特許か実用新案かの費用面からの検討

目次

 


特許か実用新案かでお悩みの方へ

特許出願にするか、実用新案登録出願にするか、お悩みではありませんか?

どちらにするか決める際、やはり気になるのは費用だと思います。

ここでは、費用面に重点を置いて検討してみます。2023年9月現在の情報で、弊所の見解が含まれます。

実際には、費用面以外も考慮する必要があります。次のリンク先もご参照ください。

 


特許か実用新案かの費用面からの検討

以前、「特許と実用新案の費用の比較」をしてみました。

出願から登録までのトータルの費用を比較すると、平均的な請求項数10の場合、次のとおりでした(2023年9月現在)。

◆特許の場合=213,900円
◆実用新案の場合(技術評価請求&訂正請求なし)=23,300円
◆実用新案の場合(技術評価請求&訂正請求あり)=76,700円

但し、中小企業や個人などは、特許の出願審査請求料と設定登録料について、軽減を受けられる場合があります。その場合、たとえば次のとおり安くなります。
◆1/2に軽減される場合(中小企業、大学など)=113,950円
◆1/3に軽減される場合(小規模企業(法人・個人事業主)など)=80,620円

 

実用新案技術評価を請求しない場合、特許と実用新案の価格差は歴然です。特許について、1/2や1/3への軽減を受けても、依然として価格差は大きいです。

実用新案技術評価を請求する場合でも、やはり特許と実用新案の価格差は歴然です。但し、特許について、1/2や1/3への軽減を受けた場合、実用新案との価格差は少なくなってきます。

つまり、「実用新案について技術評価を請求する場合」と、「特許について1/2や1/3への軽減を受けられる場合」とでは、特許と実用新案との価格差が少なくなります。そして、特許の方が、権利取得までの手続面(補正や不服申立て等の機会)、登録後の権利行使のし易さ、権利の存続期間などでメリットがあります。

そのため、もし当初から実用新案について技術評価を受けることが前提なら、しかも特許について1/2や1/3への軽減を受けられるなら、「特許は高い!」と思い込まずに、特許も検討してみてください。特許庁費用(特許印紙代)の差は、上記「緑の囲み枠」に記載のとおりですから、あとは代理人費用(特許事務所手数料)によります。

一方、取り敢えず技術評価を請求するつもりがないなら(そして将来も請求しないままなら)、あるいは特許について軽減措置を受けられないなら、実用新案の方が費用面で大きなメリットがあります。その場合、もし出願日から3年以内に技術評価請求したい状況(たとえば侵害品を排除したい状況)になったのなら、技術評価請求するか、あるいは要件を満たせば、特許へ移行できます。出願日から3年経過後は、特許への移行はできませんが、技術評価請求は可能です。特許の場合は、出願日から3年以内に出願審査請求しないと、出願は取り下げたものとみなされますが、実用新案の場合は、技術評価請求しなくても、登録料を納付する限り、登録を維持することができます。特許出願して審査請求せずに取下げ扱いになるくらいなら、実用新案権を維持するという手も考えられます。

なお、2022年の実用新案登録出願件数は4,513件ですが、実用新案技術評価書の作成件数は281件です。そのため、実用新案技術評価を請求しない方が多いといえます。実用新案技術評価を請求すると、「実用新案登録に基づく特許出願(特許への変更)」や「実用新案登録請求の範囲の減縮等を目的とする訂正(権利範囲の修正等)」が制限されるので、評価請求すべき機会(たとえば侵害品を排除したい状況)が生じるまで、温存することになります。また、出願・登録するだけでも一定の効果がありますから、評価請求は必須ではありません。すなわち、出願・登録することで、後から出願した他社に権利を取られることはなくなるし、他社を牽制することもできます(実用新案は意味がないのか)。

最後に、念のためですが、特許を選択した場合、登録前に実体審査を受けるため、必ずしも特許されるとは限りません。特許される場合でも、一回又は複数回の拒絶理由通知対応が必要となったり、審判請求が必要となったりすることもあります。つまり、出願経過によって費用が変わります。一方、実用新案を選択した場合、通常は登録になるでしょうが、技術評価が必ずしも肯定的(新規性や進歩性あり)とは限りません。費用の方は、特許よりも事前に見通しがつきやすいと思います。

 


【まとめ】特許か実用新案か

取り敢えず実用新案技術評価を請求するつもりがないなら、実用新案の方が圧倒的に低価格となる。将来的に技術評価を請求しても、通常、実用新案の方が低価格である。
当初から実用新案技術評価を請求するつもりなら、しかも特許について1/2や1/3への軽減を受けられるなら、特許も検討してみる。代理人費用(特許事務所手数料)次第であり、出願経過により費用が変わる。
費用面以外も考慮する。特許と実用新案の違い実用新案は意味がないのかをご覧ください。

 


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(作成2023.09.30、最終更新2023.10.01)
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