特許法と実用新案法との用語の対応関係(実用新案の定義も)

特許と実用新案登録、発明と考案、では特許発明と何?
実用新案と考案との違い?、実用新案の本来の意味?

「特許」と「実用新案登録」、「発明」と「考案」、「特許権」と「実用新案権」、・・・

では、「特許発明」と対応するものは何?

また、「実用新案」とは厳密には何?、「実用新案」と「考案」との違いは何?

特許法と実用新案法との用語の対応関係と、「実用新案」という用語の本来の意味、について考えてみます。

 


特許法と実用新案法

特許法 実用新案法

◆第1条:この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。

◆第1条:この法律は、物品の形状、構造又は組合せに係る考案の保護及び利用を図ることにより、その考案を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。

 

発明と考案

特許法 実用新案法
◆第2条第1項:この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。 ◆第2条第1項:この法律で「考案」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作をいう。
◆第29条第1項柱書:産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。 ◆第3条第1項柱書:産業上利用することができる考案であって物品の形状、構造又は組合せに係るものをした者は、次に掲げる考案を除き、その考案について実用新案登録を受けることができる。

 

実用新案

◆「実用新案」とは、実用新案登録の対象となる考案であり、「物品の形状、構造又は組合せに係る考案」をいいます。

◆但し、「実用新案登録」「実用新案権」「実用新案法」などを指す場合もあると思われます。たとえば、「実用新案登録」の略称として単に「実用新案」ということもあるように思います。

◆なお、「考案」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作をいいます(第2条第1項)。

特許法 実用新案法

◆第30条第2項(発明の新規性の喪失の例外):特許を受ける権利を有する者の行為に起因して第29条第1項各号のいずれかに該当するに至つた発明(発明実用新案、意匠又は商標に関する公報に掲載されたことにより同項各号のいずれかに該当するに至つたものを除く。)も、その該当するに至つた日から1年以内にその者がした特許出願に係る発明についての同項及び同条第2項の規定の適用については、前項と同様とする。
「発明」と対応したものが「考案」ではなく「実用新案」となっています。

◆第2条第2項:この法律で「登録実用新案」とは、実用新案登録を受けている考案をいう。
◆第1条:この法律は、物品の形状、構造又は組合せに係る考案の保護及び利用を図ることにより、その考案を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。
◆第3条第1項柱書:産業上利用することができる考案であって物品の形状、構造又は組合せに係るものをした者は、次に掲げる考案を除き、その考案について実用新案登録を受けることができる。

 

特許発明と登録実用新案

特許法 実用新案法
◆第2条第2項:この法律で「特許発明」とは、特許を受けている発明をいう。 ◆第2条第2項:この法律で「登録実用新案」とは、実用新案登録を受けている考案をいう。
◆第68条本文:特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する。 ◆第16条本文:実用新案権者は、業として登録実用新案の実施をする権利を専有する。
◆第71条第1項:特許発明の技術的範囲については、特許庁に対し、判定を求めることができる。 ◆附則(平成11年5月14日法律第41号)第3条第3項:この法律の施行前に求められた登録実用新案の技術的範囲についての判定については、なお従前の例による。

 

特許権と実用新案権

特許法 実用新案法
◆第66条第1項:特許権は、設定の登録により発生する。 ◆第14条第1項:実用新案権は、設定の登録により発生する。

 

特許と実用新案登録

特許法 実用新案法
◆第36条第1項柱書:特許を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。 ◆第5条第1項柱書:実用新案登録を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。
  • 「特許」とは、特許庁への「登録」をいうことになります。
  • 「特許」「実用新案登録」「意匠登録」「商標登録」が対応します。

 

特許出願と実用新案登録出願

特許法 実用新案法
◆第39条第1項:同一の発明について異なつた日に二以上の特許出願があつたときは、最先の特許出願人のみがその発明について特許を受けることができる。 ◆第7条第1項:同一の考案について異なつた日に二以上の実用新案登録出願があつたときは、最先の実用新案登録出願人のみがその考案について実用新案登録を受けることができる。

 

特許請求の範囲と実用新案登録請求の範囲

特許法 実用新案法
◆第36条第2項:願書には、明細書、特許請求の範囲、必要な図面及び要約書を添付しなければならない。 ◆第5条第2項:願書には、明細書、実用新案登録請求の範囲、図面及び要約書を添付しなければならない。

 


まとめ(実用新案の定義)

  • 厳密には、実用新案とは、物品の形状、構造又は組合せに係る考案をいいます。つまり、単に実用新案といったとき、厳密には、実用新案登録ではなく、所定の考案をいいます。
  • そのため、正確には、特許と実用新案ではなく、特許と実用新案登録とが対応します
  • また、発明と考案とが対応するが、考案のうち所定のものを実用新案として保護(登録)する関係上、特許発明と登録実用新案とが対応します

 


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(作成2021.06.19、最終更新2021.06.20)
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