特許協力条約(PCT)に基づく国際出願の流れ

目次

*「特許法第184条の3~第184条の20:特許協力条約に基づく国際出願に係る特例(条文解読)」の解説動画のYouTubeへの投稿に備えて、以前公開していたPCTフローを再掲載いたします。

【ご注意】期限等は掲載日における弊所把握情報です。最新かつ正確な情報は、特許庁ホームページでご確認ください。

本ページの解説動画特許協力条約(PCT)に基づく国際出願の流れ【動画】

 


特許協力条約(PCT)に基づく国際出願の流れ図(フローチャート)

特許協力条約(PCT)に基づく国際出願の流れ(フロー)

 


国内出願(先の出願)<任意>

【優先日】

  • 国際出願は、先の出願に基づく優先権の主張を伴うことができる(PCT8条)。
  • 国際出願が優先権主張を伴う場合、優先権主張の基礎となる最先の出願日を「優先日」という(PCT2条(xi)(a)(b))。つまり、国内出願に基づき優先権を主張して国際出願をする場合、最先の国内出願の出願日が「優先日」となる。
  • もし国際出願が優先権主張を伴わない場合、国際出願日が「優先日」となる(PCT2条(xi)(c))。つまり、国内出願に基づかず国際出願をする場合、国際出願の出願日が「優先日」となる。

 


国際出願(PCT出願)

【優先権主張を伴う場合→優先日から12ヶ月内】
【優先権主張を伴わない場合→国際出願日を優先日とする】

  • 発明の保護のための出願に限る(PCT2条(i),3条(1))。
  • 通常、日本語又は英語で作成した願書、明細書、請求の範囲、必要な図面及び要約書を、受理官庁としての日本国特許庁に提出する(国願法3条,国願法規則12条,PCT3条(2))。日本語で日本国特許庁に手続できる点は、PCT出願のメリット!
  • 先の出願に基づく優先権を主張しようとするときは、優先権主張の基礎となる先の出願日(優先日)から12ヶ月内に国際出願する(PCT8条)。
  • 原則としてPCT締約国のすべてに出願したのと同等の効果を得られる(みなし全指定(PCT規則4.9(a))、各国国内出願の束(PCT11条(3)))。
  • 国内出願に基づき国際出願をした場合、国内優先権主張出願がされた扱い(自己指定)となり、先の国内出願は優先日から16ヶ月で取下げ扱いとなる(特許法42条)。これを回避したい場合、願書において日本の指定を除外するか、先の出願が取下擬制となるまでに、日本の指定を取り下げるか、国内優先権の主張を取り下げる必要がある。

 


国際調査

  • 各国際出願は、国際調査の対象となる(PCT15条(1))。
  • 国際調査は、関連のある先行技術を発見することを目的とする(PCT15条(2))。
  • 受理官庁としての日本国特許庁に日本語で国際出願をした場合、日本国特許庁が国際調査機関となる(国願法8条)。

国際調査報告国際調査見解書

【国際調査機関による調査用写しの受領から3ヶ月(通常は優先日から最大16ヶ月)又は優先日から9ヶ月のうち遅い方】(PCT規則42.1 (23.1(a),22.1(a)))

  • 国際調査報告には、関連のあると認められる文献を列記する(PCT規則43.5(a))。
  • 国際調査見解書には、 請求の範囲に記載の発明に対し、新規性、進歩性及び産業上の利用可能性についての見解が記載される(PCT規則43の2.1(a))。
  • 早期に先行技術を知ることができ、また特許性の見解を得られる点は、PCT出願のメリット!
  • 国際調査見解書に対する非公式コメントを国際事務局(スイス ジュネーブ)に提出できる(優先日から28ヶ月以内)。

 


19条補正<任意>

【国際調査報告送付日から2ヶ月、又は優先日から16ヶ月のうち遅い方】(PCT規則46.1)

  • 国際調査報告を受け取った後、所定期間内に国際事務局に補正書を提出することにより、国際出願の請求の範囲について一回に限り補正をすることができる(PCT19条(1))。
  • 国際調査機関の見解を考慮に入れた補正を、国際段階において一つの補正書により行うことができる。
  • 補正並びにその補正が明細書及び図面に与えることのある影響につき、簡単な説明書を提出することができる(PCT19条(1))。
  • 補正は、出願時における国際出願の開示の範囲を超えてしてはならない(PCT19条(2))。

 


国際公開

【原則として優先日から18ヶ月経過後速やかに】(PCT21条(2))

  • 各国際出願は、国際公開の対象となる(PCT21条(1))。
  • 国際調査報告も公開される(PCT21条(3))。また19条補正がされた場合には、それも含まれる(PCT規則48.2(f))。これらが公開時期に間に合わないときは、追って公開される(PCT規則48.2(g)(h))。

 


国際予備審査請求<任意>

【国際調査報告及び国際調査見解書の送付から3ヶ月、又は優先日から22ヶ月のうち遅い方】(PCT規則54の2.1)

  • 国際調査機関の見解を考慮に入れて補正や答弁した上で有利な国際予備審査報告を得たい場合に請求する。
  • 日本国特許庁に日本語で国際出願をした場合、日本国特許庁に国際予備審査を請求し、日本国特許庁が国際予備審査機関となる(国願法10条)。
  • 34条補正答弁書を提出するなら、国際予備審査請求とともに行うべきである(PCT規則66.1の2(a), 53.9)。
  • 34条補正とは、国際予備審査報告の作成前に、請求の範囲、明細書及び図面についてすることができる補正である(PCT34条(2)(b))。この補正は、出願時における国際出願の開示の範囲を超えてしてはならない(PCT34条(2)(b))。
  • 答弁書とは、国際予備審査機関の見解(通常、国際調査機関の見解書が国際予備審査機関の見解書とみなされる(PCT規則66.1の2(a)))に同意しない場合に提出することができる抗弁である(PCT規則66.3)。
  • 19条補正を国際予備審査において考慮するか、34条補正により取り消されたものとみなすか、あるいは、34条補正を国際予備審査請求とともに行う場合には34補正を考慮するか、を選択することができる(PCT規則53.9)。

国際予備審査

  • 請求の範囲に記載の発明が新規性、進歩性及び産業上利用可能性を有するかどうかについて、予備的なかつ拘束力のない見解を示すことを目的とする(PCT33条(1))。

国際予備審査報告

【通常、優先日から28ヶ月、又は国際予備審査開始から6ヶ月のうち遅い方】(PCT規則69.2)

 


各国への国内移行手続

【通常、優先日から30ヶ月内】(PCT22条,39条)

  • 指定国(PCT締約国(願書で指定を除外した国を除く))のうち特許化を希望する国への移行手続。どの国で特許を取得するかの判断に、優先日から30ヶ月の猶予が与えられる点は、PCT出願のメリット!
  • 特許性があると思えば、各国への移行手続をすればよいし、特許性がないと思えば、各国への移行手続をしなければよい。
  • 特許性があると思う場合にのみ翻訳文を作成して各国へ移行すればよいので、費用の無駄を抑えることができる。PCT出願のメリット!
  • 日本への国内移行の場合
    ・日本語特許出願→国内書面+手数料など
    ・外国語特許出願→国内書面+手数料+明細書等の翻訳文など

各国での国内処理

  • 各国において権利付与の可否につき審査される。

 


(作成2009.08.12、最終更新2021.10.27)
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