特許と実用新案とは、何が違うのでしょうか?
特許と実用新案、どちらで出願すべきでしょうか?
素朴な疑問に、分かりやすくお答えします。
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- 本ページの解説動画2:特許と実用新案の費用の違い【動画】:2022年4月改定後
目次
特許とは?
特許は、実体審査を経て付与されます。実体審査を経るため、権利取得までの期間が長く費用もかかりますが、一旦特許になれば、審査済であるため信頼性の高い権利となります。存続期間は、出願日から20年です。
実用新案とは?
実用新案登録は、実体審査を経ずに付与されます。実体審査を経ないため、権利取得までの期間が短く安価に取得できますが、本来無効となるような権利が登録される場合があります。そこで、警告や権利行使に際して、実用新案技術評価と呼ばれる審査を受けて、権利の有効性を確認しなければなりません。存続期間は、出願日から10年です。なお、方法や材料自体、コンピュータプログラム自体は、保護対象外です(特許で保護)。
特許と実用新案との違い
特許 | 実用新案 | |
---|---|---|
保護対象 |
・発明 ・方法や材料自体、コンピュータプログラム自体も保護対象である。 ・高度性が要求される。発明とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。そのため、先行技術に基いて容易に発明をすることができたときは、特許を受けることができない(発明の進歩性)。 |
・物品の形状、構造又は組合せに係る考案 ・方法や材料自体、コンピュータプログラム自体は保護対象ではない。 ・高度性は要求されない。考案とは、自然法則を利用した技術的思想の創作をいう。そのため、先行技術に基いてきわめて容易に考案をすることができたときは、実用新案登録を受けることができない(考案の進歩性)。(高度性が要求されない点は、条文上も、また特許庁ホームページの「特許・実用新案とは」でも明示されている。) ・実務上は、特許でも実用新案登録でも、いずれでも保護可能なアイデアは多い。方法や材料自体などを除き、通常、いずれでも出願できる。敢えて、出願人自ら高度か否かで、特許と実用新案を分ける必要はない。 |
実体審査の有無 |
・新規性や進歩性などの実体的要件の審査を登録前に行う。新規性や進歩性などを具備したものだけが登録されるため、信頼性の高い権利となる。 ・審査を受けるには、出願とは別に、出願審査の請求が必要である。 |
・新規性や進歩性などの実体的要件の審査を登録前に行わない(無審査で登録)。そのため、本来無効となる権利が登録されることがある。 ・実体的要件の審査を受けるには、実用新案技術評価の請求が必要であるが、登録の前提要件ではなく、請求しなくてもよい。侵害品が出た場合など、必要に応じて請求する。 |
登録までの期間 |
・実体審査を経るため、通常、数ヶ月~数年を要する。 ・早期審査対象案件となれば、出願審査請求から審査結果の最初の通知まで、2~3ヶ月まで短縮できる。 |
・実体審査を経ないため、2ヶ月程度で登録される。 |
権利の存続期間 | ・出願日から20年(所定の場合は延長可) | ・出願日から10年 |
権利行使 | ・新規性や進歩性などの実体的要件を満たしたものだけが登録されているので、侵害者等に対し、直ちに警告や権利行使ができる。 | ・実用新案技術評価を請求して、権利の有効性を確認しなければならないなど、権利行使時には種々の制約がある。 |
図面の有無 | ・図面の添付は任意である。方法や材料自体も保護対象のため、発明によっては図面がなくても構わない。 |
・図面の添付は必須である。物品の形状、構造又は組合せに係る考案が保護対象のため、図面に表示することができ、それにより内容の把握が容易になる。 |
詳しくは、特許と実用新案の費用の比較をご覧ください。 |
・出願時、「出願料」が必要である。 ・出願後、出願内容を特許庁に審査してもらうには、「出願審査請求料」が必要である。 ・審査をパスして特許査定になれば、「第1~3年分の特許料」を支払うことで、特許される。 ・手続を代理人(特許事務所の弁理士)にご依頼の場合、上記各段階において、特許庁費用だけでなく、代理人費用も必要である。また、審査において、拒絶理由通知(特許できない旨の通知)があった場合、その応答費用が必要となることもある。 ・特許庁費用について、所定の場合、減免を受けられる。 ・登録までの特許庁印紙代は、請求項数10で計算すると、出願料(¥14,000)+出願審査請求料(¥178,000)+第1~3年分の特許料(¥21,900)=合計¥213,900(2023年9月現在、代理人費用含まない) |
・出願時、「出願料」の他、「第1~3年分の登録料」が必要である。出願から登録までの期間が比較的短いため、第1~3年分の登録料は、出願と同時に納付する。なお、実用新案登録料は、特許料よりも低額である。 ・実体審査を受けるには「実用新案技術評価請求料」が別途必要であるが、技術評価の請求は必須ではない。実用新案の技術評価請求料は、特許の出願審査請求料よりも、低額である。 ・手続を代理人(特許事務所の弁理士)にご依頼の場合、特許庁費用だけでなく、代理人費用も必要である。 ・特許庁費用について、所定の場合、減免を受けられる。 ・登録までの特許庁印紙代は、特許と同じ請求項数10で計算すると、出願料(¥14,000)+第1~3年分の登録料(¥9,300)=合計¥23,300(2023年9月現在、代理人費用含まない) |
相互の変更 | ・特許出願後(登録前)、一定要件下、実用新案登録出願への変更ができる。 |
・実用新案登録出願後(登録前)、一定要件下、特許出願への変更ができる。 ・実用新案登録後も、一定要件下、実用新案登録に基づく特許出願ができる。 |
書類の修正 | ・実体審査で挙げられた先行技術(引用文献に記載の発明)との違いを出す形で、出願書類を補正(権利範囲を修正)しつつ、権利取得することができる。 |
・実体的要件の審査を行わずに早期に権利付与され、出願後の補正の機会はほぼない。 ・登録後の訂正も制限される。実用新案登録請求の範囲の減縮等を目的とする訂正は1回に限り行える。 ・出願人は自ら先行技術調査を十分に行い、質の高い明細書を作成することが求められる。請求項数が多少多くなっても、上位概念から下位概念まで、多様な請求項を記載しておくことが望ましい。 |
出願件数 |
・289,530件(2022年) ・本人出願率:6.0%(2022年、弊所計算) |
・4,513件(2022年) ・本人出願率:21.0%(2022年、弊所計算) |
特許と実用新案、どちらで出願すべき?
特許出願について、一定要件下、早期審査が可能であることを考慮すると、登録までの期間で選ぶ理由は乏しいと思います。
「費用&手間の少なさ」と「権利行使のし易さ」とのどちらを取るか、存続期間との関係で「製品のライフサイクル」がどの程度あるか、を考慮されたらよいと思います。
通常、特許をお勧めしますが、費用と手間をかけたくない場合、実用新案登録です。
ところで、特許を取得しても、実際に権利行使に至るケースは極めて稀だと思います。これは、「特許出願の必要性、特許権取得の意味」に記載のとおり、特許が無駄という訳ではなく、特許が抑止力として機能しているとみます。
権利行使がめったにないとすれば、逆にいえば、取り敢えず登録しておいて、万一の必要時にのみ審査を受けるという実用新案登録も合理性があります。費用や手間をかけてまで、事前に審査を受けておくことが本当に必要か、という観点で考慮してみてください。
また、実用新案権は、無審査で登録されたといっても、権利の有効性があれば、一定要件下、特許権と同様に権利行使可能です。
さらに、所定要件下、特許出願への変更も可能ですし、実用新案登録請求の範囲の減縮等もできます。これらの選択肢を失うまでは、あたかも「特許出願中」と類似の状況といえます。
以前は、登録後には特許出願への変更ができなかったり、請求の範囲の減縮訂正ができなかったりしましたが、いまはこれらが所定要件下許容されますから、以前と比較して、実用新案を選択することもあり得ることと思います。
特に、特許出願して出願審査請求せずに取下げ扱いにするぐらいならば、実用新案登録を受けておくのも手だと思います。実用新案登録しておいて、3年以内に、特許出願への変更を検討されてもよいと思います。
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(作成2002.06.23、最終更新2023.10.03)
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