特許と意匠の違い

特許(とっきょ)と意匠(いしょう)との違いについて、具体例を挙げて、わかりやすく解説します。

保護対象、権利内容、具体例、登録要件、審査期間、権利期間、費用、出願件数などのまとめです。

特許と意匠以外の比較として、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権などの要点と具体例については、「知的財産(知財)とは?」をご覧ください。

目次

 


特許と意匠の違い【概要】

特許は、技術的アイデア(発明)を保護しますが、意匠登録は、物品・建築物・画像のデザインを保護します。

たとえば、シャープペンシルをはじめて発明した場合、その技術(芯の繰り出し機構)は、特許で保護されます。また、そのデザインは、意匠登録で保護されます。特許と意匠登録との重複保護も可能です。

一方、既にシャープペンシルの構造自体は知られている状況で、(技術的に新しくなくても)デザインが新しければ、そのデザインは意匠登録で保護されます。シャープペンシルの構造に改良を加えた場合、その改良の程度によっては、特許でも保護されます。

特許と意匠登録の違いについて、詳しくは、下記比較表をご覧ください。

 


特許と意匠の比較表【詳細】

  特許(特許権) 意匠登録(意匠権)
保護対象

技術的アイデア「発明」
・「物」の発明(各種装置、日用品、プログラムなど)
・「方法」の発明(製造方法、加工方法など)

物品・建築物・画像のデザイン「意匠」
・全体意匠(物品等の全体のデザイン)
・部分意匠(物品等の一部のデザイン)
権利内容 発明の独占実施 登録意匠及びその類似意匠の独占実施

具体例1(シャープペンシルの場合)

シャープペンシル

◆シャーペンの特許例
・芯の繰り出し機構
・芯ケースの構造
・芯の材料
・芯の製造方法など
◆シャーペンの意匠登録例
・シャープペンシルの外観
・芯ケースの外観など

具体例2(ヤマザキビスケット株式会社の成型ポテトチップ『chip star(チップスター)』(登録商標)の場合)
(※仮想例を含みます。)

チップスター

◆チップスターの特許例
・スナック菓子の製造装置
・スナック菓子の製造方法
・包装容器の構造など
◆チップスターの意匠登録例
・スナック菓子の外観
・包装容器の外観など
主な登録要件 いずれも特許庁に出願して審査をパスしなければならない。
新規性:先行技術と同一でないこと
進歩性:先行技術から容易に発明できないこと
先願(せんがん):出願日が早いこと
新規性:公知意匠と同一又は類似でないこと。
創作非容易性:容易に創作できないこと。
先願(せんがん):出願日が早いこと。
審査期間 ◆出願後、審査を受けるには3年以内に出願審査請求が必要で、その出願審査請求から審査結果の最初の通知までの期間は、平均10.1か月(2022年) ◆出願後、自動的に審査に付され、出願から審査結果の最初の通知までの期間は、平均6.1か月(2022年)
権利存続期間 いずれも特許庁の審査をパスして登録後に権利が発生するが、終わりは出願日を基準に計算される。
◆原則として出願日から20年まで ◆原則として出願日から25年まで
権利取得費用 権利取得までの最低費用。特許印紙代のみ。代理人手数料(特許事務所の手数料)は別途必要。特許については請求項と呼ばれる権利請求欄が一つだけの場合。
169,800円~
◆内訳は以下のとおり
・出願料=14,000円
・出願審査請求料=142,000円~
・設定登録料(第1~3年分の特許料)=13,800円~
◆出願審査請求料と設定登録料について、大学・中小企業・個人は、1/2、1/3又は0への減免制度がある。
24,500円
◆内訳は以下のとおり
・出願料=16,000円
・設定登録料(第1年分の登録料)=8,500円
出願件数 289,530件(2022年) 31,711件(2022年)
詳細情報へのリンク 特許とは・特許の取り方
特許・実用新案の例3:文房具
特許出願書類の例
・その他の特許解説
意匠登録とは・意匠権の取り方
意匠登録の例・種類
意匠登録出願書類の例
・その他の意匠登録解説
特許、実用新案登録、意匠登録、商標登録の違い ◆特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権などの要点と具体例は?
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関連情報

 


(作成2023.12.17、最終更新2023.12.17)
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