住所又は居所
 五 第184条の4第1項に規定する明細書及び図面の中の説明の翻訳文に記載した事項、同項に規定する請求の範囲の翻訳文(同条第2項に規定する翻訳文が提出された場合にあつては、当該翻訳文)及び同条第6項に規定する翻訳文に記載した事項、図面(図面の中の説明を除く。)の内容並びに要約の翻訳文に記載した事項(特許公報に掲載することが公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると特許庁長官が認めるものを除く。)
 六 国内公表の番号及び年月日
 七 前各号に掲げるもののほか、必要な事項
3 第64条第3項の規定は、前項の規定により同項第五号の要約の翻訳文に記載した事項を特許公報に掲載する場合に準用する。
4 第64条の規定は、国際特許出願には、適用しない。
5 国際特許出願については、第48条の5第1項、第48条の6、第66条第3項ただし書、第128条、第186条第1項第一号及び第二号並びに第193条第2項第一号、第二号、第七号及び第十号中「出願公開」とあるのは、日本語特許出願にあつては「第184条の9第1項の国際公開」と、外国語特許出願にあつては「第184条の9第1項の国内公表」とする。
6 外国語特許出願に係る証明等の請求については、第186条第1項第一号中「又は第67条の5第2項の資料」とあるのは「又は1970年6月19日にワシントンで作成された特許協力条約第3条(2)に規定する国際出願の願書、明細書、請求の範囲、図面若しくは要約(特許権の設定の登録がされた国際特許出願に係るもの又は国際公開がされたものを除く。)」とする。
7 国際特許出願に関し特許公報に掲載すべき事項については、第193条第2項第三号中「出願公開後における」とあるのは、「国際公開がされた国際特許出願に係る」とする。

 

実用新案法
(実用新案権の設定の登録)
第14条 実用新案権は、設定の登録により発生する。
2 実用新案登録出願があつたときは、その実用新案登録出願が放棄され、取り下げられ、又は却下された場合を除き、実用新案権の設定の登録をする。
3 前項の登録があつたときは、次に掲げる事項を実用新案公報に掲載しなければならない。
 一 実用新案権者の氏名又は名称及び住所又は居所
 二 実用新案登録出願の番号及び年月日
 三 考案者の氏名及び住所又は居所
 四 願書に添付した明細書及び実用新案登録請求の範囲に記載した事項並びに図面の内容
 五 願書に添付した要約書に記載した事項
 六 登録番号及び設定の登録の年月日
 七 前各号に掲げるもののほか、必要な事項
4 特許法第64条第3項の規定は、前項の規定により同項第五号の要約書に記載した事項を実用新案公報に掲載する場合に準用する。

 


参考文献

(1)特許庁総務部 普及支援課 編『公報発行案内』(2015年)

(2)特許庁ウェブサイト『公報に関して:よくあるご質問』(2019年)

 


(作成2019.06.28、最終更新2022.01.05)
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