意匠審決の読解4(類否判断事例)

不服2022-9862

意願2021-11582「一人用サウナ室の内装」拒絶査定不服審判事件

原査定を取り消す。本願の意匠は、登録すべきものとする。

意匠法第3条第1項第3号(新規性)

【弊所メモ】内装意匠、需要者とは、全体に対する配置や比率、内装全体を俯瞰した図、各部の配置や大きさが不明

◆図面・写真・画像は、審判番号から、特許庁の審決公報をご覧ください。

 


1 本願意匠と引用意匠の対比

(1)意匠に係る内装

 本願意匠は「一人用サウナ室の内装」であり、引用意匠も「一人用サウナ室の内装」であるから、両意匠の意匠に係る内装は、一致する

(2)両意匠の形状等

 ア 共通点

 (ア)全体

 全体は、壁で囲まれた床面を、休憩スペース、シャワースペース及びサウナスペースに仕切り、それぞれのスペースに各種備品を配置し、天井を取り付けたものである点、

 (イ)休憩スペース

 壁のコーナーに…化粧台を配置し、化粧台と正対する壁のやや上に…を取り付け、2枚の壁が直角に接する床面の隅に…イージーチェアを配置している点、

 (ウ)シャワースペース

 全体は、略縦長直方体で、休憩スペースに接する面に透明な扉(開き戸)を取り付け、その内部にシャワーヘッドシャワーホースを取り付け、奥の壁にシャワーフックを取り付け、天井にオーバーヘッドシャワーを取り付けている点、

 (エ)サウナスペース

 全体は、略横長直方体で、…扉(開き戸)を設け、その内部の奥の壁の真ん中付近に…背もたれを横幅いっぱいに配置し、その下に…腰掛けを配置し、腰掛けの前に…足置き台を配置し、横壁の手前側の隅に…ストーブを配置している点において共通する。

 イ 相違点

 (ア)全体

 平面視において、本願意匠は、…略横長長方形の壁の内側に、休憩スペースとサウナスペースを、壁を挟んで左右に約9:5の割合で配置し、休憩スペースの右上隅に休憩スペースの約2割弱の大きさのシャワースペースを配置しているのに対し、引用意匠は、内装全体を俯瞰した図等の開示がないため、各スペースの配置や大きさは不明である点、

 (イ)休憩スペース

 平面視において、本願意匠は、左上のコーナーに休憩スペースの約0.5割の大きさの化粧台を配置し、左下隅に約1割の大きさのイージーチェアを配置し、正面視において、イージーチェアの直上の天井に略球形の照明を取り付けているのに対し、引用意匠は、休憩スペース全体を俯瞰した図等の開示がないため、各部の配置や大きさは不明である点、…

 (ウ)シャワースペース

 本願意匠は、シャワーフックを奥の壁の真ん中付近に1つ取り付けているのに対し、引用意匠は、奥の壁の真ん中やや左寄りと右の壁のやや高い位置に1つずつ取り付け、また、引用意匠は、右の壁の下寄りにボトルホルダーを取り付けているのに対し、本願意匠は、ボトルホルダーは取り付けていない点、

 (エ)サウナスペース

 本願意匠は、扉側から内部を見て、ストーブを左側に配置し、足置き台を右側に配置しているのに対し、引用意匠は、本願意匠とは逆の位置に配置している点において相違する。

 

2 類否判断

(1)意匠に係る内装

 両意匠の意匠に係る内装は、同一である。

(2)両意匠の形状等の共通点及び相違点の評価

 両意匠の需要者は、当該サウナ室の利用者のほか、サウナ室の施工業者や内装業者が含まれる。

 ア 両意匠の形状等の共通点の評価

 共通点(ア)について、サウナ室の構成態様として、…利用者にとって必要不可欠なスペースであるから、…格別、需要者の注意を引くものではないが、一人用サウナ室として見たとき、…共通点(イ)ないし共通点(エ)のとおり、各スペースに応じて備品を配置したものは、両意匠に共通する特徴といえるから、需要者が注意を払うものといえ…る。

 イ 両意匠の形状等の相違点の評価

 相違点(ア)について、本願意匠は、天井を省略して俯瞰した図により、全体における各スペースの配置態様及び各部の長さ等の比率を具体的に表しているのに対し、引用意匠は、内装全体を俯瞰した図等の開示がないため、いずれも不明であり、需要者が最も注意を払うサウナ室の全体構成において、本願意匠と対比、検討することができないから、相違点(ア)が、両意匠の類否判断に与える影響は極めて大きい。

 相違点(イ)について、両意匠のイージーチェアは、前記共通点(イ)のとおり、その形状は共通するものの、引用意匠は、イージーチェアの配置において、不明であり、また、化粧台及び鏡についても、形状は、概ね一致するものの、その配置については不明であり、さらに、天井の開示がないため、照明の形状や配置も不明であることから、いずれも、本願意匠と対比、検討することができず、相違点(イ)が、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。

 相違点(ウ)及び相違点(エ)について、スペース内部における備品の僅かな変更であるから、いずれも、特段、需要者の注意を引くものとはいえず、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。

 ウ 両意匠の形状等の評価

 以上のとおり、共通点が両意匠の類否判断に与える影響は、一定程度にとどまるものであるのに対し、…相違点(ウ)及び相違点(エ)は、両意匠の類否判断に与える影響は小さいものであるが、相違点(ア)及び相違点(イ)が、両意匠の類否判断に与える影響は大きく、とりわけ相違点(ア)が両意匠の類否判断に与える影響は極めて大きいことから、相違点全体が相まって両意匠の類否判断に与える影響は大きいものである。

 

3 小括

 したがって、両意匠は、意匠に係る内装は同一で、形状等においても、共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して、相違点が両意匠の類否判断に与える影響は共通点のそれを凌駕しており、意匠全体として見た場合、両意匠は、視覚的印象を異にするというべきであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。

 


関連情報

 


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正確な全文は、審判番号から審決公報をご確認ください。
(作成2023.08.24、最終更新2023.08.24)

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