特許出願から登録までの流れ

はじめに

 


目次

 


特許の流れ(全体のフロー)

特許の流れ(フローチャート)

 


(1)特許出願

特許を受けようとする者は、「願書(特許願)」に、「明細書」、「特許請求の範囲」、「必要な図面」及び「要約書」を添付して、特許庁長官に提出しなければなりません。

 

(1-1)願書

願書には、次に掲げる事項を記載しなければなりません。

  • 特許出願人の「氏名又は名称」と「住所又は居所」
    ・出願人が将来の権利者となります。
    ・出願人は、個人でも会社でも結構です。複数人でも構いません。
  • 発明者の「氏名」と「住所又は居所」
    ・発明者は、個人のみ可能です。複数人でも構いません。
    ・真正な発明者のみを記載しなければなりません。

出願人および発明者について、場合により、次のページもご参照ください。

 

(1-2)明細書

明細書には、発明の名称図面の簡単な説明発明の詳細な説明、を記載しなければなりません。

発明の詳細な説明の記載は、次の要件を満たす必要があります。

  • 実施可能要件(当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載)
  • 委任省令要件(発明が解決しようとする課題及びその解決手段などを記載)
  • 先行技術文献情報開示要件(関連発明が記載された公知刊行物の名称などを記載)

明細書について、詳しくは、次のページをご覧ください。

 

(1-3)特許請求の範囲

  • 特許請求の範囲は、審査対象の発明を特定し、将来の権利範囲を特定します。
  • 請求項」と呼ばれる項に区分して、各請求項ごとに、特許を受けようとする発明の発明特定事項を過不足なく記載します。
  • 発明の詳細な説明に記載していることが必要です。
  • 発明が明確で、記載が簡潔であることが必要です。
  • その他所定の形式で記載することが必要です。

特許請求の範囲について、詳しくは、次のページをご覧ください。

 

(1-4)図面

  • 図面がなくても発明の内容を説明することができる場合、提出を省略できます。
  • 機械系の出願の場合、図面はほとんど必須といえます。

 

(1-5)要約書

  • 要約書には、発明の概要などを記載します。
  • わが国では、権利範囲を解釈するに当たっては、「要約書の記載を考慮してはならない」との規定があります。
  • 出願後1年6月で、出願内容は公開公報に掲載(出願公開)されますが、その際、要約書の内容が、公報フロントページ(表紙)に掲載されます。

要約書について、詳しくは、次のページをご覧ください。

 


(2)出願公開

  • 原則として、出願日から1年6月経過後、公開公報(公開特許公報)により出願内容が公開されます。
  • 公開公報は、後述する特許公報(特許掲載公報)とは異なり、特許になったことを示すものではありません。審査段階の如何にかかわらず、出願内容を早期に公開することで、重複研究、重複投資、重複出願の防止を図ろうとするものです。
  • 出願公開(発明内容が公開)されることで、その公開後に出願された後願(こうがん)については、同一発明であれば新規性違反として、また同一発明でなくても改良改変の程度によっては進歩性違反として排除することができます(新規性や進歩性については後述する「特許庁における審査」をご覧ください)。また、出願公開されることで「拡大された先願の地位」を得られ、出願公開前に出願された後願(つまり自分の出願後ではあるが出願公開前に出願された他人の出願)についても、同一発明であれば排除することができます。
  • 出願公開後特許権設定登録前の第三者の実施に対し、一定要件下、補償金の支払を請求することができます(補償金請求権)。

 


(3)出願審査の請求

  • 特許庁に対して、特許出願の審査を請求する手続です。つまり、実体審査をして欲しい旨、請求する手続です。
  • 特許出願の審査は、出願審査の請求をまって行われます。逆にいうと、特許出願しても、出願審査の請求をしなければ、特許庁は出願内容を審査しません。上述の「出願公開」で述べたように、出願しただけで後願を排除できる(もう他人に権利を取られることはなくなる)という一定の効果があります。その一方、他人が真似した場合にそれを止めるには、審査を受けて特許権を得る必要があります。
  • 出願審査の請求は、通常、出願日から3年以内に行う必要があります。この間、いつでも可能です。
  • 出願日から3年以内に請求しないと、出願は取り下げたものとみなされます。但し、その場合でも、取下扱いとなる前に(出願日から1年6月)で上述の「出願公開」がなされていますので、同一内容について後日他人が権利を取得することはありません。
  • 出願審査の請求は、出願人でなくても、誰でも請求できます。

出願審査の請求について、詳しくは、次のページをご覧ください。

 


(4)特許庁における審査

審査においては、主として次の点が審査されます。

  • 新規性(しんきせい): 特許出願前に日本国内又は外国において、公然知られた発明か、公然実施(製造販売等)をされた発明か、刊行物に記載された発明か、インターネット上に開示された発明か。
  • 進歩性(しんぽせい): 特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が、上記新規性阻却事由となる公知・公用・刊行物記載等の発明に基いて容易に発明をすることができたか否か(通常考えつく程度の改良・改変か否か)。
  • 先後願(せんこうがん): 同一の発明について異なった日に二以上の特許出願があったときは、最先の特許出願人のみがその発明について特許を受けることができるので、最先の出願(「先願( せんがん)」)か否か(わが国では「発明」の先後ではなく、「出願」の先後にて一日でも早く出願した者に特許が付与されます)。
  • 記載不備:明細書や特許請求の範囲の記載が所定の要件を満たしているか。
  • 発明の単一性:一出願に含めることができる発明の範囲を超えていないか。

審査において、これら特許要件を満たさないと認められたときは、「拒絶理由の通知」がなされます。これに対して、指定期間内に「意見書」や「手続補正書」を提出して、審査官を説得することになります。

審査官が拒絶理由を発見しない(又は前記拒絶理由が解消した)と認めるときは、「特許査定」がなされます。

一方、前記拒絶理由が解消されないときは、「拒絶査定」がなされ、それに対しては「拒絶査定不服審判」(3名又は5名の審判官合議体にて審理)や、さらには「審決取消訴訟」(知的財産高等裁判所~最高裁判所)にて争うことができます。

 

特許出願の拒絶理由について、詳しくは、次のページをご覧ください。

 


(5)特許査定

審査官が拒絶理由を発見しない(又は前記拒絶理由が解消した)と認めるときは、「特許査定」がなされます。

 


(6)設定登録料の納付

特許査定の謄本送達日から30日以内に、第1~3年分の特許料を前払いで一時に納付しなければなりません。

 


(7)特許権の設定登録

特許権は、設定の登録により発生します。

特許権の存続期間は、原則として、出願日から20年をもって終了します。

特許権の設定の登録があると、特許証が交付されます。

 


(8)特許公報の発行

特許の内容を記載した特許掲載公報が発行されます。

公報発行日から6月間、第三者から「特許異議の申立て」が受け付けられ、所定の場合には特許が取り消されることがあります。

 


(9)特許料の納付

第4年以後の各年分の特許料は、前年以前に納付しなければなりません。たとえば、第4年分の特許料は、第3年目が終わる前に納付しなければなりません。

特許料の納付を継続する限り、医薬品などの一部を除き、通常は最長で、出願日から20年まで、特許権を保有することができます。

 


(10)【特許庁統計】出願件数、出願審査請求率、審査期間、特許査定率など

(10-1)【出願件数】特許出願件数は、年間どのくらい?

  • 2023年の特許出願件数は、300,133件です。

 

(10-2)【審査請求率】出願後3年以内に出願審査請求される割合は、どのくらい?

  • 出願審査請求率は、74.8%です(2020年出願分)。

 

(10-3)【審査期間】特許の審査期間は、どのくらい?

  • 特許のファーストアクション期間は、9.5か月です(2023年)。但し、早期審査対象案件は、2.2か月です。
  • なお、ファーストアクション期間とは、一次審査通知までの期間をいいます。具体的には、出願審査請求から、審査官による審査結果の最初の通知(主に特許査定又は拒絶理由通知書)が出願人等へ発送されるまでの期間です。

 

(10-4)【特許査定率】特許される割合は、どのくらい?

  • 特許査定率は、76.0%です(2023年)。
  • なお、特許査定率=特許査定件数/(特許査定件数+拒絶査定件数+ファーストアクション後の取下げ・放棄件数)です。

 

(10-5)その他

 


(11)出願前の注意点

(11-1)まずは出願!

特許出願を完了するまで、そのアイデアをむやみに開示するのは危険です。権利がとれなくなったり、アイデアを盗まれたりするおそれがあるからです。原則として、製品を市場に出したり、アイデアを第三者にしゃべったりする前に、まずは特許出願が必要です。

 

(11-2)できるだけ早く出願!

特許は、「発明」の先後ではなく、「出願」の先後にて、一日でも早く特許庁へ出願した者に付与されます。そのため、できるだけ早く出願することが必要です。

 

(11-3)出願書類は万全に!

出願後にアイデアの追加や修正は基本的にはできません。出願日から1年以内なら、国内優先権制度を利用して、改良発明などを加えた形での権利取得が可能な場合もあります。

 


(12)関連情報(出願の必要性、費用など)

 


(作成2001.09.09、最終更新2024.07.29)
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