不服2022-8226
意願2021-15279「便器用タンク」拒絶査定不服審判事件
原査定を取り消す。本願の意匠は、登録すべきものとする。
意匠法第3条第1項第3号(新規性)
【弊所メモ】部分意匠、完成品と部品、範囲の相違、引用部分の断面不明、共通点が格段珍しいものではない、よく目につく部分、注意を払う部分
◆図面・写真・画像は、審判番号から、特許庁の審決公報をご覧ください。
第4 対比
1 意匠に係る物品の対比
本願意匠は「便器用タンク」であるのに対し、引用意匠は「取付け用便器」であって、意匠に係る物品は一致しない。
2 本願部分と引用部分の用途及び機能の対比
本願部分と引用部分は、共に…に任意に区画された部分であって、その用途及び機能は、いずれも、手洗いボウル部上で便器用タンクに水を供給する吐水部の外側面の正面下端の中央部分であるから、両部分の用途及び機能は、一致する。
3 本願部分と引用部分の位置、大きさ及び範囲の対比
両部分の位置は、…であるから、一致し、
大きさは、…であるから、おおむね一致するが、
範囲は、本願部分は、正面視において全体の約1/600であるのに対し、引用部分は、正面視において全体の約1/1100であるから、一致しない。
4 両部分の形状等の対比
(1)共通点
基本的構成態様として、
(A)吐水部の正面視、下端中央の区画された外側面である点が共通し、
具体的構成態様として、
(B)縦方向に緩やかに湾曲した凹曲面である点が共通する。
(2)相違点
具体的構成態様として、
(a)本願部分は、A-A断面図視で、上方が背面方向に向けて鉛直方向から約13度傾斜して形成されているのに対し、引用部分は斜め上から図版に現されたものであって、その傾きは不明である点、
(b)本願部分は、横方向で、僅かに正面方向に湾曲した曲面であるのに対し、引用部分の横方向の面の態様は、不明である点が相違する。
第5 類否判断
1 意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は、相違するが、引用部分は、本願部分と同様、…であるから、この相違は、両意匠の類否判断にほとんど影響を与えない。
2 用途及び機能
両部分は、いずれも、…部分であって、両部分の用途及び機能は、一致するから同一である。
3 位置、大きさ及び範囲の評価
両部分は、位置及び大きさが一致し、範囲が相違するが、占める範囲の相違は、意匠に係る物品が完成品であるか、部品であるかの点に起因し、両部分は、…部分である点は同様であって、吐水部に占める範囲としては、大差がなく、この点が両意匠の類否判断に与える影響は小さいものである。
4 両部分の形状等の評価
(1)形状等の共通点の評価
基本的構成態様としてあげた共通点(A)は、概括的共通点にとどまり、共通点(B)は、「取付け用便器」及び「便器用タンク」の物品分野において、…であるものは、格段珍しいものではなく、この点が両部分の類否判断に与える影響は小さいものである。
したがって、共通点(A)及び(B)の両部分の類否判断に及ぼす影響は、総じて小さく、共通点全体であいまっても、両部分の類否判断を決定付けるとはいえないものである。
(2)形状等の相違点の評価
これに対して、相違点(a)及び相違点(b)は、吐水部の下端中央の外側面の具体的態様に関わる相違点であって、吐水部の下端は、需要者が洗面ボウル上で吐水部から水を手に受けて洗う際には、よく目につく部分であって、手洗いの際に吐水部が邪魔にならず、需要者は、手洗いのための空間が十分にあるか否かなどの態様にも注意を払うものであるから、
本願部分について、A-A断面図視で、上方が背面方向に向けて鉛直方向から約13度傾斜し、横方向で、僅かに正面方向に湾曲した曲面であるのに対し、引用部分がその傾き及び左右方向の面の態様が不明である点は、類否判断に与える影響は大きく、これらの点が両部分の類否判断に与える影響は大きいものである。
(3)形状等の総合評価
そうすると、相違点(a)及び(b)は相違点の両部分の類否判断に及ぼす影響は、総じて大きいものであるのに対して、形状等の共通点(A)及び(B)は、共通点の両部分の類否判断に与える影響は総じて小さく、相違点が共通点を凌駕し、両部分の類否判断を決定付けるものであるから、両部分は類似しない。
したがって、両意匠の意匠に係る物品は相違するものの、両意匠の類否判断にほとんど影響を与えず、両部分は、その用途及び機能、並びに位置及び大きさが共通し、範囲の相違が両部分の類否判断に与える影響が小さいものだとしても、形状等においては、両部分は類似せず、両部分の類否判断を決定付けるものであるから、本願意匠は引用意匠に類似しない。
関連情報
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正確な全文は、審判番号から審決公報をご確認ください。
(作成2023.08.24、最終更新2023.08.24)
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