不服2022-6724
意願2020-27905「検体センサーデバイス」拒絶査定不服審判事件
原査定を取り消す。本願の意匠は、登録すべきものとする。
意匠法第3条第1項第3号(新規性)
【弊所メモ】部分意匠、引用部分の形状等が不明、需要者の注意を惹く部分、他の先行意匠には見られない特徴的な形状等
◆図面・写真・画像は、審判番号から、特許庁の審決公報をご覧ください。
1 本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠は「検体センサーデバイス」であり、引用意匠は「生体用センサー」であって一致しないが、いずれも…するものであるから、用途及び機能が共通する。
(2)本願部分と引用部分の用途及び機能の対比
本願部分は、上蓋部分と、平面側円孔部分と、底面側円孔部分からなる。
ア 上蓋部分については、…として用いられるものであり、…の機能を有するから、両部分の該部位の用途及び機能は一致する。
イ 平面側円孔部分については、…の機能を有するから、両部分の該部位の用途及び機能は一致する。
ウ 底面側円孔部分については、引用部分においては、その部分の形状等が全く表れていないため、両部分の該部位の用途及び機能を対比することはできない。
(3)両部分の位置、大きさ及び範囲の対比
両部分の物品全体に占める位置、大きさ及び範囲については、
上蓋部分は、両部分の該部位の位置、大きさ及び範囲は一致する。
平面側円孔部分は、両部分の該部位の位置、大きさ及び範囲は一致する。
底面側円孔部分は、引用部分において形状等が全く表れていないため、両部分の該部位の位置、大きさ及び範囲を対比することはできない。
(4)両部分の形状等の対比
ア 形状等の共通点
(共通点1)両部分は、検体センサーデバイスの本体部における、上蓋部分、平面側円孔部分及び底面側円孔部分からなる構成とした点が共通する。
(共通点2)両部分は、上蓋部分の形状等を、…した点が共通する。
(共通点3)両部分は、平面側円孔部分の形状等を、…している点が共通する。
イ 形状等の相違点
(相違点)本願部分の底面側円孔部分の形状等が、…しているのに対し、引用部分の底面側円孔部分の形状等は、全く表れていないため、両部分の該部位を対比することはできず、この形状等が共通するということはできない。
2 両意匠の類否判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
用途及び機能が共通するものであるから類似するものである。
(2)両部分の用途及び機能の類否判断
底面側円孔部分について、その用途及び機能を対比することはできないから、両部分の用途及び機能が一致又は共通するということはできない。
(3)両部分の位置、大きさ及び範囲の評価
底面側円孔部分について、その位置、大きさ及び範囲を対比することはできないから、両部分の物品全体に占める位置、大きさ及び範囲が一致又は共通するということはできない。
(4)両部分の形状等の類否判断
ア 共通点の評価
(共通点1)は部分全体の構成態様に係るものであるが、これらは、両部分の形状等を概括的に捉えた場合の共通点にすぎないものであるから、部分意匠全体の美感に与える影響は小さい。
(共通点2)は上蓋部分の具体的な形状等に係るものであるが、この種物品において、上蓋部分の形状を…したものは、本願意匠出願前に既に見られるものの、この円孔部の大きさには両部分にのみ見られる特徴が認められるから、部分意匠全体の美感に与える影響は一定程度ある。
(共通点3)は平面側円孔部分の具体的な形状等に係るものであるところ、この円孔部の形状等には両部分にのみ見られる特徴が認められるから、部分意匠全体の美感に与える影響も一定程度ある。
イ 相違点の評価
(相違点)の底面側円孔部分の形状等については、この種物品の需要者である看者や医療関係者等の注意を惹くセンサー先端部が突設される部分の形状等であるところ、本願部分が、…した他の先行意匠には見られない特徴的な形状等であるのに対し、引用部分の形状等は全く不明であることから両部分の形状等は、同一若しくは類似するということはできず、この需要者の注意を惹く底面側円孔部分の形状等の相違は、部分全体の類否判断に一定以上の影響を与えている。
ウ 両部分の形状等の類否判断
両部分の形状等における共通点及び相違点についての個別評価に基づき、両部分全体として総合的に観察した場合、
両部分は、需要者が注視する底面側円孔部分の形状等の相違が、部分全体の類否判断に一定以上の影響を与えているのに対し、
上蓋部分の具体的な形状等や平面側円孔部分の具体的な形状等の共通点が、部分全体の美感に与える影響は一定程度のものでしかなく、部分全体の構成態様の共通点が部分全体の美感に与える影響も小さいものであるから、
これらの共通点が部分全体の類否判断に与える影響は、上記相違点が類否判断に与える影響を覆すには至らず、本願部分の形状等と引用部分の形状等は類似するとはいえないものである。
(5)小括
以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が類似するものであるが、両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲は、同一又は類似するものとは判断できず、両部分の形状等においても類似するとはいえないものであるから、本願意匠と引用意匠が類似するということはできない。
関連情報
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正確な全文は、審判番号から審決公報をご確認ください。
(作成2023.08.24、最終更新2023.08.24)
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