はじめに
- 特許法第187条、第188条、第198条、第201条第1項について、条文を解読してみます。
- 特許表示の励行、虚偽表示の禁止、虚偽表示の罪、に関する規定です。
- 条文等は、本頁末尾の掲載日時点の弊所把握情報です。
- 本ページの解説動画:特許表示と虚偽表示(特許法第187条、第188条、第198条、第201条の条文解読)【動画】
- 参考文献:特許庁『工業所有権法逐条解説 第21版』
目次
(特許表示)
第187条
特許権者、専用実施権者又は通常実施権者は、
経済産業省令で定めるところにより、
『「物の特許発明におけるその物」若しくは「物を生産する方法の特許発明におけるその方法により生産した物」(以下「特許に係る物」という。)』又は『その物の包装』に
『その「物又は方法」の発明が特許に係る旨の表示(以下「特許表示」という。)』
を附するように努めなければならない。
- 権利者は、
経済産業省令で定めるところにより、
「特許に係る物」又は「その物の包装」に
「特許表示」を附するように努めなければならない。 - 「努めなければならない」とあるので、義務ではない。特許表示しないことによる罰則はない。
- 特許表示を行うことは、第三者による模倣を躊躇させるので、侵害の未然防止に役立つ。また、革新的で優れた製品である旨を間接的にアピールできるので、市場での優位性確保にもつながる。そのため、できるだけ特許表示をするのが好ましい。
- 「特許に係る物」とは?
「特許に係る物」とは、端的にいえば「特許品」である。具体的には、次のとおりである。
・物の特許発明におけるその物
・物を生産する方法の特許発明におけるその方法により生産した物 - 「特許表示」とは?
特許表示とは、物又はその包装に付される表示であって、その物又はその生産方法が特許権の対象である旨の表示をいう。端的に言えば、物や包装への特許品である旨の表示をいう。
- 経済産業省令とは?
特許法施行規則 第68条(特許表示)
特許法第187条の特許表示は、
物の特許発明にあつては「特許」の文字およびその特許番号とし、
物を生産する方法の特許発明にあつては「方法特許」の文字およびその特許番号とする。 - 特許表示の仕方
・物の発明の場合:「特許第○○○○○○○号」
・生産方法の発明の場合:「方法特許第○○○○○○○号」
(虚偽表示の禁止)
第188条
何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
一 「特許に係る物以外の物」又は「その物の包装」に『特許表示』又は『これと紛らわしい表示』を【付する】行為
- 「特許品以外の物」又は「その包装」に、『特許表示』又は『これと紛らわしい表示』を【付する】行為
二 「特許に係る物以外の物」であつて、「その物」又は「その物の包装」に『特許表示』又は『これと紛らわしい表示』を付したものの【譲渡等】又は【譲渡等のための展示】をする行為
- 「特許品以外の物」又は「その包装」に、『特許表示』又は『これと紛らわしい表示』を付したものの
【譲渡等】又は【譲渡等のための展示】をする行為 - 譲渡等とは?
「譲渡」及び「貸渡し」をいい、プログラム等である場合には「電気通信回線を通じた提供」を含む(第2条第3項第一号)。
三 「特許に係る物以外の物」の生産若しくは使用をさせるため、又は譲渡等をするため、
「広告」に『その物の発明が特許に係る旨を表示』し、又は『これと紛らわしい表示』をする行為
- 「特許品以外の物」を生産・使用させるか、譲渡等するため、
「広告」に『その物が特許権の対象である旨を表示』し、又は『これと紛らわしい表示』をする行為
四 「方法の特許発明におけるその方法以外の方法」を使用させるため、又は譲渡し若しくは貸し渡すため、
「広告」に『その方法の発明が特許に係る旨を表示』し、又は『これと紛らわしい表示』をする行為
- 「特許方法以外の方法」を使用させるか、譲渡・貸渡のため、
「広告」に『その方法が特許権の対象である旨を表示』し、又は『これと紛らわしい表示』をする行為
(虚偽表示の罪)
第198条
第188条(虚偽表示の禁止)の規定に違反した者は、
「3年以下の懲役」又は「300万円以下の罰金」に処する。
(両罰規定)
第201条
「法人の代表者」又は「法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者」が、
その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、
行為者を罰するほか、
その法人に対して当該各号で定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
一 省略
二 ・・・第198条(虚偽表示の罪) 1億円以下の罰金刑
- 両罰規定
「法人の代表者」又は「法人・人の代理人・使用人等」が、
その法人・人の業務に関し、所定の違反行為をしたときは、
行為者を罰するほか、
その法人・人に対しても罰金刑を科する。 - 法人重課(ほうじんじゅうか)
法人に対する罰金刑を、自然人に対するものよりも重くする。
・第198条(虚偽表示の罪)=300万円以下の罰金(又は3年以下の懲役)
・第201条(両罰規定)=【法人】1億円以下の罰金、【自然人】300万円以下の罰金(第198条)
2~3 省略
関連情報
(作成2022.06.15、最終更新2022.06.15)
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