特許表示とは何か、特許表示の仕方、PATマーク、虚偽表示の他、身近に見つけた特許表示の具体例などをご紹介します。また、特許表示以外に、実用新案登録表示や意匠登録表示についても、併せて解説し、具体例をご紹介します。
目次
- 特許表示とは
>特許表示とは
>特許表示の仕方
>発明のカテゴリーとの関係
>特許表示は義務ではない
>虚偽表示の禁止
>さらに詳しく知りたい方へ - 実用新案登録表示とは
- 意匠登録表示とは
- 特許表示の例(実用新案登録表示・意匠登録表示も)
>例1、例2、例3、例4、例5、例6、例7、例8、例9、例10、例11、例12、例13 - 特許表示・虚偽表示禁止の条文
- 実用新案登録表示・虚偽表示禁止の条文
- 意匠登録表示・虚偽表示禁止の条文
- パリ条約の条文
- 本ページの解説動画:特許表示・実用新案登録表示・意匠登録表示【動画】
- 関連情報1:特許表示と虚偽表示(特許法第187条、第188条、第198条、第201条の条文解読)
- 関連情報2:商標登録表示とその例
特許表示とは
特許表示とは
特許表示とは、物又はその包装に付される表示であって、その物又はその生産方法が特許権の対象である旨の表示をいいます。端的に言えば、物や包装への特許品である旨の表示をいいます。
特許表示の仕方
特許を受けると、権利者は、特許に係る物やその包装に、「特許表示」を付するように努めなければなりません。
法律上、特許表示は、物の特許発明にあっては、「特許」の文字と「特許番号」の表示により行い、物を生産する方法の特許発明にあっては、「方法特許」の文字と「特許番号」の表示により行うことが規定されています。つまり、物の発明の場合は「特許第○○○○○○○号」、生産方法の発明の場合は「方法特許第○○○○○○○号」と表示して行います。
しかしながら、実際上、デザイン的観点から、単に「PAT.」、またはさらに特許番号を付けて「PAT.○○○○○○○」と記載して行うことも多いようです。「PAT.」は、「PATENT」(パテント・特許)の略称です。具体的には、後述の、「特許表示の例(実用新案登録表示・意匠登録表示も)」をご覧ください。
発明のカテゴリーとの関係
発明には、「物の発明」「方法の発明」「物を生産する方法の発明」という三つのカテゴリーがありますが(特許請求の範囲と発明の実施)、特許表示について規定されているのは、「物の発明」と「物を生産する方法の発明」だけです。
「物の発明」の場合、「その物」又は「その物の包装」に、その物の発明が特許に係る旨の表示を付するように努めなければなりません。
「物を生産する方法の発明」(生産方法の発明)の場合、「その方法により生産した物」又は「その物の包装」に、その方法の発明が特許に係る旨の表示を付するように努めなければなりません。
それ以外の「方法の発明」(単純方法)の場合、特許表示を付する「物」がありませんから、特許表示について、法律上、規定がありません(後述する虚偽表示の禁止については規定があります)。
特許表示は義務ではない
法律上、特許表示を付するように「努めなければならない」とされており、特許表示は、義務ではありません。特許表示しないことで、罰則はありません。
しかしながら、特許表示を行うことは、第三者による模倣を躊躇させるので、侵害の未然防止に役立ちます。また、特に特許品の場合には、革新的で優れた製品である旨を間接的にアピールできるので、市場での優位性確保にもつながります。
一方、第三者としても、その製品が他人の権利に係るものと分かれば、その権利を尊重して、通常あえて模倣しませんから、侵害してしまうことを未然に防止できるメリットがあります。
そこで、権利者としては、できるだけ登録表示を行うのが好ましいといえます。
虚偽表示の禁止
虚偽表示にならないように注意します。つまり、特許に係る物以外の物に、特許表示やこれと紛らわしい表示を付す行為などは禁止されます。たとえば、出願しただけで特許になっていないのに「特許取得済」のような表示を付すことは虚偽表示です。また、以前に権利を持っていたが、現在は権利が消滅してしまっている場合に、引き続いて特許表示を行うことも虚偽表示です。
なお、特許出願中(特許出願後であるが登録前)に、たとえば「PAT. P.」(Patent pendingの略)や「特許出願中」と付したり、「特願20**-******号」と出願番号を表示しても、虚偽表示には当たらないと考えます。出願が係属中で、今後権利化の可能性があることを知らせることは、権利者にも第三者にもメリットがあります。
虚偽表示に関連して、次の点にも留意します。すなわち、製品を輸出または輸入する場合には、輸出先(外国)または輸入先(日本)で、実際の登録がないのであれば、登録されていると誤認されることがないように配慮が必要です。後述の特許表示の例では、どの国の製品か、どの国で特許を得たのか、明示しているものもあります。
さらに詳しく知りたい方へ
- 特許表示の例(実用新案登録表示・意匠登録表示も)
- 特許表示と虚偽表示(特許法第187条、第188条、第198条、第201条の条文解読)(特許表示の励行、虚偽表示の禁止、虚偽表示の罪について、条文に基づき解説しています。)
- 商標登録表示については、商標登録表示とその例をご覧ください。
実用新案登録表示とは
実用新案登録を受けると、権利者は、登録実用新案に係る物品やその包装に、「実用新案登録表示」(その物品が登録実用新案に係る旨の表示)を付するように努めなければなりません。
法律上、実用新案登録表示は、「登録新案」の文字と「登録番号」の表示により行うことが規定されています。つまり、「登録新案第○○○○○○○号」と表示して行います。
その他は、基本的には特許表示と同様ですから、「特許表示とは」の他、「実用新案登録表示・虚偽表示禁止の条文」をご覧ください。
意匠登録表示とは
意匠登録を受けると、権利者は、登録意匠又はこれに類似する意匠に係る物品やその包装等に、「意匠登録表示」(その物品等が登録意匠又はこれに類似する意匠に係る旨の表示)を付するように努めなければなりません。
法律上、意匠登録表示は、「登録意匠」の文字と「登録番号」の表示により行うことが規定されています。つまり、「登録意匠第○○○○○○○号」と表示して行います。
その他は、基本的には特許表示と同様ですから、「特許表示とは」の他、「意匠登録表示・虚偽表示禁止の条文」をご覧ください。
特許表示の例(実用新案登録表示・意匠登録表示も)
以下では、身近に見つけた特許表示・実用新案登録表示・意匠登録表示の例をご紹介します。但し、法律上の登録表示ではないことも多いです。法律上の登録表示は、上述した「特許表示とは」「実用新案登録表示とは」「意匠登録表示とは」をご確認ください。
(例1)修正液の包装への特許表示
2012年12月16日
- 「特許登録済・実用新案登録済・意匠登録済」の表示(特許権、実用新案権、意匠権を保有している。)
(例2)シャープペンシルの包装への特許表示
2012年12月16日
- 「PAT.P」の表示(「Patent pending」の略。「特許出願中」の意味。特許出願済であるが、まだ審査をパスして特許に至っていない段階である。)
(例3)修正テープの包装への特許表示
2012年12月16日
- 「JP.PAT.P. JP.Des.1279962」の表示(日本において、特許出願中であると共に、意匠登録済である。意匠登録番号を表示。)
(例4)キャンディーの個包装への特許表示
2012年12月19日
- 「特許製法」「純粋はちみつを固形化」の表示
(例5)レンズ付きフィルムへの特許表示
2010年4月5日
- 「This film package is protected by US patents 4833495, 4890130, 4954857, 4972649, 5235364 and other patents.」の表示(数々の米国特許により保護されている。)
(例6)餅の加熱に用いる電子レンジ用トレーの包装への特許表示
2013年3月24日
- 「特許登録済・意匠登録済・商標登録済」の表示(特許権、意匠権、商標権を保有している。)
- 参考:特許第4340983号(実用新案登録第3116210号に基づく特許出願)、意匠登録第1333172号、商標登録第5079802号
(例7)定規への特許表示
2013年7月20日
- 包装下部に「Made in Denmark ・ Patented」(デンマーク製・特許済)の表示
- 製品裏面に「Made in Denmark Pat. pend.」(デンマーク製 特許出願中)の表示
(例8)LANケーブルの包装への特許表示
2013年10月11日
- 「特許出願中」の表示(発明の特徴部であろう宣伝文句とイラスト付き)
(例9)保存容器への特許表示
2014年5月18日
- 製品裏面に「PATENT PENDING」(特許出願中)の表示
(例10)リーフ差替式ノートへの特許表示
2019年12月24日
- 裏面バーコードシールに「REG. PAT. D.PAT.」(特許および意匠登録済)の表示
(例11)ポテトチップスの容器への特許表示
2020年3月30日、2022年4月3日
(a)出願中の表示(2020年3月30日)
- 容器底面に「特許出願中」と出願番号「特願2016-****」の表示
- 容器底面に「意匠登録出願中」と出願番号「意願2016-***」の表示
- 容器自体の発明・意匠と思われる(つぶしやすさ)
(b)登録後の表示(2022年4月3日)
- 容器底面に「特許第671****号」の表示
- 容器底面に「意匠登録第155****号」の表示
(例12)回転寿司の折込広告への特許表示
2020年4月10日
- 「2013年特許取得」の表示(発明の特徴部であろう宣伝文句とイメージ写真付き)
- 特許番号「特許第5416288号」と「発明の名称:飲食物搬送用収容体」の表示
- 「鮮度くんは、くら寿司の登録商標です。」の表示
(例13)スイカへの特許表示
2022年7月16日
- 「特許出願中」の表示(発明の特徴部であろう宣伝文句とキャラクタ画像付き(モザイク部))
- 「マイクロシード」の表示(「マイクロシード」は登録商標)
特許表示・虚偽表示禁止の条文
特許法 第187条(特許表示)
特許権者、専用実施権者又は通常実施権者は、経済産業省令で定めるところにより、物の特許発明におけるその物若しくは物を生産する方法の特許発明におけるその方法により生産した物(以下「特許に係る物」という。)又はその物の包装にその物又は方法の発明が特許に係る旨の表示(以下「特許表示」という。)を附するように努めなければならない。
特許法施行規則 第68条(特許表示)
特許法第187条の特許表示は、物の特許発明にあつては「特許」の文字およびその特許番号とし、物を生産する方法の特許発明にあつては「方法特許」の文字およびその特許番号とする。
特許法 第188条(虚偽表示の禁止)
何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
一 特許に係る物以外の物又はその物の包装に特許表示又はこれと紛らわしい表示を付する行為
二 特許に係る物以外の物であつて、その物又はその物の包装に特許表示又はこれと紛らわしい表示を付したものの譲渡等又は譲渡等のための展示をする行為
三 特許に係る物以外の物の生産若しくは使用をさせるため、又は譲渡等をするため、広告にその物の発明が特許に係る旨を表示し、又はこれと紛らわしい表示をする行為
四 方法の特許発明におけるその方法以外の方法を使用させるため、又は譲渡し若しくは貸し渡すため、広告にその方法の発明が特許に係る旨を表示し、又はこれと紛らわしい表示をする行為
特許法 第198条(虚偽表示の罪)
第188条の規定に違反した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
特許法 第201条第1項(両罰規定)
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号で定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
一 第196条、第196条の2又は前条第1項 三億円以下の罰金刑
二 第197条又は第198条 一億円以下の罰金刑
実用新案登録表示・虚偽表示禁止の条文
実用新案法 第51条(実用新案登録表示)
実用新案権者、専用実施権者又は通常実施権者は、経済産業省令で定めるところにより、登録実用新案に係る物品又はその物品の包装にその物品が登録実用新案に係る旨の表示(以下「実用新案登録表示」という。)を附するように努めなければならない。
実用新案法施行規則 第20条(実用新案登録表示)
実用新案法第51条の実用新案登録表示は、「登録新案」の文字およびその登録番号とする。
実用新案法 第52条(虚偽表示の禁止)
何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
一 登録実用新案に係る物品以外の物品又はその物品の包装に実用新案登録表示又はこれと紛らわしい表示を附する行為
二 登録実用新案に係る物品以外の物品であつて、その物品又はその物品の包装に実用新案登録表示又はこれと紛らわしい表示を附したものを譲渡し、貸し渡し、又は譲渡若しくは貸渡のために展示する行為
三 登録実用新案に係る物品以外の物品を製造させ若しくは使用させるため、又は譲渡し若しくは貸し渡すため、広告にその物品が登録実用新案に係る旨を表示し、又はこれと紛らわしい表示をする行為
実用新案法 第58条(虚偽表示の罪)
第52条の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
実用新案法 第61条第1項(両罰規定)
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号で定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
一 第56条又は前条第1項 三億円以下の罰金刑
二 第57条又は第58条 三千万円以下の罰金刑
意匠登録表示・虚偽表示禁止の条文
意匠法 第64条(意匠登録表示)
意匠権者、専用実施権者又は通常実施権者は、経済産業省令で定めるところにより、登録意匠若しくはこれに類似する意匠に係る物品若しくはその包装、建築物又は画像若しくは画像記録媒体等若しくはその包装に当該物品、建築物又は画像が登録意匠又はこれに類似する意匠に係る旨の表示(以下「意匠登録表示」という。)を付するように努めなければならない。
意匠法施行規則 第17条(意匠登録表示)
意匠法第64条の意匠登録表示は、「登録意匠」の文字及びその登録番号とする。
意匠法 第65条(虚偽表示の禁止)
何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
一 登録意匠若しくはこれに類似する意匠に係る物品、建築物又は画像若しくは画像記録媒体等以外の物品若しくはその包装、建築物又は画像若しくは画像記録媒体等若しくはその包装に意匠登録表示又はこれと紛らわしい表示を付する行為
二 登録意匠又はこれに類似する意匠に係る物品、建築物又は画像若しくは画像記録媒体等以外の物品、建築物又は画像若しくは画像記録媒体等であつて、当該物品若しくはその包装、建築物又は画像若しくは画像記録媒体等若しくはその包装に意匠登録表示又はこれと紛らわしい表示を付したものについて行う次のいずれかに該当する行為
イ 当該物品、建築物又は画像記録媒体等の譲渡、貸渡し又は譲渡若しくは貸渡しのための展示をする行為
ロ 当該画像の電気通信回線を通じた提供又はそのための展示をする行為
三 登録意匠又はこれに類似する意匠に係る物品、建築物又は画像若しくは画像記録媒体等以外の物品、建築物又は画像若しくは画像記録媒体等について行う次のいずれかに該当する行為
イ 当該物品又は画像記録媒体等の製造若しくは使用をさせるため、又は譲渡若しくは貸渡しをするため、広告に当該物品又は画像記録媒体等が登録意匠若しくはこれに類似する意匠に係る旨を表示し、又はこれと紛らわしい表示をする行為
ロ 当該建築物の建築若しくは使用をさせるため、又は譲渡若しくは貸渡しをするため、広告に当該建築物が登録意匠若しくはこれに類似する意匠に係る旨を表示し、又はこれと紛らわしい表示をする行為
ハ 当該画像の作成若しくは使用をさせるため、又は電気通信回線を通じた提供をするため、広告に当該画像が登録意匠若しくはこれに類似する意匠に係る旨を表示し、又はこれと紛らわしい表示をする行為
意匠法 第71条(虚偽表示の罪)
第65条の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
意匠法 第74条第1項(両罰規定)
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号で定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
一 第69条、第69条の2又は前条第1項 三億円以下の罰金刑
二 第70条又は第71条 三千万円以下の罰金刑
パリ条約の条文
第5条(不実施・不使用に対する措置、特許・登録の表示)
D 権利の存在を認めさせるためには、特許の記号若しくは表示又は実用新案、商標若しくは意匠の登録の記号若しくは表示を産品に付することを要しない。
(作成2001.09.02、最終更新2024.02.01)
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