工芸品・実用品の保護(著作権・特許・実用新案・意匠・商標登録)

工芸品・実用品の権利(著作権・特許権・実用新案権・意匠権・商標権)

工芸とは、「工作に関する技術。製造に係わる技芸。美的価値をそなえた実用品を作ること。陶芸・木工・染織など」とされ、工芸品とは、「美的価値を備えた実用品。おもに金工・漆工・陶磁・染織などの伝統的な工芸技法で制作されたものをいう」とされます(「広辞苑 第7版」岩波書店)。

つまり、工芸品も、実用品の一種という訳です。

金工、陶磁、木工、竹工、ガラス細工など、各種の工芸品・実用品は、どのような保護を受けることができるのでしょうか?

美術的な「作品」の場合には、著作権で保護されるでしょうし、工業的な「製品」の場合には、意匠権や特許権などで保護できる場合もあります。

それぞれの保護について、みていきます。著作権は、出願や登録が要らないのに保護期間が長く、意匠権や特許権は、出願や登録が要るのに保護期間が短くなっています。一方で、著作権は、そもそも著作物なのか、権利者は誰なのかが問題にされたり、たまたま同一物を創作した人には権利が及ばないなど、権利行使に難点が残ります。

著作権による保護を受けられるか不透明な場合、ある程度の量産を予定する場合は、特許・実用新案・意匠登録の出願をご検討ください。その場合、原則として、アイデアやデザインを第三者に公開する前に、まずは特許庁への出願が必要です。

 


著作権による保護

  • 「著作物」つまり「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」であれば、著作権法による保護を受けることができます。従って、美術性のある「作品」は、「美術の著作物」として、著作権法による保護を受けることができます。「美術の著作物」には、美術工芸品を含むものとする、との規定が著作権法にはあります。
  • 著作権は、出願や登録を要することなく、作品の完成に伴い自動的に発生します。可能であれば、いつ創作し、いつどこでどのように発表したかなどの証拠を残しておけば、将来(後日他人が模倣したことを争う場合に)役立つかもしれません。
  • 著作権の存続期間は、原則として、著作者の死後70年です。
  • たまたま偶然に、同じようなものを別人が創作した場合、それぞれに著作権が発生します。先の作品に依拠したものでないなら、たまたま同じような作品を作っても、著作権侵害となりません。逆に言えば、最先に創作しても、後の他人の作品を著作権侵害で常に排除できるとは限りません。
  • 著作権法では、アイデアの保護を受けることはできません

意匠権による保護

  • 「意匠」つまり「物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合などであって、視覚を通じて美感を起こさせるもの」であれば、所定要件下、意匠法による保護を受けることができます。従って、「製品」の美的なデザイン(意匠)は、所定の登録要件を満たせば、意匠法による保護を受けることができます。「完成品」に限らず、その「部品」や「部分」についても、権利請求できます。また、一のデザイン・コンセプトから創作されたバリエーションの意匠については、「関連意匠」として保護を受けることができます。
  • 意匠登録を受けるには、特許庁に出願し、審査にパスする必要があります。審査では、工業上利用性(同一のものを複数製造し得るか)、新規性(公知意匠と同一類似でないか)、創作非容易性(容易に創作をすることができないか)、先願(せんがん、つまり最先の出願か)などが審査され、これら登録要件を満たさない場合、登録を受けることができません。
  • 意匠権者は、業として登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有します。つまり、登録意匠と同一・類似の意匠の実施を独占することができます。
  • 意匠権の存続期間は、原則として、出願日から25年です。
  • 意匠権は、創作の先後ではなく、いち早く出願した者に付与されます。
  • 原則として、第三者にデザインを公開(製造販売等)する前に、まずは出願が必要です。
  • 先の出願や登録の内容を知らず、たまたま同一・類似の意匠を創作して出願しても、後の出願は拒絶されて登録を受けることができません。意匠権が成立すると、登録意匠と同一・類似の意匠については、たとえ独自に創作したものであっても、無断で実施することができません。
  • 意匠権者は、その登録意匠(若しくはこれに類似する意匠)が先行する他人の登録意匠(若しくはこれに類似する意匠)・特許発明・登録実用新案を利用するものであるとき、又はその意匠権のうち登録意匠(若しくはこれに類似する意匠)に係る部分が先行する他人の特許権・実用新案権・商標権・著作権(登録意匠に類似する意匠に係る部分についてはさらに意匠権)と抵触するときは、業としてその登録意匠の実施をすることができません(意匠法第26条)。

特許権・実用新案権による保護

  • 「発明(考案)」つまり「自然法則を利用した技術的思想の創作」であれば、所定要件下、特許法(又は実用新案法)による保護を受けることができます。従って、「製品」の技術的なアイデア(発明・考案)は、所定の登録要件を満たせば、特許法(又は実用新案法)による保護を受けることができます。たとえば、製品に用いる仕組みや工夫、製造方法、材料などついて、登録を受けることができます。但し、技術的思想でないもの、たとえば、職人技のような技能や、単なる美的創造物(絵画や彫刻等)は、登録を受けることができません。
  • 特許・実用新案登録を受けるには、特許庁に出願し、審査にパスする必要があります(実用新案の場合は無審査で登録されますが、権利行使に先立ち審査に似た手続を経る必要があります)。審査では、新規性(先行技術と同一か)、進歩性(先行技術から容易に創作できるか)、先願(せんがん、つまり最先の出願か)などが審査され、これら登録要件を満たさない場合、登録を受けることができません。
  • 特許権者(実用新案権者)は、業として特許発明(登録実用新案)の実施をする権利を専有します。つまり、特許発明(登録実用新案)の実施を独占することができます。
  • 存続期間は、原則として、特許権が出願日から20年実用新案権が出願日から10年です。
  • 特許権・実用新案権は、創作の先後ではなく、いち早く出願した者に付与されます。
  • 原則として、第三者にアイデアを公開(口外・製造販売等)する前に、まずは出願が必要です。
  • 先の出願や登録の内容を知らず、たまたま同一発明をして出願しても、後の出願は拒絶されて登録を受けることができません。特許権が成立すると、同一発明については、たとえ独自に創作したものであっても、無断で実施することができません。
  • 特許権者(実用新案権者)は、その特許発明(登録実用新案)が先行する他人の特許発明・登録実用新案・登録意匠(若しくはこれに類似する意匠)を利用するものであるとき、又はその特許権(実用新案権)が先行する他人の意匠権・商標権と抵触するときは、業としてその特許発明(登録実用新案)の実施をすることができません(特許法第72条、実用新案法第17条)。

商標権による保護

  • 「製品」に付けるネーミングやマーク等は、商標登録を受けておくのが安心です。
  • 商標登録を受けると、登録商標を独占排他的に使用でき、登録商標と同一・類似範囲での他人の使用を禁止できます。
  • 商標登録を受けるには、特許庁に出願し、審査にパスする必要があります。
  • 商標権の存続期間は登録日から10年ですが、10年ごとに更新することができます。更新することで、半永久的に権利を保有することができます。
  • 商標登録についても、使用の先後ではなく、いち早く出願した者に権利が付与されます。
  • 商標登録を受けようとする商標には、新規性や創作性は不要ですが、商品(商標を付する商品)の普通名称などについては、登録を受けることはできません。
  • 商標権者は、指定商品(又は指定役務)についての登録商標の使用がその使用の態様により先行する他人の特許権・実用新案権・意匠権・著作権・著作隣接権と抵触するときは、指定商品(又は指定役務)のうち抵触する部分についてその態様により登録商標の使用をすることができません(商標法第29条)。

その他

  • 不正競争防止法などにより、保護を受けることができる場合があります。

 


関連情報

 


(作成2021.03.16、最終更新2021.03.21)
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