意匠審決の読解5(創作非容易性の判断事例)

不服2022-12251

意願2021-7361「オフィスの執務室の内装」拒絶査定不服審判事件

原査定を取り消す。本願の意匠は、登録すべきものとする。

意匠法第3条第2項(創作性)

【弊所メモ】内装意匠、部分意匠、本願出願前よりよく見られる手法、着想の新しさや独創性、本願の出願前に公然知られているもの、本願部分の他には見られないもの、当業者にとって格別の創作を要したもの、独自の着想によって創出したもの

◆図面・写真・画像は、審判番号から、特許庁の審決公報をご覧ください。

 


1本願意匠

(1)本願意匠について

 本願意匠は、オフィス内の床面と執務用テーブルからなる「オフィスの執務室の内装」である。

(2)本願部分の用途及び機能

 本願部分は、3方向から執務を行うことができるテーブルの天板の一部及び天板を中心から3方向に放射状に仕切る3枚の衝立(ついたて)の一部であって、衝立によって使用者を遮蔽し、天板の中心に形成した隙間に配線を通すことができる用途及び機能を有するものである。

(3)本願部分の位置、大きさ及び範囲

 本願部分の位置は、床面より高い位置で、水平に配置した天板の中心及び天板に対して垂直に設置した3枚の衝立の下端の内側隅であって、その大きさ及び範囲は、天板の中心の隙間を円で囲んだ範囲及び3つの衝立の表裏面のうち、天板の範囲の内側を横幅とし高さをその約1.2倍とする略縦長長方形に囲んだ範囲とするものである。

(4)本願部分の形状等

 ア 天板

 天板は、凹凸のない平坦面で、その中心に上面視略正三角形の隙間(空隙部)を設けている。

 イ 衝立

 空隙部の各頂点から中心まで延びる垂線上の中心近くまで、それぞれ略縦板状の衝立を垂直に設置したものであって、各衝立の角は直角に形成している。

 

2 引用意匠の認定

 ・・・

 

3 本願意匠の創作性の検討

 この内装を構成する物品又は建築物の属する分野において、テーブルの天板を凹凸のない平坦面とし、その中心に上面視略正三角形の空隙部を設けたものは、本願の出願前に公然知られているものである。また、空隙部の縁から3方向に放射状に外端まで延びる衝立を設置したものも、本願の出願前に公然知られているものである。さらに、衝立の内端に形成した部材を空隙部の縁の内側に形成したものも、本願の出願前に公然知られているものである。

 しかしながら、本願部分のように、上面視略正三角形の空隙部の各頂点から中心まで延びる垂線上の中心近くまで、それぞれ略縦板状の衝立を垂直に設置し、かつ各衝立の角を直角に形成したものは、本願部分の他には見られないものであるから、本願部分は、当業者にとって、格別の創作を要したものといわざるを得ない。

 そうすると、本願意匠は、この内装を構成する物品又は建築物の属する分野において、独自の着想によって創出したものであり、当業者が引用意匠に基づいて容易に本願意匠の創作をすることができたということはできない。

 


関連情報

 


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正確な全文は、審判番号から審決公報をご確認ください。
(作成2023.08.24、最終更新2023.08.24)

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