特許法第46条の2の条文解読(実用新案登録に基づく特許出願)

はじめに

 


(実用新案登録に基づく特許出願)
第46条の2

実用新案権者は、
次に掲げる場合を除き、
経済産業省令で定めるところにより、
自己の実用新案登録に基づいて特許出願をすることができる

この場合においては、その実用新案権を放棄しなければならない

  • 実用新案権者は、自己の実用新案登録に基づいて特許出願をすることができる。
  • 但し、以下の各号に掲げる場合を除く。
  • 実用新案権を放棄しなければならない。
  • 特許法施行規則 第23条(願書の様式)
    1~4 省略
    5 特許法第46条の2第1項の規定による実用新案登録に基づく特許出願についての願書は、様式第28の2により作成しなければならない。
    6 省略
  • 特許法施行規則 第27条の6(実用新案登録に基づく特許出願)
    実用新案権者は、特許法第46条の2第1項の規定による実用新案登録に基づく特許出願の際に、実用新案登録令施行規則(昭和35年通商産業省令第34号)第2条の3の規定によりその実用新案権の放棄による登録の抹消を申請しなければならない。
  • 特許法施行規則 第31条(提出書面の省略)
    1~3 省略
    4 特許法第46条の2第1項の規定により実用新案登録に基づく特許出願をしようとする場合において、その実用新案登録について提出した証明書であつて第4条の3、第5条から第7条まで又は第8条第1項の規定によるものが変更を要しないものであるときは、その旨を願書に表示してその提出を省略することができる。
    5 特許法第46条の2第1項の規定により実用新案登録に基づく特許出願をしようとする場合において、その実用新案登録の願書に添付した図面が変更を要しないものであるときは、その旨を願書に表示してその提出を省略することができる。
  • 本条(第46条の2)は、実用新案登録に、その実用新案登録に基づき特許出願できる旨の規定である。これに対し、前条(第46条)第1項は、実用新案登録出願が特許庁に係属している場合に、つまり実用新案登録に、その実用新案登録出願を特許出願に変更できる旨の規定である。
  • 【参考】実用新案登録出願から特許出願への変更
    第46条第1項
    実用新案登録出願人は、その実用新案登録出願を特許出願に変更することができる。ただし、その実用新案登録出願の日から3年を経過した後は、この限りでない。

 

  一 その実用新案登録に係る実用新案登録出願の日から3年を経過したとき。

  • 【時期的要件1】実用新案登録出願日から3年以内であること。
  • 不責事由がある場合の救済(第3項)

 

  二 その実用新案登録に係る実用新案登録出願又はその実用新案登録について、実用新案登録出願人又は実用新案権者から実用新案法第12条第1項に規定する実用新案技術評価(次号において単に「実用新案技術評価」という。)の請求があつたとき。

  • 【時期的要件2】実用新案登録出願人又は実用新案権者から実用新案技術評価の請求がないこと。

 

  三 その実用新案登録に係る実用新案登録出願又はその実用新案登録について、実用新案登録出願人又は実用新案権者でない者がした実用新案技術評価の請求に係る実用新案法第13条第2項(第三者から技術評価請求があった旨の通知)の規定による最初の通知を受けた日から30日を経過したとき。

  • 【時期的要件3】第三者から実用新案技術評価の請求があった旨の最初の通知を受けた日から30日を経過していないこと。
  • 不責事由がある場合の救済(第3項)
  • 第4条(期間の延長等)
    特許庁長官は、遠隔又は交通不便の地にある者のため、請求により又は職権で、第46条の2第1項第三号、…に規定する期間を延長することができる。
  • 実用新案法 第13条第2項
    特許庁長官は、実用新案登録出願人又は実用新案権者でない者から実用新案技術評価の請求があつたときは、その旨を実用新案登録出願人又は実用新案権者に通知しなければならない。

 

  四 その実用新案登録について請求された実用新案法第37条第1項の実用新案登録無効審判について、同法第39条第1項の規定により最初に指定された期間を経過したとき。

  • 【時期的要件4】実用新案登録無効審判について最初の答弁書提出期間を経過していないこと。
  • 実用新案法 第39条第1項
    審判長は、審判の請求があつたときは、請求書の副本を被請求人に送達し、相当の期間を指定して、答弁書を提出する機会を与えなければならない。

 

2 前項の規定による特許出願は、
『その願書に添付した「明細書、特許請求の範囲又は図面」に記載した事項』が『当該特許出願の基礎とされた実用新案登録の願書に添付した「明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面」に記載した事項の範囲内』にあるものに限り、
その実用新案登録に係る実用新案登録出願の時にしたものとみなす

ただし、
『その特許出願が「第29条の2(拡大先願)に規定する他の特許出願」又は「実用新案法第3条の2(拡大先願)に規定する特許出願」に該当する場合におけるこれらの規定の適用』並びに
『第30条第3項(新規性喪失の例外規定の適用手続)、第36条の2第2項ただし書(外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文提出)及び第48条の3第2項(出願審査の請求)の規定の適用』
については、この限りでない。

  • 特許出願の明細書等に記載した事項が、基礎とされた実用新案登録(及びその出願当初)の明細書等に記載した事項の範囲内であることを条件に、特許出願は実用新案登録出願の時にしたものとみなされる。
  • 但し、実用新案登録に基づく特許出願が特許法第29条の2(実用新案法第3条の2)に規定する先願に該当する場合には、出願日は遡及しない(現実の出願日を基準に後願を排除)。
  • また、新規性喪失の例外規定の適用を受けるための手続についても、出願日は遡及しない。その他、外国語書面出願についての翻訳文提出期間や、出願審査の請求期間について、特例が設けられている。
  • 特許庁編『特許・実用新案審査基準』
    実用新案登録に基づく特許出願がその実用新案登録に係る実用新案登録出願の時にしたものとみなされるという実用新案登録に基づく特許出願の効果を考慮すると、以下の(要件1)に加えて、以下の(要件2)も満たされる必要がある。
    (要件1) 実用新案登録に基づく特許出願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項が、その特許出願の基礎とされた実用新案登録に係る実用新案登録出願の登録時の明細書等に記載した事項の範囲内であること。なお、実用新案登録後に明細書等の訂正があったときは、「訂正後の」明細書等が、実用新案登録に係る実用新案登録出願の登録時の明細書等となる(実用新案法第14条の2第11項)。
    (要件2) 実用新案登録に基づく特許出願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項が、その特許出願の基礎とされた実用新案登録に係る実用新案登録出願の出願当初の明細書等に記載した事項の範囲内であること。

 

3 第1項の規定による特許出願をする者がその責めに帰することができない理由により同項第一号又は第三号に規定する期間を経過するまでにその特許出願をすることができないときは、
これらの規定にかかわらず、
その理由がなくなつた日から14日(在外者にあつては、2月)以内これらの規定に規定する期間の経過後6月以内
その特許出願をすることができる。

 

4 実用新案権者は、
専用実施権者
質権者又は
・実用新案法第11条第3項において準用するこの法律第35条第1項(職務発明による通常実施権)、 実用新案法第18条第3項において準用するこの法律第77条第4項(専用実施権者による通常実施権の許諾)若しくは実用新案法第19条第1項(実用新案権者による通常実施権の許諾)の規定による通常実施権者(所定の通常実施権者
があるときは、これらの者の承諾を得た場合に限り、第1項の規定による特許出願をすることができる

 

5 第44条第3項及び第4項の規定は、第1項の規定による特許出願をする場合に準用する。

  • 第44条第3項及び第4項(特許出願の分割)
    3 第1項に規定する新たな特許出願をする場合における第43条第2項(パリ条約優先権証明書の提出)(第43条の2第2項(優先期間徒過救済措置による優先権主張)(前条(第43条の3)第3項(パリ条約の例による優先権主張)において準用する場合を含む。)及び前条(第43条の3)第3項(パリ条約の例による優先権主張)において準用する場合を含む。)の規定の適用については、第43条第2項中「最先の日から1年4月以内」とあるのは、「最先の日から1年4月又は新たな特許出願の日から3月のいずれか遅い日まで」とする
    4 第1項に規定する新たな特許出願をする場合には、もとの特許出願について提出された書面又は書類であつて、新たな特許出願について第30条第3項(新規性喪失の例外規定の適用手続)、第41条第4項(国内優先権主張書)又は第43条第1項(パリ条約優先権主張書)及び第2項(パリ条約優先権証明書(これらの規定を第43条の2第2項(優先期間徒過救済措置による優先権主張)(前条(第43条の3)第3項(パリ条約の例による優先権主張)において準用する場合を含む。)及び前条(第43条の3)第3項(パリ条約の例による優先権主張)において準用する場合を含む。)の規定により提出しなければならないものは、当該新たな特許出願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなす
  • 詳しくは「第44条(特許出願の分割)」の条文解読をご覧ください。

 


(作成2021.07.24、最終更新2021.07.28)
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