特許・商標登録の「出願」か「申請」か(出願と申請の違い)

 


「出願」か「申請」か?

「特許出願」と「特許申請」、「商標登録出願」と「商標登録申請」、それぞれどちらが正しいのでしょうか。

「特許出願」「商標登録出願」が正しいです。

しかしながら、特許事務所・弁理士にご相談される際、「特許申請」や「商標申請」などと表現されても、おそらく100%理解してもらえます。そのため、実際上、特に気を遣われる必要はありません。

特許事務所のウェブサイトに「申請」と記載のある場合もありますが、それはお客様が「申請」の語で検索されることもあるので、そのようなニーズに対応するためと思われます。特許事務所内や対特許庁との関係で、出願行為について、実際に「申請」ということはありません。

このように、本来は、「特許申請」や「商標登録申請」ではなく、「特許出願」や「商標登録出願」ということになります。一方で、弁理士に対して「申請」と表現されても、いずれの弁理士も「出願」と理解(「出願」として処理)しますから、いずれの用語でご相談いただいても問題ありません。

 


「出願」と「申請」の違い?

では、「出願」と「申請」とは、何が違うのでしょうか。

分かりやすい事例があります。平成8年の商標法改正で、商標権の存続期間の更新登録が、「出願」から「申請」に変更になったのです。そのため、改正前後の条文から、両者の違いが明らかになります。

下記に改正前後の条文を示しますが、改正前には「出願」が要件とされたのに対し、改正後は「申請」で済みます。

「出願」と「申請」の差は、「実体審査」の有無です。すなわち、改正前の「出願」の場合、登録商標が公益的不登録理由(4条1項1,2,3,5,7,16号)に該当するものとなっていないか、商標権者等が登録商標の使用をしているか(または不使用について正当な理由があるか)について「審査」し、これら要件を具備していれば更新登録される一方、そうでなければ更新登録されませんでした。それに対し、改正後は、更新登録の「申請」と料金納付のみにより、実体審査を経ることなく、存続期間の更新が認められます。

このように、「出願」には実体審査があり、「申請」には実体審査がありません。

 

商標法
平成8年改正前 平成8年改正後
第19条
1 省略

2 商標権の存続期間は、更新登録の出願により更新することができる。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。

 一 その登録商標が第4条第1項第一号から第三号まで、第五号、第七号又は第十六号に掲げる商標に該当するものとなつているとき。

 二 更新登録の出願前(…)3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもがいずれの指定商品又は指定役務についてもその登録商標(…)の使用をしていないとき。

3 前項ただし書第二号に掲げる場合において、その指定商品又は指定役務についてその登録商標の使用をしていないことについて正当な理由があるときは、同号の規定は、適用しない。

第19条
1 省略

2 商標権の存続期間は、商標権者の更新登録の申請により更新することができる。

3 商標権の存続期間を更新した旨の登録があつたときは、存続期間は、その満了の時に更新されるものとする。

第21条
審査官は、商標権の存続期間の更新登録の出願次の各号の一に該当するときは、その出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない

 一 その出願に係る登録商標が第19条第2項ただし書第一号に該当するとき。

 二 その出願が、…第19条第2項ただし書第二号に該当するものでないとは認められないとき、又は…第19条第3項に規定する正当な理由があるとは認められないとき。

 三 その出願をした者が当該商標権者でないとき。

2 審査官は、商標権の存続期間の更新登録の出願について拒絶の理由を発見しないときは、更新登録をすべき旨の査定をしなければならない

 

 


「出願」の例と「申請」の例

特許法、実用新案法、意匠法および商標法に関連して、「出願」するものと、「申請」するものとの例を示します。

「出願」の例

  • 特許出願
  • 実用新案登録出願
  • 意匠登録出願
  • 商標登録出願
  • 防護標章登録に基づく権利の存続期間の更新登録の出願

「申請」の例

  • 商標権の存続期間の更新登録の申請
  • 審判への参加申請
  • 登録名義人の表示変更登録申請(登録後の住所・名称の変更)
  • 権利の移転登録申請(登録後の権利者の変更)
  • 実施権(使用権)の設定登録申請

 


(作成2021.10.26、最終更新2021.10.26)
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